ハカセ〜Scientific Breakthrough〜
 
 その日6年戦争が始まった。世界は大ブリテン対フランス、オーストリア同盟対ロシア、満州同盟の三つ巴の戦いに巻き込まれたのだ。
 口火を切ったのはブリテンだ。スペインを同盟に取り込む外交戦に入るが、フランスの強力な妨害にもかかわらず、3度目のわずかな可能性をものにする。これで手に入れた圧倒的海軍力を背景に、海外領土での不可侵をフランスと結び、植民地拡大に乗り出す。
 一方ヨーロッパ同盟はさらにプロイセンを加え、ブリテンに不可侵の念押しをした上で、ロシアに襲いかかる。同盟を得ることにも失敗し、ペテルスブルク陥落寸前の哀れなロシアの運命は?

 その頃大ブリテンの宮廷に現れた謎の男。
「今こそワシの発明を使う時じゃ!」
「なんだおまえは?」
「ハカセと呼べい!この3度の連続攻撃とサイ振り直しイルミナティがあれば、フランスは我が大ブリテンのものぞ!」
「我がってお前のじゃないだろ。だいたい博士じゃなくてハカセというあたりがマッドサイエンティストっぽいぞ。」
「ワシの科学力を信じよ!科学は突破だー!」
 怪しさ爆発のハカセの口車に、なぜか乗せられたブリテンはフランス攻撃を開始。
「よーし、最初の攻撃は順調だ。このままパリ要塞へ進むぞ。フォースマーチ3連発!」
スカ、カス、すか
「きかねーじゃねーか、あのマッド!スペイン戦線はどうなんだ?」
「要塞攻撃2以外で2を出して失敗。イルミナティ発動!」
すかーーー、2
「あのマッドー!」
ブリテンはヨーロッパ同盟を敵に回しただけに終わり、アジア同盟は息を吹き返した。

 翌年ヨーロッパ同盟はロシアと停戦し、スペインへの反撃を開始する。
「ああー、マドリードが落ちるー、誰かー!」
「呼んだか?」
「誰だ!あっ、こいつもしや、去年ブリテンに現れてインチキ発明を売りつけた、確かマッドとか言う・・」
「ハ・カ・セじゃ!それよりもおぬしら、スペインを救いたいのであろう。それならつべこべ言わずに、このワシの大発明を使えい!」
そう言うとハカセは勝手にガラガラ包みを開きはじめる。
「これは敵の指揮官が酔っ払って策を忘れる「スタルムウントドランク」!それからこっちは敵の指揮官がいきなり慈悲深くなって攻撃を控える「オナーズオブウォー」!それから・・」
「こんな嘘っぽい発明信じていいのか?」
 人をたぶらかすことにだけは長けているハカセ。スペイン宮廷はこの男に乗せられ、さらにヨーロッパ連合軍も引っかかってマドリードを落とし損ねた。

 ヨーロッパでの争乱により、俄然力を盛り返したアジア同盟は、ロシアがスウェーデン、満州がインドシナ、そしてさらに日本を征服しアジアを呑み込んでいく。そして最後に残ったインドへ進むため、入り口に位置するマラータに宣戦した。
 予想外に早いアジア同盟の復活に、ブリテンとヨーロッパは停戦する。しかしヨーロッパ同盟は出遅れ感のため中立を維持し、同盟に成功したオスマン帝国を使って、ペルシャやアフリカへの領土拡大に勤しんでいた。
 そこでブリテンは単独でインド航路防衛の戦いに臨む。しかし遠く離れたインドに送り込める戦力には限りがあり、満州陸海軍に圧倒されたブリテン軍は、唯一残されたマラータの首都バロダに逃げ込む。

 マラータ宮廷では、マラータ王とブリテンインド総督がおろおろしていた。
「インドも日本も地図から消えてアジアは皆中国なんて、欧米人のアジア観みたいな世界はいやだー。」
「こんな砂糖の入らない紅茶だけの国で死ぬのはいやだー。」
狼狽していて意味がわからない。そこへ
「心配いらん!」
「なに奴?」
「あっ、お前本国にいた時にやってきたマッド。」
「ハカセじゃ!」
「何でもいい。お前のせいで俺はこんな所へ左遷だ。帰れ。」
「なあに今度は完璧じゃよ。まあ見てみい。」
勝手にまた怪しい発明の実演を始めるハカセであったが、宮廷のものは誰も信じていない。しかし陰からそれを見つめる目があった。満州帝国のエリートスパイが潜入していたのだ。
「アイヤー!何とすごい発明ね!こなとこ攻めたら満州人民ひとたまりもないよ。そなことするより暴動するこまたニポン人、懲らしめにいくよろし。」
たった一人の勘違いがインドを救った。

 その後ハカセの発明が利いたのか利かないのか、オランダが大ブリテン同盟に参加してきた。そして今年は世界戦争終結に向けて和平交渉が進められており、その前に少しでも有利な協定を結ぼうと、各国とも必死の領土奪い合いを演じている。
 ヨーロッパ同盟はアメリカでブリテン領を襲う。一方大ブリテン同盟は豊富な資金で各地を要塞化し、アメリカ奪還、スカンジナビアのロシア領とインドシナ台湾の満州領に侵攻する。そしてアジア同盟はその奪還に力を傾け、ヨーロッパでもオーストリア侵攻を開始する。
 そしてロシア軍がウィーン要塞に迫った時、そこに立つ一人の男。
「ハカセ!今年もまた現れたか!」
「やれやれ、大ブリテンが世界に君臨するためには、今どこかが大勝ちしてもらっては困ると言いよっての。それでこんなところまでわざわざ。それっ、オナーズオブウォーー!」
「来なくていいーー!」
 大ブリテン同盟は僅差でこの戦争に勝った。

 毎年毎年大ブリテン同盟のどこかに現れては、怪しい発明をばらまいていった謎の男ハカセ。その正体は未だわからない。

キャスト
アジア同盟 かさい
ヨーロッパ同盟 Y
大ブリテン同盟 私
ハカセ キャンペーンマーカーの一つ

 
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