日経の記事 経営戦略 NO1 2001・5・1〜
再編より技術革新 日経01・04・27 13面
中外製薬の長山治社長は「M&A(企業の合併・買収)に成功すれば勝ち残れるというのは大学生レベルの議論だ」と語る。
製薬業界では欧米勢が合併を重ねて巨大化しているが、同社は「小さくとも得意領域を絞り込みそこで必要な規模を確保していく」再編より重要なのは技術革新という。「全く新しい技術を他社開発すれば、当社の設備が持つ価値が一夜でゼロになりかねない」。よって、開発力を磨くだけでなく「臨機応変に他社の新技術を取り入れた設備や体制に切り替えるため、資金を常に用意しなければ」と財務体質の重要性を強調していた。
コメント − チャンスを生かせないというリスク
M&Aで規模の拡大を追求する企業もあれば、得意領域を絞り込んでいく企業もある。戦略の選択肢はさまざまだが、「価値が一夜でゼロになりかねない」という危機意識は常に必要だ。今回の記事で、中外製薬の永山社長は財務体質の重要性を強調している。その理由のキーワードは「臨機応変」だ。いざっていう時の自社にとって直接的に脅威となることばかりがリスクなのではない。せっかくの機会をモノにすることができないというリスクもある。不測の事態はその両面で考えておくのがよい。
継続は悪、果敢に見直し 日本経済新聞 2001.5.11 1面
スズキの鈴木修会長は工場に行くと、プロ野球の打撃コーチさながら身ぶりを交えて従業員を指導する。「部品の棚をこっちに置けば、こんなに腰をひねらなくても部品が取れる」。さらに「窓を付ければこの蛍光灯は不要」など、コスト削減を陣頭指揮する。<付加価値最大に>最近は工場の食堂も点検する。「人員を合理化したと報告が来るが、作業を協力会社に移しただけかもしれない。食堂は協力会社の従業員も利用するから、ここに聞けば本当にコストを減らせたのかわかる」
対照的なのがコネクター専業メーカー、ヒロセ電機の酒井秀樹会長だ。「工場視察は行き帰りの時間が無駄。部屋で事業戦略を練った方がよほど有益」と現場主義を切り捨てる。毎日午後1時過ぎから3−4時まで、製品の売り上げ、利益率の推移などに目を通し、数字を追いながら有望な製品分野やコネクター以外の新事業を探る。
両極端に見える二人だが、共通点が二つある。まず、いつも考えているのは「経営資源を最も効率的に使い、最大の付加価値を生むこと」。企業の目的を語る二人の表現はまったく同じだ。ヒロセ電機の連結売上高営業利益率が2000年3月期に33.4%と高く、自動車業界でスズキの業績が順調なのは、こうした経営哲学が源にある。
酒井会長の理念は「企業を付加価値を生み出すものだけで構成する」。競争力ある新製品開発に人材を重点配置する姿勢は群を抜く。生産の八割は外部委託し、600人の社員のうち技術陣の比率は40%強に達する。営業社員には全員にアシスタントをつけて事務作業を任せる。
<すたれる仕組み>鈴木会長の発想も単なるコスト減らしではなく、戦略的だ。工場で一番目を光らせるのは従業員の歩数。「歩くこと自体はなんら価値を生まない」。膨大な歩く時間を別の仕事に振り向け、もっと利益を生もうと模索する。2002年には湖西工場(静岡県湖西市)の組み立てラインを低公害車生産に対応できるよう刷新する。投資額は150億円。スズキとしては大型投資だ。
そして二つ目は、二人の根っこにある「継続は悪」という信念だ。付加価値を生む仕組みをいったん作ってもすたれるのは早い。同じことを漫然と続けては衰退する。企業が常に価値を創出する組織であるように、絶えず改革を続ける。
コメント − 目的は何ですか
今回の記事の例で言えば、スズキの鈴木会長のように現場を点検して回ることも、ヒロセ電機の酒井会長のように数値資料に詳細に目を通すことも、「最大の付加価値を生む」という「目的」を果たすための手段に過ぎない。両会長共、「最大の付加価値を生む」ために、現在のやり方よりも良い方法があると判断すれば、ためらうことなく経営スタイルを変えることだろう。
なぜあなたはその手段を選ぶのだろうか。その「目的」は明確だろうか。「目的」を常に自問自答し、「目的」志向の行動を習慣化しよう。
フィットネスクラブ各社 有料プログラム拡充 日経新聞 01.5.14 19面
フィットネスクラブ各社が月会費とは別に、一回500〜2000円程度の有料プログラムを相次ぎ導入している。ダイエットや生活習慣病予防などのテーマに沿ってよりきめ細かく指導する。各種ダンスや空手など特殊な技能を習得したり、少人数でより専門的なトレーニングを施すメニューも目立つ。多様化する個人会員のニーズを満たし、付帯収入を増やす狙い。
日本体育施設運営(東京・千代田、NAS)では、昨春に全体の約一割だった有料プログラムが現在は約三割を占める。 ディックルネサンス(東京・墨田)は一月から主要店の一つ、ルネサンス住道(大阪府大東市)で実験的に有料プログラムを提供、本格導入へ向けて会員の反応を調べ始めた。フィットネスクラブ各社は利用時間を限定する分、月会費を安く抑えた「限定会員」を多く設定し、会員数を増やしてきた。しかし設備に限りがあるなかで「時間の切り売りも限界に達している」(セントラルスポーツ)といい、この先、会員数や収益を伸ばしにくい事情があった。また、企業が福利厚生コストを圧縮するなかで、法人会員数は低迷。特色のあるメニューづくりで個人会員をつなぎ止める必要に迫られるなど、フィットネスクラブを取り巻く経営環境の変化も有料プログラム拡充の背景にありそうだ。
コメント − 軸足を移動させると発展性が広がる
収益拡大のためにサービスを拡充していくという手法はしばしば使われる。
記事は、フィットネスクラブが有料プログラムを拡充しているというものだ。この有料プログラムは、会員から会費(本質は施設使用料)以外の追加収益を獲得する手段として位置付けることができる。その場合、収益の柱はあくまでも施設使用料であり、軸足はそこにある。既存事業の継続を前提としたプラスアルファ売上追求型の発想だ。会員に売れるものがあれば、フィットネスに無関係なものでもよいかも知れない。
一方、自社が会員に提供するフィットネスという価値を最大化するためには、自分自身のフィットネスを実現することだ。それは、「いかにして施設からの収益を拡大するか」ではなく、「いかなる企業になるべきか」という本質的な命題に取り組むことを意味する。将来的には施設の所有にすらこだわらなくてよくなるかも知れない。
過去からの延長にとらわれず、むしろ現状を否定し、生まれ変わることをビジョンとして考えている。ビジネスとしての「発展性」も、後者の方がはるかに大きく広がるだろう。同じことをやるにしても、軸足を移して事業の再定義を行なうことまで念頭に入れれば、ビジネスの発展性は拡大する。
「データ知らないこと」 日経新聞 01.5.17 37面
米大リーグ、マリナーズのイチローは十五日、当地のホワイトソックス戦で2安打を放ち、連続試合安打を今季大リーグ最長の「20」に伸ばした。イチローはこの日は5打数2安打1打点、打率はリーグ3位の3割6分2厘。試合はマリナーズが4―3で勝ち、佐々木の登板はなかった。メッツの新庄はパドレス戦で3打数2安打。メッツ1―0の勝利に貢献した。
クルーズ(ブルージェイズ)を抜いて今季の最長連続試合安打記録を更新したイチローだが、「そんなことは(他人に)知らされないと知らないこと」と相変わらずクールな受け答え。第4打席では、一時勝ち越しとなる中前適時打も放ち、得点圏打
率は両リーグを通じて断トツの5割6分3厘。その秘けつを聞かれ「そういうこと(得点圏に強いデータ)を知らないこと。そんなことをいちいち気にしてプレーできない」。周囲の過熱ぶりとは無縁の集中力が、イチローの大きな長所だ。
コメント − 結果を出すためにプロセスに集中する
企業経営について考えてみると、業績成果としての数字は非常に気になるところだ。予算は努力目標ではなく、必達数字と考えるべし。予算を達成することは、企業が存続し、ビジョンを実現するために求められるというのは確かだ。現実問題として、設定された予算数字自体が妥当なものかと言えば、かなり怪しい。
特に、新規事業の立ち上げにあたっては、過去の実績データがなく、すべてが仮説だらけとなる。そのような場合は、結果を追い求めるより、正しいプロセスを踏み、仮説をキチンと検証していくことが重要だ。戦略や根拠もなく、いい加減に(たいていの場合、高く)設定された予算を何としても達成しようとすれば、無茶な営業をするという危険性もある。
マネジメントできるのは、結果を出すためのプロセスだけだ。となれば、実行段階では、結果ではなくプロセスに気持ちを集中させる必要がある。イチローの言葉は、結果を出すことが重要なプロの世界とは言え、選手として本当に気持ちを集中させるべき対象は何なのかを教えてくれているように思う。大きなビジョンを描き、高い目標を持つのは良い。しかしそれを実現するためには、プロセスを着実にこなすことが必要だ。ビジョン・目標に心を奪われ、プロセスをおろそかにしてはならない。
社内りん議 3日以内 日経新聞 01.5.21 13面
大和ハウス工業は平均10日前後かかっていた社内りん議の決裁を3日以内に短縮する。イントラネットによる電子りん議に切り替えることで実現する。住宅大手ですべてのりん議の決裁期間を3日以内にするのは珍しい。分譲事業用地を購入する場合などで意思決定を早め、1−2日でりん議を通す新興のマンション会社などに対抗する。同社のりん議件数は分譲マンションなどに利用する土地購入が4割弱、分譲住宅建設が約2割の順で多い。分譲事業の成否は物件の立地で決まる面が大きい。迅速な意思決定で良い物件の確保を目指す。
コメントー 大幅な改善は競争優位性を確保してこそ
ITという言葉が頻繁に使われるようになったのは比較的最近のことだ。社内業務にコンピュータを導入するのはかなり以前からだが、当時はOA化と呼ばれていた。OAとITとの決定的な違いは、前者の観点が「省力化」であり、後者のそれが「競争力強化」にあるということだ。成熟経済の時代を迎え、戦略の重要性がますます高まっている中、既存の業務をいかに低コストでやるかという発想ではなく、競争力を強化するために、業務をどのように改革するか、という発想が求められるようになっている。
住宅分譲事業の競争力強化を考え、その阻害要因が稟議による決裁期間が長過ぎることであると突き止め、その解決のために電子稟議システムの導入を決定する。それが論理の道筋であるべきだ。省力化という観点からこの記事を眺めると、以前は10日前後かかっていたものが3日以内になるのだから、これはすばらしい進歩だといえる。
一方、競争力強化という観点からすれば、新興のマンション会社が1−2日で稟議を通すのなら、なぜ大和ハウスは3日でよいのか、と突っ込みを入れたくなる。情報量等の差で新興ライバルにはハンデがあるから3日で十分なのか、1−2日と3日との差は競争上、たいした差ではないのか、それとも、単にシステム的に3日が限界だからそうしたのだろうか。自社の競争力を考える場合、常にライバルとの比較で考える必要がある。稟議にかかる日数だけが勝敗を分ける要因ではないが、それも含め、大和ハウスの社内で事業競争力強化のためにどのような議論がなされているのか、気になるところだ。
旅客需要予測 国交省に改善勧告 日経新聞 01.5.24 13面
総務省は23日、滑走路延長などの空港整備で、事前の旅客需要予測が過大に見積もられ、不必要な事業が進められているとして、需要予測の算出法改善などを国土交通省に勧告すると発表した。空港整備を巡っては、航空機燃料税などを財源とする空港整備特別会計の硬直的な運用が問題になっており、総務省は特別会計の中で未利用のまま放置されている国有資産の処分促進も求めた。1988−99年度に整備した15空港を調査したところ、9空港の旅客者数が当初の予測値を下回り、そのうち4空港は予測値の半分以下だった。そのうえ各空港での算出の前提や手法、調査期間がばらばらなため、路線によっては出発地と終着地で同一路線の利用者数の予測値が倍近く離れているケースもあった。
鉄道などの競合交通機関と空港のどちらを選択するかも予測値の算出には重要だが、空港に近い都市部の住民だけを調査対象にしたため、空港を選択する人が多くなっている場合もあった。一方で近隣空港との競合を考慮に入れて、予測値を算出した例は無かった。総務省は、整備を決定する客観的な判断材料として国交省が提示している費用対効果の分析手法も不十分と判断している。同手法では完成業務や気象状況の把握など、空港に不可欠な業務に関する費用を計上する必要がない。相対的に費用より効果が多くなり、整備推進に有利な材料となっていた。
コメント‐「はじめに結論ありき」を排除する
今回の記事で総務省が国交省に指摘している事項は、通常の企業の事業計画にもしばしばみられる問題点だ。「出発地と終着地で同一路線の利用者数の予測値が倍近く離れているケース」があったという。計画として数値が整合していないというのは検討以前の問題だ。これはちょっとお粗末。代替交通機関や近隣空港との競合を考えていないのも問題だ。新規事業計画を立てる上では、市場のニーズ分析と規模推定をすると共に、競合環境を分析し、どうすれば優位性を確保できるかを考える必要がある。無人の野を行くが如き計画には戦略の視点がない。
「空港に不可欠な業務に関する費用を計上する」こともしていないという。現実に事業をスタートしようというのなら、シミュレーションは不可欠だ。何にどれくらいの費用がかかるのか、出来る限り具体的にイメージする必要がある。計画策定能力とはイマジネーション能力だと言ってもよい。央省庁の官僚という、日本で最も頭が良いとされる人たちが予測をしているはずなのだが、なぜこのようなことになってしまうのだろうか。考えられる理由の一つは、初めから結論が決まっていることだ。
調査の目的は、空港整備の適否を判断するためではなく、それを正当化するための補強材料として使うためと考えられる。
事業計画についても、当事者自身が事業アイデアを検証し、やるかやらないかの意思決定の材料にするためのものと、他からの投資を勧誘するためのものとがある。後者は眉に唾して検討する必要がある。その場合も、需要(売上)予測が甘いケースがほとんどだ。
では、いかにして客観性を確保するか。その解決策の一つは、事業を選択肢の中から選ぶことだ。候補として同等の可能性があると思われる複数の選択肢を持ち、その中から選ぶ。一つの選択肢しか見えない状況では、視野が狭くなり、正しい判断が損なわれる。しかし、ある程度の基準を満たし、同等の成功の可能性があると思われる選択肢が複数あれば、「はじめに結論ありき」状況を排除することになり、おかしな意思決定をするリスクはかなり回避できる。
中古品売買や修理ビジネス 積極出店へ 日経新聞 01.5.30 3面
家電リサイクル法施行を機に活発になってきたのが、家電量販店などによる中古品売買や修理ビジネス。中古品を買い取ることで、消費者がリサイクル料の負担をなくせることに着目。故障の際、修理して長く使おうと考える消費者意識の高まりにも対応する動きだ。家電量販店「100満ボルト」を展開する3Qグループ(福井市、柴田清一郎代表)は、現在約70店ある修理専門店「ミスター・コンセント」を5年間で500店に拡大する。首都圏を中心に地場の家電量販店などと組み、積極展開する。同社では「家電リサイクル法が施行された4月以降、テレビなどの修理の問い合わせが目立って増えている」という。
一方、中古家電販売店をフランチャイズチェーン(FC)展開するハードオフコーポレーションには、ここにきてFC加盟の申し込みが相次ぎ、「10件に9件は断っている」状況。テレビやパソコンの中古品を扱う「ハードオフ」を3月末の166店から今年度末210店に、冷蔵庫など白物家電や家具を扱う「オフハウス」を56店から82店に増やす計画だ。同社は家電リサイクル法の施行を機に、中古品の買い取り・販売基準を明確化した。例えば製造後5年以内のテレビは製品の状況を見て買い取ったうえで、3−12カ月の品質保証を付けて販売する。8年以上の製品は買い取らない。こうした動きをにらみ、大手の家電量販店も修理や中古品売買に乗り出してきた。
デオデオは6月中旬、広島市の本店近くに修理専門店を開く。同社は「10万円を超える白物家電やテレビなどを中心に、修理のニーズが増える」と判断している。
ベスト電器では5店舗に中古品売買コーナーを試験的に設けたところ「商品の確保が追いつかない状況」。今後、商品確保の体制を整えた上で、取り扱い店舗を広げていく方針だ。
コメントー 回転を促す仕組みをつくる
中古書店チェーンのブックオフの台頭等のせいもあるだろうが、サイクルビジネスへの注目は高まっている。今回の記事にあるように、リサイクル法の施行も追い風となっている。これほどまでに中古品を扱う店が増えていくと、新品の販売が脅かされるのではないかという懸念を示す人がいる。しかし、新品なしに中古品は存在し得ないのだから、それは無用な心配だろう。新品と中古品とでは、うまくすみわけがなされるというのが大方の意見のようだ。むしろ、中古品の市場が確立されることが新品市場をも活性化させるだろう。すみわけというより、相互依存の関係ができる。
現実に、自動車の市場ではそのような現象がみられる。中古車市場が確立していることが、新車の販売促進上、極めて重要だ。中古車がそこそこ高く売れるから、どんどん新車を買い換えることが可能になる。もし中古車市場が確立していなければ、新車を買ったら最後、廃車にするまで乗り続けなければならなくなる。中古車流通市場がなければ、すべての人が新車を買わなければならなくなるが、新車の買い替えサイクルは長くなる。自動車メーカにとって、どちらが得だろうか。中古車市場の存在は、新車を買う経済的余裕のない層にとってはありがたい。車の普及率の向上に大きな役割を果たしていると考えられる。普及率が向上することは車全体の市場規模を拡大することになる。自動車メーカの収益にプラスに働いてきたはずだ。車の顧客のほとんどは生まれて初めて車を買う人ではなく、買い換える人たちだ。だから、車のディーラーが新車販売を促進するためには、一方で、中古車を買い取り、販売する仕組みを持っておくことが必要となる。
経営の世界では、在庫や来客など、「回転率」が高いほど収益性が向上するというのが原則だ。回転を促す仕組みをつくれば、市場規模やビジネスチャンスは拡大すると考えてよい。