たくみ くんの参戦記

新潟県出身の全日本ラリー二駆&四駆ナビゲーター
(02年9月14〜9月15日 全日本四駆部門ARKの巻き)

  堀田イズム爆裂! キロロトラバースの巻

  高橋 巧です。
  今回は、全日本四駆部門第6戦 キロロトラバースに行ってきました。
  ドライバーは、京都ラリーで組んだ堀田さん。
  クルマは、堀田イズムあふれるランサーエボ6。

  私にとっては、"初"北海道ラリー。
  急な参戦となったので、いろいろと準備が忙しく、
  木曜日に仕事が終わってから、飛行機で北海道入りすることに。
  小樽に前泊して、金曜の朝、堀田さんに拾ってもらう。

  今回の設定は、全日本四駆なので、JRCAのTCラリー。
  でも、MSCCの様に厳密な規則は羅列していない。
  このおかげで、今回は助かった!

  当然、金曜日にレキ。
  全てのSS区間を2度見る、いたって普通の方式。
  今回のSSは、
   Silver Mt.        8.8Km SS1,7
   Brook Trail       5.6Km SS2,10
   Kiroro Traverse   19.9Km SS4,9,12
   View Climb       1.4Km SS3,5,11
   View Downhill     1.3Km SS6,8,13,14
  の5ヶ所、SS総距離90Km強。
  約20KmのKiroro Traverseを3回走る、壮大な設定。
  View Climb と View Downhill は、ギャラステ。
  当然、オールダート。
  でも、道自体は本州にもあるようなダート林道。
  結構、荒れているが、スピードが出るところは出る。

  何しろ、私にとっては19,9Kmという長距離SSは初めて。
  ということで、今回のペースノートは清書しやすい様に、鉛筆書きに。
  何回か試し、いまいち字がかすれたりするので、
  好きではなかったのだが、この機会に完全に換える事に。
  意外と実戦では、字のかすれも気にならないし、修正がしやすい!
  みんなが鉛筆書きだっていう理由がよく判った!
  (今頃気づくとは...)

  やはり距離があるので、ペースノートもそれなりに
   Silver Mt.       8ページ
   Brook Trail      5ページ
   Kiroro Traverse  15ページ!
  View Climb       1ページ
   View Downhill    1ページ
  果たして、ロストすること無くいけるのだろうか?

  明けて、土曜日、競技1日目。
  今回のエントリーは、
   Aクラス  5台
   Bクラス  8台
   Cクラス 19台
    合計  32台
  堀田・高橋 チームシロキヤ hart BRIG SRS ランサーは、
  ゼッケン36番、Cクラス16番目の出走。

  まずは、SS1 Silver Mt. 8.8Km 。
  途中、ペースノートのページの切替位置が悪く、読み遅れる。
  幸い、堀田さんが憶えていたところなので、大事には至らず。
  また、途中 ST70 ONクレスト R9では、大ジャンプ!
  すぐにL3なので心臓に悪い〜。
  その後すぐにL8 ONクレストL9 でもジャンプ!
  やっぱりダートでランサーだと、クレスト越えは迫力あります。
  で、8分36.9秒でゴール。トップから22秒遅れ。
  四駆のTOPグループは、とてつもなく速いです。
  いつもの感じでは、これでもロングのSSなのだが、
  この先に19.9Kmが待っていると思うと、まだまだ序章に過ぎないか?
  しかし、このSSが唯一まともなクルマの状態での走行となった...

  SS2 Brook Trail 5.6Km、ここから今回のドラマの開始となる。
  結構、調子良く走って行き、
  あと1KmくらいのL7の進入でいきなり衝撃とともにスピン。
  前を見ていなかったので、何をしたかよく判らなかったが、
  90度回ったので、今来た方向を見るとけっこう でかい岩が道の上に...
  どうやら、奴と戦ったようです。
  きり返しして再スタート。どうやら、バーストはしていません。
  ゴール後、左フロントを確認するが異常が無いので、そのままギャラステに。

  ギャラステでは、中盤のL3でイン側に入り過ぎ、
  フロント周りが草だらけに...
  やっぱり、クルマはまともじゃないのかも?
  ギャラステ後ガスコンをして、
  TCラリー方式では流行の20分サービスになる。
  ガソリンスタンドでクルマを洗車しているときに、
  左リアのホイールが随分曲がり、タイヤがかなり後退しているのを発見!
  実は、やっつけたのは左リアでした...

  サービスに入って、早速BOWBOWの古谷さんと川村さんのお世話に。
  リアをジャッキアップして、トーの調整範囲でどうにかなることを祈るが、
  センチ単位で狂っているので、そう甘くはなかった...
  そして、非情な通告が...

   古谷さん 『堀田さん、あきまへん。ショック折れてます!』

  ということで、いきなりAPEXのショックがあの世に行ってしまいました。
  ショックを外すと、見事に“く”の字。
  とりあえず、スペアのラリーアートのショックと交換しようとするが、
  アッパーアームに干渉して取り付かず。
  アッパーアームがかなり変形しているようです。
  残念ながらアッパーアームのスペアは無い!
  しかし、そこで諦めないので堀田イズム!
  ということで、アッパーアームを外して、叩いて修正することに。

  すでにこの時点で予定TC INには、絶対間に合わなくなるので、
  どこまで遅れてもいいのか、特別規則書を確認する。
  今回は、TC遅れによる失格規定は無い!
  『TC,SSは、最終号車の通過予定時刻の30分後で閉設する』
  としかない!ってことは、少なくとも30分、
  後ろに3台いるので最悪33分遅れまではどうにかなる?

  堀田ランサーだけが、サービス会場に残されるので、周りに人が集まってくる。
  そして、アッパーアームを叩いて修正するとなると
  すぐに回りから大ハンマーが...
  DRSと綾部さんとこのメカニックは、作業まで手伝ってくれます。
  さすが人気者、堀田さんです!
  何とかアームをそれらしい形(本来の形には、まだ程遠いが...)にして
、   ラリーアートのショックを付けるが、別タンクがブレーキキャリパーと干渉。
  幸い右のAPEXのショックは、ラリーアートより細く、
  別タンク式ではないので、右のAPEXを左側に、
  そして、右側にラリーアートのスペアを付けることに。
  約50分掛け、なんとか作業終了。予定時刻の30分遅れでTC IN。

  SS4 Kiroro Traverse 19.9Km。
  クルマの状態が状態なので、多少抑えていくのかと思ったら、大間違い!
  リアのアライメントは、鬼キャン、トーアウトがセンチ単位って状況で、
  全開走行!
  16分15.5秒でゴール。
  なんと清井選手に0.4秒。炭山選手に2.2秒勝っている。
  リアアライメントって何なんだろう?

  ギャラステをこなして、やっと45分のサービス。
  ここまではREGROUPが無かったので、
  いつTCが閉鎖され失格になるか判らず。
  でも、やっとREGROUPでその不安がなくなることに。
  しかし、ここでまたトラブル!
  ボンピンをすることなく、サービスに向かう。
  案の定、ボンネットが跳ね上がる...
  こんなところで、笑いを取らなくても...
  オフィシャルテントから背広を着たおっさんが走ってくる...
  あ、競技長の桜庭さんだ!
  ボンネットをガムテープでとめて、サービスに。
  すいません、お手を煩わせて...

  サービスでは、これ以上やったところで、直るわけが無い!ということで、
  いたって平穏(クルマは平穏では無いが...)に終了。

  SS7 Silver Mt.では、この怪しい状態にも慣れたのか、
  SS1にも増して全開走行。
  しっかりジャンプピングポイントは、ジャンプ!
  飛びすぎて山肌に激突しそうになる。これは、本当に怖い!
  さすがに堀田さんも後で、

   堀田さん 『ジャンプは、大概にせんとな...』

  とぼやいていた。
  あの叩いて直して、いつ折れるか判らないアルミ製のアッパーアームで
  あそこまで飛ぶか!僕は怖かった!
  まあ、クルマの状態が状態なので、タイムは1本目に比べかなりダウン。

  で、本日最後のSS9 Kiroro Traverse。
  スタート時刻が17:51予定。
  しかし、もうすでに暗くなっているので、
  1分早めて17:50に出してもらう。
  デーラリー仕様なので、ランプポッドは無し、おまけにナビランプが無い!
  ということで、目をこらしてノートを見るが、なにしろ暗くてよく見えん!
  光を求めて、ノートをいろいろ傾けたりして読むが、
  もうタイミングめちゃくちゃ。
  ロストしても、なかなか復活が難しい!やっと頂上の高速区間で復活。

  でも、
   堀田さん 『合ってるんかい?』

   私    『大丈夫だ!信じろ!』

  って具合。
  頂上付近は、木が無いので、まだノートが見えたのでいけたのですが、
  下りになるとまた森の中に入るので、全然見えず。
  おまけに前走車に追いついて、ホコリが酷くなる。
  とりあえず、無事にゴール。これで、やっと2日目に行けます。
  長かった1日がやっと終わりました。
  しかし、2日目がもっと凄いとは、この時は予想もしていなかった。

  明けて2日目。
  出走順が1日目のSSタイム順になり、後ろから2番目の出走。
  前はキャロッセの炭山選手、後ろは青森の相馬選手。

  まずは、SS10 Brook Trail。
  炭山選手のスタートをまじまじと見る。
  さすがキャロッセワークスカー!
  煙は噴くは、火は噴くはで、凄い加速で1コーナーに消えていく。
  で、堀田ランサー、スタート。
  なんかフラフラしながらコーナーをクリアしていく。
  そして、最初のきついコーナー『クレスト すぐ R4』で、曲がる気配が無い!
  思ったとおり、アウト側の土手にフロントから刺さる。
  ああ、ここで終わりか?と思ったら、大して乗り上げていなかったので、
  バックで出てくる。そして、全開走行再開!
  無事ゴール!

  ギャラステを走り、20分のショートサービスへ。
  サービステントでは、すでにリタイヤしているDCCSの平塚さんらが、
  スペシャルアライメント仕様の堀田ランサーを見に来る。
  堀田さんと平塚さん、そして、古谷さんの会話が強烈。

   古谷さん 『堀田さん、どうやった?』

   堀田さん 『あ〜あきまへんわ! こんな変なクルマかな?って、感じです。』

   古谷さん 『12時間たったら、忘れてしまった?』

   平塚さん 『それは、気分の問題だ!』

   古谷さん 『そうそう、昨日はこんな状態でも、(炭山)裕矢選手と競ってたんよ。』

   平塚さん 『やっぱり、気持ちの持ち方!』

   堀田さん 『そんなもんですか(妙に納得している)』

  でも、あんまり安心させないでくれ!
  これ以上無理すると本当にやばい!

  結局、何もすることなく、サービスアウト。
  そして、2日目最大のヤマ場、Kiroro Traverseへ。
  ここさえ走りきれば、残すはギャラステ2本なので、完走したも同然。

  Kiroro Traverse スタート。
  最初の低速区間を抜けて、ハイスピード区間に入り、
  『R7 すぐ L5』で、まずは1回目。
  ハブががたついていたようで、ノーブレーキでL5に進入!たぶん3速全開?
  正面にはカーブミラーがある!あそこにぶつかるのか...
  そして、その先は崖?
  で、思ったとおりカーブミラーに正面衝突!
  『お、落ちる』と思って、あまりの恐怖に目をつむってしまった...
  でも、衝撃の後には、何故か静寂が...
  あれ、落ちなかったラッキー!

  ボンネットは歪んでいるが、煙は上がっていない。
  バックしたら、あっけなく出てきた。こりゃいける!
  しばらく、様子を見て走るが、水温が上昇する気配も無い。
  そこで堀田さんが一言、
   『このランサーは、かなり丈夫だ!』
  ということで、再度、全開走行!
  もう、ここからは、ノリノリ!
  ペースノートをロストする感じもしない。
  多少、土手にぶつかったり、ハーフスピンしたりするが、
  ちゃんと道の上にいる!

  しかし、そんな好調さがいつまでも続くわけが無い...
  悲劇は、ゴールまで2キロくらいの下りセクションに掛かってから。
  『R7 L7lomg L7から6(と思う)』で、L7longでアウト側にはらむ
。   でも、いままで土手にぶつかったりしながらも、
  なんとか道の上にいたので、『今回もどうにかなるかな?』と思っていたら、
  どんどんアウト側にはらんでいく!
  どうも行く先は、アウト側のくぼみか?
  『あ〜やっぱりコースアウトだ!』ということで、アウト側のくぼみに落ちる!
  『落ちた!』と思って、思わず目をつむる。そして、回転する感覚が...
  で、一瞬の衝撃の後、沈黙と静寂が...
  あれ、み、道の上にいる?何故?
  なんと着地も決まって、道に直角に停車!
  しかし、どっちを向いているのか、わ、わかんねえ?

  『もうリタイヤだ!』と思って、車外に出ようとベルトを外し、ドアを明ける。

  そして、一歩踏み出したところで、ランサーのエンジンが掛かる!
  慌て戻るが、『ああ、脇に寄せるんだな...』と思う。
  が、しかし、

   堀田さん 『行けます!どっち?』

   私    『わかんない!』
  なにしろ、右に行ったらよいのか、左に行ったらいいのか、判らない!
  一応、下りセクションに掛かっていたので、右手の下り側に行く。
  しかしここで、ペースノートが転倒の際、車外に放出されたことに気づく。
  これぞ、ほんまにロスト!

  フロントウィンドーはひび割れ、ドライバー側のウィンドーは粉砕。
  そして、堀田さんの右手は、血だらけ....
  で、しばらく走り、やっとSSゴール。
  トップから2分24秒落ち。
  刺さって、転倒して、スロー走行を強いられても、こんなものか?

  SSゴールで停められるかな?と思ったら、行かしてくれた。ありがとう!
  つなぎの区間でランサーから下りて見ると、凄いマシーンに!
  BODYパーツで無事なのは、リアウィング&トランクのみか?
  アンダーガードは半分千切れて無くなっている。
  とりあえず、堀田さんの手をゆすいで、フロントウィンドーをテーピングして、
  最後のギャラステ2本を走る。
  もうノートを失っているので、有視界走行。

  全てのSSを終了し、最終TC IN。
  しかし、その後の車両保管でオフィシャルに停められる。

   私       『パルクフェルメに入れて!』

   オフィシャル 『これって、完走車ですか?再車検ありますが...』

   私       『最後のTC入ったぞ!』

   オフィシャル 『灯火類のチェックを...』

   堀田さん   『全部ダメ。リレー壊れている!』

   オフィシャル 『え...では、ボンネットを...』
     私      『二度と閉まらなくなるから、辞めてくれ!でも、ホーンは鳴るぞ!』

   オフィシャル 『じゃあ、ホーンを』

           プー、プー!

   オフィシャル 『ご、合格です...』

   やっと完走と認めてもらえました。

   オフィシャルからは、転倒した際にばらまいたペースノートをもらう。
   そして、オフィシャルテントの前で、競技長の桜庭さんと完走の握手。

   桜庭さん 『TCには遅れるし、ボンネットはめくれるは、
         転倒してペースノートは落とすし、いろいろあったな!でも、完走おめでとう!』

  大変いろいろとありがとうござます。
  そして、サービステントに行こうとすると、
  先にゴールした島田さん、地神さんと古谷さん、川村さんがやってくる。

   島田さん 『堀田は、こけたって!』

  もう、堀田ファンの地神さんは、大喜びで堀田ランサーを見に行く。
  地神さん、うけ過ぎです!

  結果は、Cクラス19台中12台完走で、最下位完走。
  でも、充実感のあるラリーでした。
  これが本当のラリーだったのか!

  帰りには、北海道らしい“ゆできび”も食べられ、満足しました。
  ランサーはボロボロですが、
  堀田さんは2週後のモントレーに出る気でいるようです。

  ここには書ききれないくらいのドラマがありました。
  今シーズン最高のイベントでした。
  これ以上のイベントに今年はこれから当たるのだろうか?


  追記 (なかざわ)
    これで、たくみ くんのJAFスタンプラリーも6回完走印が貰えたのかな?
     よいよ、国際Cのライセンスにリーチ、インターラリーに向けて、更なる活躍と
     抱腹絶倒の参戦記を期待しましょう。
 


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