橋を取るかパルチザンを取るか
今日のASLは、ASL News 21最短の道。1941年の10月、ボルガ河にかかる橋は多くが落とされており、ドイツ軍は残されたカリーニンの橋を目指して急行した。ドイツは8ターンまでのどのゲームターン終了時にでも、統制状態の歩兵か移動可能な車両を、ボルガ河の北に15VP以上持っていたら勝利です。
ドイツ軍は12個分隊と、50ミリ中砲身の3号戦車3両、75ミリ短砲身の4号戦車1両、火炎放射器搭載2号戦車1両。そしてターン数より小さい目が出たら、4個分隊と、同じ3号が2両、火炎2号が1両に、普通のハーフトラック1台と、81ミリ迫撃砲を乗せたのが1台、西側盤端で運河の南から入ってきます。
そしてソ連軍は普通の6個分隊とパルチザン9個分隊、82ミリ迫撃砲2門、37ミリ長砲身対空砲1門、76ミリ短砲身歩兵砲2門と1個分隊用トーチカ1つで守ります。ただしパルチザンはモロトフを持っていますが、ドイツに近い側の2個の工場(大きい建物)にしか置けません。
戦力評価を普通に計算すると、ソ連は半数以上がパルチザンで質補正0.7となり、2%の優勢で予想勝率5割です。
しかしもしソ連がパルチザンを見捨て、全員ボルガ河の北で守る手を選んだらどうなるか?その場合ソ連はパルチザンを数から除き、質補正はソ連の0.9となり、ドイツ歩兵は橋の攻撃補正0.5を受けて、結果的にはやはりソ連2%の優勢で予想勝率5割になります。
戦力はどちらでも互角ですが、だからといってゲームバランスがどちらでも互角とは限りません。果たしてどちらの守り方がいいのか?子供がドイツ、私がソ連です。
まず気になったのは、ソ連が橋を隣から砲で撃ちまくったら、歩兵目標として撃つので簡単に致命的命中が出て、橋を壊して勝てるのではないかということでした。B6.33とC3.71より、致命的命中になれば24火力−3修正となって、7以下で橋が壊れるように見えます。ルールや特別ルールをよく探しましたが、これを否定するようなものが見つかりませんでした。
その後いろいろ調べてようやく気付いたのですが、C3.73のネットにある和訳は、少し紛らわしい表現になっているようです。
ネットの訳「CH が発生しても地形そのものに特別な影響はない。火事や瓦礫の発生は、CH に関係ない。」
AH版の原文「A CH has no special additional effect vs terrain. Fire and rubble generation are handled as per a non-CH.」
直訳「CHは地形には特別な追加効果を持たない。火事と瓦礫の発生は、非CHによるのと同様に扱われる。」
つまりC3.73は、CH自体が直接地形を変えることはないと言っているのではなく、CHしても地形の破壊や炎の発生のチェックでは火力2倍やTEM逆転にならないと言っているのです。これであれば76ミリ砲で石橋は壊せないことになります。
さて問題が解決した所で、パルチザンが前方にいるので、ソ連軍は前に出してパルチザンと共同し戦力を集中するのか、後ろに下がって橋の防御効果を利用するのか、難しい所です。
今回ソ連は共同することにし、まず右前の工場にパルチザンの小部隊、左のアパートにダミーを置いて、中央の工場にいるパルチザン主力の両翼を牽制します。そして砲や重中機関銃はボルガ河の後方に配置し、軽機関銃を持った分隊4個で運河の手前を守ることにしました。パルチザンは運河を越えて後退し、ソ連軍と合流させるようにします。
第1ターン、ドイツは警戒して戦車をあまり進めず、両翼を歩兵で攻撃します。これによりソ連右の工場にいたパルチザン2個分隊は混乱しました。
ターン後半、パルチザンの主力は、運河近くの石造建物まで後退。しかし第2ターンには、ドイツ機関銃部隊が前進して運河の渡り口を狙い、パルチザンの退却を阻止してきます。

ここでソ連は迫撃砲で煙幕を撃ち、1つが成功して中央の橋を狙う射線を妨害。パルチザンはそれに隠れて駆け抜け、いくらか混乱を出したものの、多くが運河の手前に逃げ延びました。
第3ターンには、早くもドイツの増援が到着しますが、迫撃砲に丁度撃たれてハーフトラックが1台破壊されます。
第4ターン、煙幕、戦車を伴って、ドイツ歩兵はソ連右側の橋を渡り始めました。これに対しソ連は、ボルガ河対岸より重機関銃と歩兵砲で応戦します。するとファイアレインが厳しくて、ドイツ軍は橋を渡った最初のヘクスでストップ。
第5ターン、ドイツ戦車は前進を再開しますが、1両目はモロトフにやられて破壊され、2両目は歩兵砲に撃たれて走行不能になって、乗組員も逃げ出したところを撃たれて除去されます。また煙幕は張っていますがファイアレインには効果が無いので、歩兵はとてもじゃないが進めません。これはもう無理という事でドイツ投了です。

ドイツは不満なので、もう一回やることにしました。今度はドイツも全力でパルチザンの退却を阻止しに来るでしょう。すると逃げ延びられるパルチザンは少なく、運河とボルガ河の間で戦うには、戦力が足りないのではないかと、ソ連は考えました。
そこで今回はソ連軍の大半をボルガ河の手前に下げ、そこを決戦場とします。戦力評価上は互角に戦えそうなこの作戦ですが、このシナリオでドイツには車両が11両もあり、この内3台でも渡り切って反撃を1回耐えればドイツが勝ちます。そのため歩兵は勝敗に与える影響が小さく、どれだけ戦車を破壊できるかが勝負を分けるでしょう。
第1ターン、ドイツは戦車でパルチザンの背後に回り込み、退却を阻止してきます。ただその代わりに迫撃砲に撃たれ、戦車が衝撃、歩兵がいくつか混乱しました。
ターン後半、ドイツ戦車は衝撃から回復。ソ連は2個の煙幕配置に成功してパルチザンの逃げ道を確保し、4個分隊が運河にたどり着きます。そして右手で戦車に突っ込んだパルチザン半個分隊が、1割ほどしか効かないモロトフ攻撃に成功し、ドイツ戦車を炎上させました。
第2ターン、ドイツ戦車はさらに追撃し、運河近くのパルチザンを除去混乱させますが、また1両がモロトフにより炎上。逃げ延びたパルチザンは少なく、運河手前のソ連軍は1個分隊しかいないので、ここは長く持たないでしょう。

第3ターン、今回もドイツ増援は早々に登場。迫撃砲やモロトフの抵抗もあまり効かず、ドイツ軍はパルチザンを制圧していきます。
その後ボルガ河をはさんでソ連迫撃砲とドイツ歩兵の撃ち合いが続きますが、第5ターンには右の迫撃砲、第6ターンには左の迫撃砲が無力化されます。ただそれと引き換えに、迫撃砲は狙ってきたドイツ迫撃砲ハーフトラックを走行不能にしました。
最終ターン、走行不能の迫撃砲ハーフトラックは橋の向こうに煙幕を落とし、オーバースタックしてボルガ河手前の死角に待機していたドイツ戦車は、一気に橋を渡り始めます。
これに対して、橋の向こうで待ち構えていたソ連の砲や機関銃も一斉に火を噴きますが、当たらない、効かない、維持しない、隠蔽取れるの四重苦。その後ソ連砲の内2門が、後からやって来た火炎放射器戦車に焼かれてしまいました。もうターン後半の反撃も絶望的となり、ドイツ完勝です。

ソ連軍は対戦車能力が足りず、ボルガ河を渡った所で撃つだけでは、ドイツ車両を倒しきれませんでした。やはりソ連は1回目のように運河のところで戦って、ドイツ戦車をできるだけ長い時間攻撃できるようにした方が良いようです。その際には砲も運河の手前に置いて、退却するパルチザンを戦車から守るのもいいと思いますし、迫撃砲は建物の中庭に入れ、観測員を使って見えない所から撃つのもいいでしょう。
それから防御側の約半数が橋の手前に置けない場合は、橋の補正を0.25倍分軽減することにします。今回の例では、運河の2本の橋の手前で守っても、パルチザンは対岸に取り残されているので、攻撃補正0.75倍が軽減されて1倍、つまり補正無しとなります。
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