ワシントンへの道
私が北軍、Y君が南軍、いつも通り2006年改訂も選択ルールも使いません。
開戦当初南軍はキャンペーンで先手を取り、Manassas VA付近の戦力をリッチモンド周辺に引き揚げ、ジョージア州の心臓部Columbusに1SPを回す。それに対し北軍は南方に上陸し、Sabine City TXとPhilip/Jackson要塞を占領し、西湾岸地域を封鎖した。南軍もこれに対応してテキサス州の資源都市Marshallに戦力を派遣し、Little Rock ARに砦を築いて、極西部の守りを固める。
第2ターン北軍はSabine CityTXに戦力とポープ将軍を送り、Marshall TXを狙うが、南軍も3SPを置いて簡単には攻め取れそうもない。ところがここで北軍は「クリッテンデンの妥協」を出す。何もない2スペースを北軍支配にできるカードだが、これでMarshallの前後のスペースを北軍支配に変える。これによりMarshallで戦闘した場合、北軍が補給切れになるはずだったのが逆に南軍補給切れになる。北軍は有利になった戦闘をものにし、テキサスの支配と資源都市による戦意を獲得する。しかもメジャーキャンペーンにより、同時にミズーリ州とフロリダ州への進入にも成功した。
第3ターン、北軍は考え込んだあげくに、次はリーの登場するターンだというのに、バーンサイドでミズーリ州から果敢に10番島を越えてテネシー州に入りHumboldt TNに入る。重要な資源都市Memphis TNを狙っているのか?何にしろ目論見は阻止すべしと、南軍は軍団でこれを攻撃する。中規模戦闘で互いに1修正なら損害比では攻撃側が有利とみてのことだが、結果は同損害で北軍の勝ち。
そして北軍の次のアクションは、、、「奴隷解放宣言」!南軍大ショック。
北軍はこれを使うための条件である中規模以上の戦闘での勝利をどこで得ようか悩んでいたのであった。南軍には弱いところがなかったので、ギャンブルになるのを覚悟で補給をつないで、後ろからColombus KYの砦を攻めようとしていたのだった。それが思わぬ形で勝利が転がり込んできて、丁度このターンの戦争犯罪による南軍の戦意喪失にも間に合った。しかもまたもメジャーキャンペーンを引いていた北軍は、フロリダ州の支配やMemphis TNの支配にも成功し、北軍の有利が意識される。
ここで第4ターン、南軍には待望のリーが登場し形勢の逆転に期待をかける。そしてこの絶好のタイミングで、南軍には北軍のカードを捨てさせるコクトーインディアンが!しかもそれは北軍の手からマイナーキャンペーンを奪い去る。これだから油断は禁物。
ケンタッキーからリーの軍で北部に侵攻する構えの南軍に対し、北軍は前面にマクレランの軍を作って対抗する。しかし今回北軍は序盤の積極攻勢の代償として、ほとんど砦を築けていない。リーに他方面へ転進されたら防御が難しいだろう。
リーはそれを突いて東方へ移動する。
「ウエストヴァージニアからペンシルヴァニア侵攻か。この状況ではやむを得ないな。」
北軍は覚悟するが南軍の狙いはそこではなかった。
Frederick MD!
「ワシントンの隣?なんでそんな所まで届くんだ?」
「ウエストヴァージニアを通って近道をすると。」
予想外の侵攻に北軍は慌てる。ポトマック軍には騎兵がなく、Frederickに砦も築いていないので、ここで食い止めることができない。北軍はワシントン決戦を受けるしかない。しかも南軍は2連続アクションなので、何が出てくるかわからない。
ここで北軍最後のカードはメジャーキャンペーン。これで北軍はVernon INにいたマクレランの軍から、鉄道を使って6SPと騎兵をワシントンに送り、リーの軍に3倍の優勢をつける。残りはテキサスからポープがJackson MSの資源都市へ進み、マクレランは軍団を派遣してケンタッキーにナッシュビルまでの道をつける。これでどうか?
南軍の最後のカードは外国の介入(3)と1だったので、特別ルールによりまず1のカードでアクションするしかない。そこでまず師団移動で1SPをシェナンドウ渓谷のWinchester VAに送り、次の軍移動でリーがそれを拾ってワシントンに突入する。これで丁度3倍を打ち消せる。
その結果南軍は+7修正、北軍はエリートを入れても+5修正。ただ首都の戦いで*を無視できるので、同損害なら防御側の勝ちになり、南軍の勝率は15/36。全体の苦しい形勢を逆転するために、不利を承知の博打であった。(まさにゲティスバーグの時の心境か。)
まず南軍がさいを振る。1を出せばここで南軍の負けだが、これはクリア。北軍が4以上をだすかどうかの互角の形勢になる。そして北軍の目は、、、4。エリートの働きでぎりぎりワシントンは守り切られた。そしてリーの軍は残りわずか2SPとなり、次のターン南軍にキャンペーンが来て先手を取って逃げるのでなければ、リーの軍は壊滅である。
第5ターン、南軍の手にキャンペーンは、、、ない。全ての可能性を失った南軍は降伏を申し出た。
初めてワシントンを巡る戦いを経験しました。ワシントンの前面に砦を置かないのは危険だと実感しました。また2ターンでケンタッキーからメリーランドまで軍が届くことを初めて知りました。短時間で終わったゲームでしたが、とてもスリリングでした。
ところで原文が不明で真意はわかりませんが、「作戦研究は嫌い」という意見があるという記述を見かけました。もし作戦を立てるのが嫌いなどという意味なら、ウォーゲーマーとして問題外です。ウォーゲームが扱うテーマに登場する将軍で、作戦を立てなかった将軍などいません。プレイヤーが作戦を考えなければ、それはヒストリカルでもなければシミュレーションでもありません。
しかし昔からゲーム誌には無能な作戦研究がしょっちゅう載っていて、そんなのは見るのも嫌だという意味なら、意図は分からないでもないです。私自身はそんな記事でも読むのは楽しいですが。
しかしもし万が一、作戦研究記事を見ると結論が分かってしまってつまらない(犯人の分かった推理小説みたい)なんていう意味だったとしたら、「そんな完全な記事は見たことがないから、その記事を叩き台として、それを上回る作戦を考えることを楽しみましょう」と言ってあげたいですね。特にFor the Peopleなどのように戦略の幅の広い傑作ゲームなら、本当にその余地がたくさんありますから。
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