不死身の愛
遠い昔に倒された偉大なネクロマンサー、パドレック・ダー・コイムは、ヴァンパイアの王トル・モーンと、恐怖の女王の化身メザールを味方につけ、再び人類に死の恐怖を教えんとしていた。彼を倒した帝国は今や分裂し弱体化しており、恐怖の再来に備えているものは少なかった。
昔のアヴァロンヒルのファンタジーゲーム、ダークエンペラーを手に入れたのでやってみました。このゲームはまずネクロマンサーが不死のヴァンパイアを先兵として侵攻し、人類の王国を一つずつ自分の支配下に収めていきます。そして恐怖の女王は弱い心の持ち主に近づき、彼らを操っていきますが、操られた者たちもいずれネクロマンサーの野望のために殺されるか家畜となる運命にあります。そして分裂した人類の王国は、これを察知した者たちによって少しづつ目覚めさせられ、ネクロマンサーに対して反撃ののろしを上げるのです。
参戦した王国は、国力によって兵力を招集し移動戦闘を行いますが、移動すると必ず移動した距離、地形、移動タイプに応じた損耗のチェックを受けます。ただこれは軍の大小に関わらず同じ数の損耗を受けるので、小部隊の方が損耗率が高いという独特のシステムとなっています。一方ヴァンパイアは支配している国力に応じた数まで復活・増殖ができ、都市から市民の血を吸って出てきます。ただし最初に出てきた偉大なヴァンパイアより増える場合、出てくるのは劣ったヴァンパイア(吸血によってヴァンパイアになった人間)となります。
他にも数々の魔法や、探索によって出てくるマジックアイテムとモンスター(味方にしたり、倒してヒーロー能力を上げたりできる)、外交では王国以外にも傭兵を味方にすることもできます。そしてネクロマンサーたちは倒した敵や死体の眠る古戦場に死の魔法をかけ、アンデッドとして配下にすることができます。一方王国の中には生命の魔法使いがおり、魔法が成功するとその場のアンデッドまたは劣ったヴァンパイアを全て倒すなど、ネクロマンサーと戦う強力な能力を持っています。
勝敗は14ターンの終了時にネクロマンサーがどれだけの国力を持っているかで決まりますが、本来なら不死身のネクロマンサーが魔剣によって永久に殺されたら王国側の決定的勝利、旧帝国を支配したらネクロマンサーの決定的勝利となります。なおこのゲームは結構問題点があるので自作ルールを使用して行いましたが、そのうち王国側の外交修正についてはターン数−7、Zolahaureslorの外交修正は−4,−2として、今回はやってみます。Y君が王国、私がネクロマンサーです。
まず最初の大きな選択は、ネクロマンサーをどこに登場させるかです。天敵である旧帝国Zolahaureslorや、潜在的な味方であるTal platorに攻めるのは問題外ですが、都市が広く散在して征服しにくくリーダーも複数いて一撃で殺せないAhautsieronも悪い選択です。Stavrorはリーダーが最も殺しやすく征服した場合の国力も大きいので魅力的ですが、国が広く国力も大きいので兵力が急速に増強されて征服には時間がかかりそうです。
一方小国のThe scythe、Ferlarie、Lammarechはリーダーも1人で殺しやすく、国も小さいので征服しやすいですが、国力が小さいので征服後にもう一国手に入れないとヴァンパイアを補充できません。そのため外交でTal pletorを取った後、これをすぐ裏切りで奪って補充力を加える手も考えられます。
同じ小国でもStar keepは、強力な外交魔法の持ち主The keeperを殺せると、王国側の外交を大幅に遅らせられるメリットがあります。しかしThe keeperは能力が高くて死ににくく、Star keepは非常に国力が小さいのに周りの国は大きくて次の侵攻が難しいので、かなりリスクが高いです。Loymarechもリーダーが1人で、これを殺せるとネクロマンサーにとって脅威となるロスロムの剣を奪えるというメリットがあります。しかし首都が山城なので攻めにくく、やはり国力が非常に小さいのでその後の侵攻が少し大変と、それ相応のデメリットもあります。
そして残るKelaron oiretですが、ここは中程度の国力で、支配するとヴァンパイアを9ユニット維持できる割に、都市が少なくて占領しやすくなっています。またリーダーが3人もいる上、その1人は第1ターンだと死ににくいという難点がありますが、放っておくと王国側につきやすい国ということもあって、今回ネクロマンサーはここを最初に攻めることにしました。

突如帝国の北東の王国Kelaron oiretにパドレック・ダー・コイム・ザ・ネクロマンサーとその配下は現れ、次々と都市を落として瞬く間にこの王国を支配下に置いた。そこから逃げ延びた王女らは、兼ねてよりネクロマンサーの復活に備えていていた南のStar keepへと走り、その指導者The keeperはまず東の大国Ahautsieronを呼び起こして備えを固めさせた。一方恐怖の女王は北西の異分子Tal platorの心を囚え、人類を背後から襲う内通者とした。
ここでダー・コイムとトル・モーンは、愚かにも逆らってきたAhautsieronを征伐するため南進したかった。しかしレイズデッドの失敗で攻城兵器を運ぶ船が無かったため、まずダー・コイムは近くの古海戦場で幽霊船を招集した。そしてトル・モーンは封印を探索して魔法封じのシルクを手に入れたが、これは南の大国Stavrorの取り込みにかかっていた恐怖の女王へと送られ、外交魔法の使い手The keeperの介入を封じた。これによりStavrorはその後ネクロマンサー側に落ちることとなる。
不死身のネクロマンサーすらも永遠に滅ぼせる魔剣ロスロムを守っていたLoymarechが、王国側についたのはそんな折だった。そして魔剣は安全な所へ持ち出されたため、ネクロマンサーがここの攻撃を考える余地はもう無くなった。ヴァンパイアの部隊は迷わず海を越えAhautsieronを目指して飛び立っていく。Ahautsieronは大国だったが、死のルーンを操るネクロマンサー相手にはリーダーもいつ殺されるか分からず、そうは持ちこたえられそうもない。ダー・コイムが南の古戦場でアンデッドを招集し、トル・モーンが封印から水の竜Ssstothを呼び出して首都が危険になると、王国は主力を首都に引き揚げ沿岸の都市はあっさり陥落した。

(左端を進むヴァンパイアとアンデッド。右手の2つのピンクダイヤはネクロマンサーの傀儡となった国で、左手の3つのダイヤはネクロマンサーと戦うため立ち上がった王国。上の図とは上下逆。)
補充拠点となる都市が落ちれば、もうネクロマンサーの侵攻を止める術などない。王国は、ヴァンパイア、水竜、さらには西からのStavrorと傭兵Hound mastarの合同軍、そして闇の力に手懐けられたモンスターThe slugの攻撃まで受け、支えきれずにネクロマンサーに屈した。そしてネクロマンサーの次の目標はStar keep。このずっとネクロマンサーに備えてきた国も軍事力には乏しく、ヴァンパイアの攻撃にはひとたまりも無かった。
これにより故郷を失ったThe keeperだったが、それまで彼はずっと精力的に各王国を説き伏せてきていた。しかし旧帝国Zolahaureslorだけはなぜか決して首を縦に振らないでいた。それはStavrorを従わせた後、魔法封じのシルクを持ったメザールがずっと旧帝国に張り付いて、The keeperの説得魔法を弾き続けていたからだった。しかしその旧帝国もStar keep陥落を見てついに動いた。
分裂し衰えたとは言え、ここにはデス・ルーンに対抗できるライフ・ルーンの使い手「白い手のケビル」、歴戦の勇者ファーノンと帝国の杖による最強の指揮能力、そして強力な帝国軍団兵が揃っている。さらに南西の海洋国FerlarieはStavrorに侵攻し、北西のロック鳥乗りの国The scytheは封印を探索して、ヴァンパイアを弱らせる夜明けのランタンを手に入れていた。これにはいかなネクロマンサーと偉大なヴァンパイアといえど、簡単には手を出せないだろう。
そして帝国軍は立ち上がるや否や、すぐさまネクロマンサーに奪われたAhautsieronの首都に駆けつける。ここは多くのアンデッドやハウンドに守られており、帝国軍には攻城兵器も無かったが、そんなことは問題ではなかった。ライフ・ルーンでアンデッドらは消し去られ、アース・ルーンで都市の防壁も破られる。残されたハウンドの抵抗など虚しく蹴散らされ、首都は解放された。
こうして強力な帝国軍の反撃の第一歩は大成功に終わった。しかし帝国本隊は強力だが一つしかなく、行軍の度の消耗も国外では補充を受けられないので、今後も順調に進めるかは分からない。これが、都市を取ればどこでも補充を受けられ、戦えばアンデッドまで招集して、進撃を続けられるヴァンパイア・ネクロマンサーたちとの違いだ。果たして帝国の反撃は間に合うのであろうか?

(左側の2つに分けた大スタックが帝国本隊で、中央の島にいるのがヴァンパイアとネクロマンサー主力。島の右側の1ユニットがネクロマンサーで、部隊はマップ外のボックスに置かれている。右側の大スタックはネクロマンサー側傀儡のStavror軍。手前が旧帝国Zolahaureslor。)
広い範囲でのヘクス移動と生産により意外とテンポが遅く時間のかかるゲームだったので、今回は第10ターンに帝国が自動参戦したところまでで終わりにしました。人類が気付く前に支配を広げようとするネクロマンサー対それに対して徐々に立ち上がっていく人類というゲーム性は、自作ルールと合わさってだいたい機能し、暫定的外交修正のバランスも概ね良くて、もう少し微調整すればいい程度と思います。ただ外交の運の影響は結構大きいようです。後はこの煩雑さやテンポの悪さが慣れることで改善するかどうかと、何度もやれるほどの奥深さがあるかどうかでしょう。
今回ネクロマンサーは北東から攻め始め東側で広がりましたが、最後はStar keepを放置してStavror簒奪のために西に向かった方が良かったのかもしれません。ネクロマンサーの勝利条件に入るのは、あくまでネクロマンサーが直接支配している所だけで、傀儡国が支配している所は含まれません。そのためどこかで裏切って国を奪わなければなりませんが、今回の終了時点からStavrorに向かっても、全てを奪うには間に合わなそうです。そういう点ではネクロマンサーは北西の小国から侵攻を始め、傀儡国を早めに乗っ取って行くのも一法なのかもしれません。
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