ヒストリカル戦略
私が北軍、Y君が南軍での対戦です。
第1ターン、海上移動カードが1枚しかなかった北軍はサバインシティーTXに上陸できただけなのに対し、南軍は早くもケンタッキーの支配に成功します。
2、3ターン北軍は、封鎖レベルを上げるカードが来ないため、上陸侵攻能力を上げて実力で沿岸要塞を攻略し、フロリダにも侵攻します。さらに北軍はマクレランの防衛計画にもアクションを取られて、中立州にあまり支配を置けず、南軍はミズーリの支配にも成功します。
第4ターン南軍は、登場したリーの侵攻方向を決めずに揚動作戦を行い、北軍がインディアナにマクレラン軍を作ると、リーはウエストバージニアに転進します。ところがマクレランの内線機動とグリアーソン騎兵の襲撃に、リーは補給を切られ、退路を塞がれるピンチに。しかし南軍はマイナーキャンペーンを使った救出作戦で、マクレランを引きずり出し、そこにリーが補給切れのまま攻撃して、逆に大勝利を得ます。
ただ全体としては北部の防衛はうまく行き、第4、5ターンは侵入阻止、第6ターンに編成されたジャクソンの軍がようやくイリノイ1州へ侵入成功したにとどまります。そして第7ターン、グラントが登場すると南軍の北部侵攻はほとんど不可能になります。さあこれから北軍の反撃開始!
と思って勇んだのも束の間。北軍は以前と全く勝手の違う状況に気づきます。
「なぜだ?固い!進めない!」
ミシシッピにはジャクソンの軍、ケンタッキーにはリーの軍がいて守っています。アーカンソーはリトルロックの砦があり、海からの侵攻部隊も概ね撃退されており、つけいる隙がありません。
考えてみると、北部侵攻を阻止した代わりに、封鎖レベルは0、ケンタッキー、ミズーリは南部支配で、脱落した州はフロリダだけ。しかもほとんど戦闘をしていない上、増援カードを南軍は結構引いています。そのためいつもなら十分な戦力を持てないジャクソンの軍が満杯に近い戦力を持ち、さらに沿岸掃討部隊まで編成できているのです。
北軍はなんとか糸口を見つけようとしますが、一州も落とせないまま第10ターンを迎えます。ここで登場したシャーマンをサバインシティーに置いて軍を作ると、南軍はここへジャクソンの軍を向かわせます。その隙にグラントはテネシーに侵攻し、リーと機動戦を展開するものの、騎兵のいないシャーマンを撃退してジャクソンが戻ってくると、やはりテネシーを支配することはできません。
第11ターン、シェリダンを加えたシャーマンの軍は、マクドエルの軍とともにバージニアに侵攻を開始します。これを守るためジャクソンがやってきますが、コストリーミステイクでロングストリートが負傷し、迎撃にも失敗してバージニアから逃げ出します。
結局北軍はバージニアを脱落させることに成功します。しかし南軍は3回目にもなるチャクトーインディアン(敵カードをランダムに1枚捨てさせる)を引き、しかも今回のそれは、最後のダブルアクションがマイナーキャンペーン2枚という凶悪さ。北軍のミズーリ奪還の試みは失敗し、ケンタッキー侵入による戦意を稼がれます。
最終ターン、北軍の手に落ちた境界・南部州はいまだ3つしかなく、北軍が勝つには南軍の戦意を0にするしかありません。北軍はミズーリの奪還やアトランタから先の資源都市の破壊をいろいろ考えますが、普通にやっては無理そうです。そうすると考えられるのはあれか?
北軍はバージニアにいるシャーマンを、ノースカロライナの方へ支配を確立しながら前進させます。
「狙いはノースカロライナ?」
しかしシャーマンはノースカロライナ北辺を支配しながら、東岸のサフォークに抜けます。
「?」
そのころグラントはリー、ジャクソン相手の機動戦の結果、テネシーのノックスビルにいました。
「グラント前進!」
向かった先は・・・
そう!リッチモンド!
補給の切れたリッチモンドを3つの北軍が囲む形になり、次に出されたカードは、
「メジャーキャンペーン!」
一応警戒していた南軍は、リッチモンドにジョージョンストンと17戦力を集めていましたが、次々に襲いかかる北軍に戦力は見る見る消えていきます。南軍の補給が切れているので、北軍はコラム振り切りの猛攻をいくら掛けても指揮官戦死の心配がありません。そして選挙も終わっているので、北軍は大敗北を繰り返して自分の戦意が落ちても、もはや関係ありません。
そして最後の最後のアクションで、ついに守備戦力の消え去ったリッチモンドは、北軍の手に委ねられることとなりました。南軍がこのターンいくら北部に侵攻したとしても、ここで南軍の戦意が0になれば、侵攻による戦意を得る前に北軍が勝利します。
果たして戦意は残るのか?軍の壊滅、首都の陥落、資源都市の破壊。40近くあった戦意が一気に下がり、残りは・・・4・・・かろうじて南軍は持ちこたえ勝利を掴みました。
「インディアンめ・・」
史実の南北戦争の戦略は、海と川を封鎖するいわゆるアナコンダプランだけと思っている人もいるかもしれませんが、実はそうではありません。戦争半ばにはこれが完成しましたが、提唱者のスコットの期待に反して、これだけで南軍が降伏することはありませんでした。
実際の北軍の歴史上の戦略は、北部州を守りつつ、あらゆる手段で南部の戦意と生産力を削ぎ、さらにリッチモンドへの補給を絶った上で、これを陥落させて最後の戦意を打ち砕くというのが正確です。
アナコンダプランはその一部に過ぎず、続いて中西部での海への破壊行で、さらなる戦意破壊と南方都市からリッチモンドへの補給遮断が行われます。そしてウィルミントン上陸で残る東岸からの補給も絶って、リッチモンドは補給を失い、ようやく北軍の勝利となったのです。またもし長引いていれば、シャーマンがグラントに合流するつもりだったようです。
つまり今回の経過は、個々の侵攻ルート等の作戦レベルではともかく、全体戦略では概ねヒストリカルだったと言えるでしょう。このようにFor the Peopleは、多様な戦略が取れるだけでなく、歴史上の戦略の本質を再現できるという点でも、他に類を見ない傑作シミュレーションゲームなのです。
インデックスへ