未踏の地へ
Caesar: Rome vs GaulをY君とやりました。これはハンニバルのデザイナーであるマーク・サイモニッチ氏がデザインしたもので、しかも念願のテーマであるガリア戦記のゲームという、非常に期待度の高いゲームです。
システム的にはハンニバルに限らず今までのカードドリヴンのルールを色々混ぜて、ガリア戦記らしくするルールを加えた感じです。大御所のゲームとあってコンポーネントは異例ずくめで、初版から厚いマウンテッドマップで、カードは大判のタロットカードサイズ、しかもカードスリーブまで付いているという優遇ぶり。あまりにも盛り上げすぎて、肩透かしを食わないか心配になります。
Y君がカエサル、私がガリアでやります。
第1ターン、カエサルは決起したガリア部族の籠る拠点を次々攻撃し、2つ目に至っては1対1の攻撃にも関わらす12を出して一発落ち。好調です。しかしじわじわとあちこち影響を拡大していたガリアは、ここで「ガリアの団結」によって大量10か所の影響マーカーを置き、一挙に勢力を拡大します。そのためローマはこのターンVPを獲得できませんでした。

第2ターン、ガリアは新たに参加した部族の内2つが既にローマに制圧されたプロヴィンスで、出てこれたのは1つだけ。ほとんど手出しできないガリアを尻目に、カエサルはどんどん勢力を広げ、不穏の拡大とクラッススの支援を利用して、プロヴァンシアに近い側のガリア影響マーカーを5つも孤立除去してしまいました。これでローマはケルティカの支配を確立し、1VP獲得です。
第3ターン、ガリアはまた1部族が出られず制圧ボックス送り。カエサル今度はベルギカへ矛先を向け、ガリアは民兵を招集して抵抗しますが、やはり耐えきれず拠点を制圧されます。ガリアはカエサルのいない方面で勢力を拡大しますが、支配を崩すには至りません。ただガリアはゲルマン部族をベルギカに出してローマ影響マーカーを取り除き、そこで出られずにいた部族を蜂起させました。そして最後にカエサルが出したカードは「根こそぎ破壊」!カエサルのいる所と隣接するスペース全てから支配を取り去るという凶悪カードです。これで一気に7つものガリア影響マーカーを取り去り、ローマはベルギカの支配にも成功して、2VPを獲得します。

第4ターン、やや苦しい状況に思えるガリア、今回は3個の部族と共にアンビオリクスが登場しました。カエサルはこの年まずゲルマニアへ侵攻します。しかしその隙にガリアはケルティカで反攻を開始し、さらに「ドルイドの感化」によってプロヴィンスまるごと6ローマ影響マーカーを取り除いて、制圧されていた部族2個に反乱を起こさせます。背後に火の手が上がったカエサルは、ゲルマニア制圧を終えると、慌ててケルティカに舞い戻ります。カエサルは回避に失敗したガリア部族を撃破しますが、その後の攻囲戦では2を出して拠点攻略に失敗してしまいます。ガリア内にはすでに8つものガリア部族が立ち上がっており、状況は難しくなってきました。影響マーカーを背にした部族はサイコロ2個振りの6以上で回避が成功し、これらを野戦で倒していくのは容易でないのです。このターンのローマはベルギカの支配を失いましたが、ゲルマニアと倒した部族により合計4VPの獲得です。
第5ターン、この年遂にガリアには3つの部族と共にヴェルキンゲトリクスが登場。しかもよりによってカエサルはこのタイミングで政争に巻き込まれ、第1ラウンドには出てこれません。このチャンスを生かして勢力境界に待機していたガリア部族は、全ユニットが1移動力で動けるという「三日間行進」で一斉侵攻を仕掛けます。しかし副官のラビエヌスが有能で、ガリアは思ったほど勢力を拡大できず、カエサルが出てくると、勝ち目の無いヴェルキンゲトリクスは南方に逃げ帰ることになります。その後カエサルはアルプス越えの道を開き、南方でちょっかいを出してきたヴェルキンゲトリクスを追い返しますが、他方ガリアはベルギカで勢力を広げていきます。ローマはカエサル道の開通とケルティカ支配で2VPを加えて、合計9VPとなり、勝利まであと3VPとなります。

最終ターン、この年もガリアは3つとも部族が登場します。ローマはあと3VPをどう稼ぐか?ガリアの支配だけではどうやっても2VPまでなので、カエサルは補給切れ覚悟でブリタニア侵攻を決意します。北へ向かうカエサルに対し、ガリアは戦力を統合して立ち塞がります。しかしカエサルに率いられたローマ軍団は強く、ガリア部族は撃退されて、多少の時間稼ぎができたのみ。カエサルはベルギカで勢力を拡大しながらブリタニアを征伐します。
だがこのカエサルが離れた隙を狙い、動いたヴェルキンゲトリクス。まずゲルゴヴィアに入って、最強のアルヴェルニ族を召喚します。続いてカエサルが最初にガリアに足を踏み入れた地アエドゥイに入り、影響を広げていきます。しかしガリアはカードが悪く、1ずつゆっくりとしか進みません。
でもここでカエサルは気付きます。「このまま放置したらケルティカの支配が崩れる。」カエサル自身が行っても間に合わないと判断し、代わりにラビエヌスがケルティカに向かいました。ここでガリアはまず、1アクション+ボーナスで影響を1つ飛ばせる「暴動と暴力を通じての扇動」を出し、ゲルゴヴィアの支配を確立します。それだけならラビエヌスがガリアのプロヴィンス支配を1つ崩してローマの勝ちでしたが、ガリアが次の番に出したのは「ゲルマンの移住」(アクションはやはり1)。ゲルマン人によってセクァニの支配まで崩され、ローマはケルティカの支配を取り戻すのが間に合わなくなり、1VP差でガリアの勝利となりました。

それほど目新しいルールも無く、ハンニバルのように複数戦線がある訳でもないので、やる前はゲームの出来について少し疑念もありましたが、やってみたら非常に良いゲームでした。カエサルが本気で攻めればガリアの拠点は守り切れませんが、あちこちでポコポコ湧いてくる部族にゲリラ戦を掛けられると、全てを倒すことはできず、カエサルは困難な状況に陥ってきます。この感覚はハンニバルよりもHearts & Mindsに近い感じです。カードドリヴンはゲームがおもしろくなるようにカードを上手く作るのが難しいものですが、これについても良くできています。マーク・サイモニッチ氏はもう高齢と思われますし、ガリア戦記は期待のテーマながらゲームにするのが難しいテーマでなかなか良い作品が出てこなかったのに、ここに来てこのような傑作ゲームを出せたというのはすごいことだと思います。
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