e7 契約に関する法務知識 関連説明


契約によらない債権・債務の発生 〜不法行為責任

   共通点    ともに違法な原因で他人の利害を侵害することから生じる責任
   相違点 債務不履行責任    あらかじめ契約関係のある者の間で成立する
   相違点 不法行為責任    契約関係を前提としない

不法行為の成立条件

@損害が発生していること
   財産的損害 : 積極的損害 : 治療費や修理費など現実に出費された金銭等
   消極的損害 : 休業損害などの収入として見込まれていたものが得られなかった場合
   非財産的損害 : 長期間の苦痛とか、精神的苦痛に対する慰謝料や、名誉・信用の毀損などの損害
A加害行為と損害との間に因果関係があること
   相当因果関係 : 「ある原因行為がなければ、その結果が生じなかった」という関係(条件関係)があることを前提にして、「その行為があれば通常そのような結果が発生したであろうと一般的に予見ができる」という関係
B加害者の故意または過失による行為であること
   故意 : 他人の権利や利益を侵害するだろうということを認識しながら、あえてわざと加害行為をする意思
   過失 : 損害をあたえるであろうということが予測できたので、それを避けるための注意をしなかったこと
C加害行為が違法であること
   違法 : 法律上保護されるべき権利を侵害すること
D加害者に責任能力があること
   責任能力 : 自分のした行為がどのような結果をもたらすかを予測でき、かつそれを回避するのに必要な行動をとることができる精神的能力


損害賠償の方法

金銭賠償の原則 : 損害賠償は金銭によるのが原則である・・・・例外(名誉回復ーー現状回復(謝罪広告など)


損害賠償の減額

過失相殺:
  不法行為に際して、被害者側にも過失があって損害の発生や拡大の一因になった場合に、損害額から被害者側の過失割合に相当する額を差し引いて賠償額を決定する方で、損害を公平に分担するために適用される過失相殺における被害者側の過失は、単なる不注意程度でよいとされているが、その前提として被害者に、事理弁識能力(不法行為の成立要件である責任能力とは異なり、物事の善し悪しが判断できる能力)が備わっていることが必要となる。
損益相殺:
  被害者が不法行為によって損害を受ける一方で何らかの利益を受けた場合に、その利益額から差し引いて賠償額を決定すること

不法行為責任の例

監督義務違反:
  責任無能力者が不法行為を行った場合、監督義務者に監督義務違反があれば、これら監督義務者が賠償責任を負う
使用責任者:
  被用者等が事業の執行につき不法行為を行った場合には、使用者が責任を負う
土地工作物責任:
  建物や電柱など土地に接着した工作物の設置や保存に欠陥(瑕疵)があり、そのために損害が発生した場合、その工作物の占有者または使用者が損害賠償責任を負う
製造物責任(PL):
  製品の欠陥が原因で損害が発生した場合、その製品の生産者(メーカー)等に責任を負わせる ・・・ 製造物責任法(PL法)
公害:
  因果関係の証明責任を軽減して被害者の救済をはかろうとする・・・ 大気汚染防止法、水質汚濁防止法
(自動車の)運行供用者責任:
  自動車の保有者などを運行供用者とし、使用者や友人など他人に運転させた場合にも、運行供用者が損害賠償責任を負う ・・・ 自動車損害賠償保障法
共同不法行為責任:
  共同不法行為 : 2人(2社)以上が共同して不法行為を行った場合、加害者は各自が全損害について賠償責任を負う
失火:
  通常の過失 : 行為者は免責故意・重過失 : 不法行為責任を負う


 日常的な債権の管理回収

信用調査 : 相手の信用状態を調査する。特に新規取引を開始する場合に、不良債権、ひいては損失の防止のために行われる。

債権の存在を確認するポイント
    債権の発生 受注により契約が成立し、債権が発生しているか
    債権の履行期 債務の履行期が到来しているか
    債権の消滅 債権が弁済などにより消滅していないか

     同時履行の抗弁権 : 売買などの双務契約では、どちらか一方の債務を先に履行する旨の特約がない限り、当事者双方の債務は同時履行の関係にある。したがって、契約の一方当事者は相手方が弁済期の来ている債務の履行を提供しないうちは、自分の債務の履行を拒むことができる。

     期限の利益喪失  : 債務者は、破産したり担保を傷つけたり壊したりするなど、信用状態の悪化を示す事由が生じたときには、法律上当然に期限の利益を喪失する。期限の利益を失うと、債務者は直ちに債務の履行をしなければならなくなり、履行期限が到来することになる。

債権の消滅事由

T 内容実現により債権が消滅する場合
  @弁済 : 債務の本旨に従って履行される
  A代物弁済 : 本来の給付に代えて別の物を給付し債権を消滅させる
  B供託 : 弁済の目的物を供託所に寄託する
U 内容実現不能により債権が消滅する場合
  債務者の責に帰することができない自由により履行が不可能になった場合
V 実現不必要なため債権が消滅する場合
  @相殺 : 債務者が、その債権者に対し自分も債権を持っている場合に、その債権と債務を対当額で消滅させる
  A更改 : 新しい債務を成立させることにより、前の債務を消滅させる
  B免除 : 債権者が債務者に対して持っている債権を放棄し、その債権を消滅させる
  C混同 : 債権者が債務者を相続するなど、債権と債務が同一人に帰属することにより、債権としての意味がなくなる
W 一般的債権消滅事由
  @消滅時効 : 債権者が権利を行使しない状態が一定期間継続することにより、その権利が消滅する
  A契約解除 : 債務が履行されないため、債権者が契約関係を解消する
  B法律行為の取消 : 無能力や詐欺などによりなされた法律行為を最初からなかったものとする

相殺 : 2人の者が互いに相手方に対して同種の債権を持っている場合に、その債務を対当額で消滅させること

                

時効 : 一定の事実状態が一定期間を超えて継続する場合に、それが真実の権利状態と一致するかどうかを問わずに、そのまま権利関係として認める制度

  取得時効 : 権利者であるかのような権利行使をしている事実状態を根拠にして真実の権利者とする場合
  消滅時効 : 権利不行使の事実状態を根拠にして権利の消滅を認める場合
  時効の援用 : 時効の成立により利益を受ける者が利益を受ける旨の意思を表示すること


債権の管理回収の手段

  請求   督促などの催告手続きを進めるほか、裁判上の請求・差押などをおこなう
  商品引き揚げ   納入済みの商品を引き揚げる⇒裁判手続きを経ずに実力行使で債権回収を図ることは、原則禁止
  留置権行使   自分の手元に留めてある債務者の物を留置することで弁済を強制
  連帯保証人への催告   債務者に対する請求と同じ手順で請求する
  担保権実行   抵当権などの物的担保権を実行するため、裁判所に競売の申立をする
  訴訟等裁判手続き   債務者に対する訴訟を裁判所へ提起する
  その他の方法   相殺・代物弁済や債務者が第三者に対して有する債権の譲受など


債務の履行・不履行

債務の履行(弁済) : 債務の責任を果たすこと

  ・持参債務 : 債務者が債権者の営業所で債務を履行すべきことが契約で定められた場合、債務者は期日に債権者の営業所へ目的物を持参して債務を履行しなければならない
  ・取立債務 : 期日に債権者が債務者の営業所で目的物を取り立てることが契約で定められた場合には、債権者が取り立てる前に債務者は目的物を引き渡す準備を終えていなければならない

       ↓ 履行の提供

受領した売買目的物の検査・通知義務 :
   商人間の売買の場合、買主は売買目的物を受け取ったら遅延なくその検査をしなければならず、その結果、商品に異常や数量不足を発見すれば直ちに売主に通知しなければならない。
   (直ちに発見できない異常についても、商品を受け取った後6ヵ月以内に売主にその異常を通知)

債務不履行 : 債務者の非難されうる原因(帰責事由)に基づいて、債務者が債務を本旨に従って履行できない場合に債務者の負う責任

  履行遅延   債務を履行できるのに、債務者の帰責事由により、かつ正当な理由なく、履行期限までに債務を履行しないこと
@本来の債務の履行を請求
A履行が遅れたことによる損害の賠償請求(遅延賠償)
B一定の期間を定めて履行を催促(催告)しても履行がされないときは、契約を解除して債務が履行されたなら得られたであろう利益の賠償請求ができる(てん補賠償)
  履行不能   契約締結時には履行が可能だった債務が、その後債務者の帰責事由によって履行が不可能になったこと
履行の催告なしに直ちに契約を解除して、債務が履行されたなら得られたであろう利益の賠償請求ができる(てん補賠償)
  不完全履行 債務は一応履行されたが不完全な履行であって、債務の本旨に従った履行がされていないこと
追完不能(改めて完全な債務履行をしても意味がない):
・履行が不完全であるために生じた損害の賠償請求
・履行不能に準じて、催告なしに契約を解除できる
追完可能(改めて完全な債務履行をして意味がある):
・改めて債務の完全な履行を請求・履行が不完全であるために生じた損害の賠償請求
・一定の期間を定めて追完を催促(催告)し、それでも履行がされないときは、契約を解除できる

正当な理由の例) 同時履行の抗弁権
売買契約のような双務契約では、双方の履行期が同時である場合、相手方が債務の履行の提供をするまでは自分の債務の履行を拒絶することができる

危険負担 : 双務契約において一方の債務がその債務者の帰責事由によらず履行不能となった場合に、その履行不能の危険を誰が負担するか
⇒ 損失は売主負担とし、支払済み代金を返還する旨の特約を設けるのが一般的