日経の記事 組織論など No1
2001・05・01〜
ネット利用の社員研修 進行状況、常に管理 経済新聞 01.5.2 12面
日本電信電話(NTT)グループの地域通信会社のNTT東日本は今年度から、インターネットを利用した新しい社員研修システムを導入した。「メンター」と呼ばれる社員が、受講者一人一人の学習状況をリアルタイムで管理するシステムで国内では珍しいという。本社や支店など77拠点に学習スペースを設置しており、年間2千人以上の社員対象に実施する。新システム「MINE」はネット利用の教育・研修システムであるeラーニングの一種。昨年夏からの試験期間を経て、今年4月に本格導入した。営業、設備、総務系などの若手、中堅社員を対象に、最長2日間の研修を実施。1クラスの受講者は約30人。本社の研修センターと支店などに分散する受講者をネットで結んで実施する。新システムでは1クラス当たり2人のメンターがパソコンを通じて受講者の進ちょく度合いを管理し、質問にも即座にこたえられるようにした。年間80クラスの開設を予定している。同社にはeラーニングを使った従来型の研修制度がある。ただ受講者側には途中で行き詰まった場合に自分で解決できずに、挫折してしまうケースが少なくなかったという。
コメント − 尻叩き役がいないと挫折する
企業組織も人の集まりである以上、誰かが尻を叩く、あるいは音頭をとる必要がある。経営計画を立てても思うように進捗しないという悩みはよく聞かされるが、その大きな原因の一つが、尻叩き役が不在であったり機能していなかったりすることだ。経営計画を立て、それを各部門・部署に落とし込めば無事進捗するものと考えがちだが、現実はなかなかそうは行かない。
今回の記事と同様、進捗させる尻叩き役が必要だ。ある中小企業では、「経営企画室長」がその役割を担う。企業の全責任を負うのは社長だから、経営計画の進捗についても社長が尻を叩けばよいと考えるかも知れない。しかし社長はむしろ社外との接触を増し、今後の戦略方針を打ち出すことに重きを置くべきだ。社内の計画推進に多くのエネルギーを割いているようでは困る。だから、社長の右腕クラスの経営企画室長が必要だ。決まった事を決まった通りに、自己を管理しながらやる。簡単なようで難しいことだ。組織にも人間にも、尻叩き役が必要なのだ。
物事の進捗がうまくいかないとすれば、その理由は尻叩き役がいないからかも知れない。決めさえすれば物事はスムーズに行くとは考えない方がよい。
社員の主体性、富を生むみなもと 日本経済新聞 2001.5.9 1面
【コミットメント】達成すべき目標。…未達成の場合は具体的な形で責任をとる。【ターゲット】コミットする目標よりさらに高い目標。
「日産用語辞典」 日産自動車にはカルロス・ゴーン社長の指示で作られた「用語辞典」がある。会社再建に欠かせない約40語の定義が社内の情報ネットに流れる。新型車が不発でも技術部門、営業部門が責任を押しつけ合い、だれも責任をとらない。そんな体質の打破のためゴーン氏が重視するのがコミットメントとターゲットだ。
日産の従業員は目標達成度で報酬や処遇が決まるが、ゴーン氏の狙いは従業員を追いつめることではない。能力の発掘だ。「商品企画のプロになる」「新しい宣伝に挑戦する」。目標を定め自らの責任と正面から向き合うことで、従業員には能動的に仕事にかかわる意識が芽生えてきた。
ヤマトは我なり――。ヤマト運輸の社訓には、顧客と直接、接するドライバー一人ひとりが会社を代表するとの哲学が埋め込まれている。各従業員がサービスを通じて日々自分なりの「ヤマト運輸」を探り、実感する。その手ごたえが個人の能力を呼び覚ます。「絵画や彫刻を運ぶノウハウを生かしてお仏壇の運送や、企業の精密機械の入れ替えを始めました」(大阪の美術品営業所)。社内報には独自に編み出した事業を誇らしげに語る全国の拠点からの便りが並ぶ。スキー宅急便や時間帯指定など、成長を支える高付加価値サービスは、多くが現場の提案で生まれた。3万5千人のドライバーはすべて社員。営業費用に占める人件費比率は約55%で、30%程度の日本通運などに比べ突出する。だが、前期の売上高営業利益率(推定)は日通の1.8%に対しヤマトは5.6%と収益力は群を抜く。
コメント − 組織における人間観の変化
企業組織のあり方は、社員の主体性を生かし、最大限の能力発揮を促すものへと進化していくだろう。もしヤマト運輸が、上意下達的な組織運営をしていたら、これほどの高収益は実現できなかったはずだ。そもそも組織が形成されたのは、指示・命令の効率的な伝達や組織目的の達成へ向けての役割を分担するためであった。組織を構成する「部分」としての人間観に基づいている。しかし「ヤマトは我なり」という言葉は、人間は「部分」ではなく、組織「全体」の縮小版だとでもいうべき考え方になる。指示命令の受身的な実行者から能動的で主体的な行動者へ、また、部分ではなく全体を体現する存在(組織理念の具現者)へ、といった人間観が、企業組織のあり方をも変革していくのだろう。
あなたの企業ではどのような人間観に基づいて社員を処遇しているだろうか。そのやり方で、能動的・主体的な行動のできる社員や、企業理念を具現化している社員を抱えた企業に勝てるだろうか。
実力主義で戦力確保 日経新聞 2001.5.15 1面
ライバル企業の仕事を請け負っても構わない――。日本IBMは来年にも就業規則にある兼職禁止規定を見直し、二万人強の全社員に「二足のわらじ」を認める。社員が他社の仕事に就くのを禁じた兼職禁止規定は日本企業の間で一般的。同社が原則自由に改めると先駆的な事例となる。
<複数企業で仕事>情報技術(IT)産業を中心に、自分の腕を頼りに独り立ちして複数企業の仕事を受け高収入を得る技術者も多い。「優秀な人材ほど活躍の舞台を外に求め、当社に縛りつけようとすると辞めてしまう。兼職を認めて自由度を広げた方が流出を防げる」(人事部門)と発想を転換する。
コメント − 自己実現
経営環境が厳しい中、年収が減額されたり、リストラや倒産の不安を抱えていたりすれば、何らかの生活防衛策を講じなければならない。一つの会社に依存した人生から、自立した人生へとシフトすることも考える必要があろう。今回の記事によれば、日本IBMは兼職禁止規定を見直すとのことだ。「二足のわらじ」も認めるという。会社に既に勤務時間を拘束されているとしたら、それ以外の時間については自由に使わせるのが筋というものだろう。
日本企業では、他社の仕事に就くのを禁じているのが一般的だ。ならば、自分で事業を起こすのならよい、という理屈になる。世の中、ベンチャー起業がもてはやされているが、実際に会社を飛び出して起業しているのはほんの一握りの人たちに過ぎない。成功者はさらに少ない。収入のことを考え、ましてや養うべき家族を抱えていれば、それは大変勇気のいることだ。
経営環境が厳しくなる中、社内でしか通用しない人材ばかりで構成された企業は絶対に生き残れない。それでも、企業は企業としていろいろと手を打っていくだろう。問題は個人だ。「社内でしか通用しない」かどうか、自己の存在価値を確かめてみてはどうだろうか。
JTB 「三世代割引」を強化 日経産業新聞 2001.5.18
JTBは国内旅行向けの「三世代割引」を強化する。例年、秋から春にかけて4−6の宿泊施設を対象にしていた割引を今年は夏休み向けにも実施、対象の宿泊施設も21に増やす。エリアもこれまで多かった関東周辺だけでなく、静岡、新潟などに広げる。ここ数年、世代を超えた家族ぐるみの旅行が増えているのに対応する。同社の国内旅行向け「三世代割引」は、親、子供、孫の三世代そろって宿泊を申し込んだ場合、孫の料金を大人(親、子供)の10%の水準に引き下げるもの。通常なら孫の料金は大人の50−70%の水準にとどまるといい、割安さをアピールできる。
対象の宿舎施設はこれまで、湯河原温泉(神奈川県)や水上温泉(群馬県)など関東周辺の施設が多かったが、今回の夏休み向けから熱海温泉・大月ホテル(静岡県)、越後湯沢温泉・湯沢ニューオータニホテル(新潟県)などを追加し、合計21施設に増やした。対象期間は7月14日から9月2日まで。
三世代旅行の需要は拡大している。レジャー消費のけん引役として高齢者が若い女性に代わって台頭。離れて暮らす孫と触れ合いの場を持ちたいというニーズも高い。JTBによると、2000年の同商品の売り上げは前年比5割増。今年も「二ケタ増は見込める」(JTB)という。
コメント − 二重、三重に商品の魅力を訴求する
モノがあり余っている今の世の中だ。価格を下げても、消費者が見向きもしないというのはよくある。商品自体に魅力があり、もう少し安ければ買いたい、と消費者が感じていなければ、割引作戦も成功しない。また、それ以前に、割引価格がまったくインセンティブになっていない場合もある。例えば小売店で時々、レジで2割引します、といったサービスが謳われていることがある。割引してくれるからその商品を買うという意識を持ってレジに向かう消費者はどれだけいるだろうか。レジに行ったら割引してくれると言われ、少し得した気分になることはあるだろうが、購買のインセンティブとしては機能していない。
販売で差別化に成功するには、商品の魅力が一つだけでは物足りない。価格を含め、少なくとも二つ、三つとメリットを訴えてはじめて、買い手の心が大きく動き、購買行動につながると考えておいた方がよいだろう。あなたの扱う商品について、他社商品との差別化ポイントはいくつあるだろうか。
クボタが中期計画 海外農機など重点 日経産業 2001.5.25 17面
クボタは24日、2004年3月期までの3年間の中期経営計画を発表した。海外での農業機械、環境など成長が期待できる分野に重点的に投資するほか新規事業を育成し、最終年度に連結ベースで売上高1兆1千億円(2001年3月期は9945億円)、純利益340億円(同98億円)を目指す。
事業を国内農業機械などシェアがトップの「基幹事業」、市場拡大が期待できる「重点事業」、住宅など「低収益事業」の3つに分類。低収益事業では他社との提携などを含む抜本的な事業再構築に乗り出す。育成する新規事業は環境修復、マイクロガスタービン、燃料電池などで、最終年度に全売上高に占める比率で10%を目指す。業務革新のため、3年間で最高300億円程度を投資して業務用情報システムを構築する。1999年の水道管不当カルテル事件を受け再発防止などのため、「コンプライアンス(法令順守)本部」を設置する。
コメントー 中期経営計画の基本テーマは事業構造の改革
今回の記事で紹介されているクボタの中期経営計画の概要は、基本を押さえた一つのモデルケースとみることができる。最近の中期経営計画は、期間設定を3年としているものが一般的だ。中期でなく短期の計画は何かと言えば、それは年度経営計画であり、期間は1年だ。1年の計画だけではなく、なぜ3年間の計画を立てる必要があるのか。本質は、事業構造を変える目標を立て、それを実現するには、3年間程度の時間がかかるからだ。
戦略策定の着地点は、つまるところ、どのような事業構造を選択するかに尽きる。選択をするためのツールや判断基準として様々な分析手法があるが、結局は新たな事業構造の選択、すなわち、現在の事業構造を改革するために使われる。だから、中期計画は戦略計画ということになる。
1年単位の計画で考えると、既存事業のそれぞれについて、前年対比で売上をいくら伸ばそうという発想になりがちだ。それぞれの事業でベストを尽くすのもよいが、部分最適は全体最適ではない。しかし3年という中期のスパンでみれば、事業構造が変わったことが一目でみてとれるくらいの変革は起こし得る。中期的に考えるとは、例えば3年後にどのような企業になっていたいのかを考えることだ。企業は事業体なのだから、それはすなわち、どのような事業構造になっていたいか(あるいは、なっていならないか)を考えることになる。そうなれば、全体最適となる事業構造のあり方を実現するために、経営資源をどのように配分すべきかを考えるようになる。1年単位でしか考えていなければ、経営資源の再配分というよりも、微調整といった程度で終わってしまう。
環境の変化に応じて、事業構造も変えていかなければ、企業は成長発展できない。中期経営計画とは、事業構造を改革する計画であり、それはすなわち、成長発展を目指す戦略の着地点とそこへ行くための道筋を示すものなのだ。
人材の流れに変化 執着薄い起業家に引力 日経産業 01.5.28 23面
ニュービジネス協議会(NBC)が、全国の会員企業3800社を対象に実施した「雇用に関するアンケート調査」(有効回答777件)をまとめた。(中略)集計結果から見える問題点は「中途採用人材の質の低さ」「労働力の円滑な移動がない」だという。<採用満足度3割以下>これが目新しい課題ではないことは当のNBCも認めているが、逆に十年一日のごとく、起業を支える根幹であるヒトの問題が過去のベンチャーブーム、情報技術(IT)ブームを経て、なお問われ続けているのが現実だ。終身雇用、年功序列、年金問題などに代表される既存の業界構造が、相変わらずベンチャーへの人材流出を妨げているという。自ら起業塾も主催する志太勤NBC会長(シダックス会長)は「我々のメガネにかなう人材がなかなか見つからない」と嘆く。欲しいのは経営者や役員クラスではなく、営業、開発、技術といった現場の人材で、そこでの話だが、いずれにしても「大企業からは容易に流れてこない」。(中略)アンケートでは、全体の8割の企業が中途採用を実施しており、今後も続けるとしているが、採用した人材への満足度は縁故採用以外は3割以下。「すぐ辞める」「何のために転職してきたのか分からない」「自分の適性を把握していない」など不満の声が多く聞かれた。
<いないなりに対応>人材難問題が日本のベンチャーの育成、成長を妨げているのだろうか、ならば解決策は何だろうか。最近の20−30代の若手ベンチャー経営者に問うてみた。同様の不満が返ってくるのかと思いきや、「起業や日々の仕事に障害を感じたことは別にない」と言うあっさりした答えが返ってきた。あるIT系ベンチャーの社長は「優秀だと思って喜んで採用した人間は、実は個人的な訴訟案件を抱えていたりで、そういう人材しか来ないのかな」と笑って話す。アンケート結果と悩みは同じだが、「人材がいなければいないなりに何とかする」と言う。結局は自分一人で現場を駆け回ることになりがち。それでも平気だという。こうした声は、IT株バブル崩壊をくぐり抜けた最近の若手経営者に多い。彼らが人材難を深刻に感じないように見える理由を考えてみて思い当たったのは、成長や成功への執着が以前の起業家たちよりはるかに少ないことだ。しなやかで、力の抜けた感じ、というとおよそ起業家には似つかわしくない言葉だろうが、そういった形容がふさわしい。
<大成功望まない>彼らは大きな成功を必ずしも望まず、他人に自分の夢への参加を強制もしない。従来のベンチャー経営者は「それでは成長しないではないか」と言うだろうが、当人は気にしていない。
しかも、こうした若手経営者のベンチャーでは、現場の人材不足は同じでも、役員クラスに、大企業や銀行、外資から米有名大学のMBA(経営学修士)取得者や役員経験者らが集まって来ている。「優秀な人材が流動していないなんてことはない」と言い切る経営者もいる。日本のベンチャーは結果的にマイクロソフト、インテル、シスコシステムズなどのような世界的企業をついに生み出せなかった、という議論がある。大半のベンチャーは、技術でもビジネスモデルでも独創性を発揮するに至らず、人材難と将来展望に悩んでいるのが現実だろう。人材不足を嘆かない「新しいベンチャー経営者」が従来型の成功を収めるかどうかは分からないが、これまでとは別の成功への道を開く可能性があるのでは、と期待させる動きである。(竹田聡)
コメントー経営者の姿勢は人材に対する見方に反映する
今回の記事は、ベンチャー企業の人材不足と最近のベンチャー経営者の気質という、二つのテーマをとりあげている。
両テーマがどのように関わっているか、記事とは違う角度で考えてみた。ベンチャーであれ何であれ、企業を支えるだけの能力のある人材を中途採用するのは容易なことではない。大企業出身だからといって、転職して通用するとは限らない。
私が関与した企業でも、大企業から三顧の礼を持って人材を迎え入れたものの、期待ハズレに終わった例は多い。大企業の、ある程度出来上がった仕組みの中で能力を発揮することはできても、ゼロから自分で仕組みをつくりあげることができなかったりする。何もないところから新たに仕組みをつくっていくことなど、ベンチャー企業では必須の能力と思われるから、「採用満足度3割以下」というのも頷ける。それができる人材は、大企業も簡単には手放さない。
ベンチャー経営者は、人材が「いなければいないなりに何とかする」という。採用期待ハズレ組なら恐らく、(仕組みなどが)ないことに不平不満をいう。
これが経営者とサラリーマンとの大きな違いだろう。当事者意識の差だ。このような経営者からみれば、中途採用者に対して「何のために転職してきたのか分からない」と感じるのは当然だと思う。もっとも、「何のために転職してきたのか分からない」と言う前に、「何のために採用したのか」を本人にキチンと伝えておくことは必要だろう。それをしていないのだろうか。採用満足度が3割以下というのも、本当に仕事上の要求をシビアにした上でのことなのかどうか、気になる。「成長や成功への執着が少ない」ことが一概に悪いとは言わないが、人材の育成に関しても、執着(執念)がないことが、採用満足度の低さの一因となってはいないか、考える必要があろう。
中途採用者は即戦力人材であることが期待されるとは言え、事業の理念や仕事への取り組み姿勢など、教育すべきことは多いはずだ。育てる努力をせず、すぐに能力不足と決めつけてしまうのは、人材不足(質の低さ)を嘆く企業の特徴でもある。ベンチャー経営者と転職者との意識の違い、執着の薄い経営者の人材に対する考え方、といった要素が、今回の記事の調査結果につながっているように思う。経営者の姿勢と人材能力についての見方は、決して無関係ではない。
管理職、7人で評価 日経新聞 01.5.29 11面
松下電器産業グループは2001年度から、管理職の能力や仕事ぶりを上司や部下など七人で評価する制度を導入した。上司以外の意見を取り入れることで評価の偏りを防ぎ、従業員の能力や顧客満足度の向上につなげる。産業界ではこうした多面的評価制度を「360度評価」と呼び、アパレルのワールドや大和証券など採用する企業が出始めている。松下グループは年功序列色が強かった評価制度を刷新し、企業活力を高めたい考え。新制度「マルチ・アセスメント・プログラム」を導入したのは松下電器のほか、松下本体と同じ内容の労使協定を結んでいる松下通信工業、松下電池工業、松下電子部品、松下産業機器。管理職に相当する参事、副参事と主事の一部などが評価の対象。対象者はグループ全体で約11000人。評価対象の管理職は年末に、社内のイントラネットを使って自分の上司以外で日常業務に関連がある上位者2人、社内資格が本人と同水準の2人、部下2人を「評価者」に指名し、了解を得る。翌春に上司が管理職の年間評価を決めるのと並行し、指名された6人は項目別に本人を5段階で評価、結果を本人とその上司にネット上で伝える。
評価の項目は「顧客志向」「スピード志向」「柔軟性・多様性」「自発性」「目的志向」「相互協力志向」など。本人の仕事ぶりなどを自由に記述できる欄も設ける。初年度は上司以外の評価は参考情報にとどめるが、新制度が軌道に乗った段階で賃金や処遇に反映させることも検討する。
コメントー評価は意思決定のプロセスに過ぎない
いかにして評価を公正・適正に行なうか、企業としては真剣に考える必要のある問題だ。それができていないと、士気を低下させたり、優秀な人材を失うことになる。今回の記事は、いわゆる「360度評価」について。確かに、評価の偏りを防ぐという点では有効だろう。上司が部下を評価するのは当たり前のことだが、現実問題として、すべての上司に十分かつ正当な評価をする能力が備わっているとは限らない。社員から見れば、たまたま上司になった人物が自分の能力を正当に評価することをせず、冷遇されているとしたら、たまったものではない。360度評価は、そのリスクを軽減するだろう。
どのような評価制度にも一長一短がある。しかし物の考え方としては、複数の視点から物事を評価してみることは大切だろう。人材の評価ばかりではない。新事業や新商品のアイデアを評価する上でも、複数の視点からそれを行なうことが必要だ。特に、今回の記事にあるような、数量化しにくい「定性的」な評価をしなければならない場合はなおさらだ。
それでも、「誰の目から見ても明らか」という結論を導き出すことは必ずしも容易ではない。複数の視点から評価すると、かえって結論を出すのに迷いを生じさせることになる可能性も高い。だから、意思決定者たるリーダーが必要となる。複数の視点からの評価も含め、さまざまな情報を収集した上で、右か左かを、自らの責任で決めるのがリーダーだ。