つきまとう疑惑とマギーの高貴な船
Plantagenet: Cousins' War for England, 1459 - 1485をやりました。これは召集と戦役シリーズの一作で、イギリス内戦の薔薇戦争をテーマとしたゲームです。
実は今までこのシリーズを気にしながらも、「城攻めは高いコストとリスクに見合わず、戦闘は不利な方がほぼノーコストで回避できるので、結局敵地を荒らして回るだけ」などという話も聞いて、購入は見送ってきました。しかし今回ギークでおこのみちやきさんの秀逸なレビューを見て、高かったけれども購入を決めました。要は「このゲームではそのような問題が解消されているから、新規の人にもおすすめ」だそうです。
ゲームの勝敗は国内の影響力で決まり、支持地域の多さ、重要都市の支配、戦闘の勝利等で増え、特定のアクションや悪事を行うと減ります。また相手の貴族をマップ上から居なくしても勝ちます。
ターンはまず召集で、イベント、維持費支払いの後、各貴族は個人の能力に応じて、近隣の支持を得たり、他の貴族、家臣、兵員、船や荷馬車、能力カードを獲得したりします。そして戦役では季節ごとに決まっている数だけ、誰がいつ動くか(1貴族は最大3回まで)の命令パイルを秘密裏に作り、この順で交互にアクションを行っていきます。命令を受けた貴族はコマンド能力数だけアクションを行い、移動、海上移動、土地の支持獲得、食料調達、徴税、徴発ができます。そして移動・戦闘をすると規模に応じて食料を消費し、食料・金・兵を調達すると地域が荒廃して、どんどん軍の維持が難しくなっていくのがこのシリーズの肝になっています。
敵味方が遭遇すると迎撃はできても回避はできず、戦いたくなければ負けたの同じだけの影響力と物資を払って亡命します。戦闘では防御力の高い装甲兵、先制攻撃力の高い長弓兵、間に合わせの民兵と、召集に制限があるもののより強力な、家臣、傭兵、銃兵や、各貴族に付けられた能力カードを駆使して戦います。
つきまとう疑惑
シナリオは薔薇戦争終盤のMy Kingdom for a Horse。Y君がランカスター、私がヨークです。
ヨーク家はグロチェスター公(後のリチャード3世)がロンドン、ノーフォーク公が南端の町アランデルに、ノーザンバーランド伯が北部にいます。そしてランカスター家は亡命先のフランスで、後にヘンリー7世となるヘンリー・テューダー、その叔父ジャスパー・テューダー、オックスフォード伯が集結し、反撃の機会を窺っていました。
まず召集でランカスター家は、ヘンリーに船と荷馬車による食料輸送調達が2倍になる能力、ジャスパーには土地を弱らせずに食料を2倍調達する能力を付けて、莫大な補給力を獲得します。さらに港近くにいれば毎ターン資金援助を得られるマダム・ラ・グランデと、3個までの民兵、装甲兵の耐久力を上げるピキエをオックスフォードに付けて、態勢を万全にしました。
一方ヨーク家は、グロチェスターが徴税で得る資金を増やす「とても若く聡明」で、いつでもリチャード3世に即位して、カードを交換できるようにしておきます。そしてノーフォークは、味方エリアでの戦闘で装甲兵2長弓兵1の増援を得る上、兵士の防御力も向上するコンボ能力を獲得。一方北に離れているノーザンバーランドは、船からの食料調達が2倍になる巨大船と、食料を払うと影響力を得られる慈善事業を取って、影響力稼ぎに徹する狙いです。
戦役に入るとランカスター家は全員でカレーに渡り、徴税をし食料を集めまくります。そしてヨーク家はノーフォークをロンドンに合流させた後、ロンドン付近の支持を獲得して家臣獲得の準備をし、ノーザンバーランドは船で輸入した食料を配って影響力を得ました。
第2ターン、ここでランカスター家はジャスパーで2回の徴兵を実施。実は宮廷財務官の能力は、補給だけでなく徴兵も土地を弱らせずにできるのです。これで兵力も、資金も食料も膨大になったランカスター。ヨークはこれを防ぎきれるのか?ひとまずグロチェスターを即位させ、食料を2倍獲得する能力を付けます。
そして戦役では先手のランカスターが、リチャードらの近くの港町ヘイスティングスに上陸。あれ?ここは?よく見るとリチャードのいるカンタベリーからでは、どう動いてもランカスターの軍から逃げることができません。ヨークいきなり終わってしまったか?
諦めて食料補給をしたヨークの軍に襲い掛かるランカスター。ヨークは不利ですが、家臣や戦闘能力に期待してか、亡命せずに戦いを受けました。

そして戦闘開始。ランカスターに戦闘カードは無く、そしてヨークの方は。
「疑惑は絶えず罪悪感につきまとう」
これは味方貴族一人の影響値以下の目を出すと、より影響値の低い相手貴族一人を解散させることができるという最強カードです。リチャード3世は難無く5以下を出して、ランカスター家の戦力の半分を担うジャスパー・テューダーを脱落させてしまいました。
このカードをいきなり引かれている可能性は低いと見ての攻撃でしたが、こうなっては数でも質でも勝るヨークにランカスターは敵いません。ヨークは一方的な勝利を収めてサドンデス勝ちです。

マギーの高貴な船
予想外に早く終わったので、次は「サマセット公の帰還」。第一次内乱でヨーク家が勝利してエドワード4世が即位し、ヘンリー6世がスコットランドに亡命している中、サマセット公ヘンリー・ボーフォートとランカスター派貴族たちが、北部イングランドで蜂起しました。Y君がヨーク、私がランカスターです。
ランカスター家はヘンリー6世がスコットランドの亡命ボックス、サマセット公はイングランド北の果てバンボロー要塞にいます。そしてヨーク家はエドワード4世とウォリック伯がロンドンにいますが、エドワードはまだ経験が浅いため、能力が低めのマーチ伯カードを使います。
ランカスターの召集では、ヘンリーが1度だけ攻めてきた敵を追い返せる「王の談判」と、マップ上にいれば毎ターン2影響力を受け取れる「マーガレット手綱を握る」。そしてサマセットは装甲兵の防御力が上がる「教会の祝福」と、船の運搬力・食料補給力が2倍になり、3つの海を1つの海として扱える「高貴な船」を得ます。
他方ヨーク家は、エドワードに影響値とコマンド数を1ずつ増やす強力な「ヨークの寵児」を、ウォリックには防御力がひときわ高まる特別家臣モンタギューと一時的に先制攻撃力が増える大砲を付けました。
戦役でランカスターはヘンリーを動かさず、サマセットで北部の支配を固め、さらに高貴な船を使ってカレーにまで談判して支持を取り付けました。一方ヨークの方は、エドワードをウェールズに送って支持を拡大。これは3つの支持があるだけでウェールズの支配を取れる能力がヨークにあるからでした。このシナリオでは影響力がランカスターに6有利から始まりますが、このターンではあまり動き無し。
第2ターン、ランカスターと決戦して勝たなければゲームに勝てないと気付いたヨークは、ウォリック伯で徴兵し攻撃の準備を整えます。そしてエドワードを呼び戻し、北に向かう準備をしますが、サマセットは高貴な船に乗って逆にウェールズの山の向こうへ上陸。この船があったら捕まえようがありません。
このターン影響力はさらにランカスターに傾いて11となり、もうどうやっても次ターンに逆転するのは無理です。戦いでは勝てそうもないので、ヘンリーとマギーが敵の入れない亡命先に留まって影響力を稼ぎ、サマセットは高貴な船で外交をしながら逃げ回るという戦略が成功して、ランカスター家の勝利です。

全く正反対の2つの戦略がどちらも成り立つとは、このゲームの戦略は幅広そうです。最初は何をすればいいのか戸惑うほど斬新ですが、それも良さの一つです。
また能力カードの選び方が重要で、「疑惑は絶えず罪悪感につきまとう」とグレートシップは単独でも非常に強力ですが、他にも戦闘に強いコンボや食料・影響力の獲得に有利なコンボも有り、どれを使うか悩ましい所です。普通そういうのは何回かやると最善の組み合わせが決まってくるものですが、このゲームではシナリオごとの状況の違いの他、最初に引かれて強制的に配置される能力が変化することで、一概には決まりにくいようになっています。
そして敵味方の軍によって国土が荒らされ尽くし、戦争というものは本当の地獄よりも地獄だというのが垣間見えるというのも、興味深い所だと思います。
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