The Civil War (VG) 所感
みつけさんと大作The Civil Warをやってみました。私は昔友人から譲り受けたものの、あまりの面倒さにTさんに譲ったままになっていました。ところが最近みつけさんが実はウォーゲームをやっていたことがわかり、これを持っているというので、初めての対戦にこぎ着けました。みつけさんも対人戦は初めてだそうです。
今回はオプションなしで、キャンペーンとしてできるところまでやり、私が北軍、みつけさんが南軍ということにしました。
The Civil Warのキャンペーンは、いきなりウエストヴァージニアとミズーリ州が北軍の手に落ちるかどうかの瀬戸際から始まります。ウエストヴァージニアの支配は、実質最初のイニシアチブをどちらが取るかで決まり、今回は北軍のものとなりました。史実通りマクレランがまだ無名のリーを打ち破ったようです。
次にミズーリの支配を巡って、南軍のプライスが北軍のライアンを攻撃しこれを撃破します。こちらは史実と異なりライアンが生き残って、ミズーリは中立を保つことになりました。その後南軍はここに増援を送り続けたため、その日のプレイではついに北軍はここを支配できませんでした。
第2ターンになると、北軍には3強グラント、シャーマン、トーマスが低い階級で登場します。第4ターンに登場する南軍の最強将軍リーは、史実ではマクレランが食い止めましたが、このゲームのマクレランは異常に過小評価されており、リーには歯が立ちません。したがって北軍としては、リーが登場するまでに、この3強を軍指令官に昇進させることが最優先課題になります。
昇進の条件は戦闘に参加し戦死傷しないことですが、第2ターンはケンタッキー州に入れないので、西部では昇進できません。またミシシッピ以西では、南軍の部隊が少ないので、逃げられたら終わりです。したがって昇進させたい将軍は東部で戦闘させなければなりません。
そこで北軍はまず、第1ターン中にワシントンに作っておいたポトマック軍に、最優先でこのターン登場の将軍を送り込んでいきます。しかし引きが悪く、3人を出すのに全員引く羽目になりました。このゲームではいつターンが終わるか判らないので、ひやひやものです。
ようやく準備が整ったポトマック軍はシェナンドゥ渓谷にいた小部隊を攻撃し、3人の昇進条件を満たします。3人はいずれも戦死傷チェックにかからず無事昇進しました。
南軍はその間砦を構築したり、北ヴァージニア軍を編成したりして防御を固めます。
第3ターン北軍は昇進した3強をポトマック軍に入れると、不利な地形修正も度外視して、昇進目的の攻撃を北ヴァージニア軍にしかけます。しかしここでシャーマンは戦死してしまいます。
北軍はケンタッキーの支配に成功しますが、南軍もメンフィスを要塞化するなど、防御態勢は整いつつあります。
第4ターンにリーが北ヴァージニア軍に入ると、もはや昇進目的の戦闘も必要がないので、東部戦線は互いに砦を作るだけで手の出しようが無くなります。コマンドポイントがあまるので、北軍はサウスカロライナに部隊を上陸させて幾つか都市を奪いますが、州の支配を奪うには至りません。
ポトマック軍をトーマスに任せて転任してきたグラントが、西部で前進しメンフィスを攻撃してみましたが、やはり要塞は堅く攻撃ははかどりません。
こんな所で時間切れとなりプレイを終了しました。プレイも割とスムーズに進み、中立州の争奪や、不規則に延びたり縮んだりするターンに備えて何を優先してやるか考える所など、なかなかおもしろいゲームでした。
このゲームでは増援の投入もアクションの中で行います。普通に考えれば増援を優先した方がいいように見えますが、ターンが途中で終わった場合、増援は次ターンに繰り越せるのに、コマンドポイントは失われるので、どちらを先にすべきかは一概に言えません。また序盤は陣地化や戦力の集結などしたいことも多く、結構考えさせられます。
ただこのゲームの東部戦線は、序盤の昇進目的の戦闘以外ではほとんど動きません。ワシントンは、第1ターンから要塞(戦闘2コラムシフトの上、補給が切れない限り退却無視)を作って戦力を集めれば難攻不落で、南軍がワシントン占領によるサドンデスを狙うのはほぼ不可能です。
南軍がワシントンの孤立で2VPを狙うのも、大きなコストとリスクに全く見合わないポイントしか入らず、やる価値はないでしょう。これを実行しようとすれば、敵を打ち破れるほどの十分な戦力の軍を送らなければなりません。しかし軍で侵入して補給を切られると、戦闘で自動的に士気喪失となり、敵戦力のいる所に入れなくなります。1戦力を並べて退路を絶たれると、逃げることも回復することもできません。何もできずただ毎ターン1戦力ずつ失うことになり、ゲームは終わってしまいます。
北軍としても、リッチモンドは攻めるのが大変な割にただの5VPに過ぎませんし、他に大きな目標もないので、わざわざこの方面で攻めないでしょう。すると互いにコマンドが余って砦を作りはじめるので、なおさら東部戦線は動けなくなります。
他の地域では南軍が北部に侵攻するメリットは設定されていないので、南軍はほとんど守勢に徹することになります。するとゲームの流れは、ほぼ北軍の戦略で決まることになるでしょう。
このゲームではヘクス制でどこへでも行けるので、北軍の戦略の幅は広そうに見えますが、補給を考えると主攻勢は河川か鉄道沿い以外困難です。特にミシシッピ河沿いは、地形、補給の面で有利で、支配に成功すると大きなメリットが設定がされています。そのため陸路での攻撃は、ミシシッピ河沿いに南下する北軍と、それを要塞で待ち受ける南軍という展開に、だいたい決まってくるように思われます。そうすると両軍は膠着した東部戦線を捨てて、有能な将軍をミシシッピ河戦線に送り始めるでしょう。
しかしこのゲームでは、海からの攻撃が強力です。実際にグラントがやったようなミシシッピ河での軍上陸ができない反面、海側ならどこにでも大規模な軍を輸送できることになっています。そのため、東部に戦力が余り始めると、北軍は小規模なジェームズ軍にワシントンの防衛を任せ(軍自体は戦力上限があるが、防御の時はいくらでもスタックしている戦力を使える)、強力なポトマック軍を南部の心臓部に上陸させるでしょう。
ルール上、軍で強襲上陸はできませんが、普通の部隊で上陸した所に輸送することはできます。海軍コマンド量とイニシアチブ数が許せば、1回のパルスで上陸、輸送することも可能です。
ほとんど無防備の背後に突然10万人以上の大軍が現れたら、南軍は対応のしようがないでしょう。少々の守備兵力はみなオーバーランされてしまいます。しかもこの軍は、都合次第でいつでもどこへでも再輸送できるのですから、全く手に負えません。
しかし南軍は南軍で北軍と同じだけアクションを行えるので、無理に正面から立ち向かわず、主力のいなくなった所で都市を取り返していけば、かなり粘れると思います。バンドーンとフォレストを組み合わせた、絶対回避に成功する軍で、北軍の背後をうろうろさせるのは有効でしょう。
さて実際このゲームのキャンペーンを最後までやろうと思うと、どうなのでしょうか。まず今回つまずきもなく進んだにもかかわず、5時間で4ターンしかできませんでした。このペースで最後までやると、プレイ時間は約24時間、慣れても20時間はかかるでしょう。かなり大変です。
それでも最後までおもしろさが持続するならいいのですが、このゲームでは、中立州の争奪、有力な将軍の登場といったクライマックスが、いきなり最初の4ターンでほぼ出尽くしてしまいます。戦術的にはいろいろ考え所もありますが、戦略的な流れは前述のように、軍の海上機動以外、動く所が限られたじりじりした展開が予想され、イベントもなく、ひたすら盤上のVP都市を取っていくだけとなりそうです。
これでは残りの15ターンも今回のようなおもしろさが持続するとは思いがたく、キャンペーンを最後までやるのはかなりきつい気がします。特に守っているだけの南軍は、つらいのではないでしょうか。
このあたり後発のFor the People(GMT,2000年版)は、様々な戦意(勝利得点に似た効果を持つ)増減方法と複数の絡み合った勝利条件や、たくさんのイベントに加えて、全13ターンの内、第4ターンにリー、第7ターンにグラント、第10ターンにシャーマンと段階的に強力な将軍が登場して、飽きさせないどころかどんどん盛り上がっていき、南軍も最後まで楽しめるよううまく作ってあります。
それからThe Civil Warの最大の特徴である将軍の昇進ルールですが、正直不合理だと思います。本来分かるはずがないのに、将来有能な軍司令官になる将軍を知った上で、その将軍を昇進させることだけが目的という異常な戦闘が、序盤では普通になります。一旦昇進資格を得ると、今度は昇進する前に戦死させることを狙った戦闘を、相手がしかけてくるかもしれません。
これが無ければ戦闘の起こりそうもない東部戦線で戦闘を起こさせる効果はあり、駆け引きはそれなりにおもしろいですが、歴史的には全く不自然です。しかもグラント、シャーマンあるいはトーマスの戦死の運の影響が、大きくなりすぎます。駒の管理がめんどうな上に、歴史的には不条理で、ゲームとしてもバランスを崩しやすいこの昇進ルールは、やはりいまいちな印象です。
そしてThe Civil Warのもうひとつの特徴である海軍ルールですが、確かに北軍の勝利に最も貢献した海軍を、ユニットとして使いたいという考えも一理あります。しかし南軍の装甲艦は、貴重な任意コマンドを払って登場させても、すぐに強力な北軍艦隊に潰されるだけです。陸海共同戦闘も、わずか数戦力を追加するだけのために、2コマンドポイントと貴重な海軍指揮官の戦死リスクを払ってまで使うことは少ないでしょう。全体として手間の割に得るものが少ないルールに思われます。
結局The Civil Warを特徴づける海軍と昇進のルールは、蛇足の印象を拭えません。また動かない東部戦線と飛び回るポトマック軍、誤ったマクレランの評価、序盤から軍指令官になる(あるいは死ぬ)グラント、シャーマン、そして何よりも戦意の戦いであるという南北戦争の本質が抜けていることなど、歴史性でも特に優れているとは言えません。そして昇進と補給と移動力の縛りから、前述の流れ以外の展開は考えにくく、ゲーム性(戦略性)ではFor the Peopleにかないません。
結論としてThe Civil Warは、当時としては良くできたゲームと言えるものの、今や蛇足を削り革新的なアイディアを加えたFor the Peopleには及ばないと思います。
しかしキャンペーンを数回はやらないとなかなかその本当のおもしろさが解りにくいFor the Peopleと違い、The Civil Warは前述のようにいきなりクライマックスから始まり、ゲームの目標がほぼVP都市に限られてわかりやすいので、初めてでも、最終ターンまでできなくても、十分楽しめます。ルールが難しいので全くの初心者には向かないと思いますが、ベテランのウォーゲーマーが南北戦争を初めて体験してみるのには、丁度いいのではないでしょうか。
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