感性を育てる

1 痴呆は心の生活習慣病

肥満、糖尿病、高血圧など日常の生活に起因する病気を生活習慣病といいます。最近注目されてきたのが痴呆です。高齢化の進展に伴い、痴呆の人が増加し、その発症の解明、予防、治療の研究が盛んになってきています。これらの研究の中で「感性の乏しい人は痴呆になり易い」のではないかという結果が出てきました。浜松医療センター顧問の金子満雄先生は以前より「痴呆は心の生活習慣病です。若い頃から感性の乏しい生活をしてきた人が、そろそろ仕事が暇になる頃に発症するのが老人性痴呆です。」と言っておられました。
 先生のお話をとうし感性について考えてみたいと思います。

2 感性とは

人の感性は、音楽や絵画に感動したり、詩や唄を詠んだり、スポーツを楽しみ、愛情、友情などの情緒が豊かで、発明、発見能力に長けたいわゆる豊かな心のことです。この感性を発達させることは、将来痴呆になり難くするだけではなく、人が人生を心豊かに生きていける基本となります。
 この感性について、脳の働きを通して考えて行きます。

3 人の脳の基本構造

脳の働きとその過程を下記のシェイマに簡単にまとめました。

目や耳などから入ってきた情報がその性格により左右に別れ、左半球の後頭部では言葉や数字などのデジタル情報を処理(知性の領域)し、右半球の後頭部では音、光、色彩、感情などのアナログ情報を処理(感性の領域)され、左右間で情報のやり取りをした後、額の真下にある前頭前野へ情報が送られる。前頭前野ではその情報に基づき感動し、分析し総合判断を下し(総合司令部 言い換えれば意思の領域)、そしてその指令を運動領域に伝え、最後は行動として現れます。
 情報の処理とそれを統合する知性の領域、感性の領域、意思の領域の3つをバランスよく働かせることが脳の働きにとって最も重要です。

**「2才まではno テレビ&ビデオ」 の欄で述べましたように、乳幼児時期にテレビ、ビデオなどの一方向的な情報を多く与え過ぎますと、前頭前野で総合判断することなく飛び越えて運動領野に情報が伝わる回路ができてしまいます。つまり思考しない、感動しない人間となります。 よく下のシェイマをご覧ください。

4 感性を身につけるタイムリミット

 感性は右脳をとうし身についてゆきますが、音楽、絵画、ゲーム、スポーツ、詩歌そして愛情、友情、情緒、意欲、発明、発見能力などの感性はそれを学習、習得するためのタイムリミットがそれぞれの事柄で異なっており、子育ての中で重要なこととなります。

 例えば音楽の領域では満6歳までに音感教育を始めれば絶対音感を獲得でき、14歳までに始めれば相対音感が身につきます。それぞれの分野で年齢差がありますが、感性を伸ばす一番大切な時期は幼児期の37歳の頃のようです。

5 豊かな感性を育てるためには

 今まで述べてきたように、子どもを感性のあふれた心豊かな人に育てていくためには、幼児期から少年期にかけ、子どもを取り巻く人がテレビやビデオによってではなく、自分の言葉や行動をとうし子どもに色々な事を教え、見せ、実践し育ててゆくことが大切と思います。そして現在行われている知性教育偏重にならないよう、感性教育を上手にミックスし、バランスの取れた前頭前野を育てて下さい。きっとあなたの子どもは花鳥風月に親しみ、豊かな心を持って人生を楽しんでいくことと思います。

 目、耳などの感覚器より情報が入る
       (Input)
    左後頭部

  言葉や文字などの
  デジタル情報処理
     右後頭部

音、光、色彩、感情などの 
   アナログ情報処理
「勉強、仕事に必須の知性の領域」
「趣味、芸術、スポーツ、情緒
などの感性の領域」
            前頭前野

これらの情報を処理し、感動し、分析し総合判断を下し、その状況に対して必要な決断を下す。
つまり総合司令部の役割
運動領域に指令が伝わる
     (Output)
 実際の行動
乙女の像
奥入瀬渓流
銚子大滝