m-neji.com/Shooting live@loft/vol.5
2002.05.29 新宿LOFT


ロフトである。懐かしの。超懐かしの。歌舞伎町のど真ん中に足を踏み入れるのもアレ以来だ。
φのね、広瀬"JIMMY"さとし転落事件@渋谷ON AIR EASTから半年後のリターンマッチがここだったんだよねぇ。あの時、一言だけ師匠が喋ったのもしっかり記憶してたりして。ついでにロフトの場所も忘れてたのに中の構造は覚えてたりして(爆笑)。そんなもんよね。ふっ。
で、会場についてチケットを切ってもらった際、びっくりなことを言われる。
「オープニングアクト、始まってますのでー」
……はい!?
慌ててチケットの開演時刻と自分の時計を見比べる。開演は7時、時計はまだ6時半を回った辺り。何故!
とにかくホール内へ飛び込んで、すでに鳴り始めている爆音に焦りつつ、ステージ正面のホール中央付近へ。

オープニングアクトだけは指定してあったオレンジメカニック。本人たちの宣伝によると大宮のバンドだそうで。女の子vo.と、g.、b.、dr.が男の子一人ずつの四人編成バンドで、vo.さんもギター持ってた。衣装っていうかもうそれ普段着でしょっていうラフなスタイルで、見るのに気張らなくていいバンドだったなぁ、と。
どうも一曲目のイントロ辺りでホールに飛び込んだようで、一応全曲聴けたらしい。
が、印象が薄い。
まず問題点はvo.さん。……浜崎みてぇ。なんかね、浜崎をロックバンドに放り込んで叩き上げてみましたーって感じの。バンドにいて違和感があるわけではなくてちゃんと馴染みつつ自己主張もしてるんだけどー……一口に言ってしまえば、「今時の女の子」の歌い方なのね。それ以上でもそれ以外でもないからインパクトがいまいち。
もう一つ問題点を挙げるとすれば、パートごとのバランス。
音量はいいんだ、PAさんがいじってるから。で、音質や音色もまぁまぁなんだけど、存在感のバランスが取れてないっつーか。
バランスに波がある、あるいはわざと波を作ってるバンドはいる。例えばギターソロでリズム隊がでしゃばらないとか、サビの一番大事にしたい歌詞の部分でバッキングが引き立て役に回ってるとか。それはいいんだ。それならいいんだが、オレンジメカニックはそうじゃないんだな。
全部のパートが目一杯我を出し切った状態で、存在感に差が出てしまう。
順番に言っていくと、dr.はとんがってるのね。迫力のみっつーかモロに力押しな感じ。b.がとにもかくにも弱かった。力いっぱいやってんだろうが、音が埋もれてる。で、g.がとにかくぶっ壊れてて。最初っから最後まで壊れっ放しで、逆にその形がはっきり見えないまま終わってしまう感じで。そんな音に混ざるvo.が、まっすぐ一直線なんだけど、その声が向かってる方向が、上なのね。正面に来たらたぶんかなり刺さってくる歌い方をしてるんだろうが、上に行っちゃってるからこっちまで届かない。
パートごとのバランスを上手く取って綺麗にフォーメーション組めるようになって、全部の力がまっすぐ客に向かってくると、面白いと思う。

セットチェンジを挟んで、誰もいないステージに近未来的っつーか割とメタリックなSEが流れて、出てきたのはGITANE。この辺ですでに出演順に疑問が。何故これがトップ?
戸惑いつつもじわじわと前に詰めたりなんかしてみて、俺にしてはかなり前に陣取り、ライヴスタート。以下、順不同ながらやったはずの曲。
SAVING MYSELF/BE OUT/DAMAGE/BAD CONNECTION/CEREMONY/PENALTY/
ACCEPTING/WON'T LET GO/MAKE IT BETTER/MONOLOGUE/A FLOWER IN THE DARK
推定全11曲。たぶん出演バンド中最多曲数。ただねー、GITANEは一曲ずつが短いから(5分オーバーが珍しい)、このくらいやってもまだまだイケるんだが。
最初がたぶん「ACCEPTING」辺りだった気が。「MONOLOGUE」「A FLOWER IN THE DARK」辺りを中盤に持ってきて、その後が飛ばしっ放しの後半戦。最後が「WON'T LET GO」だったかな? 「MONOLOGUE」はどちらかと言えばマキシver.の方が好きなんだが、そんな俺にとって非常においしいことに、このライヴではマキシver.で歌ってくれました。わーい。
NACK 5繋がりでTHE TRANSFORMERのライヴも見に行ったことあるんですよーと、話すvo.森岡純姐さんの声は、歌ってる時とそう変わらないトーン。喋る時と歌う時でまったく違う声を出す人も多い中、この人はそうじゃないのねーと納得してみたり。
で、音の話。弦楽器隊・本田兄弟の機材は、ステージが低いためほとんど見えないも同然だったんだが、楽器はたぶん両方ともフェルナンデス。アンプも二人そろってHIWATT。この二人、どこまでもフェルナンデスなんだっけか?
サポートのdr.さんも含め、このバンドはほんっとーに音が良い。ともすると良い子過ぎて面白味に欠けそうなもんなんだが、このバンドはギリギリのところで「面白い良い子」である。前出のオレンジメカニックと比較するなら、GITANEはパートごとのバランスが綺麗に均一。出すぎる人も引っ込みすぎる人もいない。でも、均一なのに面白い。
更に一つ言うならば、全パート、テクニック的になんの心配もなく見てられるバンドに当たるのが、俺にはとても久しぶりのことで。水準が高いのよ。かなり。
と書いてて気づく。たぶん、水準が高いのは間違いないんだが、そこで遊んでるから面白いんだな、GITANE。水準の高さだけに胡座をかかず、飽くなき遊び心に忠実に遊んでるから面白いんだ、きっと。うん。
惜しむらくは本田毅氏(g.)がトラブル三昧だったらしいこと。これ、この後のTHE TRANSFORMERでもそうだったんだが、なんせ自らアンプに向き直って首傾げてる光景が幾度も見られた。実際、ギターの音が少々おかしな鳴り方だったこともあった。ちと残念。
一転して楽しかったのはステージング。前に出てくるわ絡むわアタマ振りまくるわと大忙しなvo.森岡純姐さんとb.本田聡氏に対し、お兄さん、そう盛大には動きません。でも、下手に立つ弟が上手に出張してくると、「じゃあ俺こっちー」って感じでとことこ下手に移動してくる。その辺、アイコンタクトばっちり取ってて微笑ましかったな。

さて。再びセットチェンジを挟んで、THE TRANSFORMER。SEに合わせて照明がフラッシュ多用型。なので目がしぱしぱした辺りでメンバー登場。この辺で客席、思いっきり詰まる(笑)。そう言えば受付で「今日はどのバンド見に来ましたか?」と聞かれた時によく見たら、THETRANSFORMERの分だけやたら半券が多かった。ここに来て納得。
しかし、ヒートアップした客席を嘲笑うようなトーンで「物憂げなMonday」からライヴスタート。怖いよー怖いよー今日が月曜じゃなくて良かったー(落涙)。思えば、二年前に一度だけ見た時も「クルッタキセツ」から始まってた。一曲目で客を黙らせて二曲目で一気に加速するのは、もしや定番?
で、二曲目は「Shut up」。ここで更に客席が詰まる。二列目辺りに面白いヘドバンしてるお姉さんがいたなぁ。普通は前にアタマを振り下ろすところ、後ろにのけぞってるんだな。真後ろの人に髪が当たってそうだった。
たたみかけるように「サディスティック博愛」。テンション高すぎ。
ここで小休止入って、vo.桐嶋さんが一言「懐かしい曲やります」。なにが来るかと思ったら「黒いビルと滲んだ空」。新宿のど真ん中でこんな曲やられると、田んぼや畑に囲まれた自宅で聴くのとは全然印象が違って切なかった。説得力倍増。
で、これが終わったところでまたしても急激にテンション上がって、「テクノイドハイパースター」。これもテンション高い未発表曲を挟んで「Happy days Dearest friends」。
これが凄かった。CDとはまったく違う中盤のアレンジ。これがなにより凄かった。その場の思いつきで出してる音なんだろうな。そして、vo.桐嶋さんが唯一ギターを持たなかった曲なんだが、この人も真ん中に立つべき人なんだなぁとつくづく実感。ギター持ってようが持ってまいが、歌ってる最中だろうがフレーズの合間だろうが、とにかく視線が持っていかれる。
で、前述のバンドのバランスの話をすれば、THE TRANSFORMERはトゲだらけのバンドである。丸まったハリネズミよろしくトゲだらけの音の固まりがステージに四つ分散してて、そのパワーが一点集中で客席に飛び込んでくる感じ。客がそれを受け止めて倒れようが受け流して怯えてようが、まったくお構いなしな感じ。
それは二年前も同じだったんだが、今回ちょっとびっくりしたのは、客とのコミュニケーションが成立していたこと。桐嶋さんがバンド名だけでも自己紹介したことにまず驚き。g.本郷さんがノーマイクで雄叫びをあげていたことにも驚き。詰めてくる最前の客に手を伸ばして応えている光景にも驚かされた。だって二年前に新潟で見た時は、せいぜいピック飛ばしてくれる程度でMCゼロだったんだよー。
変わったところもあるんだねーと感心しつつも、音のデカさとエネルギーの凝縮具合はまったく衰えてないことが非常に嬉しかった。
ちなみにここでも、ギターがやはりトラブル続きだったようで、本郷さんは最低でも二本のギターを交互に使っていたように見えた。一度、曲の最後の辺りで急いで持ち替えたこともあったような気が。それはやっぱりなにかしらトラブルがあったんだと思うのね。惜しいな。

ここまで来ると残るはTIME SLIP-RENDEZVOUSのみ。このバンドは名前しか知らなかったこともあって、後方へ下がってまったり落ち着いて観察することに。
ところが、さすがにTHE TRANSFORMERだけ半券が多かっただけあって、ここで帰る客が多数。おかげでフロア最前には女の子が四人しか陣取らないというちょっと気の毒な事態になっていた。
登場したバンドは四人編成。vo.&g.とb.とsyn.に、dr.がサポートさんだったのか? あと、syn.の人がどうも腕を傷めているらしい。
演奏がスタートした時はそんなに違和感もなく聴いてられたんだが、曲が進むに連れてヒマになってくる。このバンド、一曲が長いのだ。サビの繰り返しが多いし、イントロや間奏も長い。サビそのものはわりと良いものを持っているから、もっと曲全体の密度を高くしたら面白いと思うんだが、どうにも後半がヒマになる曲が多い。
あと、vo.さんの声がちょっと不思議なタイプで。膨らみのまったくないぺったりした地声。膨らみがないということはつまり、朗々と歌うことができないということで。途中1フレーズだけ良い声が出たことがあって、それが持続したら面白いのになーと思った。加えて、b.さんが要所要所でコーラスも担当してるんだが、彼の方がvo.さんより良い声してるんだなー……ただ、b.さんでは独自性のあるvo,にはならんだろうとも思う。それくらい「普通の良い声」なんだな。
更に、バンドごとに言及してるがパートごとのバランスの話。TIME SLIP-RENDEZVOUSは、各人が向いてる方角がバラバラに思えた。THE TRANSFORMERのような一直線タイプのバンドの後だと、その部分でまず見劣りしてしまう。それぞれが好きなように出した音を並べるだけでは面白くないのだよ。それが同じ方向へ向けて一直線に飛び出した時が面白いのだよ。
TIME SLIP-RENDEZVOUSがアンコールにもう一曲演奏して、ライヴは終了。

という、中2バンドが異常なまでに素晴らしく思えてしまう不思議な出演順のイベントだった。
パートごとのバランスと、アレンジの凝縮具合が、如何に生ライヴを面白くするかを痛感させてくれた面白いイベントだったと思う。いや、たぶんイベントの狙いはそんなところじゃないと思うんだけどね(苦笑)。