経済戦争の勝敗
 
 「日本は戦争には負けたが、経済戦争で勝って雪辱を果たした。」と言う声を日本では聞くことがあります。しかし実際のところ世界にはどう見られているでのしょう?これを確認するには、世界中の目が経済状況を評価している株式市場を見るのが一番です。株価が急回復した日本は今や世界一の経済大国なのでしょうか?

 ではまずこれを見てください。

日本、アメリカ、ドイツ、インドの株価上昇率

 N225が日本(日経平均株価)、GSPCがアメリカ(S&P500)、GDAXIがドイツ(DAX)、BSESNがインド(SENSEX)の株価指数上昇率です。下のMaxのボタンを押してみてください。
 近年急激な上昇を遂げたインド、安定して伸びているアメリカ、ドイツに比べ、2006年4月15日現在日本は未だにマイナス圏を脱していません。これで経済大国と言えるのでしょうか?
 「インドなんてほんの最近調子がいいだけじゃないか。ドイツ、アメリカとの差なんて少しだし、これから日本が伸びればすぐに逆転するよ。」と言う人もいるかもしれません。

 それならばこれを見てください。

日本、アメリカ、ドイツの株価上昇率

 またMaxボタンを押してください。この15年の間にアメリカ、ドイツは共に4倍(+300%)の伸びを示しているのに、日本はマイナス圏低迷です。これだけの大きな遅れを一朝一夕に取り戻せると思いますか?
 これでもなお「バブル前の日本が大きく伸びた時期を抜かすなんて不公平だ。そこまで含めれば日本経済の成長がアメリカなんかに負けるはずはない。」という人がいるかもしれません。

 では最後にこれを見てみましょう。

日本、アメリカの株価上昇率

 Maxボタンを押してください。確かに1990年までのバブル前は日本の方が伸びています。しかし全体で見れば、8倍に伸びているアメリカに対し、日本はわずか1.7倍の伸びに過ぎません。この間に円高が進み1ドルが約240円から120円と約半分になった事を考え合わせても、日本はアメリカに倍以上の差をつけられて敗北していることが分かります。
 どうやら戦後の日本の目ざましい経済成長は、あくまで復興でしかなく、ようやく同じスタートラインについてからの競争では、日本は全く歯が立たなかったと世界に見られているようです。

 それではこれから将来追い付ける可能性はあるのでしょうか?そこには良く言われる人口減少、少子高齢化という大きな壁が立ちはだかっています。日本は平均寿命が長く、移民をほとんど受け入れていないため、先進国でも最も早く高齢化が進むと言われているのです。
 これについて「人口が少ない方が労働効率が高まるから大丈夫だ」などと言う人がいます。しかしどう見てもそのような事実は見つかりません。日本より人口が少なくて、なおかつ貧しい国はたくさんあります。
 また少子高齢化について「老人、女性、ニートをもっと働かせれば大丈夫」と言う人もいます。しかし70、80になっても若い世代に負けないシルバーシールドのような人たちはごく僅かでしょう。また女性をもっと働かせるということは、出生率を低下させ、さらに状況を悪化させることになります。そしてニートを簡単に働かせることができるようだったら、彼らはニートにはなっていません。むしろ不足分を埋めようと労働強化がされることで、ニートは増えていくでしょう。

 確かにこの1年ほどだけ見ると日本の株価上昇率はアメリカ、ドイツを上回っています。これは日本の企業でリストラが進み高収益体質になったからだという主張もあります。
 しかし実際には優秀な技術者や研究部門を失ったことで、一時的には収益力が上がっても、将来的な競争力はむしろ低下している可能性があります。またゼロ金利と金融緩和という大きな底上げがあったことも忘れてはなりません。この20年の流れが突然変わったと思うのは早計でしょう。
(2007年4月15日補足 1年たった今これを検証してみます。最初のグラフを開いて期間をmaxから1yに変更してみてください。日本が好調だったのは結局2005年度だけでした。2006年度に10〜20%も上昇した他国に比べ、日本は1年前と比べてほとんど伸びておらず一人負けとなりました。分析は正しかったようです。)

 こう考えると今は日本にとって最後の栄光期なのかもしれません。もしそうだとすると私たちはどうすればいいのでしょうか?
 国レベルでは、近隣の国と仲良くして経済的結び付きを強め、軍事費を抑えられることで、衰退を遅らせるしかないでしょう。ささいな事でけんかをしている余裕はありません。
 個人レベルでは、資産のある人は海外に投資するのが有効でしょう。でも失う物のない人は、そう恐れることもありません。これから労働力不足により労働者側の発言力が強まることが予想されますから、その時のために自分の優位を生かす交渉力を、ゲームで磨いておくと良いでしょう。

 
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