隠蔽を失う行動(臥流解釈)
 
 何が隠蔽を失う行動なのか、実は良く分からないことに気づきました。ギークでも調べてみましたが、いろいろな考えがあり、「長い間議論されているが結論は出ていない」という話もありました。今の時点での私の考えをまとめてみます。

先鋭的な解釈
 ギーク内で最も先鋭的な解釈は、「A12.141にある例外以外の行動は全て隠蔽を失う」というものです。これは以下のルールによるものと思われます。
12.141「行動 (Actions):隠蔽状態のユニットが、統制状態の敵地上ユニットのLOS内でなんらかの行動[例外:無線機/野線電話の操作、PAATCを行なう、完全設置されたDCのNTCを行なう、SW/砲を放棄する、SW/砲の修理を試みる、視認兵の視認、ほかの隠蔽状態のユニットのPAATC(12.41は除く)を指揮する]を行なったなら、隠蔽状態を失う。」
 確かにこれだけを読むとそのようにも解釈できます。しかしこの考えに従うなら以下のことは全て隠蔽を失うことになります。
・非開豁地で警戒移動中に行う水平垂直移動以外の行動全て(爆薬配置、回収、壕やトーチカの出入り、クレスト状態の変更、運搬、指揮官の移動ボーナス付与)
・武器の受け渡し・回収・分解・組み立て
・行動を伴わないMCやTCに、指揮修正を与える・コミサールが士気を増加させること
・不意打ちに修正を与えること
・不意打ちを取って離脱すること
 これで隠ぺいを失うのはどう考えてもおかしいと思われる例が、いくつも出てきます。「なんらかの行動」の中には、例外以外にも隠蔽を失わない行動があるのではないでしょうか。

先鋭的な解釈に対する反証
 A12.14には以下のような一文があります。
「隠蔽状態の歩兵は“?”を喪失する条件に触れてさえいなければ、たとえ統制状態の敵に『隣接』している(開豁地以外の)ヘクスに警戒移動や突撃を用いて入ったり、CCを行なう為に突撃したりしても(また敵ユニットが突撃してきたとしても)、隠蔽状態を維持できる。」
 ここで「(開豁地以外の)ヘクスに警戒移動や突撃を用いて入ること」は、「“?”を喪失する条件に触れていない」ので、「隠蔽状態を維持できる」と言っています。これはまず疑義のないことでしょう。
 ところが「A12.141にある例外以外の行動は全て隠蔽を失う」と解釈するなら、「開豁地以外に警戒移動や突撃で入ること」は12.141の例外に無いので、隠蔽を失う行動ということになって、この一文と矛盾します。これは先鋭的な解釈が誤っている確実な証拠です。

移動の範囲
 前述のとおり非開豁地での警戒移動が隠蔽を失わないとすると、どこまでを移動の範囲に含むかが問題です。これについては以下のルールが答えになります。
A4.2「移動の手順:MPhにユニットを移動する際、新たなヘクスにユニットが入ることで消費したMFを、または今いるヘクスで何かの行動をユニットが行うことで消費したMF を、プレイヤーは声を出して宣言しなければならない。」
 ここでは「新たなヘクスに入ること」と「今いるヘクスで何かの(MFを消費する)行動をユニットが行うこと」を、どちらも「移動」だとしています。したがってMFを消費して行う行動は全て移動と考え、非開豁地で警戒移動していれば隠蔽を失わない、と私は解釈します。
 ただしここで例外が、A12.141で発煙手榴弾の展張は隠蔽状態を失う行動だとしている点です。これだけはE.2に従い、より後の英数字のルールであるA12.141を優先することになるでしょう。

行動の目立ちやすさ
 では移動以外の行動はどこまでが隠蔽を失うのか。これはルールが不明瞭なので、現実的にどの程度目立つ行動をすれば隠蔽が失われるとされているかから考えてみます。
 A12.141では「即応射撃を受けただけでは移動しているユニットは隠蔽を失わない」としています。数メートルはある開豁地をはっきり敵に見られて移動し撃たれても、隠蔽は失わないということです。また最大限慎重に動いているだろうとは言え、突撃で敵のいる区域に入ってさえも隠蔽は失わないのです(A12.14)。
 するとこれよりもさらに目立つ行動を取らなければ、隠蔽は失わないと考えるのが自然です。それからすると、先鋭的な解釈で挙げた行動については、どれも隠蔽を失うほど目立つものではないと私は考えます。
 また先鋭的な解釈と隠蔽状態を失う行動の例+G1.421の間で、失う行動と失わない行動があると考えるには、その境界を示すルール上の根拠が何もありません。そうすると隠ぺいを失う「ほかの行動」とは、A12.141やG1.421で隠蔽状態を失う行動の例として明示されているものだけになるというのが、私の考えです。

 もちろんルールの書き方があまりにも悪く、ギークでも答えが出ていない問題なので、この解釈もあくまで私たちはこうしているという程度にしか言えません。ですので初めての相手とASLを対戦する時は、何が隠蔽を失うか合意してから始めた方が良いだろうと思います。

 
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