The Civil War マクレラン検証


 The Civil War(Victory Games)は、GMT版のFor the Peopleが登場するまで、戦略級南北戦争ゲームの最高峰とされてきたゲームです。このゲームは、戦略級としてはかなり詳細な戦闘ルールと、作戦級のようなヘクス地形を持っているので、歴史上の個々の戦闘結果と比較することで、各将軍の指揮能力評価の妥当性を検証することが可能です。そこでまず北軍のマクレラン将軍について検証してみました。


 The Civil Warでは、1戦力が5千人を表し、同一ヘクス戦闘で、フェイズプレイヤーが攻撃側となります。
 軍同士の戦闘はまず、戦力比が2対1以上か1対2以下なら戦力比で、そうでなければその間になる戦力差で、戦闘結果表のコラムを決めます。地形は防御に有利なコラムシフトを起こします。
 そして互いに相手の損害を決めるためサイコロを1個振り、それに部隊指揮官(軍指令官以外の参加指揮官)全員の戦闘修正を加えます。この時敵の色の値は相手の目に加えられます。(合わせて+6が上限)
 その後軍指令官の軍指揮修正1ごとに1回、自分あるいは敵のサイコロを振り直すことができます。これも敵の色の値は相手が使うことができます。
 最終結果の欄で、自軍の戦力規模に該当する損害を敵に与えます。dは士気喪失で、数字は失う戦力です。


半島戦役・ヨークタウン包囲 (もし北軍が攻撃していたら)
場所 5310(湿地+砦)

北軍 7万〜10万人(14〜20戦力)
軍指令官 マクレラン 指揮修正 −1
部隊指揮官 ゲームに登場するものはなし
戦闘修正 0

南軍 5万6千(11戦力)
軍指令官 ジョージョンストン 指揮修正 +1
部隊指揮官 
ロングストリート ★+2
DHヒル ★+1
APヒル ★+2
マグルーダー ★+1
スチュアート ★+1
戦闘修正 +6

戦闘コラム +5から左3シフトで0

 北軍の損害は1〜6の目に対してd2,d2,d3,d3,d3,d3で、南軍の損害は1,1,1,d1,d1,d2になります。南軍は2回の振り直しオプションがあるので、だいたい北軍d3、南軍1になって、北軍は相手の3倍の損害を受けて完敗することになるでしょう。
 実際にはこの攻撃を行う前にジョージョンストンは撤退したので、史実と比較して確認することはできません。しかしもし実行されていれば、仮に攻撃側がREリー並の+3指揮修正を持っていたとしても、2倍以上の損害を受けて大敗したでしょう。
 つまりここを無血で占領したマクレランは奇跡的大成功を収めたと言えます。多くの歴史家が言う「すぐに攻めれば南軍を撃破できたのに、取り逃がしたのは実質敗北だ」という主張は、このゲームで判断する限り、全く非現実的な妄想にすぎないということになります。


半島戦役・七日間の戦い (南軍攻撃)
場所 5209(森)

北軍 10万人(20戦力)
軍指令官 マクレラン 指揮修正 −1
部隊指揮官 なし
戦闘修正 +2

南軍 8万(16戦力)
軍指令官 REリー 指揮修正 +3
部隊指揮官 
ロングストリート ★+2
DHヒル ★+1
APヒル ★+2
マグルーダー ★+1
スチュアート ★+1
ヒューガー ★−2(マイナスは敵に加わる)
戦闘修正 +6

戦闘コラム −3,−4から左1シフトで1対2

 この前にセヴン・パインズの戦いも起きていますが、一部の部隊による局地戦にとどまっているので、七日間の戦いからを検証します。
 北軍の損害は1〜6の目に対して1,d1,d1,d2,d2,d2で、南軍の損害はd2,d2,d3,d3,d3,d3になります。南軍4回の振り直しオプションにより、たいてい両軍d2の結果になるでしょう。
 史実では北軍1万5千程度に対して南軍2万程度の損害を受けているようなので、このゲームのマクレランの評価は低すぎます。この戦闘が史実程度の損害比になるためには、マクレランの指揮修正は、リーよりやや低い+2が妥当です。


アンティータムの戦い (北軍攻撃)
場所 4904(峡谷ヘクスサイド越え)

北軍 8万7千人(17戦力)
軍指令官 マクレラン 指揮修正 −1
部隊指揮官
フッカー ★★+1
バーンサイド ★★−1(マイナスは敵に加わる)
ミード ★+1
セジウィック ★0
プリザントン ★+1
戦闘修正 +3

南軍 4万1千(8戦力)
軍指令官 REリー 指揮修正 +3
部隊指揮官
ジャクソン ★★+2
ロングストリート ★★+2
DHヒル ★+1
APヒル ★+2
エヴェル ★+1
フッド ★+2
スチュアート ★+1
戦闘修正 +6

戦闘コラム 2対1から左2シフトで+3,+4

 このゲームでこの戦闘を、北軍がリアクションに成功して防御側になったとみなす考え方は誤りです。なぜならこのゲームの防御側は強力な地形修正を得ることができ、史実において峡谷、森、川といった地形効果を利用できたのは南軍だったからです(ゲーム上は峡谷しかありませんが)。
 北軍の損害は1〜6の目に対してd2,d2,d2,d2,d3,d3、南軍の損害はd1,d2,d2,d2,d2,d3です。南軍の4回の振り直しオプションにより、ほとんどの場合南軍が勝つでしょう。
 ゲーム上は+6が上限なので反映されませんが、部隊指揮官による南軍の戦闘修正は+12もあり、現実のマクレランが勝ったのは神業と思える状況です。史実の結果では共に1万2千程度と同等の損害で、南軍が撃退されているので、マクレランの評価はかなり低すぎます。北軍がやや不利なこの戦闘で同程度の損害になるためには、マクレランの指揮修正は、リーよりやや高い+4が妥当です。


 以上からThe Civil Warにおけるマクレランの−1という評価は異常に低すぎ、平均すると+3が妥当だと考えられます。
 そうすると今度は、一般に人気の高いグラントの能力は実の所どうなのか興味が涌くところです。マクレランよりもさらに高いのでしょうか?

 
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