インペラトール!
以前ローマ人の物語を読んだ時、最も面白かった戦いがカエサル対ポンペイウスのルビコン以後の戦いでした。そこでその後Roman Civil War(S&T157)を買ってみたのですが、ルールを読んでどうも機能しないように思えて、しまったままでした。しかし今回カエサルXLに触発され、ルールを読み返して思い直し、一度やってみることにしました。
このゲームはローマの戦いを描くシリーズゲームの一つで、カエサルの内乱記の時期を扱います。地図はイタリアからアレキサンドリアあたりまでの範囲のヘクスマップと、スペイン、ガリア、シリアの地図外ボックスがあり、夏は1ターン1ヶ月、冬は1ターン3ヶ月の8ターンで1年となります。地図には都市とローマ街道や地形の他、ベテラン兵が入植することで都市となる入植地などがあります。戦闘ユニットはローマの重装歩兵を始めとして、騎兵、弓兵、象や蛮族部隊、艦隊や工兵など様々な部隊があり、戦闘力、移動力の違いの他に、戦闘や寝返りの耐性を表す統制レベルがあります。
ターンはまず、ローマ支配で1枚、シリア支配で1枚、その他の大都市の過半数支配で1枚+最高司令官の能力と同じ数のストラタジェムマーカーを、政治(徴兵や寝返りなど)、軍事(強行軍や戦術優勢など)、工作員(暗殺、偵察)の3種類から自分で選びます。ランダムでないところが他のS&Tミランダゲームと少し異なっています。そして徴兵後に移動を行いますが、移動を始める各ヘクスごとに道路、川、海、その他移動から移動法を選び、サイをふります。結果によって動けなかったり、移動力が増えたり、損耗したり、道に迷ったりします。
そして戦闘(上級)は、まずイニシアティブを決めます。基本は移動側が先攻ですが、軍事マーカーを多く使うと逆転します。そして戦術を選び、その戦術で使える部隊の戦力を合計し、サイを振ります。結果は損害と統制チェックがありますが、相手の重装歩兵の戦力以下の損害は無効になります。そして最大の損害は15しかないので、5戦力の重装歩兵が3個以上いると損害は出ないことになります。そのため正規軍同士の戦闘では、出目によっては特殊効果を生む特殊戦術(リーダーの能力までの回数しか使えない)と、部隊の統制レベルが重要になってきます。また戦力は20戦力まではどんどん効果が上がってきますが、次は50、100戦力にならないと効果が増えず、むしろ損害の危険が増す分多すぎる戦力はかえって危険という、おもしろい仕組みになっています(実はこれに気づかなかったのが、だめではないかと最初に思った理由の一つです)。
最後に補給がありますが、これがもう一つの鍵となっていて、都市を出ると艦隊か工兵あるいは河による補給線が必要で、そうでない場合はサイをふり、失敗すると戦力が半減します。また攻城戦や戦闘の引き分けなどで両軍が同じヘクスにいる場合、工兵がいても補給チェックが必要になります。
今回は上級ルールですが、手間を減らすため、イベント、略奪、陣地、レス・プブリカを省き、戦力は公開でやりました。私はカエサル派、かさいさんが元老院派(ポンペイウス)で、シナリオはルビコン渡河から始まる「サイは投げられた」です。なおストラタジェムマーカーの代わりにカードのJ、Q、Kを使っています。第1ターンはいきなり無防備なポンペイウスに暗殺を試みられる状況から始まりますが、成功するとゲームにならないのでそれはしないことにしました。
最初のターンは冬から始まり、冬の行軍は損耗が厳しいことから、互いにこのターンは動きませんでした(本当は無理してすぐローマに行くのが正しそうです)。春を待ってカエサルはローマを占領し、ポンペイウスはシシリア経由でヌミディアに向かい、イスパニアから引き揚げた兵力と合流します。
そしてカエサルはナポリを外交で寝返らせ、コルニフィウスをアペニン山中の都市コルフィニウム奪取に向かわせます。都市を守る市民兵に突撃をかけること2回。しかし市民兵の守りは堅く、3度目の通常攻撃(能力2のコルニフィウスは3度目の突撃を行えない)もかわされ、都市を落とせずに終わります。こうなると逆に包囲軍が補給の危機に陥りますが、運良くしのぎます。
その間に兵力の再編を終えたポンペイウスは、イリリクムの大都市サロナエを奪います。さらにキケロを派遣してヌミディアとの同盟を図りますが、2/3で成功する交渉が2度とも失敗してしまいます。

その後カエサルは、ガリアから南下してきたアントニウスをローマの守備のために呼んで自ら攻勢を開始しようとしますが、アントニウスは移動失敗を繰り返し、なかなかローマに着きません。そうこうしている内にマケドニア方面に向かっていたレピドゥスが、早くもポンペイウス方についているトラキアに到達し、フィリポリス、ビザンチウムと都市を次々落としていきます。これによりレピドゥスの軍は練度も上がり、最精鋭のインペラトール軍団も出尽くします。ここからテサロニカを目指すかアジアに渡ってシリアを目指すかしたいところですが、冬も近いのでこの辺で冬営の準備を始めます。
一方アジアの兵力の活用がうまく行っていないポンペイウスはあまり大きな動きができず、その間にカエサルは海を渡ってシラクサ、ロードスと攻略した所で冬を迎えます。そしてポンペイウス側に先の展望が見えないということで、ここで終わりとしました。元老院派はもっと早い時期に入植地を作ってベテランを増やし、ポンペイウス自身はアレキサンドリアに行ってクレオパトラを味方につけるという手もあったのではないかと2人で話しました。

最初思っていたような、全軍が1スタックになって市民兵を潰して回るような展開になる心配はありませんでした。互いに3つくらいづつの主力軍が、互いの重要拠点を狙って必ずしも思い通りにいかない機動を繰り広げるのが、なかなかおもしろいと思いました。またクリエンテス(同盟国)を手に入れると騎兵などが多く手に入り、違った戦術も可能になります。
今回互いに補給失敗を恐れて正規軍同士の戦闘は起こりませんでした。しかし後で気づきましたが、艦隊を連れて艦隊のいない都市を包囲すれば、自分だけ安全に補給を得ることができるので、その救援を巡って野戦が起こるのではないでしょうか。
それからよく考えてみると、今回省略した略奪のルールが実は非常に重要なことがわかりました。最初ポンペイウス側には市民兵で守備された多数の都市がありますが、これがカエサル側の格好の攻撃目標になり、レギオンの練度向上とストラタジェムマーカー獲得に利用されてしまいます。しかしあらかじめ守りきれない都市を略奪しておけば、そこを攻めた軍は2/3の確率で補給を受けられず半壊するので、とても攻めていられません。もちろん攻められなければその内守備兵も補給切れで除去されますが、大都市以外ではそれで困ることは何もありません。また都市を略奪する事で両者がストラタジェムマーカーを得られるのですが、ポンペイウス側はタイミングを図ってそれをうまく利用することもできそうです。
部隊秘匿を本来のルール通りにすれば、騎兵等による陽動作戦も出来ます。その場合もこのゲームでは普通に移動するだけで戦力損耗の可能性がある上、捕まると練度とストラタジェムのプレゼントになるので、おもしろい駆け引きになりそうです。都市の守備隊に弓装備の補助部隊と艦隊とレガーテを入れてみるなど、まだいろいろな戦術がありそうで、またやってみたいと思っています。
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