初っ端の大勝負
Hubris: Twilight of the Hellenistic World ヒュブリス:ヘレニズム世界の黄昏をやりました。Hubrisとは最終的に自らの破滅を招く過度の野心とのことだそうです。アレキサンダーの旧領は、後継者戦争により3つのヘレニズム三国に分かれましたが、彼らが互いの野心と欲望によって衰退していき、最終的に西方で興ったローマに滅ぼされるまでを描きます。勝敗はプレイヤーごとに価値の異なるサトラピー支配VPと、主に王の戦闘の勝敗で増減する名声VP、王の死亡時にその半分が引き継がれる王朝VPによって決まります。
ゲームは支配状況に基づく収入と傭兵の入札後、中心となるアクションフェイズを行います。これは毎ターン繰り返し入れられプレイヤーアクションを実行する反復イベントと、ターンごとに加えられる使い捨ての一時イベント、4枚以上の反復イベントが出た後に引かれるとアクションフェイズが終わる(3枚以下ならリシャッフル)冬季駐屯イベントを、ランダムに引いて進めていきます。冬季駐屯に入ると、戦争継続(互いに大きな負担になる)を決定する平和・戦争疲弊セグメント、勝利判定(30VP以上)、部隊の帰還、インフレ(残金半減)をして、次ターンに進みます。
アクションではとにかく大量のイベントが発生し、反乱、内紛、ローマ軍の侵攻など、ヘレニズム世界を衰退させる事件が続発します。特に注意が必要なのが、ほとんど毎ターンチェックされる宮廷の陰謀(王か首席大臣の陰謀能力で、宮廷内のリーダーの陰謀を抑えきれないと、リーダー同士で殺し合う)と、野心的な将軍たち(現地で戦っているリーダーは宮廷の陰謀には関与しないが、忠誠心が低いとそこで反乱することがある)で、致命的なことにならないようアクション実行時にはこれらも考慮しなければなりません。そしてリーダーはアクションの要で、それぞれ様々な能力があり、誰をいつ何に使うかが重要です。
プレイヤーのアクション番が来ると、指揮するリーダーを決め(1ターンにつき1人2回までしか指揮できない)、9つのアクションか保留イベント発動かリーダーの特殊能力を実行します。アクションには陸上作戦、海上作戦、両用作戦、使者(都市との同盟)、ローマでのロビー活動、ローマを戦争に扇動、増税、艦隊建造、公共事業(高いが1VPになる)があります。
陸上作戦ではまず指名したリーダーで望むだけ部隊を召集します。この時軍事入植者はそのサトラピーを支配、小国軍は本拠と同盟していれば、無料で招集できますが、傭兵はそのサトラピー内に連携した場所を持ち2タラント払う必要があります。そして支配しているサトラピー内をいくらでも移動して、目標エリアでのみ補給コストを部隊ごとに払います。目標となった相手は兵の緊急動員と指揮官指名、都市の防衛強化、撤退、都市への海上支援、艦隊による海峡封鎖や海上迎撃で、リアクションできます。陸上戦闘ではユニットごとにサイを振り、指揮官の戦闘能力以下の目を出すごとに1ヒットで、概ね多くのヒットを与えた側が勝利し、負けた側は退却しヒットを受けた部隊が離散(そのターン使用不可)します。そして敵野戦軍を排除できれば、アクション側は計4回の攻城、服従、略奪を行えます。
他にローマ軍の活動と、第2次ポエニ戦争でのカルタゴの状況を表すルールがあります。
Y君が豊かなエジプトで収入は多いがリーダーの能力が低いプトレマイオス朝、子供が東方に勢力を持ち王は強いが初期VPが低いセレウコス朝、私が王は強いがギリシャの反抗に悩むマケドニアのアンティゴノス朝です。シナリオは最初からのヒストリカルシナリオで、ゲームの進み具合により、ルールブック推奨の3ターンか7ターンまでとします。
開始時にはプトレマイオス朝とセレウコス朝が戦争状態にあります。一旦戦争が終わると、両者のどちらかの王が死ぬまで再び戦争はできないので、セレウコス朝は今のうちにプトレマイオス朝の広い領土を減らしておきたいところ。そこでアンティオコス3世はアナトリアの反乱を放置し、兵力を集めてプトレマイオス領のコイレ・シリアに進みました。
これに対しプトレマイオス4世は戦闘能力で劣り勝ち目が薄いので、代わりに地形マスターのテオドトスを派遣します。彼は戦闘能力こそ同様に劣るものの、防御側の時は先撃ちできるのです。しかしここでアンティオコスは特殊能力を使い、8タレントを払って彼に寝返りを仕掛けます。そして成功率は五分五分ですがこれに成功し、コイレ・シリアの半分ごと奪い取りました。

ただアンティオコスがさらにエジプトに進むには、次のサトラピーが高い補給コストで大軍を送れないので、その後はコイレ・シリアの完全制圧やバビロンの反乱鎮圧に勤しみます。そしてプトレマイオスも使者を派遣してロードスを手に入れるなどしていましたが、終わりのタイミングを見計らってセレウキアに上陸し、セレウコス朝の首都の一つであるアンティオキアを奪ってしまいました。
一方激戦地から遠いマケドニアのフィリップ5世は、エジプトから遠く離れたトラキアのプトレマイオス領を攻撃して2都市を奪い取りましたが、直後にイベントで片方を失ってしまいました。その後も繰り返し起きるギリシャの反乱に手を焼きながら、最後に追加1アクションできる冬季戦役能力で、なんとか支配を取り戻してターンを終えます。マケドニアは重税に耐えきれず荒廃しましたが。

第2ターン、2つの戦争が終わり、誰か王が死ぬまで戦争はセレウコス朝とアンティゴノス朝の間でしか起こせませんが、この二者は今の所接していません。そのためこのターンは皆中立攻撃・外交や反乱鎮圧等に専念します。
アンティゴノス朝は作戦が大成功し、トラキアやギリシャを完全に支配しました。セレウコス朝も外交が成功して、プトレマイオス朝が同盟していたエーゲ海の島国を奪取した上、北東の辺境バクトリアネも攻略してVPで猛追します。そしてプトレマイオス朝は、反乱が終わって空白になったリディア=フリュギアに攻め込み、ここの支配に成功しました。これにより三者が1VP差で並ぶ接戦となります。

第3ターン、これまで大量の英文カードテキストを読むのにかなり時間が掛かったので、このターンを最終ターンにすることとしました。まず先手を取れたアンティオコス王が、リディア=フリュギアで残っていた堅城サルディスを落として名声を稼ぎました。プトレマイオス朝はサトラピーを支配していても、中立の場所を攻めるのは止められないのです。
その後セレウコス朝とアンティゴノス朝は、間にあるマイシアの奪い合いになりますが、どちらも支配できずにいました。しかしアンティオコス王は終盤になって、「限定戦争中のローマ軍など恐るるに足らず!」と、ローマが支配する堅いペルガモンを一撃で陥落させ、名声と支配を手に入れて、一気にVPで他を引き離します。
当然ローマは激怒し、軍を派遣してアンティオコス王に攻撃を仕掛けますが、やはり限定戦争中のローマ軍は弱くあっさり撃破されました。そしてそのまま早めの冬となり、アンティゴノス朝アンティオコス3世の勝利です。

毎ターン、タロットカードサイズの大きいカードにたくさん書かれた英文テキストを何枚も読まなければならないので、英語のかなり得意な人がいないと、少なくとも初めは大分時間が掛かります。多分1ターン2時間で、最初のターンは3時間以上くらい。ただ一通りイベントを経験して慣れてくれば、1ターン1時間、戦争ターンでも2時間くらいになるかもしれません。
ゲーム自体は重大な影響のある反復イベントの対応や、多彩なアクションとリーダーの選択、一度終わるとしばらくできない戦争と平和、国内を通って自由に転戦できる陸上作戦と、斬新な要素が多くおもしろいと思います。ただ国の位置関係が決まっており、一時イベントも起きるターンがだいたい決まっていることから、短いシナリオはいつも似た展開になりやすいかもしれません。しかし長いシナリオをやれば、長い分変化も増えると思います。
最近のゲームは値段がかなり高騰していてこのゲームも同様ですが、まあ仕方ないと思える程度には、コンポーネント、ゲームの革新性、練りこみは良くなっています。また3人用ゲームが欲しかった我が家にとっては、待望のゲームでもありました。そしてゲームの開始時期等により、短時間シナリオが4つ、中時間シナリオが3つ、長時間シナリオが2つできるので、これからだんだん長いシナリオをやっていきたいと思います。
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