原因と結果
 
 「攻撃は最大の防御?」で書いたような、明白な原因と結果を取り違える例は、実は希な事ではありません。

 例えば、火事が起きた時には消防車が駆けつけます。これを見て、「消防車を追い返せば火事は消える」と考えるような頭の悪い人はいないと、皆さんは思うでしょう。
 しかし現実には、これと同じ発想の「風邪をひいた時、熱を下げれば風邪は直る」という考えが、世の中にはびこっています。言うまでもなく、原因は風邪で、熱はそれに対する免疫の働きの結果です。結果を取り除いても、原因が無くなるわけはありません。市販の風邪薬を飲んで熱を下げても、風邪は直るどころか、直りが悪くなるだけです。

 では金持ちが高級な服、車、家を持っているのを見て、「金をたくさん浪費すれば、金持ちになれる」と思う人はいると思いますか?やはり同じような勘違いをしている人はあふれています。
 「運動をすれば、体が健康になる」などと主張する人をよく見かけませんか?運動とは体力と細胞の浪費に過ぎません。金を浪費したから金持ちになったわけでなく、金持ちだから金を浪費する余裕があるのと同様に、健康だから健康の源を浪費する余力があるというだけです。つまり健康だというのが原因で、運動できるというのが結果ですが、明らかな原因と結果の取り違えがまかり通っています。
 こんな大嘘が流布されていることで、体力持ちでない人がいらぬ運動をして破滅する例は後を絶ちません。脳梗塞が発生するのは、第一位のジョギング中から始まって上位を運動中が独占し、寝たきりの原因は脳梗塞が第一位です。体力持ちの代表である野球の有名監督でさえ、次々に倒れているのは象徴的です。
 運動は活性酸素を発生させて細胞を傷つけ、がんを発生させたり血管を硬化させたりします。そこにさらに血圧を上昇させるわけですから、どこか破れるのも当たり前です。
 そこまでいかなくても、運動で傷ついた細胞を修復するために細胞分裂が行われますが、分裂できる回数には限りがあります。運動で筋肉をつけて分裂回数を前借りしまえば、年を取ってから必要とする細胞が足りなくなり、早々衰えることになります。

 他にも最近新聞などで「サプリメントを飲んでいる人は、死亡率が高い」という、いかにもサプリメントは体に悪いと思わせる記事を見かけます。これを信じていいのかどうか、ここまで読んできた皆さんはお分かりでしょう。
 そう、サプリメントを飲むのも死亡率が高いのも結果で、原因は体の具合が悪いことです。体の具合が悪いと思うからサプリメントを飲むわけで、そういう具合の悪い人は、例え飲まなかったとしてももともと死亡率は高いのです。サプリメントを飲んだから死んだわけではありません。その証拠に、健康に不安のない人でも普通に飲むビタミンCの例では、死亡率は高くなっていません。

 似たような手法を使った嘘に「少量の飲酒は体にいい」というのがあります。これは飲酒量の少ない人ほど病気発生率が下がるが、全く飲まない人になると少し上がるというデータを利用して、主張されています。
 もちろん少量でも毒を飲んで体にいいはずがありません。飲まない人のサンプルには、体を壊して酒を飲むのをやめた人が相当数含まれていて、これが見かけ上現在飲まない人全体の病気発生率を引き上げているというのが、識者の間ではよく知られています。これは少量の飲酒自体をごまかすのではなく、比較対象の方をごまかすという巧妙なやり口です。

 このように、一見権威があってつい無条件で信じ勝ちな人やメディアの言う事でも、大嘘は珍しくありません。そしてそれは同時に起きたできごとの原因と結果を、誤って、あるいは意図的に取り違えるというごく簡単な方法でありながら、多くの人が欺かれてしまいます。ネット上の噂のでたらめさは問題外ですが、権威あるメディアの嘘も意外と根が深いものです。

 例えば最近はやりの地球温暖化は本当なのでしょうか?温暖化のしくみの説明は見かけますが、太陽活動や雲の量など他の影響と比べて、本当に二酸化炭素の影響がそんなに大きいのかという証明は全く見かけません。「いろいろな所で言われているのでもう説明の必要はないと思いますが」とか、「世界会議の報告で90%以上の確率で正しいことになった」などと、温暖化に疑問を持つ方がおかしいというような口ぶりでごまかすばかりです。本当に温暖化が正しければ、なぜ正々堂々と誰にでも分かるように説明しないのでしょう。
 また世界最高速のスパコン地球シミュレーターで、100年後の地球はこんなひどいことになっているという表現もよく見かけます。世界最高のコンピューターの出した答だから間違いないと言いたいのでしょうが、どんな優れたコンピューターも、入力データが誤っていれば答はでたらめです。温暖化が進むという前提でデータが作られれば、そのような結果がでるのは当然で、そのデータが本当かが問題なのです。
 1、2ヶ月先の天気予報や桜の開花予想さえもろくに当たらず、毎年来年の地球平均気温を当て続けているわけでもなければ、10年前にこの10年の平均気温を当てているわけでもなく、今まで一つとしてまともに予想を当てた実績が無いのに、100年先の地球平均気温だけはぴたりと当てられると言われても、とても信じられません。
 さらに映画や雑誌などで「ここ数年暖かくて台風が多いのは温暖化の証拠。」「何十年か前の写真と比べると、あちこちで氷が溶けているのは温暖化の証拠。」などど言っていますが、これも全く的はずれです。地球は何十億年という歴史を持ち、人類が生まれてからでさえ数十万年たつのです。異常温暖化しているという証拠にするなら、最低でも一万から十万年は検証しなければならず、たった数十年だけを見て異常気象を語るなど大間違いです。それを考えると、そもそも現在本当に温暖化しているかさえ、まともな説明がされていないのが現状です。
 二酸化炭素が温暖化にどの程度影響しているのか十分検証もせず、過去数千年とさえも比較しないまま、「この数十年で気温が上昇し、一緒に二酸化炭素が増えているから、二酸化炭素が原因で温暖化が起きている。」などと言われても、これもまた何か原因と結果を取り違えているのではないかと疑わざるをえません。

 
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