ワシントン防衛
 
 For the Peopleにおいて、南軍がリーの軍を持って本気で攻めた場合、北軍の首都ワシントンはどのくらいの確率で陥落するのか。そして北軍はどうすれば防衛の可能性を高められるのかを考えてみました。
 実はこの記事は、ネット上で時々ワシントンを争っているリプレイを見かけるので書いてみたものですが、そのようなことが起きるのは、2006年版のForward to Richmondが、ワシントンを強制的にがら空きにさせてただ取りできる極悪カードになったからのようです。以下は2006年版のForward to Richmondの効果に対応していないのでご容赦ください。

基本的事項
1 *無視
 戦闘結果表の*の結果は、首都では無効になります。(ルール7.10)そのためワシントンでの戦闘は他より防御側に有利になります。
 またそのため互いに大きな戦闘修正のつく場合のワシントンでの戦闘は、大規模戦闘より中規模戦闘の方が防御側の勝率が高くなります。ただし勝っても戦意を得られないことや互いに損害が減ることで、再攻撃されやすく抑止力が小さくなるので、無理して中規模戦闘にするほどのことはありません。
2 ワシントンの価値
 仮に本気で攻めてワシントンが落ちたとしても、必ずしも南軍が勝てるとは限りません。戦力を東部に集中した分他でかなり侵攻されると思われること、東部で戦力をすり潰せば南軍の後半の防衛力が相当低下すること、戦敗を繰り返した後での占領の場合その分の戦意のマイナスもあることからです。特にワシントンと引き換えにリッチモンドが落ちた場合、リッチモンドは資源都市でもあるので、むしろ南軍に不利になります。
 逆に本気で攻めてワシントンが落ちなかった場合、南軍はほぼ負けたも同然でしょう。プラス面無しに前述のマイナス面が皆のしかかって来るからです。南軍はちょっとやそっとの成功率では、とても本気でワシントン攻めなどできないのです。

基本的防御
 できるだけコストを少なくした防御配置です。南軍が15SPのリーの軍を東部に持つ状況では、北軍はフレデリックに砦と1SPを置き、ワシントンには27SP以上と共にマクレランの軍を置きます。またボルチモアには1SPと防御修正1の将軍を置き、余裕があれば砦もあるとさらに安全です。
 25SP以上あると、大規模戦闘を2回戦っても北軍は15SP以上あるので、南軍が3SP以下になったら5倍の修正でこれを潰しにいくことができます。そして27SPあると、迎撃失敗後ワシントンの戦闘で勝った場合、1SPで南軍を攻撃して戦力比を3:1にできる可能性が高くなります。
 第4ターンから南軍が東部に15SPの軍を作るには、1ターンだけの輸送能力分では足りないので、第3ターンから西部を相当手薄にしなければなりません。そこで北軍は積極的に西部や沿岸から攻撃し、たとえワシントンが落ちても負けないようにします。特に州の脱落や海上封鎖は、南軍の増援を減らし東部での攻勢能力を削ることにもつながるので、狙いどころです。

展開想定
 基本的な展開を次のように想定します。南軍は第4ターンから第6ターンまで毎ターン、15SPのリーの軍を持ってワシントン攻略を目指すものとします。南軍はまずマナサスからフレデリックに進み、北軍は迎撃を試みます。
 北軍が迎撃に成功して戦闘にも勝った場合、北軍は1SPを残して迎撃した軍をワシントンに戻します。すると南軍はこのターンは再攻撃を諦めるものと想定します。再び迎撃が成功すると、例え南軍がそこで勝ってもワシントンを攻める戦力が残らず、次ターンの侵攻戦力も不足することになるからです。
 北軍が迎撃には成功したものの戦闘に負けた場合、南軍は一度だけワシントンを攻撃します。その時北軍は隣から迎撃を試み、成功すると北軍に追加+2修正がつきます。
 北軍が迎撃に失敗したもののワシントンでの戦闘に勝った場合、北軍は師団移動を使って1SPで南軍に攻撃します。これは敵地で敗北した軍にのみゲリラ攻撃が利くという上手いルールで、10SP以上の敵には逆オーバーランになって効果がありません。フレデリックの砦で少なくとも1SPを失っているので、多くの場合これで南軍は7SP以下になり、戦力3倍の修正がついて2回目のワシントン攻撃を阻止できるでしょう。
 もし8SP残ってしまっても、南軍が再攻撃で6SPの損害を受けると2SPしか残らず、北軍は後ろに回りこんで退路の無い南軍を全滅させることができるので、2回目の攻撃はかなりリスキーです。もしカードなどで逃げ延びることができたとしても、フレデリックの地歩を失い、次のターンに攻撃する戦力も足りなくなるので、南軍がワシントンで負けた場合そのターンには再攻撃しないものと想定します。

防衛成功率
 以上の想定を基に防衛成功率を計算してみます。第4ターンの北軍はマクレラン+1の将軍で指揮修正は3ですが、第5、6ターンは2修正のプリザントンが来るので4修正になります。南軍は第4ターン、リー+フォレスト+1で7修正ですが、第5、6ターンはジャクソンを入れて9修正が可能です。
 エリートについては110枚中3枚あり(追加カードなしの時)、第4ターンまでに22枚引くので、第4ターンまでに平均0.6個、その後各ターン平均0.2個が入ります。ただし南軍は普通第1ターンには軍がないと思われるので、第4ターンまでに約0.5個になります。第5、6ターンの南軍の戦闘修正は将軍だけで最大になるので、南軍のエリートは影響しなくなります。エリートがある時は必ず使うものとします。
 将軍の戦死の影響は重大ですが、これを入れると複雑で計算しきれないので、計算に含めていません。しかしできるだけたくさんの将軍を入れて戦死を防ぐことは大切です。

第4ターンの防衛成功率 82.5%
=迎撃成功北軍勝ち+迎撃失敗後ワシントン北軍勝ち+迎撃成功北軍負け後ワシントン北軍勝ち
 両者エリートが無い場合 79.3%
=2/3*(2/3+1/3*1/6)+1/3*(1/2+1/2*1/6)+2/3*5/18*(5/6*21/36+1/6*31/36)
 両者エリートが有る場合 84.8%
=2/3*5/6+1/3*2/3+2/3*1/6*(5/6*21/36+1/6*31/36)
 北軍のみエリートがある場合 87.3%
=2/3*(5/6+1/6*1/6)+1/3*(2/3+1/3*1/6)+2/3*5/36*(5/6*21/36+1/6*31/36)
 南軍のみエリートがある場合 75.1%
=2/3*2/3+1/3*1/2+2/3*1/3*(5/6*21/36+1/6*31/36)
 全体 82.5%
=0.4*0.5*0.793+0.6*0.5*0.848+0.6*0.5*0.873+0.4*0.5*0.751

第5、6ターンの防衛成功率(フレデリックを北軍が保持、各ターンごとの確率) 87.5%
 北軍にエリートが無い場合 85.8%
=2/3*5/6+1/3*2/3+2/3*1/6*(5/6*2/3+1/6)
 北軍にエリートが有る場合(迎撃に成功すれば必ず勝つ) 94.4%
=2/3+1/3*5/6
 全体 87.5%
=0.8*0.858+0.2*0.944

第5、6ターンの防衛成功率(フレデリックを南軍が保持、各ターンごとの確率) 85.0%
 第5ターン以降は、以前の攻勢で南軍がフレデリックを占領した状態でターンが始まる可能性があります。その場合北軍はワシントンに29SPを置き、ボルチモアに砦と2SPを置き、ストーンマンの騎兵をアナポリスに置きます。これでワシントンへの攻撃に対し1/2の確率で迎撃できます。この場合騎兵の戦死の確率が上がったり、待ち伏せの可能性があったりして嫌ですが、ワシントンの危機を回避するためにはしかたありません。
 1回目の戦闘で南軍が6SPの損害を受けて負けたら、北軍は師団移動によりボルチモアから1SPで南軍に攻撃します。南軍が5SPの損害で負けた場合、1SPでは逆オーバーランになるので、代わりに北軍は2SPで攻撃します。これにより南軍が8SPになれば、戦力3倍の修正がついて2回目のワシントン攻撃を阻止できます。そうならなかった場合も、2回目の攻撃で南軍が6SPの損害を受けると、壊滅の危険があり次ターンの戦力も不足するため、2回目の攻撃はしないものと想定します。
 北軍にエリートが無い場合 83.3%=1/2*4/6+1/2
 北軍にエリートが有る場合 91.7%=1/2*5/6+1/2
 全体 85.0%=0.8*0.833+0.2*0.917

第4〜6ターン全体での防衛成功率 61.5%
第4ターン北軍フレデリック保持率 52.4%
=0.4*0.5*2/3*(2/3+1/3*1/6)+0.6*0.5*2/3*5/6+0.6*0.5*2/3*(5/6+1/6*1/6)+0.4*0.5*2/3*2/3
第5ターンワシントン防衛成功率 86.6%
=0.524/0.825*0.875+(1-0.524/0.825)*0.85
第5ターン北軍フレデリック継続保持率 57.8%
=0.8*2/3*5/6+0.2*2/3
第6ターンワシントン防衛成功率 86.1%
=0.524*0.578/0.825/0.866*0.875+(1-0.524*0.578/0.825/0.866)*0.85
全体 61.5%
=0.825*0.866*0.861

 以上細かい部分は省いていますし、もしかすると小さな計算誤りもあるかもしれないので、およその確率になりますが、第4〜6ターン全体の南軍ワシントン攻略成功率は4割以下と思われます。成功しても勝つとは限らず、失敗したらほぼ負けの作戦の成功率が半分もないなら、普通南軍はそんな作戦をしようとは思わないでしょう。もちろんあくまでそれは北軍が戦闘で多数の勝利を得て、戦意的、戦力的に優位に立てることが前提です。そのため首都以外での戦闘は必ず味方の砦に迎撃する形で行い、けっして北軍の方から勝ち目の無い大戦闘をしかけたりしてはいけません。

第2、3ターンの攻撃
 南軍は自分だけ騎兵を持つ利点を生かして、リーがいなくても第2、3ターンから攻撃してくるかもしれません。その場合、軍を作ってスチュアート+1+1の4修正をつけてもマクレランとの差は2しかなく、4や5差がつく第4ターン以降に比べて、戦闘能力的には南軍に不利です。しかし北軍も迎撃成功率が低いという弱点があったり、低い修正では戦闘結果のぶれが大きいことから、油断はできません。
 ワシントンでの1戦闘当たりの防衛成功率は、互いに4修正で次のようになります。例によって隣から1/6で迎撃します。
大規模戦闘 75.0%=5/6*26/36+1/6*32/36
中規模戦闘 74.1%=5/6*25/36+1/6*35/36
 対策なしでは意外と危険なのがわかります。フレデリックへの迎撃は成功率が低いので、南軍が攻めてくるような状況なら、北軍はフレデリックに砦を作りマクレランと影武者と6SP以上を置くのがいいでしょう。ここでマクレランを軍司令官にしてしまうと、騎兵がいないことで能力0になってしまうので、あくまで軍団にします。ここでの北軍の勝率は次のようになります。
中規模戦闘 56.5%=5/6*19/36+1/6*27/36
 第2、3ターンの南軍は、増援が第2ターンの1回分しかないので、ワシントン侵攻のために15SPを集めるのはほぼ無理なばかりか、10SP程度の軍を作るだけでも、4ターンから侵攻を始める場合よりさらに西部を手薄にしなければなりません。そんな状況で南軍が北部侵攻をすると、上記の確率からワシントン占領に平均6回程度の戦闘が必要で、たいていの場合その前に南軍の戦力が尽き、北軍は西部の要所をただ取りできるでしょう。

 
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