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                     日経の経営記事2001年  No2(5・16〜5・31)


    コンビニ 定期診断 セブンイレブン全店で   日経新聞  01.5.16 11面

 セブン−イレブン・ジャパンと前田建設工業は、コンビニエンスストア店舗を定期的に巡回して設備の劣化や破損を早期に発見する「建物診断制度」を6月に導入する。当面は全国8600のセブンイレブン全店が対象だが、前田建設は多店舗展開する小売業や外食業にも広く売り込む方針。ゼネコンが巡回型の修繕サービスを手掛けるのは初めて。チェーン店側は定期巡回で問題を早期発見できる。前田建設の建築技術者がセブンイレブン店舗を年に3回巡回。建物や外溝、電気・給排水設備などを点検し、劣化状況を診断する。ドアのがたつきや床タイルの破損といった軽微な補修はその場で実施。即日実施できない修繕は見積もりを出し、後日施工する。前田建設は年中無休・24時間体制で設備の維持管理・修繕に関する相談も受け付ける。
 セブンイレブンの店舗は24時間稼働するため設備の破損も多く、全国で年間1万5千件以上の小規模工事をしている。従来、工事は各店が独自に業者に発注していたが、今回の制度で全店共通価格で効率的な発注ができる。

  コメント − 市場をセグメントし、商品を特化する

 コンビニの快進撃には既に陰りがみられ、単純に業界全体が儲かっているわけではない。しかし栄枯盛衰が激しい分、スクラップ・アンド・ビルドが頻繁に行なわれ、市場として活気がある。今回の記事は、コンビニ店舗のメンテナンスに関するもの。8600店に及ぶのセブンイレブン全店を対象に一括契約を結ぶとは、大きなビジネスだ。
 チェーンストア向けのビジネスを考えると、そこには一つの独特な市場が存在することがわかる。店舗の設計段階では、徹底的な低コスト化が検討される場合もあるし、来店客を魅惑する凝った造作にする場合もある。耐用年数も、あえて長くする必要はない。飲食店なら3年ごとに改装するくらいだ。いずれにせよ、通常の家屋・建築物とは異なった感覚が必要とされる。
 24時間営業の店舗が増えているとなると、そこに製品を納入している設備機器メーカなどは、修理対応も24時間であることを迫られる。例えば飲食店で調理機器が故障したら、その時点で商売ができなくなってしまう。通常の家屋・建築物とは異なった特性を持つチェーンストアは、それが一つの市場セグメントを形成していると考えるべきだろう。通常の「家屋・建築物」とは異なる、別の感覚をもって市場を攻略していく必要がある。
 「家屋・建築物のメンテナンス」と市場を大きくとらえてしまうと、攻略の焦点がボケてしまう。しかしセグメントして市場をとらえると、チェーンストア業界の特異性が浮かび上がってくる。活気のある業界なのだから、狙わない手はない。

 ポイントは、市場をセグメントし、拡大の見込めるターゲットを絞り込み、ターゲット属性に特化した商品・サービスを提供することだ。戦略とは「選択と集中」だと考えれば、焦点のボケた市場のとらえ方をしていては、戦略にならないのだ。あなたの企業が対象とする市場はセグメントされているだろうか。全体のみをとらえているだけでは、市場を把握していることにはらなない。市場をセグメントし、それぞれの特性を解明してみよう。(いつもの言葉かな?)

   「データ知らないこと」  日経新聞 01.5.17 37面
   
 米大リーグ、マリナーズのイチローは十五日、当地のホワイトソックス戦で2安打を放ち、連続試合安打を今季大リーグ最長の「20」に伸ばした。イチローはこの日は5打数2安打1打点、打率はリーグ3位の3割6分2厘。試合はマリナーズが4―3で勝ち、佐々木の登板はなかった。メッツの新庄はパドレス戦で3打数2安打。メッツ1―0の勝利に貢献した。
 クルーズ(ブルージェイズ)を抜いて今季の最長連続試合安打記録を更新したイチローだが、「そんなことは(他人に)知らされないと知らないこと」と相変わらずクールな受け答え。第4打席では、一時勝ち越しとなる中前適時打も放ち、得点圏打
率は両リーグを通じて断トツの5割6分3厘。その秘けつを聞かれ「そういうこと(得点圏に強いデータ)を知らないこと。そんなことをいちいち気にしてプレーできない」。周囲の過熱ぶりとは無縁の集中力が、イチローの大きな長所だ。

  コメント − 結果を出すためにプロセスに集中する

 企業経営について考えてみると、業績成果としての数字は非常に気になるところだ。予算は努力目標ではなく、必達数字と考えるべし。予算を達成することは、企業が存続し、ビジョンを実現するために求められるというのは確かだ。現実問題として、設定された予算数字自体が妥当なものかと言えば、かなり怪しい。
 特に、新規事業の立ち上げにあたっては、過去の実績データがなく、すべてが仮説だらけとなる。そのような場合は、結果を追い求めるより、正しいプロセスを踏み、仮説をキチンと検証していくことが重要だ。戦略や根拠もなく、いい加減に(たいていの場合、高く)設定された予算を何としても達成しようとすれば、無茶な営業をするという危険性もある。
 
 マネジメントできるのは、結果を出すためのプロセスだけだ。となれば、実行段階では、結果ではなくプロセスに気持ちを集中させる必要がある。イチローの言葉は、結果を出すことが重要なプロの世界とは言え、選手として本当に気持ちを集中させるべき対象は何なのかを教えてくれているように思う。大きなビジョンを描き、高い目標を持つのは良い。しかしそれを実現するためには、プロセスを着実にこなすことが必要だ。ビジョン・目標に心を奪われ、プロセスをおろそかにしてはならない。

   JTB 「三世代割引」を強化   日経産業新聞  2001.5.18 
   
 JTBは国内旅行向けの「三世代割引」を強化する。例年、秋から春にかけて4−6の宿泊施設を対象にしていた割引を今年は夏休み向けにも実施、対象の宿泊施設も21に増やす。エリアもこれまで多かった関東周辺だけでなく、静岡、新潟などに広げる。ここ数年、世代を超えた家族ぐるみの旅行が増えているのに対応する。同社の国内旅行向け「三世代割引」は、親、子供、孫の三世代そろって宿泊を申し込んだ場合、孫の料金を大人(親、子供)の10%の水準に引き下げるもの。通常なら孫の料金は大人の50−70%の水準にとどまるといい、割安さをアピールできる。
 対象の宿舎施設はこれまで、湯河原温泉(神奈川県)や水上温泉(群馬県)など関東周辺の施設が多かったが、今回の夏休み向けから熱海温泉・大月ホテル(静岡県)、越後湯沢温泉・湯沢ニューオータニホテル(新潟県)などを追加し、合計21施設に増やした。対象期間は7月14日から9月2日まで。
 三世代旅行の需要は拡大している。レジャー消費のけん引役として高齢者が若い女性に代わって台頭。離れて暮らす孫と触れ合いの場を持ちたいというニーズも高い。JTBによると、2000年の同商品の売り上げは前年比5割増。今年も「二ケタ増は見込める」(JTB)という。

   コメント − 二重、三重に商品の魅力を訴求す

 モノがあり余っている今の世の中だ。価格を下げても、消費者が見向きもしないというのはよくある。商品自体に魅力があり、もう少し安ければ買いたい、と消費者が感じていなければ、割引作戦も成功しない。また、それ以前に、割引価格がまったくインセンティブになっていない場合もある。例えば小売店で時々、レジで2割引します、といったサービスが謳われていることがある。割引してくれるからその商品を買うという意識を持ってレジに向かう消費者はどれだけいるだろうか。レジに行ったら割引してくれると言われ、少し得した気分になることはあるだろうが、購買のインセンティブとしては機能していない。
 
 販売で差別化に成功するには、商品の魅力が一つだけでは物足りない。価格を含め、少なくとも二つ、三つとメリットを訴えてはじめて、買い手の心が大きく動き、購買行動につながると考えておいた方がよいだろう。あなたの扱う商品について、他社商品との差別化ポイントはいくつあるだろうか。

    社内りん議 3日以内   日経新聞 01.5.21 13面

 大和ハウス工業は平均10日前後かかっていた社内りん議の決裁を3日以内に短縮する。イントラネットによる電子りん議に切り替えることで実現する。住宅大手ですべてのりん議の決裁期間を3日以内にするのは珍しい。分譲事業用地を購入する場合などで意思決定を早め、1−2日でりん議を通す新興のマンション会社などに対抗する。同社のりん議件数は分譲マンションなどに利用する土地購入が4割弱、分譲住宅建設が約2割の順で多い。分譲事業の成否は物件の立地で決まる面が大きい。迅速な意思決定で良い物件の確保を目指す。

   コメントー 大幅な改善は競争優位性を確保してこそ

 ITという言葉が頻繁に使われるようになったのは比較的最近のことだ。社内業務にコンピュータを導入するのはかなり以前からだが、当時はOA化と呼ばれていた。OAとITとの決定的な違いは、前者の観点が「省力化」であり、後者のそれが「競争力強化」にあるということだ。成熟経済の時代を迎え、戦略の重要性がますます高まっている中、既存の業務をいかに低コストでやるかという発想ではなく、競争力を強化するために、業務をどのように改革するか、という発想が求められるようになっている。

 住宅分譲事業の競争力強化を考え、その阻害要因が稟議による決裁期間が長過ぎることであると突き止め、その解決のために電子稟議システムの導入を決定する。それが論理の道筋であるべきだ。省力化という観点からこの記事を眺めると、以前は10日前後かかっていたものが3日以内になるのだから、これはすばらしい進歩だといえる。

 一方、競争力強化という観点からすれば、新興のマンション会社が1−2日で稟議を通すのなら、なぜ大和ハウスは3日でよいのか、と突っ込みを入れたくなる。情報量等の差で新興ライバルにはハンデがあるから3日で十分なのか、1−2日と3日との差は競争上、たいした差ではないのか、それとも、単にシステム的に3日が限界だからそうしたのだろうか。自社の競争力を考える場合、常にライバルとの比較で考える必要がある。稟議にかかる日数だけが勝敗を分ける要因ではないが、それも含め、大和ハウスの社内で事業競争力強化のためにどのような議論がなされているのか、気になるところだ。

   全商品の3割海外調達に  日経流通新聞  01.5.22 22面

 作業用衣料・用品チェーン最大手のワークマンは、2005年度3月末までに商品全体の3割を海外調達に切り替える。「今後、全商品の平均価格を毎年一割ずつ下げていく」(同社経営企画部)方針だ。低価格化を武器に、これまで店舗が少なかった東京、神奈川や近畿エリアへの出店を進める。今期は、全体の約1割にあたる600種類の商品を海外調達にする。衣料品や作業用手袋の中国製品への切り替えが中心になる。一束98円の革手袋など、「商品によっては従来の半額程度に価格を引き下げられる」(経営企画部)という。ワークマンは3月末現在、27都県に433店舗を持つ。北関東や南東北、東海地方など「12県でトップシェアを維持している」(同社)。「顧客層の主力を占める建築・工事関係者では景気低迷の影響で、作業服などを作業員の自前調達に切り替える企業が増えている」(同社)ことから、作業服や靴の需要が増大すると判断。販売網の拡大を急ぐ。

   コメントー変化を予測してロジカルに対策を考える

 全商品の平均価格を毎年1割づつ下げていくというのは、大胆な目標だ。しかし、明確でわかりやすい。低価格を大量出店の武器にするという。作業服などが作業者の自前調達になる傾向が高まると予測し、市場規模(記事によれば、需要)が拡大するという判断に基づいている。なぜ市場規模が拡大するのだろうか。作業員の数が増えるのだろうか。世の中、好景気に沸いているわけではないのだから、それは考えにくい。そうではなく、作業服が自前調達になることにより、彼らが買い物に行く店舗での小売りの市場が拡大するわけだ。今までは企業が作業服を作業者に配給していた。作業服は、企業の総務や労務セクションを通じて購入されていた。作業服が自前調達になれば、そのような購入のされ方=ビジネスモデルは変わっていく。となると、企業向け販売中心の作業服小売業者は厳しくなる。
 とは言っても、企業側も苦しくなってきているから、作業服のコストダウンも図らなければならない。究極のコストダウンは、買わないことだ。すなわち、作業員に自前で購入させる。作業員にしてみれば、基本的に今までは無料だったものが有料になるのだから、出来る限り低価格で買いたい。
 作業服という商品の購入のされ方が変わる。これは非常に大きな経営環境の変化だと言える。企業のコストダウン要求が作業服に及び、作業員の自前調達になり、店舗での小売が必要になる。顧客が価格に敏感な層にシフトするため、勝つためには低価格品の投入が必要になる。記事から判断する限り、ロジックとしてはこのように整理できるだろう。
 戦略策定においては、経営環境の変化をロジックに落とし込み、ビジネスモデルの変化と競争要因を見極め、自社はどのような手を打つべきかを考えていく。

    清水建設 ネット接続事業参入  日本経済  01.5.23 11面
   
 清水建設は日立製作所や三菱地所など5社と共同で既存の賃貸マンションや社宅・寮の居住者向けのプロバイダー(インターネット接続会社)事業に参入する。5月末に共同で事業会社を設立、賃貸物件の場合で常時接続3千円弱(加入料2万5千円)の料金でサービスを開始する。入居者をまとめて囲い込める利点を武器に、不動産・建設大手がマンションの販売戦略に高速ネット接続を取り込む動きが増えてきた。
 設立するのは「スーパーリージョナル」(東京・港、高橋淳一代表取締役)。資本金は1億2千万円で清水建設が51%、日立製作所が19%、三菱地所が15%、日本リロケーションが10%、残り5%を東京ベンチャーキャピタル(東京・中央、淀川和也社長)と三菱信託銀行が折半出資する。社員は3−5年後に30人強に拡大する。新会社は賃貸マンションや社宅・寮に通信回線を引き込み、棟内回線の整備も請け負う。導入費用は新会社と利用者(社宅・寮の場合は不要)が負担、不動産の所有者は費用負担する必要はない。通信速度は非対称デジタル加入者線(ADSL)と同じ毎秒1.5メガ(メガは100万)ビット。賃貸マンションの場合は専用アダプターの利用権など加入料として最初に2万5千円を支払えば利用料は月額2980円、転勤の多い社宅や寮の場合は加入料がかからない代わりに月3900円に設定、他社のサービスに比べ利用料は半分程度の水準に抑える。2年目以降には会員に対象を絞り込んだコンテンツ(情報の内容)サービスも開始する。ゴルフのワンポイントレッスンなど5分程度の番組を有料で数本用意、会員サービスを向上する。5年後には30万件の会員契約を獲得、売上高80億円を確保する計画だ。

    コメントー 軸足の移動はブレイクスルーを生み出す

 今や新築のマンションと言えば、インターネットに常時接続できる環境が整っているのが常識だ。物件の魅力を高める差別化サービスとして位置付けられてきたように思う。居住者へのサービスという位置付けであれば、赤字にならなければ上出来というスタンスでもよい。
 しかし今回の記事によれば、清水建設はインターネット接続サービスを、一つの独立した収益事業としてとらえている。日経の同じ紙面に隣接した解説記事によれば、その背景にはゼネコンを取り巻く経営環境の厳しさがあるという。集合住宅であれば、ユーザをまとめて囲い込むができる。本業の不振極まって、いよいよ他の収益源を真剣に模索し始めたということだ。

 一つのサービスを「付加サービス」と見るか、「新規事業」として見るかにより、取り組みの姿勢は大きく変わってくる。もし単純に、居住者がネットに常時接続する環境を整えてあげようとだけ考えていれば、記事にあるように、有料の番組提供などは思いもつかない。何をやるにしても、その位置付けや自社(自分自身)の軸足がどこにあるのかをしっかりと認識しよう。そして、軸足を移すとしたら何ができるかを考えてみよう。より大きな視野が広がる可能性がある。

    旅客需要予測 国交省に改善勧告  日経新聞 01.5.24 13面
  
 総務省は23日、滑走路延長などの空港整備で、事前の旅客需要予測が過大に見積もられ、不必要な事業が進められているとして、需要予測の算出法改善などを国土交通省に勧告すると発表した。空港整備を巡っては、航空機燃料税などを財源とする空港整備特別会計の硬直的な運用が問題になっており、総務省は特別会計の中で未利用のまま放置されている国有資産の処分促進も求めた。1988−99年度に整備した15空港を調査したところ、9空港の旅客者数が当初の予測値を下回り、そのうち4空港は予測値の半分以下だった。そのうえ各空港での算出の前提や手法、調査期間がばらばらなため、路線によっては出発地と終着地で同一路線の利用者数の予測値が倍近く離れているケースもあった。
 鉄道などの競合交通機関と空港のどちらを選択するかも予測値の算出には重要だが、空港に近い都市部の住民だけを調査対象にしたため、空港を選択する人が多くなっている場合もあった。一方で近隣空港との競合を考慮に入れて、予測値を算出した例は無かった。総務省は、整備を決定する客観的な判断材料として国交省が提示している費用対効果の分析手法も不十分と判断している。同手法では完成業務や気象状況の把握など、空港に不可欠な業務に関する費用を計上する必要がない。相対的に費用より効果が多くなり、整備推進に有利な材料となっていた。

   コメント‐「はじめに結論ありき」を排除する

 今回の記事で総務省が国交省に指摘している事項は、通常の企業の事業計画にもしばしばみられる問題点だ。「出発地と終着地で同一路線の利用者数の予測値が倍近く離れているケース」があったという。計画として数値が整合していないというのは検討以前の問題だ。これはちょっとお粗末。代替交通機関や近隣空港との競合を考えていないのも問題だ。新規事業計画を立てる上では、市場のニーズ分析と規模推定をすると共に、競合環境を分析し、どうすれば優位性を確保できるかを考える必要がある。無人の野を行くが如き計画には戦略の視点がない。
 「空港に不可欠な業務に関する費用を計上する」こともしていないという。現実に事業をスタートしようというのなら、シミュレーションは不可欠だ。何にどれくらいの費用がかかるのか、出来る限り具体的にイメージする必要がある。計画策定能力とはイマジネーション能力だと言ってもよい。央省庁の官僚という、日本で最も頭が良いとされる人たちが予測をしているはずなのだが、なぜこのようなことになってしまうのだろうか。考えられる理由の一つは、初めから結論が決まっていることだ。
 調査の目的は、空港整備の適否を判断するためではなく、それを正当化するための補強材料として使うためと考えられる。
 事業計画についても、当事者自身が事業アイデアを検証し、やるかやらないかの意思決定の材料にするためのものと、他からの投資を勧誘するためのものとがある。後者は眉に唾して検討する必要がある。その場合も、需要(売上)予測が甘いケースがほとんどだ。
では、いかにして客観性を確保するか。その解決策の一つは、事業を選択肢の中から選ぶことだ。候補として同等の可能性があると思われる複数の選択肢を持ち、その中から選ぶ。一つの選択肢しか見えない状況では、視野が狭くなり、正しい判断が損なわれる。しかし、ある程度の基準を満たし、同等の成功の可能性があると思われる選択肢が複数あれば、「はじめに結論ありき」状況を排除することになり、おかしな意思決定をするリスクはかなり回避できる。

    クボタが中期計画 海外農機など重点  日経産業 2001.5.25 17面

  クボタは24日、2004年3月期までの3年間の中期経営計画を発表した。海外での農業機械、環境など成長が期待できる分野に重点的に投資するほか新規事業を育成し、最終年度に連結ベースで売上高1兆1千億円(2001年3月期は9945億円)、純利益340億円(同98億円)を目指す。
 事業を国内農業機械などシェアがトップの「基幹事業」、市場拡大が期待できる「重点事業」、住宅など「低収益事業」の3つに分類。低収益事業では他社との提携などを含む抜本的な事業再構築に乗り出す。育成する新規事業は環境修復、マイクロガスタービン、燃料電池などで、最終年度に全売上高に占める比率で10%を目指す。業務革新のため、3年間で最高300億円程度を投資して業務用情報システムを構築する。1999年の水道管不当カルテル事件を受け再発防止などのため、「コンプライアンス(法令順守)本部」を設置する。

    コメントー 期経営計画の基本テーマは事業構造の改革

 今回の記事で紹介されているクボタの中期経営計画の概要は、基本を押さえた一つのモデルケースとみることができる。最近の中期経営計画は、期間設定を3年としているものが一般的だ。中期でなく短期の計画は何かと言えば、それは年度経営計画であり、期間は1年だ。1年の計画だけではなく、なぜ3年間の計画を立てる必要があるのか。本質は、事業構造を変える目標を立て、それを実現するには、3年間程度の時間がかかるからだ。
 戦略策定の着地点は、つまるところ、どのような事業構造を選択するかに尽きる。選択をするためのツールや判断基準として様々な分析手法があるが、結局は新たな事業構造の選択、すなわち、現在の事業構造を改革するために使われる。だから、中期計画は戦略計画ということになる。
 1年単位の計画で考えると、既存事業のそれぞれについて、前年対比で売上をいくら伸ばそうという発想になりがちだ。それぞれの事業でベストを尽くすのもよいが、部分最適は全体最適ではない。しかし3年という中期のスパンでみれば、事業構造が変わったことが一目でみてとれるくらいの変革は起こし得る。中期的に考えるとは、例えば3年後にどのような企業になっていたいのかを考えることだ。企業は事業体なのだから、それはすなわち、どのような事業構造になっていたいか(あるいは、なっていならないか)を考えることになる。そうなれば、全体最適となる事業構造のあり方を実現するために、経営資源をどのように配分すべきかを考えるようになる。1年単位でしか考えていなければ、経営資源の再配分というよりも、微調整といった程度で終わってしまう。
 環境の変化に応じて、事業構造も変えていかなければ、企業は成長発展できない。中期経営計画とは、事業構造を改革する計画であり、それはすなわち、成長発展を目指す戦略の着地点とそこへ行くための道筋を示すものなのだ。

       人材の流れに変化 執着薄い起業家に引力   日経産業 01.5.28 23面

 ニュービジネス協議会(NBC)が、全国の会員企業3800社を対象に実施した「雇用に関するアンケート調査」(有効回答777件)をまとめた。(中略)集計結果から見える問題点は「中途採用人材の質の低さ」「労働力の円滑な移動がない」だという。<採用満足度3割以下>これが目新しい課題ではないことは当のNBCも認めているが、逆に十年一日のごとく、起業を支える根幹であるヒトの問題が過去のベンチャーブーム、情報技術(IT)ブームを経て、なお問われ続けているのが現実だ。終身雇用、年功序列、年金問題などに代表される既存の業界構造が、相変わらずベンチャーへの人材流出を妨げているという。自ら起業塾も主催する志太勤NBC会長(シダックス会長)は「我々のメガネにかなう人材がなかなか見つからない」と嘆く。欲しいのは経営者や役員クラスではなく、営業、開発、技術といった現場の人材で、そこでの話だが、いずれにしても「大企業からは容易に流れてこない」。(中略)アンケートでは、全体の8割の企業が中途採用を実施しており、今後も続けるとしているが、採用した人材への満足度は縁故採用以外は3割以下。「すぐ辞める」「何のために転職してきたのか分からない」「自分の適性を把握していない」など不満の声が多く聞かれた。
 <いないなりに対応>人材難問題が日本のベンチャーの育成、成長を妨げているのだろうか、ならば解決策は何だろうか。最近の20−30代の若手ベンチャー経営者に問うてみた。同様の不満が返ってくるのかと思いきや、「起業や日々の仕事に障害を感じたことは別にない」と言うあっさりした答えが返ってきた。あるIT系ベンチャーの社長は「優秀だと思って喜んで採用した人間は、実は個人的な訴訟案件を抱えていたりで、そういう人材しか来ないのかな」と笑って話す。アンケート結果と悩みは同じだが、「人材がいなければいないなりに何とかする」と言う。結局は自分一人で現場を駆け回ることになりがち。それでも平気だという。こうした声は、IT株バブル崩壊をくぐり抜けた最近の若手経営者に多い。彼らが人材難を深刻に感じないように見える理由を考えてみて思い当たったのは、成長や成功への執着が以前の起業家たちよりはるかに少ないことだ。しなやかで、力の抜けた感じ、というとおよそ起業家には似つかわしくない言葉だろうが、そういった形容がふさわしい。
 <大成功望まない>彼らは大きな成功を必ずしも望まず、他人に自分の夢への参加を強制もしない。従来のベンチャー経営者は「それでは成長しないではないか」と言うだろうが、当人は気にしていない。
 しかも、こうした若手経営者のベンチャーでは、現場の人材不足は同じでも、役員クラスに、大企業や銀行、外資から米有名大学のMBA(経営学修士)取得者や役員経験者らが集まって来ている。「優秀な人材が流動していないなんてことはない」と言い切る経営者もいる。日本のベンチャーは結果的にマイクロソフト、インテル、シスコシステムズなどのような世界的企業をついに生み出せなかった、という議論がある。大半のベンチャーは、技術でもビジネスモデルでも独創性を発揮するに至らず、人材難と将来展望に悩んでいるのが現実だろう。人材不足を嘆かない「新しいベンチャー経営者」が従来型の成功を収めるかどうかは分からないが、これまでとは別の成功への道を開く可能性があるのでは、と期待させる動きである。(竹田聡)

   コメントー経営者の姿勢は人材に対する見方に反映する

 今回の記事は、ベンチャー企業の人材不足と最近のベンチャー経営者の気質という、二つのテーマをとりあげている。
 両テーマがどのように関わっているか、記事とは違う角度で考えてみた。ベンチャーであれ何であれ、企業を支えるだけの能力のある人材を中途採用するのは容易なことではない。大企業出身だからといって、転職して通用するとは限らない。
私が関与した企業でも、大企業から三顧の礼を持って人材を迎え入れたものの、期待ハズレに終わった例は多い。大企業の、ある程度出来上がった仕組みの中で能力を発揮することはできても、ゼロから自分で仕組みをつくりあげることができなかったりする。何もないところから新たに仕組みをつくっていくことなど、ベンチャー企業では必須の能力と思われるから、「採用満足度3割以下」というのも頷ける。それができる人材は、大企業も簡単には手放さない。
ベンチャー経営者は、人材が「いなければいないなりに何とかする」という。採用期待ハズレ組なら恐らく、(仕組みなどが)ないことに不平不満をいう。
 これが経営者とサラリーマンとの大きな違いだろう。当事者意識の差だ。このような経営者からみれば、中途採用者に対して「何のために転職してきたのか分からない」と感じるのは当然だと思う。もっとも、「何のために転職してきたのか分からない」と言う前に、「何のために採用したのか」を本人にキチンと伝えておくことは必要だろう。それをしていないのだろうか。採用満足度が3割以下というのも、本当に仕事上の要求をシビアにした上でのことなのかどうか、気になる。「成長や成功への執着が少ない」ことが一概に悪いとは言わないが、人材の育成に関しても、執着(執念)がないことが、採用満足度の低さの一因となってはいないか、考える必要があろう。
 中途採用者は即戦力人材であることが期待されるとは言え、事業の理念や仕事への取り組み姿勢など、教育すべきことは多いはずだ。育てる努力をせず、すぐに能力不足と決めつけてしまうのは、人材不足(質の低さ)を嘆く企業の特徴でもある。ベンチャー経営者と転職者との意識の違い、執着の薄い経営者の人材に対する考え方、といった要素が、今回の記事の調査結果につながっているように思う。経営者の姿勢と人材能力についての見方は、決して無関係ではない。

      管理職、7人で評価  日経新聞 01.5.29 11面

 松下電器産業グループは2001年度から、管理職の能力や仕事ぶりを上司や部下など七人で評価する制度を導入した。上司以外の意見を取り入れることで評価の偏りを防ぎ、従業員の能力や顧客満足度の向上につなげる。産業界ではこうした多面的評価制度を「360度評価」と呼び、アパレルのワールドや大和証券など採用する企業が出始めている。松下グループは年功序列色が強かった評価制度を刷新し、企業活力を高めたい考え。新制度「マルチ・アセスメント・プログラム」を導入したのは松下電器のほか、松下本体と同じ内容の労使協定を結んでいる松下通信工業、松下電池工業、松下電子部品、松下産業機器。管理職に相当する参事、副参事と主事の一部などが評価の対象。対象者はグループ全体で約11000人。評価対象の管理職は年末に、社内のイントラネットを使って自分の上司以外で日常業務に関連がある上位者2人、社内資格が本人と同水準の2人、部下2人を「評価者」に指名し、了解を得る。翌春に上司が管理職の年間評価を決めるのと並行し、指名された6人は項目別に本人を5段階で評価、結果を本人とその上司にネット上で伝える。
 評価の項目は「顧客志向」「スピード志向」「柔軟性・多様性」「自発性」「目的志向」「相互協力志向」など。本人の仕事ぶりなどを自由に記述できる欄も設ける。初年度は上司以外の評価は参考情報にとどめるが、新制度が軌道に乗った段階で賃金や処遇に反映させることも検討する。

   コメントー評価は意思決定のプロセスに過ぎない

 いかにして評価を公正・適正に行なうか、企業としては真剣に考える必要のある問題だ。それができていないと、士気を低下させたり、優秀な人材を失うことになる。今回の記事は、いわゆる「360度評価」について。確かに、評価の偏りを防ぐという点では有効だろう。上司が部下を評価するのは当たり前のことだが、現実問題として、すべての上司に十分かつ正当な評価をする能力が備わっているとは限らない。社員から見れば、たまたま上司になった人物が自分の能力を正当に評価することをせず、冷遇されているとしたら、たまったものではない。360度評価は、そのリスクを軽減するだろう。 
 どのような評価制度にも一長一短がある。しかし物の考え方としては、複数の視点から物事を評価してみることは大切だろう。人材の評価ばかりではない。新事業や新商品のアイデアを評価する上でも、複数の視点からそれを行なうことが必要だ。特に、今回の記事にあるような、数量化しにくい「定性的」な評価をしなければならない場合はなおさらだ。

 それでも、「誰の目から見ても明らか」という結論を導き出すことは必ずしも容易ではない。複数の視点から評価すると、かえって結論を出すのに迷いを生じさせることになる可能性も高い。だから、意思決定者たるリーダーが必要となる。複数の視点からの評価も含め、さまざまな情報を収集した上で、右か左かを、自らの責任で決めるのがリーダーだ。 

        中古品売買や修理ビジネス 積極出店へ   日経新聞 01.5.30 3面

 家電リサイクル法施行を機に活発になってきたのが、家電量販店などによる中古品売買や修理ビジネス。中古品を買い取ることで、消費者がリサイクル料の負担をなくせることに着目。故障の際、修理して長く使おうと考える消費者意識の高まりにも対応する動きだ。家電量販店「100満ボルト」を展開する3Qグループ(福井市、柴田清一郎代表)は、現在約70店ある修理専門店「ミスター・コンセント」を5年間で500店に拡大する。首都圏を中心に地場の家電量販店などと組み、積極展開する。同社では「家電リサイクル法が施行された4月以降、テレビなどの修理の問い合わせが目立って増えている」という。
 一方、中古家電販売店をフランチャイズチェーン(FC)展開するハードオフコーポレーションには、ここにきてFC加盟の申し込みが相次ぎ、「10件に9件は断っている」状況。テレビやパソコンの中古品を扱う「ハードオフ」を3月末の166店から今年度末210店に、冷蔵庫など白物家電や家具を扱う「オフハウス」を56店から82店に増やす計画だ。同社は家電リサイクル法の施行を機に、中古品の買い取り・販売基準を明確化した。例えば製造後5年以内のテレビは製品の状況を見て買い取ったうえで、3−12カ月の品質保証を付けて販売する。8年以上の製品は買い取らない。こうした動きをにらみ、大手の家電量販店も修理や中古品売買に乗り出してきた。
 デオデオは6月中旬、広島市の本店近くに修理専門店を開く。同社は「10万円を超える白物家電やテレビなどを中心に、修理のニーズが増える」と判断している。
 ベスト電器では5店舗に中古品売買コーナーを試験的に設けたところ「商品の確保が追いつかない状況」。今後、商品確保の体制を整えた上で、取り扱い店舗を広げていく方針だ。

     コメントー 回転を促す仕組みをつくる

 中古書店チェーンのブックオフの台頭等のせいもあるだろうが、サイクルビジネスへの注目は高まっている。今回の記事にあるように、リサイクル法の施行も追い風となっている。これほどまでに中古品を扱う店が増えていくと、新品の販売が脅かされるのではないかという懸念を示す人がいる。しかし、新品なしに中古品は存在し得ないのだから、それは無用な心配だろう。新品と中古品とでは、うまくすみわけがなされるというのが大方の意見のようだ。むしろ、中古品の市場が確立されることが新品市場をも活性化させるだろう。すみわけというより、相互依存の関係ができる。

 現実に、自動車の市場ではそのような現象がみられる。中古車市場が確立していることが、新車の販売促進上、極めて重要だ。中古車がそこそこ高く売れるから、どんどん新車を買い換えることが可能になる。もし中古車市場が確立していなければ、新車を買ったら最後、廃車にするまで乗り続けなければならなくなる。中古車流通市場がなければ、すべての人が新車を買わなければならなくなるが、新車の買い替えサイクルは長くなる。自動車メーカにとって、どちらが得だろうか。中古車市場の存在は、新車を買う経済的余裕のない層にとってはありがたい。車の普及率の向上に大きな役割を果たしていると考えられる。普及率が向上することは車全体の市場規模を拡大することになる。自動車メーカの収益にプラスに働いてきたはずだ。車の顧客のほとんどは生まれて初めて車を買う人ではなく、買い換える人たちだ。だから、車のディーラーが新車販売を促進するためには、一方で、中古車を買い取り、販売する仕組みを持っておくことが必要となる。

 経営の世界では、在庫や来客など、「回転率」が高いほど収益性が向上するというのが原則だ。回転を促す仕組みをつくれば、市場規模やビジネスチャンスは拡大すると考えてよい。

        価格下げへ改善余地   日本経済 2001.5.31 11面

 “特注文化”が日本の物価を高くしている」というミスミの田口弘社長。国内メーカーの製品は特別注文の部品に頼りすぎていると批判する。「市販品を使うほうが安いのに、わざわざ図面を起こして作る部品が多すぎる」。背景には製品価格よりも自分たちの扱いやすさ、手配のしやすさを優先する「供給者の論理」があるとみる。金型部品などの通信販売を手がけていて感じるのは、納品伝票の書式が「メーカーごとに違うのはもちろん、同じ会社なのに工場ごとに違うケースすらある」。消費者本位の視点に立てば、価格の引き下げにむけて企業が改善できる点はまだまだあると言いたげだった。

     コメントー パートナーシップを築いてコストダウンする

 「特注文化」とはうまい表現だと思う。特注品は、量産品とは対照的な独特の市場を形成している。特注品の製造に特化して独自の地位を築いている企業、特に中小企業は多い。特注品は手間がかかり、高くつく。それが部品のみならず、最終製品の価格に反映される。記事の指摘にあるように、確かに消費者本位の視点に立っていないのかも知れないが、それが上述のような中小企業の収益を支えているとも言える。顧客密着や小回りが必要となる特注品は、中小企業が活躍できる分野だ。

 売り手からみれば、買い手にこうしてもらえればもっと安くできると思っていても、総額としての粗利益高が減ってしまうようであれば、コストダウン要求へのカウンターオファーでもない限り、わざわざ提案はしないものだ。寝た子を起こすようなマネはしない。その提案が自社にとってのコストダウンになるとしても、下手に切り出して売価を下げるように要求されてはたまらない。しかし、買い手への販売価格が下がれば最終製品の価格が下がり、需要を拡大することができる。だから、コストダウン提案は売り手にもメリットがある。本来なら、そのような関係を目指したいところだ。今回の記事でミスミの田口社長が言及している「改善できる点」には、そのような企業間関係を築いていくことも含むだろう。