訂正すべきASLのルール
膨大過ぎるルールを持つASLは、完璧なルールを作るなど絶望的で、たぶんデザイナーの意図から漏れている(誤っている)と思われるルールがあります。それらは訂正するべきだと思います。
ファイアレインの辺を迂回移動する時のTEM

ファイアレインが通っている辺の上を移動しているユニットは、ルールを厳密に読むと、迂回している地形のTEMを受けられると思われます。以下が根拠です。
A9.222 残留FP:火線残留FPは、以下に記載される例外事項を除いて、通常の残留FP として扱われる。(辺を移動する目標に対する例外事項無し)
A8.2 残留火力:目標区域にあるヘクスサイド以外のTEMと『煙幕』/FFE妨害DRMは、(迂回中のユニットにも)残留FPによる攻撃にすべて適用される。
しかし常識的に考えて、へクス内の地形を避けてへクスサイド(通常は平地)を移動しているユニットが、へクスサイドを狙っているファイアレインへまっすぐ向かって行くのに、脇の地形のTEMを受けられるのは明らかにおかしいです。これについてヒントになるルールがあります。
J2.23 残留火力 (Residual Fire):迂回中のユニットに対する射撃では、その特定のヘクスサイドにのみ残留火力が生じる。残留火力カウンターはそのヘクスサイド(の内側)に置かれ、そのヘクスサイドを迂回するユニットか、それを通過してそのヘクスの障害物に進入するユニットにのみ影響を与える。
へクスの大きいデラックスASLでのルールですが、ここでは残留火力がへクスサイドに置けるようになっています。つまりA8.2のルールは現実的な理由がある訳ではなく、へクスの小さい通常のASLでは、残留火力を辺に置くのが難しいため省略しているだけだと考えられます。
それであれば、辺に置かれているファイアレインが、A8.2のルールに縛られる必要性はありません。もっともJ2.23もA8.2については言及していないので、やはりへクス内のTEMを受けると解釈できますが、これももちろんおかしいです。
これらは「辺を迂回移動しているユニットは、その辺を通るファイアレインや、デラックスでその辺にある残留火力に対して、迂回している地形のTEMを受けられない」と訂正するべきです。
つながった瓦礫と建物間を移動する時の地雷

つながった瓦礫と建物間を移動するユニットは、ルールを厳密に読むと、建物(の外側)にある地雷に攻撃されると思われます。以下が根拠です。
B28.44 建物/ 塹壕ヘクス内の地雷原:地雷原は、完全建物ヘクス以外の建物ヘクスにも置くことができるが、その場合は、建物ヘクスサイドを通ってこれらのヘクスに進入する/から退出するユニットを攻撃しない。(瓦礫と建物の場合については書いていない)
B24.1 瓦礫となった区域はもう建物区域でなく、完全に瓦礫となった建物はもう建物として扱われない[例外:瓦礫の撤去に関する場合;24.71]。
B24.2 地上レベルの瓦礫は、そのヘクス全体(ヘクスサイドを含むが、生け垣/石垣を消滅させることはない)における1/2 レベルのLOS障害物である。
以上から瓦礫と建物の境目は瓦礫へクスサイドであって建物へクスサイドではないので、B28.44の適用を受けられず、地雷に攻撃されることになります。
しかし地雷は瓦礫にも建物内にも置くことができないのに、瓦礫と建物が直接つながっている所を移動すると、建物外側の地雷に攻撃されるのは、明らかにおかしいです。
B28.44は直接つながる瓦礫と建物についても適用するべきです。
白燐弾のNMCを受ける区域

私は今まで、白燐弾の煙にかかった区域は全てNMCを受けるものと思い込んでいました。しかしルールを厳密に読むと、そうではないことに気付きました。
A24.31 傷害:WPの化学成分は不快感を催し、士気喪失/死傷といった効果があった。WPカウンターと同じ区域にいる、CE状態でないCT-AFVを除く全てのユニット(自軍ユニットも含む)は、WPがその区域に何らかの理由で展張されたとき[例外:臨機射撃で展張された際に、その時点でまだ移動していないユニット](漂流してきた時や、ユニットがそこに移動した時ではない)か、もしくは砲兵器射撃でWPが命中したとき、NMCを行わなければならない[例外:WPがその高度に達していない場合(24.4)]。
NMCを行うのは「WPカウンターと同じ区域にいる」ユニットと書いてあります。煙がかかっただけではNMC(そしてそれによる隠蔽除去)は受けないのです。そうか、本当はWPカウンターが置かれた区域(通常は地上レベル)しか受けなかったのか。
しかし気になる記述があります。[例外:WPがその高度に達していない場合(24.4)]?WPカウンターと同じ区域しかNMCを受けないなら、この例外に該当することは有り得ないだろう?そこでBGGを調べました。
WP in a hex with ground and 2nd lvl units
ここで同じ疑問が呈され、回答者は文法上の矛盾を無視して答えていますが、その中で実際の白燐弾の効果について述べています。
該当箇所のGemini訳
白リン弾から発生する煙は、非常に閉鎖された空間にいない限り、それほど有害ではありません。つまり、不快ではありますが、マスタードガスやホスゲンガスのような毒ガスとは異なります。しかし、固体の(気体ではない)白リンが肉体に触れると、激しく痛みを伴う火傷を負い、取り除かれるまで燃え続けます。白リン弾の着弾地点の近くにいる場合、固体の白リンの破片に触れる可能性があります。ほとんどの煙幕弾には炸薬が含まれているため、着弾時に破片が飛び散ります。そのため、地上の部隊は固体の白リンの破片に触れる可能性が高いです。これが、ASL(Advanced Squad Leader)で着弾した部隊がWP NMC(White Phosphorus Non-Morale Check)を受け、地上の部隊もWP NMCを受ける理由です。ASLでは、MTR(Mortar)がLOS(Line of Sight)外の部隊を攻撃できるため、この問題はさらに複雑になります。
ウィキペディアの白リン弾でも同様のことを言っています。
「黄燐蒸気そのものは有害で気管支を痛めるが、短時間で十酸化四リンと燐酸に変化するため屋外ではその効果は小さい。直接人体に触れた場合に治療困難な火傷を生じる性質や、それによる心理的作用を利用するため、日本でも第一次大戦後に本格的に研究が行われていた。」
ルールをそのまま読めば、「WPがその区域に展張されたとき」もしくは「砲兵器射撃でWPが命中したとき」(あくまで「時に」であって、その「場所で」ではない。)、「WPカウンターと同じ区域にいる」ユニットだけが、NMCを受けるとしか解釈できません。
しかし前述のことを総合して考えれば、多分これはルールの記述誤りであり、ここは「WPカウンターと同じ区域にいる、もしくはWPが命中した区域にいる〜ユニットは、〜NMCを行わなければならない。」と訂正するべきです。
これらが今更公式に訂正されることは期待できないので、訂正はE.1に基づいて対戦相手と話し合い合意するしかないでしょう。
またもしこれらについて、「わざわざ訂正しなくても、ルールのここに書いてある」とか「こういう理由により、そのルールは現実的だから、訂正の必要はない」等のご意見がありましたら、コメントを頂ければと思います。
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