精強ハンガリアン
Do it GamesのDownfall of the Third Reichを、子供連合軍、私枢軸でやりました。2人用第二次大戦ヨーロッパ戦略級という良くあるテーマですが、今まで意外とミニゲームではなく1日で終わる丁度いいものが無かったので、買ってみました。実はこのデザイナーさんは、以前コマンド日本版でもライセンスされたBlitz war(ヒトラー電撃戦)を作った人で、より短くシンプルで飽きないものを作りたかったそうです。
1ターンは3か月でポーランド侵攻が終わった所から終戦までの期間を行い、最終ターンまでにドイツが降伏するからどうかで勝敗を決めます。まず特徴的なのがターンシークェンスが無いことで、枢軸、西側、ソ連のプレイヤーターンごとにやりたいアクションを好きな順でやっていきます。アクションには補給物資生産、歩兵生産、戦車生産、航空任務生産、潜水艦任務生産(枢軸のみ)、技術開発、レンドリース(西側のみ)があり、いくつかを選んで行います。さらに補給を消費して行う作戦アクションがあり、移動攻撃、戦略移動、海上移動、強襲上陸を行えますが、戦闘を解決したらそのターンの作戦は終了します。歴史に沿った展開を誘導する特別ルールが多めですが、全体としてはかなり簡単なルールになっています。
ボンサイゲームズさんがフルカラーの高クオリティ日本語ルールを付けてくれていますが、元がスペイン語のゲームを英語に翻訳したものをさらに日本語に翻訳した上、公開されているイラータがフランス語という厄介な物なので、誤りや曖昧な点が多くあります。ギークのフォーラムを一通り見て、気付いた点は以下の通りです。
日本語ルールの誤り
5. スタック
(例外: アメリカ軍のスタック制限は無制限です)
*アメリカ軍はそんなモンスターじゃありません。アメリカ本土ではいくらでもスタックできるというだけです。
7. 補給線
自陣営の首都まで支配下のエリアを通って補給線を引ける軍は補給を受けています。
自陣営の補給エリアまたは自国の首都まで(to a Supply Area of their side or to the Capital of their country)
8. 陸軍の作戦
ただし海エリアを2 つ以上して強襲上陸を行う場合のコストは2 SUになります。
海エリアを2つ以上通って移動する場合と、強襲上陸をする場合(except to move more than one sea area and Amphibious Landings)
*この英文は紛らわしい表現になっていますが、フォーラムでDo it Games公式が、強襲上陸の時は必ず2コスト掛かると明言しています。
21. 初期配置
ソ連:「航空機」は開発済みです。
進行中ボックスに置きます(Aviation in the development box.)
*ルールでは進行中ボックス(progress box)と書いていたものを、ここでは開発ボックス(development box)と書いているので誤解が生じていますが、配置図ではマップに置いてあり、フォーラムでもボックスに置くと回答されています。
22.5 例5
● Riga のソ連軍は、自陣営が支配していないKonigsberg へ直接移動できません。
自軍が支配しているVilnius を通過してなら移動できます。
たとしても移動できません(not even passing first through a controlled area like Vilnius)
*意味が全く逆です。2つ目の例も同様です。
その他明確化された・間違いやすい点
・潜水艦の効果は次ターンと書いてあるが、実は次の連合軍プレイヤーターン(つまり同じターン)に効果を持つ。
・大国以外の国が増援を受け取るのは参戦後。
・河は境界にあるのではなくエリア内にあり、河のあるエリアに攻めた時だけ効果があって、河のエリアから河を越えて攻めても効果はない。河のあるエリアは平地ではないので、突破移動を行えない。(直観に反するルールなので注意)
・トロンヘイムが影響するのは総力戦になってから。
・アフリカまたは1945年の連合国を除き冬に航空支援はできない。
・そこに「存在する」軍が相手より多ければ余剰分が支援できる。つまり3対2の場合、攻撃側は1つが攻撃しもう1つがその攻撃を支援するが、最後の1つは攻撃しなくても良い。
・ソ連はレンドリースを受けると、1943年は開発を1ターン2回、1944年は補給を2回選べる。
・敵がいない所を移動した場合、移動の途中でもその支配を取れるが、実際に支配が変わるのは作戦終了後になる。つまりそのターンはそこに戦略移動することはできない。
・降伏した時その国にいる他国軍は、そのエリアの支配を維持する。
・ソ連の要塞はソ連軍のみ利用できる。
・強襲上陸を行う軍は支援できない。
・連合国とソ連の軍が同じターンに枢軸国の同じ軍を攻撃できない。
ルールは少ないのですが、離れた所に書いてある関連項目が多くて、プレイ中に見落としやすいです。
ドイツは第1ターンに戦力を増強し、第2ターンにフランス侵攻。突破で1エリアのフランス軍を補給切れにしますが、それでもフランスの反撃は厳しく、降伏はさせたもののドイツの損害も嵩みます。

第3ターン、イタリアはユーゴを降伏させエジプトにも侵攻。その後各国は戦力増強、技術開発に勤しみます。
1941年の春になりましたが、ソ連軍が多く、ドイツはこれを攻める気にならないので、イタリア軍がエジプトで攻撃。夏もさらに攻めて、DAKがスエズを占領しました。
秋、攻めたくない。けど攻めないと奇襲効果が無くなるし、このゲーム攻撃側が有利そうなので、守ってると負けそう。ドイツはソ連に侵攻します。国境のソ連軍にそこそこ損害を与えましたが、何と言っても次は冬なので、ドイツ軍も反撃でそこそこ損害を受けました。

このゲームでソ連を降伏させるには、遥か彼方のウラル補給エリア地帯を取らなければならず、どう考えてもできそうにありません。なので春になったドイツはもう守りに入りたいのですが、ここで守っても弱い所を殴られ続けて不利になる一方でしょう。嫌々攻撃を続けます。
弱い所を狙って突破し、確かに前進はできているのですが、ソ連が戦車を狙って反撃して来るので、ドイツの損害が酷くなってきています。そして1942年の秋に、ドイツは自分の補給線を度外視し、隙間を通ってソ連軍を大包囲しました。

見た目は何か大成功しているように見えますが、モスクワには補給があり、ウラル方面に新設されたソ連軍と一緒に、ソ連軍は補給を回復しながら、良いようにドイツ軍前線部隊の後ろに回りこんできます。これによりドイツ軍の多くが逆に補給を切られて、救出も不可能になり、これはもうドイツは負けたな。最後にスターリングラード方面の弱小ハンガリー軍を、ソ連精鋭戦車軍が倒せば終わり。
サイを振るとソ連軍が2、ハンガリー軍は6。ソ連戦車は7戦力でハンガリー軍は4だから、あれ、ハンガリアンの勝ち?ん、これはどうなるんだ?
ハンガリー軍とスターリングラードのドイツ戦車は、補給切れを免れ移動可能になりました。そしてこの位置は丁度ウラルの補給源地帯に届く位置。なんということ。補給エリアを全て取られてソ連降伏です。

全く予想外の事が起きてしまいましたが、普通ならソ連降伏は無理でしょう。
どちらの陣営も生産や開発、作戦に色々考えどころがあり、十分1日で終わりそうなので、なかなか良いゲームだと思います。確かにちょっと覚えにくい史実誘導ルールが多くて、戦略的な流れはドイツが独ソ戦に突き進んで滅亡に向かうしかないのが、戦略級としては少し寂しいというのもあります。しかしこれだけ簡単なルールと適度な時間で、ガチガチの二次大戦を最後までやれるというのは貴重で、前作のBlitz warよりもかなり良い出来になっていると思います。
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