お燗をもっとおいしく    


日本酒は冷やしても常温でも、また温めてもおいしくいただける世界でも珍しいお酒です。
  お燗は、体を温める効果のほか、お酒の味わいをまろやかにします。 

     お燗とお酒のタイプ

熱燗 50〜55℃ 普通酒 本醸造酒
上燗 45〜50℃ 普通酒 本醸造酒 純米酒
ぬる燗 40〜45℃ 普通酒 本醸造酒 純米酒 吟醸酒
人肌燗 35〜40℃ 普通酒から大吟醸酒

どうして燗をつけるの?日本酒に燗をつけると
日本酒本来の米の旨味を引き出すことが出来ます。
常温や冷やで飲む時とは、かなりお酒の印象が変わります。
冷やでは静かで平に感じられる酒が、よりふくらみを増し複雑で微妙な味わいが感じられやすくなります。

燗をつけて日本酒を飲むと、身体にとっては優しい
身体をいたわりながら酒を飲む方法が、燗をつけて飲むことです。
冷やで飲む時とは違って、燗をつけると身体に無理なくスムーズに吸収されるのです。
冷たい日本酒を飲んだ時、飲みやすい、からとついつい飲み過ぎて、
後で急に酔いが廻ったりしませんか?
それは、体温と比べるとお酒の温度が低いためで、
吸収されるまでにタイムラグが生じるためです。


お酒の容量/単位について

お酒はよく一升や四合など尺貫法で容量を表す場合があります。
比較的皆さんに馴染みがあるのは一升=1.8Lではないでしょうか。
小さな単位順で表記すると下記の通りとなります。

一勺(しゃく)=18ml
  一合=十勺(しゃく)=180ml
  一升=十合=1,800ml(1.8L)
  一斗=十升=18,000ml(18L)

  一石=十斗=百升=180,000ml(180L)

一升瓶10本で一斗。いわゆる一斗缶の容量です。一石は一升瓶で100本分です。

例えば、よく○○酒造の年間生産量は1,000石などといいますが
その場合は一升瓶換算で100,000本ということになります。

リッタ−数に換算すれば1.8L×100,000本=180キロリットルの生産量となります。

ちなみによく居酒屋さんなどのお銚子はおよそ7〜8勺(しゃく)くらいですので
内容量は130〜140mlくらいです。

 

酒造り工程
米のデンプンを糖分にし、糖分を酵母でアルコールにしていきます。

工 程 説  明
精米   米の外側は雑味成分が多いので、これを削る(精白する)。
精米歩合とは削って残った中心部の比率。
昔は精米専門の杜氏もいた。
機械化された今も高精白は微妙な作業。
精米歩合60%なら、40%削り落している。
洗米 洗って糠をきれいにとる。
吟醸用(高精白)は吸水性が高く、
短時間でやらないと酒質に影響大。
米質になどに応じて手洗いで5〜10分(ストップウオッチ使用)
水温や、洗う前の米の水分含有率にも左右されるようです。
蒸し 蒸して糖化しやすくする(炊くのではない)。
時間・火加減が大事。はじめチョロチョロ中パッパ。
麹造り 米のデンプンを糖分にするため、蒸米に麹菌を生やし、育てる。
米の中心部に菌糸が深く食い込めば良好(突きはぜ)。
表面にのみ生えたのでは繊細な味が出ない(バカはぜ)
吟醸用(特に酒母)用などは、30℃くらいの麹室で、
常時監視しながら手作業で何度も揉んでは寝かせ、
大切に育てる。1回3日ほどかかる神経戦を もと用・仕込み用何度も行う
もと造り 麹・蒸米・水に少量の酵母を加えて造る、文字通り酒のもと。
糖分をアルコール・香りに変えるのが酵母。
酵母を純粋・大量培養するために、造る量のはもろみの数%。
この時点ではとても酸っぱいそうだ。速醸系なら2週間ほど、
きもと系で一ヶ月ほど。
仕込み もとに蒸米、麹、水を3回以上に分けて加え、もろみを育てる。
もろみの中では、デンプンー>糖分、糖分ー>アルコール発酵の
2工程が同時進行。
待つこと20日〜一ヶ月。
絞り(上曹) 絞るタイミングの見極めが難しい。早くても遅くてもダメ。
量産酒は機械で絞るが、吟醸はもろみを袋に入れて
積みじんわり圧力かけたり、袋を吊るしてしたたらせたりする。
絞り始め(あらばしり)、中(中取り)、終盤(責め)で酒質が異なる。
中がベストとか
 火入れ なぜか日本酒にしか発生しない火落菌は、劣化・腐敗の元。
60〜70度で時間をかけてじっくり加熱殺菌。生酒は行わない。
熟成 一定期間冷蔵貯蔵。味が乗る、落ち着く。
一夏寝かせて秋出荷するのを”ひやおろし”という。
1年以上は古酒。
出荷 通常品はここでもう1回火入れ。
晴れて店頭へ。


もと(酒母)について
酒母を雑菌から守り、酵母の増殖を助けるのが乳酸。
乳酸をいかに発生させるかで酒母の造り方が異なる。
きもと系と速醸系があります。
味の違いがかなり出る。きもと系は速醸系に比べるとどっしりした感じ。
これも善し悪しではなく、個性の違い・好き好きで選べばいいと思います。

大分類 小分類 説 明
きもと系 きもと 天然の乳酸を育てる古来からの方法。
桶に少量分けた もとを櫂で摺りつぶし(山卸)、乳酸・酵母を育てる。
現在では非常に少ない製法。

酒の元をつくる酒母造りは、長い工程の中でも重要な部分です。こでは仕込みタンクに蒸し米・麹・水と酵母を入れ、優良な酵母を増殖させるのが目的だが、乳酸を人口的に加える速醸法と、自然界にある乳酸菌を利用して酵母を増殖させる方法があります。この後者を「生もと造り」または「生もと」と、呼びます。
きもと系 山廃もと きもと造りから山卸工程を廃止したので"山廃"。
先に麹・水と仕込んで乳酸を育て、あとで酵母を投入。
誕生は速醸もとと同時期(明治末)で、意外に新しい。
きりっと引き締
まった酸味が出る。
"山廃"。
自然に空気中にある乳酸を利用して酵母を増殖させるモト造りの際に、蒸し米をすり潰す「山卸し」という工程を省いた仕込み方を言います。山廃は山卸し廃止の略です。自然界を相手なのでリスクも大きく、手間と時間がかかる製造法です
速醸系 速醸もと 別に用意した乳酸を加える方法で、もとの所要期間を
半減させた。大量生産化に貢献。
安っぽい手法と思ってたが、これはまちがい。
今や大吟醸も含めて主流。軽やかですね。

酵母について
酵母が米の糖分を食べてアルコールと繊細・香りを作り出します。
昔は蔵に住みついた野生酵母が主体でしたが、今では安定した品質を維持するため、
醸造試験場で純粋培養した酵母を使うのが一般的です。が
自社で研究・培養する蔵もあり。


生酒・古酒などについて
火入れの有無・タイミング、熟成期間、で分類してみると。

大分類 種別 説 明
火いれ 生 酒 絞ったままで一切火入れなし。フレッシュで香り華やか。 lang=EN-US>
思わず飲みすぎてしまう。賑やかすぎて飽きやすいのも多いが。
秋の火入れ版と飲み比べるのも面白い。
必ず冷蔵管理すること!
火いれ 生貯蔵 出荷直前に初めて火入れすることで、生に近い味を出す。
でもフレッシュさは生酒に負ける。
生酒と間違えるような表記・宣伝する酒には注意。

これも冷蔵管理すること!
火いれ 生詰 絞った直後の火入れはするが、出荷時の火入れはしない。
熟成期間 新酒 仕込み・絞りたてで出荷。冬に入るや出てくる。
熟成期間 ひやおろし 春絞り・火入れ、一夏貯蔵、秋火入れ・出荷。
最もオーソドックスで、春より味が乗ってくる。
最近は生のまま熟成したひやおろしもある。
熟成期間 古酒 絞り後、1年以上貯蔵熟成して出荷。3年古酒が多い。
カドが取れて落ち着いた味。独特のひねた香りが出る。
自分でも冷暗貯蔵すれば古酒になるが、ヘタするといやな香りが出る。
5年以上は"秘蔵酒"。
その他 原酒 日本酒はたいてい、原酒状態でアルコール20%前後。
仕込み水を加えて調整するのが普通だが、原酒はそのまま。
力強い味。最近は生の原酒が多い。
原酒状態で15〜16%に留まるよう仕込む場合もある。


濾過について
お酒は濾過・しぼりでも、大きく違ってきます。

呼名 説  明
にごり もろみをかなり残した状態で出荷されるお酒。
絞りの目をかなり粗くして、このようなお酒を成立させるんですね。
もろみのまんまかな?ってくらいドロっとしたものや、
醗酵時に生まれた炭酸ガスごと詰め込んだものもあります。
変質は、しやすいです。冷蔵庫で慎重に保管。長期保存には向かないです
滓酒 きちっと絞ったお酒でも、滓(オリ:もろみのチリみたいなもの)は残ります。
絞って数日置き、滓が底に沈んで来るのを待ちます。
通常は滓を取り去ったお酒が出荷されますが、
あえて滓の残った状態で出荷する場合、滓酒と呼ぶようです。
滓部分をまとめて銘柄化し出荷する場合もあります。
前者は軽いもろみのフレーバーがアクセントになります。
後者はにごりよりは軽いっという感じでしょうか。
これも変質しやすいので、
長期保存には向かないです。
別の酒に別の滓を混ぜて出荷する銘柄もあるようです。
無濾過 お酒は絞り・滓を取った後に、さらに濾過される場合が多いです。
方法としては炭素(要するに炭)濾過や、セラミックフィルターなど。
色を取る(色づいていると質が悪い!と思い込む消費者が多い)、
味を調整するとかが目的のようですが。

濾過(特に炭素)はお酒本来の色・味(うまみ・コク)も取り去ってしまう
ことも多いようです。水のように透き通ってサラサラってお酒もありますが、
こうした酒には炭素濾過しすぎてうまみが痩せ、水っぽくなってるのもあったりします。
最近はこうした風潮が見直され、
酒自体の色・味を重視した”無濾過”のお酒が増えてきてます。
そのなりたち上、力強いお酒が多いですが、香り高さを残すために
無濾過とした軽めのお酒もあります。


日本酒度 甘い、辛いの目安となるのが日本酒度です。数値は水の比重と同じものを0にして、これより重いものをマイナス、軽いものをプラスと表します。比重を重くするエキス分はおもに糖分ですから、マイナス値が大きいと甘口になり、エキス分がすくなくプラス値になるのは辛口となります
酸度 一般的な値は1.0〜1.8くらいとされており、これより高いとかなりの酸味を感じます。だいたい、1.5より上であると濃醇タイプ、下であると淡麗タイプと分けられます。
酵母 清酒酵母菌は酒母造りの際に入れるもの。おもに各県の醸造研究所や日本醸造協会で開発・培養しているもので、有名なところでは「協会9号」「アルプス酵母」などがあります
生酒 生酒には『本生または生生』『生詰』『生貯蔵』3種類のタイプがあます。
@本生は、製成後いっさいの加熱処理をしない清酒
A生詰は、製成後一度だけ加熱処理をし貯蔵、その後加熱殺菌せず出荷
B生貯蔵は、製成後、加熱処理をしないで貯蔵し、瓶詰めする前に一度だけ加熱殺菌したもの
あらばしり 醪をしぼりはじめて、最初に出てくるお酒を言います。香りが強く、荒々しいなかにもフレッシュな飲み口が特徴です。しぼりたてとも言います。あらばしりの次に出てくるお酒を中だれ、中汲み、または、中取りと言います。お酒としてバランスがよく、安定した味が期待できる部分です。ここだけを瓶詰めしたものに表示され、付加価値の高い酒になっております
冷おろし 冬から春にかけて造られた新酒を夏が過ぎるまで貯蔵し、熟成して旨みが増したところで秋口に出荷する生詰(生酒)のこと。程よいコクとフレッシュな飲み口の両方が楽しめます
袋しぼり 大吟醸などの付加価値の高い酒は、搾るときに酒袋に醪を入れて吊るし、人為的な力を加えずに、醪の重さだけで滴らせる方法です
斗瓶囲い 袋しぼりで搾った酒の、さらによい部分だけを一斗瓶(1,8g)で受け、そのまま小仕込みにて熟成させることを斗瓶囲い、または斗瓶取りと言います


お酒言葉

秋あがり 4〜5月頃に火入れをし、貯蔵をしたお酒が秋になって熟成し、香味が整い味も丸くなって酒質が良くなってくることを「秋あがり」といいまた、「秋晴れする」ともいいます。
男酒 硬質の水から造られる、すっきりとした辛口のお酒。
女酒 軟質の水から造られる、ふっくらとしたお酒。
角打ち 升酒を飲むこと。升は角から飲むことからそういいます。
寒造り 寒の入りから立春までに造られた日本酒をそう呼びます。
献杯 目下から目上へ盃を捧げること。「お流れ頂戴」は、その逆をいいます。
小半ら こなから。半らは一升の半分(五合)。小半らはその半分で二合五酌。江戸っ子や粋でいなせな人たちは、「こなからで丁度良い」などと使っていたそうです。
酒粕 日本酒を絞った後の粕。酒の搾りかすには、タンパク質やビタミン類が含まれ、甘酒、粕汁、粕漬けなどに広く利用されています。
上戸・下戸 酒を飲める人を上戸、飲めない人を下戸という。
可盃 べくはい。底に穴が開いていたり、底が平らではない変わり猪口で、飲み干さないとおけません。



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