ホットウォー・コールドウォー
2年4か月ぶりのTriumph & Tragedy、今回は子供が枢軸、Y君がソ連、私が西側です。
これまでの私たちの対戦記をよく読んだ人でないと、今回の対戦記を見ても、なぜTriumph & Tragedyがこんな展開になるのか理解できないかもしれません。そういう人でも分かりやすいように、今までの対戦を基にした基本戦略をまとめたので、初めての人はまずこれをお読みください。
Triumph & Tragedy 軍拡時代の終焉
36年、各国投資多めの中、政治フェイズでは枢軸がUSAの外交を使わないのと引き換えに西側も枢軸を妨害しないことを了承。その結果枢軸は技術を2つ開発しルーマニア、オーストリアを衛星国、低地諸国、ハンガリーを保護国、チェコ、ユーゴ、ギリシャを提携国とします。西側は少し引きが悪く技術無しですが、USAが参戦しラテンアメリカと提携。そして最後のソ連は技術2つとフィンランド、スペインの提携。戦闘はありません。
37年先番になったソ連は、工場を1つ作り軍備を増強します。2番手の西側も工場2つと軍備中心です。そして最後の枢軸は全てカードに。工場建設を1つに抑えてまで技術を1つ追加し、ハンガリーを同盟化し、ソ連からスペインの提携を奪います。またギリシャとブルガリアにも影響力を追加し、ラテンアメリカの西側影響力を除去。そしてまた戦闘は無し。
38年先番の枢軸は、またも軍備を放置してカードに全力をつぎ込みます。その結果技術1つ、工場1つ、スペイン、ギリシャの同盟化、さらにユーゴとの提携を失うものの、チェコの保護国化、ペルシャ、ポルトガルとの提携に成功します。
ここまで軍備をしない枢軸は何を狙っているのか?経済的勝利狙いにしては工場建設ペースが遅いし、大量に開発していますが原爆狙いではなさそうだし。他国は真意をはかりかねています。ソ連はひとまず工場が他の生産力に追いついたので、軍備重視で工場を作りませんでしたが、枢軸にサボを食らって1つ減らされてしまいます。西側はバランスで工場を2つとラテンアメリカ、スウェーデンとの提携。そして枢軸が軍備を増やしていないので、やはり戦闘は無し。
39年、枢軸はついに大動員し、ブルガリアも同盟化します。ソ連も工場を回復しただけで軍備を増強します。しかしイギリス本土侵攻はまだないとみた西側は、また工場を2つ増やして生産力15と枢軸に追いつき、技術も開発し、さらに4枚の外交カードで枢軸の保護国だった低地諸国を一気に西側保護国へと置き替えました。
さあ今年はポーランドか?フランスか?しかし枢軸がこの年攻めたのはユーゴとデンマークだけ。まあ確かに今の戦力ではそのくらいかもしれませんが、工場が15しかないのに資源を18にする意味は何でしょうか?枢軸曰くペルシャはいつ脱落してもおかしくないからとのこと。なるほど。しかし狙いはやっぱり分からない。手札を3枚に制限してまで秘密に持つ4つの技術は何?

40年、先番の西側はラテンアメリカを衛星国化し、さらに秘密技術を増やして3つとし、工場も1つ増やします。そしてソ連はフィンランドを衛星国化し、ポーランド、ノルウェーと提携。それ以外は軍備増強となります。
そしてもう開戦してもいい時期ですが、やはり枢軸の宣戦は無し。もう別次元の世界に突入していますが、西側もソ連も自分から手出しはできず、様子を見るしかありません。
そしてもう戦争なんて始まらないのかと思った41年、枢軸はついに西側に宣戦布告し、まず西側が保護する低地諸国に攻め入ります。そして枢軸が戦車と歩兵なのに対し、西側は空軍でそのままパリに撤退します。同時にスペイン軍はマルセイユに攻め入りフランス守備隊を倒しました。
さらに夏にはスペイン・ドイツ共同でパリ攻撃。フランス軍はいくらか強化してあり、イギリス歩兵、低地諸国空軍も加わっています。そして西側は防空レーダーを持っていましたが、なんと枢軸はこの時期に早くもジェッツ。西側空軍を吹き飛ばします。しかし枢軸はロケット砲まで使って攻撃したのに、陸上戦の目は振るわず、フランスは持ちこたえます。またフランス空母はイタリア潜水艦を撃沈し、地中海の制海権を確保しました。

(ジェッツ攻撃中)
そして秋。なんと枢軸には秋カードがありませんでした。この年フランスは生き延び、連合軍はマドリードを再占領して、大西洋でも退路を断たれたイタリア空母が沈められました。
42年、前年は何とか凌いだもののの、枢軸のジェッツとロケット砲は強力で、西側はかなり危険な状況です。西側はここで投資カードを何枚か引き、何か技術を開発しました。そんなに都合よくジェッツやロケット砲が開発できるとは思えませんが。
そしてまずさすがにフランスは降伏。フランス軍のいなくなったスペインもイタリア軍が再奪還します。一方西側もジブラルタルに兵を送りました。ここで枢軸は重爆撃機を使って12戦力でパリからジブラルタルを空爆。しかしそこには3戦力のRAFがジェッツを即コピして要塞と共に待ち受けていました。実は西側は去年から産業スパイと42年科学を持っていて、それで投資に注ぎ込んだのでした。
防空レーダーの効果もあって、4倍のドイツ空軍に対し損害は痛み分けに終わります。航空戦を耐えた西側は、ジブラルタルを起点に北アフリカを占領し、マドリードを包囲孤立させて守備隊のイタリア軍を降伏させます。
さてここでソ連ですが、今やスウェーデン、ポーランドとチェコまで保護国化し、ノルウェーと提携しています。このまま平和の分け前をもらい続ければ勝ってしまいそうな雰囲気です。
43年、春に秋カードを開いた西側はこう言います。「停戦の証にわざと攻撃できない緊急コマンドを出したから、安心してソ連を攻めてくれ。」全く出まかせです。単に春カードが無かっただけです。それどころか夏カードも無く、秋カード3枚でどうにもならない状況でした。しかし枢軸もそんなことには関係なく、ソ連を何とかしなければいけなかったので、その話に乗ります。
まずソ連の保護国から提携国に落ちたスウェーデンを攻撃。ところがサイの目が外れまくって、4ユニットで攻撃したのに春には落とせませんでした。ソ連はその隙に北の鉱山を押さえます。枢軸はその後ストックホルムとオスロを制圧しました。
枢軸の中立侵犯のおかげで夏カードを手に入れた西側は、フランス攻撃はしないものの、「じゃあマルタ島は返してもらうね」と言って北アフリカを進みながら、「あっ、やっぱり東方の連絡線回復しなきゃ」と言ってそのままリビアに入ってしまいます。
イタリア戦車に対し、アメリカは戦車と歩兵で、戦車は重戦車。しかしイタリア戦車もやはり重戦車でした。こんな辺鄙な所で世界初の重戦車同士の戦いが。そしてこの戦闘は数に勝る西側が勝利し、西側は通商路を回復しました。
三者とも全然本気でぶつかり合わない異次元展開。この時点で生産力はソ連が15、人口も資源も多いものの工場を十分作っていない枢軸も15、西側は17です。枢軸は宣戦で1VP減っていますがパリの2VPがあり、工場を建てればさらに増やせます。またソ連も平和の分け前が多くなっています。誰が有利なのか分からず、誰のどこをどうすればいいのか、非常に難しい状況だからなのです。もしかするとこの状況こそ、枢軸の遠大な最初からの狙いだったのでしょうか?
44年、ソ連はポーランドを遂に衛星国化。枢軸もようやく工場を2つ増やしてVPを伸ばします。ついに独ソは完全に国境を接し、戦争が始められる状況になりました。また西側は「停戦の証に・・」(以下略)と同じことを言っています。
しかし枢軸もソ連も戦争準備は整えますが、いざ宣戦となるとそのマイナスを埋め合わせられるメリットが見出せず、開戦にはいたりません。一方西側ですが、夏になっても隣接しているのは海山越えだけで、下手に刺激して矛先が変わるといけないので、わずかにマルタ島を奪還しただけで終わりになりました。
開戦しているのにホットウォーはあまり起こらず、水面下の交渉、諜報や技術競争と、もはや冷戦状態です。

こうして遂に45年です。枢軸も西側もアクションカードを多めに引きます。西側はトルコ、枢軸はペルシャと提携していましたが、南方にソ連軍が多くなっていたので、保護国にして攻撃を牽制したかったのです。その結果どちらも保護国にするのに成功します。
しかしソ連はもう来年の平和の分け前を考えなくていいので、それでも宣戦することは考えられます。そこで枢軸はソ連にサボタージュ。これでソ連は都市を取っても生産力が上がらなくなり、宣戦はソ連にとってプラスにならなくなってしまいました。
「これが国際政治だあ」
枢軸・西側のどちらかだけ減らしてももう一方を得させるだけなので、ソ連は戦争を放棄せざるを得ず、後は点数計算を待つだけとなりました。
しかしそれでもまだ多数の平和の分け前は脅威だったので、西側もチェコのソ連影響力を減らして提携国に下げ、火種を作ります。そして春の先番争いでは枢軸が勝ち、チェコに侵攻して奪い取りました。
その間に西側はマルタ島からシチリア、ベニス、ミラノと進み1VPを獲得します。本当はローマを取れれば一番良かったのですが、守りが固そうで諦めました。
そして最後枢軸の番。西側は複雑怪奇な展開に疲れきってしまったのか、向かいに枢軸部隊のいる海を封鎖するのを忘れていました。結局西側は取ったより多くのVPを失ってしまいます。
そしてVPを計算してみると、西側は最後のミスで点数を減らしたものの、原子力2段階と平和の分け前の多さで枢軸と同点、そしてソ連は少しだけ及びませんでした。
ちなみに今回開発された技術は、ソ連が自動車化歩兵、重爆撃機、精密照準器の3つ。枢軸が重戦車、ロケット砲、ジェッツ、重爆撃機と強力な戦闘技術ばかり。西側はLST、防空レーダー、ジェッツ、重戦車、自動車化歩兵、精密照準器、原子力1、2のなんと8個も開発する技術超大国となりました。
表面化はしませんでしたが、実はソ連も西側も秘密裏に精密照準器を開発し、戦略爆撃で最後の切り札を切ろうとしていました。恐ろしい裏世界の戦い。しかし結局ソ連は戦争できず、西側はベルリンに近づけず、枢軸の阻止が成功した形です。しかもドイツは最後かなりの空軍をベルリンに置いて備えていたので、もしやれていたとしてもどの程度効いたかは分かりません。あらゆる場所で熾烈な読み合いが繰り広げられています。
あまりに複雑な展開に、今回の対戦を余すところなく書ききれてはいないと思います。二次大戦ものなのに主戦場が直接戦闘の場には無く、技術、外交、諜報や、プレイヤー間の協定、休戦、交換、妥協、誘導、経済的勝利や原子力勝利を巡る推測や牽制など、数多の要素がこれほどまでに複雑に絡み合うゲームが他にあるでしょうか。Triumph & Tragedyは二次大戦ゲームとしても3人用ゲームとしても、常識を超越した傑作だと思います。ただ人によっては、戦闘が主題じゃない二次大戦ゲームなんて嫌だという人もいるかもしれませんが。
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