決戦:ローマ対ガリア
Caesar: Rome vs Gaul。このゲームでローマが勝つには、どの目標をどの順序で攻めるかという戦略方針だけではだめだということが分かった。ローマがやるべきことはたくさんある。支配拡大、攻囲、野戦、防衛、ブリタニア侵攻、ゲルマニア侵攻、カエサル道開通。だが問題なのはどれをやるかではなく、どうやったら効率的に多くのことをできるのかではないだろうか。
成功
第1ターン、ガリアの部族は、最南端のアクィタニア、そしてカエサルのいるすぐ北のリンゴネスとレミに登場。もちろんガリアは、すぐに取られるような近くに影響マーカーを置いてくるようなことはしない。となればカエサルのすべきことは、まずリンゴネスとレミの攻囲だ。
まずリンゴネスには2ダメージ。そして裏切りによってこれに止めを刺すと、すぐにレミの攻囲に移り、これも順調に攻め落とせた。
さてこううまく進むと、次の目標はすぐ近くに来ているゲルマニアだろう。カエサルはまず一歩を踏み入れると、そこを支配する。そして次は、扇動と暴力でそそのかす。これによりゲルマニアに奥地に侵入することなく、ゲルマニア探検が完了する。今までゲルマニアやブリタニアは実際に軍団が入らなけばならないものと思い込んでいたが、ルールをあらためて見ると、ガリアの影響マーカーを除去するか変換すれば良く、地域を限定しないものであれば、イベントを禁止するルールも無い。これでカエサルは速やかにガリアに舞い戻ることができた。
カエサルがいない隙に、ガリアはケルティカの支配を進め、要所カルヌテスとパリシーにも影響マーカーを置いていた。ローマはこれに対して、カエサル道開通を終えたレガーテを派遣してそれらの支配を崩しながら、隣接するベルギカのスェシオネス支配を確立する。そしてカエサルもベルギカのガリア支配を崩した。最後はローマの友により、パリシーの支配も獲得。これによりローマは、ベルギカ、ケルティカ両方の支配に成功して、大量5VPの獲得に成功した。
カエサルの軍団はベルギカ西部で全部バラバラに分かれて冬営した。今までは翌年のガリアの攻撃を恐れて2軍団ずつスタックしていたが、序盤はガリアの戦力も少ないので、少しのリスクよりも支配の効率を優先することにした。
確信
第2ターン、ブリタニアのすぐ近くに冬営していたカエサル軍団は、そのままブリタニアに侵攻することにした。そしてこれも辺境の襲撃により奥地への進撃を不要とし、早々に引き揚げる。
だがこの年ガリアの部族が登場したのは、どれもブリタニアから遠く離れた所だった。ローマはどうすればいいのだろう。ここでローマは、ケルティカであちこちと影響マーカーの鎖を伸ばしていった。プロヴィンス支配もできないこの配置は何を意味するのか?その答えはローマの支配カードであった。これによりローマの影響マーカーのあるケルティカのプロヴィンスでは、全て影響マーカーを置くことができ、1枚で5か所の影響マーカーを手に入れた。
その結果ローマはケルティカを支配して、このターン3VPを獲得し、第2ターンにも関わらず累計ですでに8VPにも達していた。北方見聞を終えたカエサルが以後地域支配に専念できる中、ローマは毎ターン1VP取るだけで良く、これは楽勝なのではないか。そう思うのも当然だ。
ただ代わりにローマはこのターン、1つも部族を倒せていないばかりか、最初から制圧されていたセクアーニ族も復活させられている。これが後に響かなければ良いが。カエサルは来年これらの部族を攻められるよう、また全部ばらした上で中央東寄りに冬営した。

疑念
第3ターン、ベルギカ東部にまた1つ部族が登場し、カエサルは立て続けにこれらを倒していこうと目論む。しかしガリアはこれに対して、最南部のカドゥルシ族とアクィタニ族共同で、ローマ侵攻軍の本拠プロヴァンシアに攻め込んできた。しかもガリアの手からは次から次へと3のカードが出てくる。このゲームで3のカードは2割しか入っていないのに、どうなっているんだ。
次々と支配を覆しながら進んでくるガリア軍。ローマの中枢ナルボネンシスまで入り込んでくるに至っては、カエサルもこれを放置することはできず、セクアーニ族を倒しただけでプロヴァンシアへ駆けつける。本領を全て回復することはできたが、ガリア部族はさっさと逃げ帰り、カエサルにはこれを攻囲する余裕も無かった。
結局ローマは、前のターンに支配を増やしていたおかげでケルティカの支配は維持でき、1VPはなんとか得ることができた。しかし攻囲は1つしか完了できず、大きな時間の浪費をさせられた。ローマには3のカードが1枚も無く、ガリアには3が4枚もあったと言い訳することもできる。しかし一方でこれはこれまでローマのカードが良かった揺り戻しに過ぎず、南部にガリア部族が登場しているにも関わらずプロヴァンシアを放置したつけとも言えるだろう。
崩落
第4ターン、ガリアは春季結集であちこちに部族を出撃させる。そして出てきたのが、小心を勇気づけ揺れる心をなだめる。このカードの効果は、ガリアCUのいる各プロヴィンスで影響アクションを行えるというもの。これによりなんと10個というとんでもない数のガリア影響マーカーが配置されてしまう。これまでローマが部族制圧を怠ってきたつけが、最悪の形で突きつけられたのだ。
ローマは早く手当てしないとケルティカの支配を失ってしまう。しかし目の前のカドゥルシとアクィタニアを放置する訳にはいかない。カエサルはこの2つを攻め、カドゥルシを攻め落とすが、アクィタニアは降伏して後の再起の種を残してしまう。
最南部をようやく片づけたカエサルだが、その時にはすでにケルティカの多くのプロヴィンスがガリアの手に落ちていた。アンビオリクスを始めとする多すぎるガリア部族の攻撃は、とてもラビエヌスに支えきれるものではなかった。結局カエサルの奮闘虚しくローマはケルティカの支配を失い、最後のローマの賄賂は、ベルギカの多くの影響マーカーが孤立するのを防いだにとどまった。
ローマは除去した部族が4に達して1VPを得たものの、支配VPは得られなかった。もうさっきまでの楽勝ムードは完全に吹き飛んだ。やはりこのゲーム、何かを得れば何かを失うようになっている。多くのガリア部族が残っているため、来年の支配も困難が予想される。

強襲
第5ターン、積極的な攻撃を仕掛けなければ、もうローマに未来は来ない。カエサルは、冬営地に近いビツリゲスで蜂起した部族を、マルス神に誓って一撃粉砕すると、進出してきたヴェルキンゲトリクスが召喚したアルヴェルニ族の包囲に急行する。アルヴェルニ族はガリア部族最強の7戦闘力を持つ上、ゲルゴヴィアに造られた要塞は攻囲に−1の修正がついて、これを攻略するのは容易ではない。しかしここはローマにとってのど元に突き付けられたナイフ。放置する訳にはいかないのだ。
そこでローマは強行軍を用いてラビエヌスの4個軍団を呼び寄せ、ローマの全軍10個軍団でゲルゴヴィアの攻囲を開始する。さらにローマは外人部隊も呼び寄せてビツリゲス攻囲で失った戦力を補充し、戦力比を2対1に上げて攻囲した。だがアルヴェルニ族はここで降伏し、除去し損ねてしまう。
仕方なくカエサルはケルティカ中央へと出発するが、アルヴェルニ族は東側ですぐに再起し、ローマの支配を崩してきた。これはローマにとってピンチと同時にチャンス。カエサルは移動の無駄になるのも構わず、取って返してアルヴェルニ族を降伏させ、ようやく平定を完了した。
その後また中央に戻ったカエサルは、残していた豊富なアクションと、最後にローマの取引でガリアの支配を飛ばし、ぎりぎりケルティカを支配して1VPをもぎ取った。
絶望
第6ターン、ローマはあと1VPを取れば勝ちだ。ケルティカを支配するか、部族を2個除去すればいい。難しくないはずだ。今回もカエサルは政争を免れ、無事ガリアに戻ってきた。そしてその頃ガリアは、ローマ軍主力の冬営するパリシー付近で、ひそかに部族を結集させていた。
春になるとヴェルキンゲトリクスは、まずパリシーの2個軍団に攻撃を仕掛ける。そしてローマ軍は6以上で回避だったが、なんと失敗してしまい、3ステップの大損害を受けて敗退する。まさかローマ軍が敗れる日が訪れるとは。冬営地の選択を誤ったか。
しかしこれでくじけてはいられない。ローマはラビエヌスの軍から1軍団をカエサルの援軍に送り、ラビエヌス自身は、再起して前進してきたアクィタニ族を攻撃しに向かった。いつものように回避を試みるアクィタニ族。しかし損耗により戦闘能力が落ちていたことで、丁度失敗して撃破されてしまう。ガリアもまた、ここで打って出たことを悔やむことになる。
だがガリアもまたくじけず、ヴェルキンゲトリクスとアンビオリクスの軍を統合し、7部族で戦闘コラム最大の巨大な軍がパリシー近辺に睨みを利かせる。ローマはカエサル軍団が行けば、ガリアの軍は逃げるしかないものと思いこんでいた。しかしこれではとても攻撃など仕掛けられず、ケルティカの支配を取り戻しようがない。
では攻囲だ。離れた所ならガリア全軍で攻撃されることはない。カエサルはサントネス族に攻囲を加え1攻囲ポイントを得た。しかしガリアはヴェルキンゲトリクスの軍だけで攻撃してきた。ヴェルキンゲトリクスの戦力に要塞内部の戦力と地域支援を加えると、カエサルの戦力を4コラムも上回る。これにはローマ、到底勝利が見込めず、カエサルは戦いを回避するしかなかった。
カエサルは再びパリシー方面に移動してみるが、ヴェルキンゲトリクスもついて戻る。こうされては手も足も出ない。もうローマ、勝ちようがないのではないか?
決戦
いや、必ず手はある!ここでローマは、カエサルだけでなくラビエヌスも呼び寄せ、ローマの全軍を持って再びサントネスの攻囲に掛かることにした。こうすればガリアも、ヴェルキンゲトリクスの指揮範囲の戦力だけで勝つのは難しい。行軍速度が落ちることになるが、ヴェルキンゲトリクスは指揮能力を超える戦力を従えて、ローマ軍攻撃に向かった。
ローマもガリア軍が来る前に片を付けたかったが、さすがに一撃では落とせない。ただローマは攻囲と同時進行で、隣接するスペースをローマ支配に変え、このプロヴィンスのガリア支配を崩しておいた。そしてガリア軍が到着し、引けないローマはもちろん戦いに応じる。決戦だ!
ガリア軍は最大コラム、ローマ軍は17戦力で、3コラム差である。そして最初のサイの目はローマが勝ちの目。ガリアはローマのリロールを要求する。しかし振り直した目は同じ5だった。悪い目は無いのでローマはリロールを全てパスし、ガリアはさらにエリートを使ってリロールさせる。ところがローマの目は6で、逆にガリアのエリートが追加ダメージを食らう。
前の戦闘では後れを取ったが、今回こそはローマ軍団が底力を見せつけた。しかもガリア軍はローマ支配スペースを通って攻撃せざるを得なかったため、退却時さらに追加損害を受け、全ての部族が減少戦力となってしまった。これはもちろん籠城部隊も同様で、これによってローマの次の攻囲は3対1以上になり、サントネスの要塞は降伏。8個目の部族が除去され、ローマは最後の1VPを得てついに勝者となった。

両者とも考えに考え、息もつかせぬ激しい思考戦となった。その時々で状況を判断し、効率的、効果的な行動を選択して、それによりようやくローマは勝利することができた。
またカエサルの率いるローマ軍団は無敵だと思っていたが、本気で戦いを挑んでくるガリア軍に対しては決して無敵ではなかった。ガリアが強くなる終盤では、冬営で軍を分けすぎてはいけないし、攻囲の時は全軍で集まって反撃に備えることすら必要だった。
その結果、いままで決戦の起こりにくいゲームかと思っていたが、今回の最後は史実のアレシアの戦いのように、攻囲中のローマ軍とガリア救援軍・呼応逆襲軍による決戦で勝敗を決するという、ヒストリカルな戦いになった。ウォーシミュレーションゲームの理想と言える、ゲーム性とシミュレーション性の高度な融合を実現したゲームと言えるのではないだろうか。
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