アンバランス
長岡PBの例会でY君と2回目のスパルタクスをやってみました。今度はキャンペーンで、私がセルトリウス、Y君がローマです。
第1ターンセルトリウスは遠スペインのローマ軍を攻撃。圧倒的な能力差でこれを撃破しようとしました。ところが目が悪く、形式的にはセルトリウスが勝ったものの、損害的には負けたも同然の結果となってしまいました。
それでも第1ターンの終わりには、セルトリウスは西セルティベリアの支配を確立し、遠スペインをローマから奪うことに成功します。一方ローマもポンペイウスを召還し、陸路スペインに送ります。
第2ターン、ポンペイウスはセルトリウスに決戦を挑みます。戦力的優位もなく、能力に劣るのに仕掛けたのは、戦闘カードがあったからですが、実はセルトリウスにもカードがありポンペイウスは不利な戦闘を強いられます。ところがここでもサイの目が爆発。何とセルトリウスは全滅!もはやローマは好き放題できる状況になり、いきなりゲームエンドです。
キャンペーンシナリオは、10ターンの内前半の5ターンは戦線がほとんどスペインだけしかないため、その間は戦略の余地が限られてやや退屈な上に、どちらかが大負けするとその時点でゲームが終わってしまうので、いまひとつなシナリオだと思います。
早々に終わったので、今度は渦中のローマをやります。私がローマとなります。
セルトリウス陣営ヒルトレイウスの遠スペイン侵攻に、メテルスは篭城してポンペイウスの来援を待ちます。ところがポンペイウスは1/6でしか失敗しない海上移動を、2回続けて失敗。(これじゃ俺たちの海(マーレ・ノストゥルム)じゃない!)メテルス守るコルドバは虚しく落城し、軍は全滅となります。
第2ターン、今回のローマは早くもアジアで強いルクルスを引きあてます。一方ポンペイウスはセルトリウスと戦いますが、やはり能力差はいかんともしがたく、結局破れ、アルプスを越えて落ち延びます。ルクルスもアジアで健闘していましたが、ミトリダテスの背後に上陸し退路を絶った上での攻撃も失敗し、もはや東西ともに戦争を続けるだけの戦力がなくなったので、3ターン目で終了となりました。
このシナリオはシチュエーション的にはおもしろそうなのですが、ローマが苦しすぎます。
その第1の理由は増援です。セルトリウスはスペインに持つ1州ごとに2の増援が入るので、最初の状態でも毎ターン9ステップ、取り残された遠スペインを奪えば以後は11ステップもの増援が入ります。さらにミトリダテスにも2ステップの増援があります。しかしローマ側の増援はサイコロ1個平均3.5ステップしかなく、これでは補充もままなりません。
第2はミトリダテスの軍勢の多さです。ミトリダテスは最初にユニットを26個52ステップも持っていますが、ローマは4個8ステップだけ。なんとか増援を輸送してきても5倍くらいのステップ比があります。
これだと例えローマが戦闘に勝って敵を潰走させても、自分の損害は期待値1ステップに対し、ポントス側の損害は期待値4.83ステップで、全軍に対する損害比率でみると実質引き分けにしかなりません。勝って引き分け、負けたら大敗では、ポントス軍を打ち破るのは非常に困難です。
そしてこのような状況をなんとか持ちこたえても、最強の戦闘力を持つスパルタクスに対応する余力は少ないでしょう。たいていクラッススの軍だけで戦うことになるでしょうが、勝てる可能性はあまり高くありません。一撃で倒せなければ移動力に勝るスパルタクスの北上を阻止できず、10も危機度を上げられてもまだ耐えられるだけの余力を残しておくのは相当困難でしょう。
そこでバランスを取るいくつかの方法を考えてみました。
第1はオプションルールの「糧食徴発」と「共和国の追加増援」を使うことです。前者は、付近に軍の大きさに見合った味方支配地がないと、軍が損耗するルールで、ユニット当たりの戦力が高く、和平工作で隣接地を味方にできるローマに有利に働くと思います。兵たんで勝つローマ軍の雰囲気が表現され、ミトリダテスの軍などは最初調子良く進撃を続けるものの、そのうちどんどん消耗してきて反撃を食らうことになるでしょう。後者はローマの増援不足をある程度緩和するでしょう。
第2はシナリオ開始時にセルトリウス支配になっている近スペインをローマ支配とすることです。「ローマ人の物語」によると、このシナリオの第2ターンにあたる紀元前75年に、スペインに着いたポンペイウスが元老院にあてた手紙に次のような記述があります。
「ローマ軍とセルトリウス軍の戦闘で、近スペイン全域は荒廃してしまった。これまで敵に荒らされなかったのは海岸部の諸都市のみだが、これらのローマに友好的な諸都市の住人とて、戦費のこれ以上の負担には耐えられない。」
この文から、近スペインは荒らされただけで奪われてはいないことがわかります。シナリオのように全てセルトリウス支配というのは正しくないと思われます。
第3はポンペイウスの戦闘能力を4とすることです。このゲームでは同じ6個軍団を持ち、戦闘能力2のレピドゥスに対し、史実ではポンペイウスが圧勝しています。それなのにポンペイウスの戦闘能力が同じ2ということはないでしょう。
塩野七生氏は「危機と克服」の巻で、古代西欧において抜群の統率力、戦略戦術能力の持ち主として、アレクサンダー、ハンニバル、スキピオ、カエサルと並び、スッラと、このポンペイウスを挙げています。スッラの戦闘能力が4で、セルトリウスやスパルタクスさえ4もあるのであれば、当然ポンペイウスは4でなければなりません。嫌いな人物だからといって、歴史の結果と全くつじつまが合わないほど低い能力値にするというのはよくありません。
これらで大きくバランスを取れば、あとは危機度の初期値を変えることで微調整すればいいでしょう。このゲームはシナリオの練り込みが足りないだけで、システムはよくできていると思うので、これからもやっていきたいと思います。
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