本当の能力を見せる時が来た(前篇)
 
 南北戦争のゲームはどれも、マクレランを異常に過小評価し、グラントを異常に過大評価して、史実の戦闘結果を全然再現できないものばかりです(例 The U.S. Civil War The Civil War)。For the Peopleはそのシステムにより、マクレランが砦に迎撃すれば、リーの侵攻をぎりぎり止められるので、納得はいかないものの他のゲームよりはまだましと、今までは許容してきました。
 しかし前回のプレイにより、やはりこの間違った能力値では、歴史の戦闘結果も再現できないし、ゲーム上もリーの北進を止められないのが分かりました。マクレランは、河や窪地の道といった有利な地形で守るリーを、アンティータムで攻撃して実際に勝っているのに、ゲームではあらかじめ準備した砦に迎撃して待ち伏せなければ勝てない(それですら勝てる保証は無い)というのは、全く史実に反した能力値です。もはや我々はこんなでたらめな能力評価を許せません。

 片腕であるジャクソンをすでに失い武器も物資も不足した末期のリーを相手にして、2倍の兵力で戦ったのに、敵の2倍、2倍、4倍という大損害を受けて惨敗しまくった将軍は誰だ?グラントだ!
 ジャクソンもロングストリートもいる最盛期のリーを相手にして、アンティータムでは同じ2倍、半島戦役など1.25倍に過ぎない兵力で戦い、どちらも同等以上の損害を与えてリーを撃退した将軍は誰だ?マクレランだ!
 それなのにマクレランよりグラントの方が強く見えるとか、どんな妄想が脳内を駆けずり回ってるんだ?ということで、マクレラン、グラント、シャーマンの戦闘評価と特別能力を、妥当なものにしてやってみました。今回もY君が南軍、私が北軍です。



 第1ターン、北軍は分離主義者を利用し、ケンタッキーを縦断して南部に食い込む支配エリアを確保しました。また南軍は鉄鋼艦と増援を手に入れましたが、増援の一部は戦時禁制品として召し上げられます。
 第2ターン、北軍の他のカードは1ばかりでしたが、1枚だけあったメジャーキャンペーンで、ハレックとロゼクランが6戦力を集めて2戦力のASジョンストンを撃破。ナッシュビルを陥落させました。一方南軍は2枚の増援カードを引き、戦力が充実してきます。そして最後のカードでブラッグがケンタッキーの背後に回り込み、ハレックらの補給を切ってきました。序盤から激しい攻防戦です。
 第3ターン、北軍の孤立した軍団は、脱出路が無くまずい状況。手をいろいろ考えますが、唯一の方法は丁度また来たメジャーキャンペーンを最初に出すことでした。まず救出軍団がブラッグを攻撃し、これで倒せれば良かったのですが、ここはブラッグの勝ち。しかしこれでブラッグは1戦力となったので、ハレックが戦力を集めて撃破し、何とか脱出に成功です。
 すると次の南軍番、出てきたのは解放宣言!北軍は窮地から思わぬ大収穫を刈り取りました。また北軍は東湾岸の封鎖を完了し、ヴァージニアでも支配を拡大した一方、南軍はまたもや大量の増援が来てリーの到来を盛り上げます。


 第4ターン、リーは前回同様東部で軍を作り、マクレランにもここで軍を作ることを強要すると、守りをジョージョンストンに任せて、すぐさま西部へ大転進。しかし北軍には3のカードが1枚しかなく、マクレランを動かしても西部での侵入を止めに行けません。またいくらマクレラン本来の戦闘力4−4をもってしても、砦に籠るジョージョンストンを叩き出すことはできません。
 北軍は代わりにイベントを多用し、鉄甲艦除去、南軍損耗、上陸修正上昇、戦力増強と地固めに徹しました。その間に直接妨害を受けることの無かったリーは、ケンタッキーのルートを回復し、砦を築いてインディアナ侵攻を達成します。周囲に敵無しのリーは、次ターンどれだけ支配を広げられるか?ただリーの軍は小さな戦闘の繰り返しで、戦力が乏しくなっているのが難しい所。
 第5ターン、2つ目の騎兵が来て東部の守りをマクドエルに任せられるようになった北軍は、カードも悪くなかったのでマクレランを西部へ送り、オハイオの入り口に砦を築きます。リーとマクレランが互いにけん制しあう中、リーは足りない戦力の補充に努め、北軍はフィリップ/ジャクソン要塞の攻略を進めました。
 そして残り2枚となった所で、カード捨てを恐れた北軍はマイナーキャンペーンを発動し、リーの動きを封じる位置にマクレランを移動。イリノイ侵攻を不可能とします。すると南軍はリッチモンドからボーレガードが出陣して戦力をばらまき、このターンにウエストヴァージニアとケンタッキーが南部に味方することとなりました。


 第6ターン、北軍は上陸修正を一気に2上げてきます。一方南軍はまたも大量の増援を呼び出した上、イリノイ侵攻を狙って南側のパデューカに鉄甲艦を置いてきました(これはリーにカバーされるテレ・ホートに置く手もありました)。さらなる侵攻を許す訳にいかない北軍は、極西部侵攻予定だった軍団で対応に当たります。そして再度ミズーリからメンフィス、アーカンソーを狙う北軍と、それを食い止めるジャクソンの機動。神経質な攻防が繰り広げられますが、ここには北軍の虎視眈々とした狙いがありました。
 北軍が最後に残していたカードはフート提督。これは上陸に2修正を加えるカードですが、すでに3まで上がっていた上陸修正と合わせて5になり、テキサスのサバインシティーを自動的に落として、西湾岸の封鎖を完了する狙いです。ところがここで南軍は、最後のカードを狙ってチョクトーインディアン!北軍の狙いは水泡に帰しました。ただそれでもマクレランの能力によって、リーの侵攻は現実的なレベルに抑えられており、勝負は後半に持ち越されます。



 ということでFor the Peopleの前半が終わりましたが、マクレランの能力を正しくしたことで、歴史性もゲーム性も非常に高くなりました。
 歴史的には北進を二度とも失敗したリーですが、その彼が2、3州を3ターンに渡って席巻し続けるのを、北軍が止められないなどという非現実的な事は、実際にリーを止めたマクレランが史実通り許さなくなりました。そしてゲーム的にも、以前はリーのせいで前半にできることがかなり限られていた北軍でしたが、マクレランなら止めてくれるという安心感から、幅広く積極的な行動を取れて、遥かに多彩で考えどころが多くおもしろいゲームになりました。そしてこれは同時に、ユニットとしては前半に登場していないグラントらが西部で進撃していた歴史を、再現できるようになったとも言えます。また最近は南軍が前半にサドンデスできるかどうかで、だいたい勝負が決まる感じになっていましたが、これで後半まで進みやすくなったのも良い所です。
 後は前半で得られる南軍の戦意優勢が小さくなった代わりに、グラント、シャーマンの強すぎた能力も適正化されたことで、後半の北軍の進撃がうまく現実的なレベルに抑えられて、バランスが取れるかどうか。続きが楽しみです。


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