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       01.06.05               中国との為替政策


                         為替政策は国策

 4年前、アジア通貨危機の際、中国は為替水準を維持すると宣言した。これに対して、内外のマスコミは「責任感のある行動であり、さすがは中国である。それに引換え日本は・・」と言う論評がなされた。筆者は、何を言っているのかと思った。中国はその前に大幅な通貨の切下げを勝手に行っていたいたのである。たしか以前は1元が25円くらいと記憶していたが、いつのまにか15円くらいになっていたのである。さらに中国は大きな貿易黒字を持っており、アジア通貨危機の際に通貨を切下げる状況になかった。つまりマスコミの論評はまるで的外れなのである。中国の基本的な国策は富国強兵である。このためにも経済の発展は欠かせない。この手っ取り早い方法が外資の導入である。しかしこれは単に資金を調達するだけと言うのではなく、外国企業を誘致し、技術も同時に取入れているのである。(特に日本の場合は直接投資と言うものは少なく、生産委託、つまり技術だけを提供しているケースが多い。)さらに出来上がった製品は、進出してきた外国企業が売り捌くので、中国が自分で商品の販路を開拓する必要はない。したがってかなりのスピードで輸出競争力を強化できたのである。外国企業は資金だけでなく、技術の移転にもなる。この技術がいずれ中国全土に広まれば、中国の全体の工業生産力のレベルアップにもなるのである。このための最大のインセンティブが、極めて低い為替レートの維持である。

 ところで中国国内市場では、進出企業は同じ条件で競争することになる。労賃が安いことは共通の条件であり、それだけでは比較優位には立てない。つまり外資にとって、中国国内での生産物が特別な価格競争力を持つのは、これらが第三国に輸出される場合だけと言うことである。今日日本でセーフガードが発動されている畳表やネギは明らかに、日本国内向け商品である。畳表は日本人しか使わないし、ネギも日本人の好む種類のものであり、中国人向けには出荷できない。

  しかし現在の中国のように存在が大きくなり、日本の農業や地場産業を次々に潰すような事態になれば、話は別であり、当然問題にすべきである。特にこの大きな流れは地場産業からハイテク産業に及ぶのは必至である。さらに日本には、中国の経済規模を過小に見る傾向がある。しかしこれは現在の為替レートで換算した場合の話であり、購買力平価で換算すれば、中国のGDPは既に日本の1.5倍もある。つまり実質的な経済規模では、日本は世界の第二位ではなく第三位であり、中国が第二位である。ちなみにインドの購買力平価で換算したGDPは日本の7割くらいである。長い間、発展途上国の経済成長は難しい状態であった。一時は、先進国との格差が広がる一方であり、南北問題と言われていた。

 しかしアジア各国のように、教育やインフラ整備に力を入れてきた地道な努力が報われる時代になったのである。さらにIT技術など最新技術は、日本などよりも、これらの国々に恩恵が大きいかったのである。たとえば携帯電話は、固定電話網が完備している日本よりも、通信インフラ設備の後進国であるこれらの国により大きなメリットを与えた。これらの技術により発展途上国が、先進国をキャッチアップするスピードが格段に早くなっているのである。ところが日本人のようにこれらの国の経済に対する見方が旧態依然としている。発展途上国の為替政策に関心がないのも、その一つである。

                       解決困難な中国問題

 大きな貿易黒字を持つ中国は、ドルを買上げ、人民元を国内に放出している。ところで本来、国内の通貨の流通量が増えれば、物価が上昇するはずである。しかし中国には多くの失業者がおり、特に内陸部の低所得者層は、沿海部に出稼ぎに来て、安く労働力を提供している。また一つ重要なことは、中国も日本と似ており、過剰貯蓄体質の国である(両国は世界的にもめずらしい国である)。中国政府もゴールデンウイークなどで休日を増やし、消費を喚起することに必死である。さらに中国にとって貿易額は、経済全体に占めるウエートがまだ小さい。このような理由で、中国では、国際競争力を阻害するほどの物価上昇は起っていない。

 日本には、今日、中国製の安いがかなり品質の高い商品が出回っている。これらを購入する個人にとっては有難いことである。しかしこの中国製品と競合する日本企業にとっては死活問題である。たとえその低価格が中国の為替政策で生まれたものだと知っていたとしても、当事者ではない個人にとっては、安く品物が手に入る方が良いと思うのである。中国製品の大量流入が日本で問題になってきたのは、最近の話である。しかしこのままでは、これは将来とんでもない問題に発展する可能性が強い。しかし日本国内ではまだそれほど問題にされていない。一つは、米国の動向も影響している。米国は、一部の戦略的な製品を除き、ほとんどモノ作りを諦めたような国である。このような国では、安く消費財が輸入できる方が良いと言う考えの人々も多い。しかし事情の違う日本は、米国のようにはいかないのである。またこれは別の機会にまた詳しく述べるが、日米や米中の貿易摩擦より、日中の問題の方が深刻化する可能性が強いと筆者は見ている。筆者は、全ての製造業が日本に残るべきとは考えないが、今のままでは相当広い分野が打撃を受けるようになることは間違いない

 これは別の機会に述べるが、日本は産業の中心はやはり製造業であるべきと筆者は考える。製造業は極めてポテンシャルが高く、さらに日本人に向いているからである。ところが、中国の為替政策によって、その日本の製造業が一つ一つが根こそぎにされそうなのである。こともあろうかその先兵になっているのが、中国に進出した日本企業と言う図式である。

                 **次号のテーマ**

 中国との通商問題が日本では重くに受け止められていない背景をさぐる。また中国の為替政策は、日本だけでなく各国に影響している。国際的な動きも注目されるところである。とにかく日本は、小泉政権成立により、これからしばらく政治的にも経済的にも空白の時間を過ごすことになる。その間に色々な大きな問題がますます深刻化することは必至である。中国との通商問題もその一つである。とにかく今日小泉政権が問題にしているのは、究極的には所得の「分配」の問題であり、これはきりのない話である。 7月末の参院選の終了後、日本経済はさらに急速に悪化すると筆者は読んでいる。まず経済実態が回復する兆しが無い。ところでここのところ大型倒産がなく、無気味な状態が続いている。主な企業の株式総会が終わり、選挙が終わった頃がポイントである。株価もここにきて冴えない展開となっているが、参院選まで持つかどうか注目される。それにしても小泉政権は株価や為替レートの動向に全く関心がないようである。



中国、工業3品目に100%特別関税
                    =セーフガード報復、22日から実施


  【北京21日時事】中国政府は21日、日本から輸入される自動車、携帯・自動車電話、空調機に100%の特別関税を課すことを決定した。22日から実施する。特別関税は、農産物3品目に対する日本のセーフガード(緊急輸入制限)暫定発動への対抗措置。これにより日中間の貿易摩擦は、互いに相手国からの輸入を制限する事態に発展した。

 決定は21日夜、北京の日本大使館を通じ日本側へ伝えられた。阿南惟茂駐中国大使は、中国対外貿易経済協力省の竜永図次官に対し、電話で「到底受け入れることはできない」と抗議し、決定の撤回を求めた。これに対し、同次官は「対立のエスカレートは望んでいない。(セーフガード問題での)日本側の立場に進展がなく、国務院(政府)の決定に至った。解決に向け十分に話し合いたい」と述べ、日本側と協議する意向を示した。                                (01年6月22日時事)


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