「えー! なんで俺んトコになんの、これー!?」
唐突に大声を上げたのはSUGIZOである。その手にはビニールに入った、黒い平たい物体。
「SUGIちゃんのトコに何があるの?」
右斜め前方から聞いたのがRYUICHI。こちらは私物の携帯にメールで送ってもらったスケジュールを確認中。聞きはしたものの、SUGIZOの手元など見ていない。
「だってさー、見てよ、これ! 俺の胸に大穴!」
SUGIZOの大声に遅れること3.7秒でやっと顔を上げたRYUICHIはそのまま数回まばたきを繰り返した。
「うーん……穴、だねぇ」
同意はしたものの、それ以上なんとも言ってみようがなく、RYUICHIはご立腹のSUGIZOに曖昧な笑顔を見せつつ携帯に視線を戻した。
確かに、SUGIZOの言う通りなのだ。
販促キャンペーンの賞品として製造された品のうち、最も当選人数の多いクリアファイルが、その形状と写真の配置の関係で、SUGIZOの胸に穴が空いた状態に見えるのだ。
写真はREBOOT合わせで撮影されたモノクロの、5人のアップを並べたものが使われている。通常の天地だと左側に全員の頭部が並んでいる状態で、真矢が一番下、J、RYUICHI、SUGIZOと続いて、INORANがてっぺんにくる。
A4サイズのクリアファイルを、通常の状態から90度右へ傾けるか、見る人が首を90度左へ傾ければ、5人の写真が普通に見えるようになるデザインだ。
が、クリアファイルであるが故に、右上部の半円がちょうど、SUGIZOの胸の位置になっているのだ。
それが気に入らないと、ご本人がブーイングしているわけだが。
「だからってなぁ、写真180度ひっくり返したらどうなるか分かんだろー?」
斜め後ろからSUGIZOの手元のクリアファイルを覗き込んでそう言ったのは真矢である。
言われたSUGIZOが、2枚のクリアファイルを駆使して写真を180度回転させた状態を考えて、悩んだ。
もし180度回転させて、真矢をてっぺんにして右側に写真が並んだ場合。
Jの脳天というか額のど真ん中に穴が空いている計算になる。それはそれでちょっとした恐怖画像である。
「……まぁべつにJだからいいけど。頭に穴空いてても」
「いーわけないでしょ。適当なこと言わないの」
真矢の痛くないツッコミが髪に触れて、SUGIZOはこの場にいないJをそれ以上いじらないことにした。
「まぁいいじゃないの、穴くらい。俺だってこの向きに写真使われたおかげで、大変なことになってんだぞ」
そう呟くだけ呟いて立ち去ってしまった真矢を見送って、SUGIZOは改めて手元に目を落とした。
言われてみれば。
クリアファイルの底辺の接着部分がどうしても重なるので、真矢の顔の端がでこぼこになっている。
「……うーん……どっちがマシかって話か……」
しかし、SUGIZOがこの問題を真剣に悩んだのは、わずか42秒だった。
現在の彼はとても忙しい人なので、他にもやるべきことも考えるべきことも大量にあって、もはや作り上げられてしまった過去形のものに対して悩む時間すらもったいなかったのである。