東郷の選択
 
 NHKの英雄たちの選択という番組で、日露戦争時の日本海海戦における迎撃位置の選択についてやっていました。史実では対馬海峡で待ち伏せて完勝しました(実際には東郷の選択というより、東郷の誤りを古参や軍令部が正したという説が多いですが)。そして他に津軽で待つ選択、隠岐か能登で待ってどちらから来ても対応できるようにする両にらみ策を挙げていました。
 ここで教官と研究官という人が、共に両にらみ策を最善としていました。この方法ではバルチック艦隊がどちらから来ても戦闘できるからだそうです。

「えっ?」

 ここで負けるという可能性は全く考えないのでしょうか?痛み分けでさえも戦略的には負けです。絶対勝たなければこの戦争全体を失う状況です。
 史実では万全の態勢で待ち伏せをし、頭を押さえることができたから完勝したのです。当時の状況を全て知っているわけではありませんが、おそらくもし追いかける形での戦闘になれば、いくら整備状況、練度、兵器が優れていても、戦艦数で勝る相手には痛み分け程度ではないでしょうか。そしてそうなればウラジオストックで合流されて戦力の差は決定的になり、ロシアに制海権を奪われ、戦争そのものに負けたでしょう。
 指揮官の使命は勝つことです。戦闘することに意義があるとか、準備が無くても戦闘にさえなれば必ず勝てるとか思っているなら、とんでもないことです。「私は気が小さいので」接敵できないことを恐れると言っていましたが、気が小さいならなおさら負けることを恐れるべきでしょう。
 逆に評論家の宮崎さんは、専門家でないにも関わらず良いところをついていると思いました。
 
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