勝てないローマと退屈なガリアのために
先日William Walker氏とCaesar: Rome vs. Gaulを、Vassalによるメール対戦で1か月半かけてやりました。彼は世界中のプレイヤーと対戦し、このゲームについての詳細な戦略研究を発表した、言わばカエサルについて世界の英知を集めた人物です。そして私はこれまで十数回カエサルをプレイしてきましたが、ローマが勝ち越しています。
BOARD GAME GEEKを見ると、ローマで勝つのが難しいと感じている人も多いようです。しかしWilliam Walker氏のような優れたプレイヤーと対戦し、幸運によらずにローマで勝つことができれば、ローマは互角以上に戦える強力な証明になります。作戦や選択、読みを詳細に書いたので、ローマが勝てないとかガリアが退屈だとか思っている人は、それが正しいのか是非その目で確認してみてください。William Walker氏がガリア、私がローマです。
図の説明(図をクリックするとより大きい画像が開きます。)
赤線 ローマ軍の移動経路(薄い線は回避)
青線 ガリア軍の移動経路(薄い線は回避)
緑線 ガリア軍の春季召集経路
赤丸 除去・変換されたローマIM
青丸 除去・変換されたガリアIM
青四角 除去された要塞
黄色丸・四角 重要な配置(冬季、イベントなど)
稲妻 攻囲
星 戦闘
第1ターン、カエサルはParisiiからSuessionesと続けて攻囲を行い、Parisiiは服従しSuessionesは倒されました。同時にレガーテはカエサル道の征服を行いますが、互いに持っていたゲルマン部族の移動では先を越され、ローマは1アクション無駄に使わされました。
一方ガリアは、Santones族が強行軍でAquitaniaのローマIMを除去した以外、ガリアの外縁部へのIMの配置に専念しています。これは地味に見えますが、カエサルが中央の部族を攻めるついでに近くのガリアIMを除去・変換できないようにしつつ、BritanniaやGermaniaへの侵攻を妨害しているのです。
そして第6ラウンド、カエサルが2つ目の部族を攻め終えた直後、ガリアは「お前の望むことを信じてよい」をAPとして使い、IMを置いてきました。これは相手の出したカードをキャンセルできる重要なカードなので、普通なら最後まで持ち続けるはずで、彼のような強いプレイヤーが意味無くこんな緊急でない時に出すとは思えません。「どういうことだ?」考えるローマ。

Round6
「これはさらに強いカードを持っているな。多分「元老院怒る」。」ローマは「来た、見た、勝った」を持っていましたが、キャンセルされうる2枚のカードがガリアにあるかどうか分からず、ずっと出さずにいました。しかしそれならば今こそが出し時。
「I take a chance!」カエサルはAtrebatesに進んで軍団をばらまき、ガリアIMを3つとも変換。Britannia侵攻の邪魔を取り除きました。しかしカエサルが離れたこの隙に、ガリアは反乱拡大でAllobrogesの支配を崩し、CarnutesにIMを置いてきます。

Round7
これは何気なく見えて、実は油断できないアクション。うかつなことをしたらいきなり1ターンで負けてしまいかねません。ガリアの最後のカードは本当に元老院なのか?それとも3のカードや他の有用なイベントで、さっきのカードはブラフではないのか?何を持っていても対応できる手はあるのか?ローマは大いに悩みます。
その時ローマに残っていたのは「ローマの賄賂」と「ローマの手が届く」。まず元老院に備えるため、残すのは値が1の「ローマの賄賂」にします。そして「ローマの手が届く」の2アクションで何をすれば最も可能性が高いのか?現状Belgicaは取れないので、Celticaを支配してProvinciaを確保すれば統治で1VPが入ります。すると1つはAllobrogesで、後はCarnutesか?通常ローマは軍団か隣接するIMが無いとガリアにIMを置けないのですが、「ローマの手が届く」だけは例外で、そこにも置けるのです。
こうすれば、もしガリアの最後のカードが予想通り元老院なら、ガリアはローマの賄賂を取って1つしかIMを置けず、支配を増やせずに終わり。もし2以上のカードならガリアは1つ支配を増やせますが、ローマは賄賂を使ってCarnutesの支配を取り、やはりCelticaの支配を取り返します。ディプロマシーで裏返されても同じ。これでいいはず!
果たしてガリア最後のカードは元老院。ガリアはAquitaniaの、ローマはAtrebatesの支配を確立して、戦略フェイズを終えます。今まで一度も役に立ったことの無い「ローマの手が届く」が、初めてローマを助けました。その後ローマ軍団は互いに隣接するように分かれて冬営し、8つのIMを置いてBellovaci,Suessiones,Parisiiの3つの支配を確立します。

Winter
第1ターンから非常に悩ましいハードな展開。来年はどうなってしまうのでしょうか?
第2ターン、ガリアの登場部族は全てBelgica。カエサルはBritanniaに進みたいところですが、ガリアもそれを見越して春季召集でSantones族をProvinciaの隣まで進め、Leuci族による辺境の襲撃でSequani族の再起、扇動でCarnutesのIMを除去と、ローマの背後を脅かしてきます。

Round2
カエサルはこれに関わっていられないので、Carnutesの平定をAntoniusに任せ、自身はまずBritannia侵攻の邪魔になるAtrebates族の鎮圧に向かいます。しかし1回目の攻囲は3を出して効果が無く、結局征服は第4ラウンドまでかかってしまいます。またガリアがGermaniaへの道を全て塞いでしまっているので、このターンに2枚来たゲルマン騎兵を呼べないのも痛い所です。
ガリアは着々とCelticaにIMを増やしており、カエサルがこの状況でBritanniaに進んだら、統治VPが入らず行った意味がなくなってしまうかもしれない。ローマはそう考えました。支配と探索は同じVPが入ったとしても、1回限りである探索に比べて、IMが継続的に残り続ける支配の方が遥かに価値は大きいのです。
カエサルはBritannia侵攻を諦め、Nerviiに進んで「ローマの友」で2つのIMを変換します。そしてAntoniusは空になっているSantonesの要塞を次に攻めようとしていましたが、ガリアはその直前で要塞の隣にIMを置いてきました。「これは、そうか、そのまま攻めたら背後にIMを置かれ、地域支援を付けて退路を切った上で攻撃される。」ガリアの巧妙な作戦にAntoniusは攻撃を諦め、Arverniに向かってそちらのガリア支配を崩すことにしました。
こんな状況の第7ラウンド、ガリアは外交でVolcaeのIMを裏返してきました。「むっ、これは?CelticaとVolcaeの両睨み?」ローマがBelgicaとCelticaを両方支配すれば、9統治ポイントで2VPですが、Volcaeの支配を崩されると1VPに減ってしまいますし、Celticaが崩れれば0VPです。ローマ、これを防げるのか?

Round7
残るローマのカードはガリア側イベントの2と3。ガリアがわざわざここに外交をしてきた以上、もしかすると「長髪のガリア人」か3のカード、少なくとも2のカードはあるでしょう。ガリアはArverniやCadurciの支配を取りに来ることもできるし、Santones族が侵入するか「長髪のガリア人」でVolcaeの支配を崩すこともできます。
ローマはいろいろ考えましたが、これらを100%阻止する方法は見当たりません。それなら少なくともCelticaを100%支配し、できるだけ高い確率でVolcaeを支配できるようにするべきでしょう。あまりに難しくて自信はありませんでしたが、ローマは2のカードを出し、ArverniでIMを変換しつつ、AntoniusをVolcaeに送ります。3のカードが残っているので、おそらくこれで何をされてもArverniの支配は取り戻せて、Volcaeも最悪Antoniusの能力を頼みに戦えば取り戻せるんじゃないかな?
そしてガリアが最後に出してきたのは「Alesia」。ローマの動きを見たガリアは支配を崩せないと判断して、Sequaniの要塞を強化して自動服従しないようにし、カエサルの補給が切れる位置にIMを置きます。ローマはVolcaeとBelgicaでガリアのIMを除去・変換して戦略フェイズを終え、冬営ではBelgicaで5か所とVolcae1か所にIMを置きました。

Winter
ローマは統治こそ最後にぎりぎり成功したものの、弱点を的確に突いたガリアの巧みな作戦によって手数を割かれ、部族は2つしか除去できておらず、BritanniaもGermaniaも取れていません。しかしもしBritanniaに進んでいたら統治VPは取れていなかったと思われ、IM数でも優位にあるので、優劣は不明です。
第3ターン、ガリア部族はBelgica,Celticaに各1つと、ローマIMで埋められてガリア会議に1つです。ガリアは春季召集でCeltica南端の部族2つを1スペースずつ北に進め、Celticaの3つの地域に1つづつIMを置いてきます。「この動きはガリア連合だな。」ガリア連合は、ガリアIMのある各ガリア地域に1つづIMを追加するもので、中盤に使うと最強のカードです。これによってローマのIM優位が一気に崩される可能性がありますが、これに対抗できる方法はあまりありません。

Round2
カエサルはどうしようもないCelticaをひとまず放置し、目の前に連なる目標に向かいます。まずEburones族を倒して入り口を開け、「ローマの取引」を利用しながらGermaniaに侵攻し、最後に出口のTreveri族を倒します。その間ガリアはガリア連合を発動して9個のIMを置き、Parisiiに突入して服従していた部族を呼び出し、「血と婚姻の絆」でさらに1部族を呼び出してやりたい放題です。

Round6
ようやくGermaniaでの仕事を終えたカエサルは、第7ラウンドからCelticaの支配奪還に乗り出しますが、ガリア連合で大量に置かれたIMにより、もうこのターン中に支配を取り戻すのは不可能になっていました。結局Biturigesは奪ったものの、AquitaniaにIMを置いて統治1VPを得るにとどまります。ローマは次ターンでParisiiをいきなり服従させられるよう、カエサルの軍団をBiturigesとCarnutesの4か所のみに分けて冬営させました。

Winter
前半が終わって8VPはローマ悪くないようにも見えますが、除去したガリア部族が4個だけしかないという弱みもあります。もしガリアが亀戦略(部族が要塞から離れない)しか知らないプレイヤーだったら、3ターンで4VP取るのは難しくなく、ローマは簡単に勝てるでしょう。しかしWilliam Walker氏はそんなガリアプレイヤーではありませんでした。
第4ターン、ガリアの部族はCelticaのローマ軍を囲むように登場します。そしてParisiiには現在4戦力にもなる民兵が登場し、ローマは狙っていた服従を阻止されます。非常に難しい状況、ローマはいったいどうすればいいのか?

Round1
カエサルはParisii攻略を民兵がいなくなる来年に回すことにし、それ以外のCeltica部族に対して連続攻撃を開始します。まずはSenonesから、これを落とすと一旦Biturigesに戻り、次はSantones。移動の途中には1軍団を残し、そこを変換して補給線も確保します。そしてこれも落ちると軍団を回収しながらPictonesに動き、今度はAulerciが狙い。カエサルは攻囲前後の2移動力を利用して、無駄のない連続攻囲を仕掛けます。
一方ガリアもこのターンに登場したAmbiorixでRemi族を呼び出し、Nerviiを荒らして北端のローマIMを孤立させ、AtrebatesのIMを取り除きます。さらにRemi族とAquitani族は隣のローマIMを取り除き、とどめに「臆病者を励ます」で6個のIMを配置します。Belgicaはあれだけローマが強固に支配していたのに、あれよあれよという間に支配を覆されてしまいました。恐るべきガリアの反撃。リーダーが入って移動力が1上がるだけで、上手いガリアは全く変わってきます。
そしてSantonesが落ち、6個目の部族が除去されて制限が解除されたその瞬間、ガリアはParisii族をGergoviaに走らせArverni族を召喚します。隙の無いガリアの動きで、ローマは全然楽になりません。
ただこれを行ったガリアのカードは、「お前の望むことを信じてよい」でした。まさかまた元老院も持っている?今ローマは5アクションを行える「クラッススの援助」を持っているので悩みます。しかし今回ガリアにはArverni族を呼び出すという重要な目的があり、他に3のカードが無くてこれを出したのかもしれませんし、前回の件を利用してブラフをしているのかもしれません。またそもそも両方持っている可能性があまり高くありません。そして何よりローマにはクラッススで最後に状況を大きく好転できる秘策がありました。これはリスクを犯す価値があると判断し、ローマはクラッススを持ち続けることにします。そしてカエサルは予定通りAulerciの攻囲に入ります。

Round7
7ラウンド目、ガリアはLabienusをローマに帰らせ、カエサルは途中に残していた軍団も加えて攻囲を続け、Aulerci族を下します。そしてここで注目のガリア最終カード、いったい何?
「ゲルマン人の移動」
ローマは助かりました。さあ、クラッススで最後のアクションだ!カエサルはAulerciからVenetiに入り、ガリアIMを3つとも変換して、ここをローマIMで埋め尽くします。すると、そう、Pictones,Aulerci,ArmoriciのガリアIM6個は全て孤立して除去されるのです。ローマの作戦が成功しました。そしてローマは来年こそParisiiを一撃で落とすべく、カエサル指揮下の軍団を全てCarnutesで冬営させ、冬季ではIMを置かないことにしました。

Winter
さてこれで少し有利になったかなとローマは思い始めていましたが、このVercingetorixがそんなに甘い訳はありませんでした。
第5ターン、ここで打って出ないと、あと3VPくらいローマは楽に稼いでしまうことを、ガリアは十分承知しています。そこでガリアはまず傭兵をParisiiに呼び出すと、登場したVercingetorixでCadurci族とAquitani族を引き連れてVolcaeに侵入し、Crassusの率いる1個軍団を攻撃してきます。いくら地域支援とProvinciaボーナスがついても、10戦力のVercingetorixには勝てそうもないので、Crassusは回避しました。
ローマは最初この攻撃を、取られた土地は後で取り返せばいいと楽観視していました。しかしよく考えてみると、ガリアはCrassusの籠るNarboの都市を1.5対1で攻囲することができます。ガリアはまだ出ていない「計略」や「マルス神への誓い」を持っている可能性も十分あり、都市が1つでも落ちるとローマはNarbonensisの支配を失ってしまうので、実は危険な状況でした。ローマは幸い持っていた「カエサルの副官」でLabienusを呼び戻すと、Sequani攻略のためAeduiに置いていた3個軍団を、Narboの隣まで急行させます。Aeduiもカードは前のターンに出ているので大丈夫です。後はParisiiをこれ以上放置できないので、カエサルは攻囲を開始し、ちょっと予定を狂わされたけどこれでローマ大丈夫かな。

Round1
しかし話はこれではすみませんでした。VercingetorixはVolcaeの2スペースを荒廃させて引き揚げていきます。「そうか、Vercingetorixはこれができるんだった。」これでもはやローマはこのターンVolcaeを支配する術がありません。やられました。これはもう仕方ないので、カエサルはParisii攻囲を継続して陥落させ、Britannicus海に面する2つの部族の中間に移動します。
Parisiiの陥落によりローマは10VPとなり、後はBritanniaに上陸すれば勝利条件に達します。まっすぐBritanniaに向かう手もありましたが、下手をするとガリアが戦力を集めて帰り道を塞ぎ、大損害を受ける可能性があったので、カエサルは一旦途中のBellovaciを攻囲することにしました。
Bellovaci族を倒された上でBritanniaに進まれたらガリアは負けなので、AmbiorixだけでなくVercingetorixもローマ支配地域を避けつつカエサルに向かって移動します。Vercingetorixは精強なArverni族も加えて21戦力もあり、これがやってきたらカエサルも勝てるかどうか分かりません。カエサルは今の内にと攻囲を進め、攻略を完了しました。
これに対してVercingetorixはあくまでBritannia侵攻阻止の構えで、Nerviiまで進んできます。ここまでされると、ローマがこれを破ってBritanniaに上陸するのは容易ではないでしょう。そこでカエサルはVercingetorixから届かないArmoriciに向かい、ここで一発陥落に成功しました。またLabienusも空になっているGergoviaに向かいます。

Round5
NerviiのIMを変換して待つVercingetorixに対し、ここでにらみ合っていてももう得るものが無いカエサルは、強行軍を使って一気にAquitaniaに進んでここのプレゼンスを確保し、Volcaeで失った統治ポイントを埋め合わせます。この動きにVercingetorixも南下してSenonesに入り、中央部に睨みを利かせます。
するとカエサル今度は一転Arverniを通ってAeduiに入り、Vercingetorixがローマの要所に侵攻してくるのを防ぎます。その際イベント防止のためAquitaniaに、服従させるのに必要な戦力のためGergoviaに、それぞれ1軍団づつ残していきます。そしてGergoviaではCrassusが攻囲してArverni族を服従させ、そのまま2軍団をカエサルの元に送り届けます。これで強力だったVercingetorixの戦力も大分弱まりました。
そしてガリア最後のカード。ローマは元老院を警戒して最後に残すのは1のカードにしていましたが、出てきたのは「北極星のごとく揺るがず」でした。ガリアは3APを使ってVercingetorix単独でCarnutesに入り、IMを除去した上でCarnutes族を呼び出します。
ローマ最後のカードは「ローマの味方」。カエサルはSenonesにいる3部族かLingonesの要塞を攻撃することもできますが、互いに隣接して回避・迎撃できるようにしてあるので、成功率は高くありません。ローマはこれらを攻撃せずに、Gergoviaの隣接地を影響下において戦略フェイズを終えます。ローマは冬営で全軍団をArverniとSantones内の隣接する3スペースに置き、Gergoviaに1つだけIMを置きます。

Round8
攻囲と対峙と長距離移動が複雑に絡み合う大機動戦。戦闘も起こりそうで起こらないのは、互いにぎりぎりの線を読み合っているからであり、直接戦闘以上に激しい心理戦がその裏にはあります。すばらしく良い勝負。そしてこのような勝負ができるカエサルというゲームもまた、すばらしく良いゲームなのです。
VPについては確かにローマあと一歩まで迫っています。しかしガリアも多くの部族が要所に存在しており、3統治ポイント以下になるとVPに関わらずローマが負けるルールと相まって、全く油断はできません。
そしてついに最終ターン、ガリアはいきなり「元老院怒る」。最終ターンではほぼ持っていることがローマに分かるので、良いカードを先に使われないようまず出してきました。そして持って行ったのは「戦いのトランペット」。春季召集と組み合わせて使うと強力ですが、途中ではそんなに強くないのではと、その時のローマは思っていました。
そしてガリアは空いているVolcaeをまた荒らし、さらに大胆にもAmbiorixでカエサルの目の前のAeduiまで進出してきます。これはカエサルに攻撃されて危険そうにも見えますが、Ambiorixの軍には2つのCeltica部族が隣接しており、この2つが迎撃に成功すると23戦力にもなって、カエサルも簡単には勝てないようになっているのです。

Round1
ここでローマ、戦闘はリスクが大きいことだけでなく、Vercingetorixを放置するとProvinciaを荒らされるため、南方に向かうことにしました。まずカエサルがCadurciの要塞へ進み、Labienusはカエサルの補給のため2個軍団を途中に残すと、Vercingetorixに隣接する砦に進んで東への移動を阻止します。
そこでVercingetorixは反対側のAquitania北端へ逃げますが、カエサルはCadurciの包囲をLabienusに引き継ぐと、退路を断ちながらこれを追跡。逃げきれなくなったVercingetorixはAquitaniaの要塞に回避し、カエサルはこれを攻囲して1攻囲ポイントを得ます。
しかしガリアは全く怯みません。計略で攻囲ポイントを取り除いた上で、Ambiorixで逆にProvinciaに攻め入ってきました。

Round3
何があろうとローマは攻囲を続けるしかありません。まずカエサルは2ポイント、Labienusも1ポイントの攻囲ポイントを獲得します。
すると何とAmbiorixは、補給切れ覚悟でNarbonensisに突っ込んできます。Ambiorixは損耗してもなお13戦力あるので、ローマが何もしなければArelateを服従させることができるのです。全くローマの予想を超える攻撃でした。
この危機に際して、ローマはまずカエサルに攻囲をさせてみます。1損害を受けたものの無事攻囲を完了できたので、カエサルはCadurciの攻囲を引き継ぎ、LabienusはArelateの救援に駆けつけます。さすがにここまで来れば、後はCadurciの陥落を待ってローマの勝ちでは?

Round4
ありませんでした。ガリアはここで満を持して「戦いのトランペット」。後方から全軍を呼び寄せ、Narbonensisでは軍を散開させて、支配を崩しつつ補給切れ損耗を回避します。
予想外の連続。トランペットをここまで生かせるとは。このNarbonensis支配の喪失により、ローマはガリアの軍を追い出さないと負けてしまいます。確かにローマの全軍に勝つにはガリア軍は十分ではないでしょう。しかしこれはここで勝てる可能性のある唯一の作戦。普通の人なら投了しているだろうこの状況で、なおそれをひねり出す構想力がすばらしいです。
もし今あせってLabienusの軍だけで攻撃しても、迎撃でガリア軍を統合され勝算は十分とは言えません。ローマは確実を期し、カエサルが攻囲を終え援軍に駆けつけるのを待ちます。
その間にガリアは残りの部族も呼び寄せ、最終決戦の準備が整います。カエサルはLabienusの軍を統合し、ガリアの軍に突入します。ガリアは損耗していない片方だけが迎撃に成功し、15戦力。ローマはProvinciaボーナスを入れて21戦力。カエサルの能力にはガリア軍の奮戦も及ばず、この戦いでローマの勝ちが決します。
もし前のターンにArverni族を服従させていなかったら、状況はローマにとって遥かに危険なものになっていたでしょう。そしてそれができたのはBritannia方面にVercingetorixを誘引できたためであり、それは遡って第2ターンにローマが目の前のBritanniaではなくガリアの支配を優先したことが、巡り巡って効いているのです。何という深いゲームなのでしょうか。

Round6
最後にローマは侵入してきたガリア部族を全て倒し、長い長いゲームは終わりました。
まずWilliam Walker氏は非常に強いプレイヤーで、本当に一手たりとも気の抜けないすばらしいプレイでした。私も多くのプレイをしてきましたが、ここまで神経をすり減らしたことはありません。特にProvinciaへの侵攻が凄まじく、対応に悩まされました。
そしてこのゲームは本当にバランスが完璧で、両者とも多様な手が取れて、考えることも多く深く、間違いなく最高傑作であるという事が確認できました。このように序盤の布石合戦から中盤のゲリラ戦、そして終盤の主力決戦まで、切れ目なく移り変わっていく美しいゲームは他に例を見ません。
ここまで読んできて実例を見て、必要ならさらに戦略研究を読んで、それでもなおローマは勝てないと思っていますか?ガリアは退屈だと思っていますか?
そんなことは絶対にありません!ガリアはこれほどまでやってようやく互角です。もしガリアが亀戦略しか使わなければ、ローマは簡単に勝ってしまいます。そしてガリアが勝つには、退屈とはほど遠い複雑で多様な戦略を考えなければならないのです。
もしローマがガリアと同じようにIMの置き合いで競っていたならば、カードの数字は両者同じで、IMをたくさん置けるイベントの多いガリアに勝てないのは当然です。ローマはカエサルの移動力を生かしてガリアのIMを除去、変換し、孤立させ、冬季で多くのIMを置いて、それを覆していかなければなりません。そしてそれと攻囲と探索を合わせていかに効率よく行うかが前半の勝負であり、ローマがきちんとやればIM数競争でガリアはほぼ勝てません。それは亀戦略が破綻していることを意味します。
この完成されたゲームのバランスをローマ有利に変更するなど全くあり得ない話です。ローマに1VPを加える?ローマは100%勝ってしまいます。ローマにIMを追加する?もう一度上の画像を見てください。IM数が常にこれほど優勢なのに、どれだけ欲しがりなんですか。ローマ軍団を強くする?ガリアはローマ軍と戦闘する気を無くし、今回のような興味深い勝負は全くできなくなります。
デザイナーの方たち、北極星のごとく揺るがず、あなた方のデザインとディベロップを信じて良いです。プレイヤーの方たち、今のままが最高です。ぜひ最高のゲームを最高のまま楽しんでください。
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