「真実のアンティータム」デザイナーズノート
「真実のアンティータム」は、わずか12個のユニットと12分で、完璧に史実と歴史的可能性を再現する、新発想のヒストリカルシミュレーションゲームです。あなたはマクレランとリーの戦術の真意を目の当たりにすることでしょう。
本ゲームでは、デザインのまずさから来る選択枝の乏しさを、チット引きや当たりはずれの大きい戦闘ルール等の、運による変化でごまかすという安易な手法を廃しました。代わりに戦闘時の様々な状況のみで戦闘結果を決定するという、新「テクニカルバトルシステム」を採用しています。
このシステムの特長は、なんと言っても歴史再現性の高さです。他のゲームでありがちな、ゲーム上の好手を取ると絶対歴史通りにならないという不満を、このゲームでは解消しています。簡潔なルールで史実の戦術の意味を実感でき、歴史をよく研究した人ならば、経過から最終的な両軍の配置、指揮官の死傷に至るまでが、自然に史実通りになります。
それでいて陰謀ルールで史実通りの戦術だけを理不尽に有利にするということは、一切していません。そのため史実と違う戦術も十分考慮に値し、そのわずかな優劣でも形勢が大きく傾きます。そしてどちらも劇的な大勝利がありうる緊張感の中で、様々な歴史的可能性を追求できます。このゲームは理想のシミュレーションゲームの一つの形を提案しているのです。
そしてもう一つの特長として、現実の戦闘における予備の重要性が反映されるということが挙げられます。このゲームには予備に関する特別ルールもなければ、シークェンスも普通の移動戦闘を繰り返すものです。しかし正しいシステムは、正しい現実を映します。今までのウォーゲームと同じ感覚で、不用意に予備を使い切ってしまえば、優れた相手には痛い目に合わされることになるでしょう。
アンティータムの戦いにおいて、北軍は南軍の倍の兵力を持っていました。しかしよくあるアンティータムのゲームのように、南軍の能力を優遇したり、北軍の協調した行動を縛ったりするルールは、このゲームにはありません。しかも勝利条件を南軍に甘くするということもなく、両者ほぼ同等です。
これを聞くと、臆病で優柔不断といったステレオタイプなマクレラン評を信じている人は、自分なら南軍を全滅させ超絶天才的大大大勝利を得ること間違いなしと思うでしょう。このゲームはそういう人に特におすすめです。ぜひ遠慮なく北軍で連携のとれた一斉攻撃を堪能してください。そしてその後には、驚くべきアンティータムの真実を体感することができるでしょう。
今までのアンティータムのゲームの多くは、ただ無策で待ち受けるリーに、マクレランが輪をかけた愚策で攻めたという前提で作られていました。しかしあの縦横無尽の機略で優勢な敵を破り続けたリーが、この時だけ何の策も無く、ただ敵の総攻撃が来ないことだけを祈っていたなど、ありえないではありませんか。
もっとよく戦場の地図を眺めて考えてみましょう。一体なぜリーは、ただでさえ兵力で劣るのに、こんなにも多くの兵を後方予備にして、前線を危険にさらしたのでしょうか?そのヒントは、リーの他の戦闘での戦い方をよく研究することで、浮かび上がってきます。
まずリーの戦術の基本は、陣地防御や側面攻撃で成り立っていることに気づきます。リーが用いることによってこれらの戦術は、どちらかだけでも十分優勢な敵を撃破する威力を持つのです。それを踏まえてアンティータムの地図を見ると・・。そうです。アンティータムこそは、陣地防御と側面攻撃を組み合わせた、リーの戦術の最高傑作となるはずだったのです。しかしそれはマクレランの恐るべき眼力に見抜かれ、日の目を見ること無く終わってしまったのです。それがどんなものだったか詳しくは「マクレランだな。文句なしに。」をご覧ください。
リーの戦術を理解せずにゲームを作っても、それを再現できるはずがありません。今までのゲームでは、陣地の効果はあっても、側面攻撃を再現するルールが十分ではなかったのです。
そこで本作では接敵時の攻撃方向の固定と、適切な条件での側面攻撃のルールを盛り込みました。これによりリーの機略を実現することが可能になり、ただ何となく戦いいたずらに兵を失っただけというアンティータム観は、一変することになります。
賢明なる皆さんなら、ルールを読んだだけで真実のアンティータムを理解してしまうかもしれません。しかしここは敢えてそれに目をつむって、戦術家ではない歴史家が言う「北軍こうすれば楽勝だった」というやり方を、まず試してみてください。その結末に思わず唸ってしまうことでしょう。そしてその後に最善の戦術を研究してみてください。
あなたはリーの驚異の戦術を解明できるでしょうか?そしてそれを破ったマクレランを越える術を、あなたは見つけることができるでしょうか?はたして史実こそは、両者が最善を尽くした末の歴史的必然だったのでしょうか?
今のところこのゲームが発売・公表される予定はありません。多分に実験的・啓発的(反マクレラン評や運ゲームに対するアンチテーゼ)なゲームですし、私はDTP化できるような機械も持っていないからです。
やってみたいという方は、合宿や長岡ボードゲームの例会などでお相手いたします。また万一こんなものでも興味があるという出版者の方がいらっしゃるなら、喜んでお話させていただきます。
インデックスへ