湖中の火事〜ゲリラがもこもこ〜
Fire in the lakeをやりました。このゲームは、COINシリーズと呼ばれる反乱軍対鎮圧軍の戦いを、立場の違う4人でプレイするシリーズの新しいもので、今回はベトナム戦争がテーマです。いかにもドイツゲーム的コンポーネントとサイコロをほとんど使わないらしいことから、ウォーシミュレーションゲームではないんじゃないかと今までこのシリーズには手を出していませんでした。しかし今回比較的分かりやすいテーマのベトナム戦争ということで初めてやってみました。
このゲームのユニットには立方体で表される正規軍(共和国には警察もある)の他に、円盤状の基地、六角柱のゲリラ、特殊部隊があります。正規軍が攻撃すると相手は一定の比率で損害を受けますが、潜伏中のゲリラは影響を受けず、それらが残っている限り基地も破壊できません。また攻撃目標がアメリカの軍か基地の場合は攻撃側も同数の損害を受けますが、それ以外は攻撃側に損害はありません。
北ベトナム軍は移動と攻撃を同時には行えませんが山岳では地形による防御効果を得ることができるのに対し、共和国は6ユニットまでの輸送攻撃ができ、アメリカにいたっては場所も戦力も無制限の空輸攻撃ができる上、空爆を要請できたり基地があると地形無視で攻撃力が倍増したり強力です。当然ながらベトコンにはゲリラしかありません。
ゲリラは正規軍に対する攻撃力は弱いですが、テロや共和国の寝返りなど色々な特殊活動に役立ちます。また特殊部隊は潜伏中のゲリラでも直接攻撃できる能力があります。
各陣営はそれぞれ4つの作戦と3つの特殊活動をもっており、1回のアクションではそれぞれ1つずを行うか、そのラウンドのイベントを行うかできます。ただし1ラウンドには2人までしかアクションできず、同じプレイヤーは2ラウンド続けてアクションできません。また同じラウンドでは2人とも同種のアクションは行えず、例えば第1プレイヤーが作戦+特殊活動をした場合、第2プレイヤーはイベントか1スペースのみの限定作戦しか行えません。
勝利条件は4つの陣営で皆異なっており、政情の安定による部隊の引き揚げと民衆の支持を求めるアメリカ、支持はいらないから支配人口の拡大と援助の横領を目論む共和国、基地の増加と南への支配拡大を狙う北ベトナム、基地を増やし民衆を反政府へと導くことを企むベトコンと、表面上は味方の反乱側同士、鎮圧側同士でも、目指すものは全く異なる同床異夢となっています。
勝利判定はクーデターカードが出た時のみ行われ、最終クーカードでも勝利者が出ないときはクーラウンド(収入や支持の変更、再配置などをする)終了後、勝利条件に一番近い人が勝ちになります。また次のカードが常に公開されており、クーカードの直前はモンスーンとなって、駆け込み大攻勢が一部制限されるようになっています。

今回はたかさんがアメリカ、はやるさんが共和国、かさいさんが北ベトナム、私がベトコンとなります。シナリオは初期の3年を扱うショートシナリオです。
あまりに独特で使い分けが難しいアクションに皆苦慮しながら、序盤は思い思いに戦力増強、収入増加、勝利ポイント獲得にいそしみます。特に北ベトナムは初めのころにホーチミンルートの改良に有利なカードを獲得します。
私の持つベトコンは他に比べてあまりに初期戦力が少なく、今行動を起こしてもどうにもならない気がしたので、序盤はゲリラ増大と徴税を中心に行動しました。すると比較的早い時期にクーが起こり、その直前のモンスーンには私が第1プレイヤーになれました。クーラウンドでは暴露したゲリラが皆潜伏状態に戻れるので、露出を気にせず大々的にテロ&徴税(実質は略奪?)を行います。
さて次の年に入ると、アメリカがイベントで爆撃の休止を宣言します。これにより次のクーまで爆撃できなくなる代わりに、アメリカは2エリアを消極支持に変え、共和国は2のパトロネイジを得ます。当然狙われるのは人口2で積極敵対のエリアで、あおりを食ったベトコンはVP8を失って大きく後退し、鎮圧側が勝利に近づきます。
さらに少しするとアメリカには強襲上陸のカードが見えます。これは海に隣接するエリア(かなりのエリアが含まれる)で自由に軍を移動し、その1エリアで掃討と強攻を同時に行えるというもの。ベトコンにとっては1エリアが基地ごと全滅させられうる恐ろしいカードです。
幸いここで作戦できた私は、リスクを軽減するため沿岸のゲリラを近くの安全に行軍可能なエリアや連絡道路に移動し、ついでにアメリカに待ち伏せ攻撃(道路からだと隣のエリアに行える)をしかけます。これはこのラウンドのイベントが、「アメリカの負傷が2以下の場合、3個をプレイ外から可能に戻す」というもので、放置するとアメリカが勝利条件を満たすので、前のラウンドから北ベトナムと協力して阻止しようとしていたものです。たいした効果の無くなったアメリカは、わざわざ出遅れているベトコンを叩くために上陸イベントを選びませんでした。
そして2枚目のクーが見えたとき、またしてもベトコンは1番プレイヤーの権利を持っており、再びノーリスクのテロ&徴税を行います。さきほどの上陸逃れの散開で広がっていたベトコンは大きな成果を挙げ、これでまたかなり他のプレイヤーに追いついてきました。
3年目に入るといつゲームが終わってもおかしくありません。反乱側、鎮圧側など関係なく、皆自分のVPを優先しなければなりません。ここで大きく動いたのは大戦力を蓄えていた北ベトナムでした。ラオス、カンボジアの基地から、大軍が一斉に南ベトナムの南部と北部になだれ込み、そこを支配下に置きます。これで北ベトナムは勝利条件を越え、クーラウンドが来れば勝利です。
幸い一発でクーカードが出ることはなく、ここで唯一これだけの戦力を止める力を持っているアメリカがまず動きます。強攻と空爆で2エリアを攻撃し、1エリアの北ベトナム軍を吹き飛ばします。爆撃は支持を下げるのであまりしたくない所ですが、背に腹は代えられません。しかしそれでも山岳の防御力は高くてもう1エリアは残り、まだ勝利条件を下回らせることができません。
そしてここでクーカード!アクション可能なのは共和国、ベトコンで、まず共和国が動きます。ここは輸送&攻撃で逆転したいところでしたが、ベトコンゲリラがあちこちの道路を封鎖したままになっていて、共和国は思ったように動けません。結局一部地域を北ベトナムから取り返すものの、勝利条件までは届きませんでした。ベトコンも限定作戦では大したことはできず、1箇所でテロを起こして終わります。
誰も勝利条件を達成していないので、最終判定に向けてクーラウンドを行います。まず鎮圧側の支持拡大ですが、よく見てみるとアメリカが上げられる所が1つもありません。もちろん共和国がアメリカのために上げてやったりはしませんし、ベトコン阻止のために敵対を減らせるところもありません。逆にベトコンはアジテーションで2箇所下げ、ちょうと勝利条件に届きます。そして共和国と北ベトナムの再配置合戦ですが、これはどちらも勝利条件に達せず、ベトコンの勝利となりました。

ルールを読んだときは、ダメな多人数ゲームにありがちな「ひたすらトップ叩きを繰り返し、勝敗はほとんど勝利判定カード引きのタイミングだけ」にならないか危惧していました。しかしやってみると、そんなことにならないように、無計画な他者攻撃は貴重な自分の戦力やVP獲得の機会を失うなど、うまくバランスがとられていました。勝利条件の達成には、目先のことだけではなく、入念な長期計画が必要なようです。
これがベトナム戦争のシミュレーションとして正しいかは良く分かりませんが、ベトナム戦争らしい混沌とした雰囲気で、互いの思惑が入り乱れるなかなかおもしろいゲームだと思います。
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