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         自力増資できない銀行は国有化を・・・経済学者7人
   
共同10/5報道 では経済学者のコンセンサスは確定したようだ。
 緊急提言の発起人は伊藤、深尾の両氏と星岳雄カリフォルニア大学サンディエゴ校教授の3人。伊藤元重東大教授、奥野正寛東大教授、清水啓典一橋大教授、林文夫東大教授の4人が賛同者として名を連ねた。

 提言はデフレと不良債権処理の遅れにより、「このままでは1997―98年のような危機の再発は避けられない」と警告。

 債権処理を進めて資本不足となった銀行に対し、「はじめに公的資金ありき」ではなく、まず市場で資本を調達するよう強制する点が特色。調達できなかった銀行は一時国有化する一方、自力で調達した銀行には公的資本の注入を容認するよう主張している。
 
 デフレ阻止と金融システム強化の2本柱で構成している。デフレ阻止策は日銀に対して物価安定の数値目標(インフレ・ターゲティング)を設定し、その達成のためにあらゆる金融手段をとるよう促した。具体的な数値目標としては「例えば生鮮食料品を除く消費者物価上昇率で1―3%」と示している。 

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            日本の金融システム再建のための緊急提言

発起人(五十音順) 
 伊藤隆敏一橋大学教授、深尾光洋慶応大学教授、星岳雄カリフォルニア大学サンディエゴ校教授
賛同者(五十音順) 
 伊藤元重東京大学教授、奥野正寛東京大学教授、清水啓典一橋大学教授、林文夫東京大学教授

 現在の日銀の政策はデフレ阻止のために十分な効果を発揮するとは期待できない。二〇〇〇年八月の金利引き上げなど、これまでの政策の失敗の反省にたって、デフレ阻止の決意をいままで以上に明確に示し、それに向けた政策を実行することが必要である。

 現在の金融庁の政策も不良債権を迅速に処理するのには不十分である。不良債権額を半減させるのに七年もかかると見込まれるのは、現存の最終処理案が不徹底であることを意味する。「改革工程表」に盛り込まれた不良債権処理案にも問題点が多い。「不良債権を時間をかけて処理する」との考え方は、処理の先送りにほかならない。
債権分類と不良債権処理を民間金融機関の裁量に任せていては、問題は解決しない。民間金融機関の債権分類や引き当てが甘かったことは、たとえばマイカルの破たんなどにより明らかになったはずである。金融庁は、統一的な債権分類と不良債権を処理するための明確なルールを作成し、金融機関に即座にその実行を義務付けることが必要である。
 
 政策担当者間の責任の押し付け合いが問題をさらに深刻にしている。日銀は、政府による構造改革の進展と財政規律の確立が見られないので、モラルハザードを起こすような量的緩和はできないと言う。一方内閣府は、日銀による金融の量的な緩和がないので、大きなデフレ要因となる思い切った構造改革は断行できないと考えている。また金融庁は、不良債権問題が解決しないのを、その不徹底な政策によるものではなく、景気の悪化による新たな不良債権の発生による、としている。日本経済回復に向けた、金融政策、金融監督政策、そして構造改革政策の協調的発動が必要である。(一部略)

 たとえ、緩やかなデフレであってもそれが継続すれば、金融再生は不可能であり、経済への悪影響もきわめて大きい。この点を日本銀行は強く認識すべきである。
 デフレ阻止の政策を明確にするには望ましい物価動向を数値化した「物価安定目標圏」(インフレ・ターゲティング)を導入するのが望ましい。これは中央銀行の達成すべき目標を明確化するとともに、市場参加者の期待に働きかける効果がある。
 当面のデフレ脱却のためには、思い切った日銀当座預金残高の増加、買いきりオペの増加によるマネタリーベースの拡大が必要である。そのため、ただちに長期国債の購入増加を行う必要がある。
 
 こうした措置によってもデフレ阻止が困難と見込まれる場合には、時価総額に連動した上場株式投信(例えばTOPIX連動投信)や利回りの高い優良な不動産投資信託(REIT)の大量購入を行うことが必要となる。このような実物資産と日銀券の交換を続けていけば、デフレを阻止できることは明らかである。

 デフレに対する対策としては、大量の円売りドル買い介入を行うことによる円安誘導も考えられる。この政策は、米国やアジア諸国など日本の貿易相手国の景気が好調な時期であれば一つの有効な手段である。しかし現在のように、世界的に急激な景気後退が見込まれる状況では、意図的な円安誘導は近隣窮乏化政策となるため採用すべきではない。ただし、ファンダメンタルズの悪化した際にマーケットが円安を引き起こしたときには抵抗すべきではなく、またファンダメンタルズの動きに逆行する円高に対しては、介入などの手段により円高阻止を鮮明にすることが適切である。

 以上のような思いきった金融緩和の成功により、デフレ期待が解消したのちには、名目長期金利の上昇が予想される。これは長期金融資産を保有する金融機関の保有有価証券の評価損を拡大させる。しかし景気回復に成功すれば、金融システム全体としては、景気拡大のプラスの効果は評価損を補って余りあるであろう。また、評価損をできるだけ少なくするために、デフレ期待解消後も物価安定目標達成の大枠の中で緩和的な金融政策を続行する必要がある。
 
 財政赤字や政府債務残高は既に非常に高い水準にあるため、従来型の公共投資や減税によって景気を下支えすることには財政破たんの危険が伴う。支出金額を増加させるのではなく、その内容を需要創出効果の大きなものに入れ替えること、歳入中立型の税制改革、また求人と求職のミスマッチを解消するために失職者の教育訓練を強化することなどで景気の下支えを図るべきであり、財政赤字を現在以上に拡大すべきではない。しかし財投機関の隠れ債務や破たん金融機関の処理に必要な政府債務の増加は、既に発生した過去のツケを会計上認識するだけであり、財政赤字削減目標の別枠として扱うべきである。

 銀行部門は公表されている国際決済銀行(BIS)規制の自己資本比率などでみると比較的厚い自己資本を保有しているが、実際には極めて脆弱(ぜいじゃく)な状況にある。二〇〇一年三月まで、コア自己資本金額(BIS規制上のTier I自己資本)はここ数年増加しているが、これは巨額の繰り延べ税金資産の計上、貸倒引当金の過小計上、過去に注入された公的資本、不動産の選択的な再評価などでかさ上げされている結果である。こうした要因を除いた(財務状況をより正確に反映する)修正自己資本額は、最近六カ月の株価下落もあり、公表の半分を大きく下回ると見込まれる。

 
 銀行の全資産について、貸出先企業のキャッシュフローを基礎とした資産査定を行い、回収不能見込み額の現在価値の水準まで貸倒引当金を積み増すか、直接償却することを強制すべきである。さらに、繰り延べ税金資産は将来の回収が確実と見込まれる場合のみ計上すべきである。その結果、修正自己資本比率がある一定水準(たとえば四%)を下回る銀行には、普通株式による増資を強制する必要がある。増資は、まず市場での調達(ただし、関連生保や脆弱な貸出先を利用した実質的な持ち合いを排除する)を原則とし、市場で調達ができた銀行には、政府が優先株式を引き受けることで、十分な資本確保を可能にする。一方、市場での増資が行えない銀行のうち債務超過のものについては一〇〇%減資の上一時国有化を行う。一時国有化した銀行は、その不良債権を整理回収機構(RCC)に売却したあとで、優良資産のみを入札によって売却すべきである。債務超過ではないが増資が行えないものについては、新規貸し出しを原則として停止させ市場から徐々に退出させる。

 また、健全な銀行の不良債権についても、RCCによる市場価格による買い取り、買い取り資産の回収、清算、債権放棄、市場への売却などをいままで以上に進めるべきである。ただし、RCCに企業再建の役割まで担わせるのは無理があると考える。RCCに対するものに限らず、金融機関による不良債権の売却損には、税制の優遇措置を与えることによって処理を促進させるのが望ましい。
 
 物価安定の数値目標(例えば生鮮食料品を除く消費者物価上昇率で一―三%)を示し、それを達成するために日銀はあらゆる金融政策手段をとることを表明、実行に移すべきである。
 金融庁は、検査の厳格化、不良債権引当率の引き上げ、時価会計の徹底、回収可能な繰り延べ税金資産のみの計上を通じて、金融機関の整理淘汰(とうた)と不良債権処理を促すべきである。その結果、資本不足(たとえば修正自己資本比率四%以下)に陥る銀行には市場での資本調達を強制し、それができない銀行は一時国有化の後、優良資産だけを売却する。自力で自己資本調達を行った銀行への公的資本注入も、それをタブー視すべきではない。
資料
    日銀の政策余地はほとんど残っていない                日経HP 10/4

 日銀の田谷禎三審議委員は4日、静岡市内で講演し、日銀当座預金残高の増額などによる短期金利の低下を通じて需要に働きかけていく現行の金融政策について、「オーソドックスな政策手段はほぼ限界に達した」と述べ、日銀の政策余地はほとんど残っていないとの認識を示した。そのうえで金融政策が本来の効果を発揮するには不良債権問題の解決が重要と強調。「すでに出されている(整理回収機構の機能拡充などの)施策の具体化の過程でいかなる貢献ができるかを考えたい」と語り、日銀としても不良債権問題の解決を具体的に後押ししていく必要があるとの考えを明らかにした。
 田谷審議委員は日銀が当座預金残高を引き上げても市場から材料視されなくなっていることや金融機関の中には当座預金に積み上がられた資金を運用せずに放置するケースがみられることなどを挙げ、現行の金融政策が限界に達していることを認めた。長期国債の買い切り増額についても景況感の悪化と絡んだ国債増発懸念が招じるなど、タイミングによっては金利上昇要因になるとし、効果的な政策とは限らないとの考えを示した。

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