狂気の蟻地獄
 
 今日のASLは、アーカイヴでもシナリオが公開されているMortain7 Closing the Pincer挟み撃ち。シナリオに状況が書いてありませんが、部隊が2方向から入ってくるので、タイトル通り挟み撃ちにするシナリオかと思ったら、全然違いました。ドイツは9ターン以内に、26VPを東側中ほどから突破させたら勝利です。生垣はボカージュ、岩場は果樹園になり、moderate mist(KGPルールの強い靄)があります。
 アメリカは11.5個分隊と105ミリ盤外砲、57L対戦車砲3門、76L対戦車砲2門、輸送ハーフトラック2台、ジープ1台、狐穴10、ロードブロック2を、Z列以南に配置します。
 そしてドイツはエリート8個分隊と爆薬2、75Lの4号戦車シュルツェン付き4両、ハーフトラック6台(内2台は迫撃砲型)、非装甲の対空ハーフトラック1台が、第1ターンに北西側15AA1から侵入。そして第4ターンには北側の11GG6から、9−2指揮官とエリート10個分隊に、爆薬2、パンター1両、前と同じ4号2両、榴弾砲ハーフトラック1台、対空ハーフトラック1台がやって来ます。


 さてお気づきになりましたか?ドイツは第1ターンの部隊全てを、アメリカ軍配置エリアに隣接する1へクスの平地に侵入させなければならないのです。
 なんだそれ?狂ってる。戦力評価的には全く互角なのですが、そんなの関係ない。アメリカが大半の部隊をそこに置いたら、最初のドイツ軍はやられ放題で全滅するでしょ?そしたらアメリカは部隊を脱出口に移動させればいい。当然アメリカはそう配置して、ゲームを開始します。

 いや、ドイツどうすんの?先頭が奇襲を受けて撃破されても、後続の部隊がアホみたいに同じ所へ突っ込み続けるっておかしいでしょ。背景説明も無しにこの状況は勘弁してよ。
 文句はこのくらいにしてドイツ軍突っ込みます。まずはほとんど使い道のない迫撃砲ハーフトラックから。こいつがやられて炎上してくれれば、入り口に煙幕ができて少しは楽になる。結果は57Lに撃たれて1台破壊、1台炎上。
 続いて非装甲対空砲。これには2へクス先の重機関銃2と中機関銃1が撃って、これを破壊しつつファイアレイン。そうかこうされると煙があっても歩兵はそのまま撃たれてしまうじゃないか。うーん、やっぱり厳しい。
 その次は分隊を載せたハーフトラック4台。最初2台はやはり撃たれて炎上・撃破されたけど、小型で当たりにくく対戦車砲のROFも尽きてバズーカが足りなくなるので、アメリカは残りの2台を見送りました。ドイツはこれを丘の北側に逃がします。
 さらに今度は4号戦車4両。目指すはファイアレインを撃っているアメリカ鬼スタック。1両目はバズーカにやられたものの、2両目はうまく到達してファイアレイン打ち消しに成功しました。まあ役目を果たしたこいつは、後でヒーロー2人を擁する鬼スタックに白兵戦で倒されるのですが。さらに3両目は追加射撃を躱して南に抜け、4両目は道路上の対戦車砲を踏んで、前進射撃でそこの操作班を混乱させジープを破壊しました。
 そして最後は歩兵で、まず定石通り爆薬半個分隊による警戒設置。しかしこれは両方止められる。ならば続いて8−3−8の2個分隊が警戒移動。うまく行けば白兵戦を掛けるつもりでしたが、これも止められた。うーん、残念。突撃では残っていた1個分隊と指揮官2人が入ります。
 これでやっと、全ての部隊が地獄の底に吸い込まれていく狂気の蟻地獄は終了。疲れた。ASLでこんなの前代未聞だよ。

(下が北)

 第1ターン後半、アメリカ軍は対戦車砲上の4号を倒した後、入り口にフルスタックしたドイツ歩兵に3連射。36、36、32火力の猛射だったにもかかわらず、一部隠蔽、煙、残骸、靄の効果もあって、8−3−8と5−4−8分隊が1つずつ生き残りました。さらに混乱したドイツ歩兵の潰走を阻止するため、ハーフトラックを回り込ませようとしますが、12を出して走行不能になってしまいます。そこでアメリカ軍はフルスタックで白兵戦を挑みましたが、互いに相手を倒せず混戦に。また南に抜けた4号戦車は、運良くアメリカの盤外砲観測員を混乱させました。
 第2ターン、ドイツの輸送ハーフトラック2台は、丘の北側を回って出口へ向かいます。しかし南に抜けた4号は、これ以上進むと自力移動して来た対戦車砲に撃たれるので、アメリカ歩兵が出口方面に移動するのをここで阻止することにしました。そして混戦ではドイツが一方的にアメリカ分隊を1つ倒します。さすが戦闘工兵。
 ターン後半、まさかの事態にアメリカは仕方なく2人のヒーローを混戦に送ります。そしてそれ以外の部隊は出口への移動を始め、バズーカ分隊は4号を撃ちに行きました。しかし4号を倒すことはできず、白兵戦ではまたもや分隊とヒーローを一方的に倒されてしまいます。アメリカの上に立ち込める暗雲。

 第3ターン、ドイツの輸送ハーフトラック2台と回復した分隊は出口に向かって移動。そしていま回復したばかりの指揮官と半個分隊は、混戦の増援に向かいます。さあこれでアメリカ分隊とヒーローにとどめだ。と思ったら今度は逆にドイツが2個分隊と指揮官を倒され、アメリカはヒーローが死んだだけ。そして4号戦車も走行不能になります。
 ターン後半、アメリカは砲を曳いたハーフトラックと鬼スタックを出口に向けて移動させ、待ち受けていたドイツの輸送ハーフトラックと軽機関銃分隊はこれを撃ちましたが、止められませんでした。また4号の動きを止めたので、アメリカ分隊が脇をすり抜けようとしたら、バーサークして戦車に突っ込んでしまいます。

 そして第4ターンには、ついにドイツの増援が到着。出口に向かう途中の高台に全員で登ります。また最初からのドイツ輸送ハーフトラック1台は、出口に近い石垣に進んで、アメリカ対戦車砲が来るのを止めに行きました。
 ターン後半、アメリカはこのハーフトラックを狙って盤外砲を落としてみますが外れ。しかたなく今の位置に対戦車砲を降ろし、鬼スタック1つだけが出口に向かいます。走行不能の4号は主砲も故障してしまいましたが、白兵戦でやっとバーサーカーを倒しました。


 第5ターン、アメリカ軍は思った以上に最初の戦いでの損害や遅延、ドイツ軍の討ち漏らしが多く出ています。うまくすればドイツはこのターンに車両を脱出させて勝ちもありそうですが、まだ残っている76L対戦車砲が気がかりです。
 そこでドイツはまず57L対戦車砲と対峙している輸送ハーフトラックを始動させ、57Lはこれを撃ちましたが石垣に阻まれて外れ、1台目が脱出に成功。しかし何かに対応できるかもと出口直前に降ろしたドイツ分隊は、出口近くの林に隠れていたアメリカ分隊2つに撃たれてKIAとなりました。
 続いてもう1台の輸送ハーフトラックも出口に突進。しかしアメリカが軽迫撃砲でこれを撃ち、走行不能となってしまいました。これが抜けられれば、76L対戦車砲に1両やられたとしても、残りの戦車が抜けて勝てていたのですが。この結果を見てドイツは自重し、車両と歩兵を一緒に高台のボカージュ先端まで進めるに留めます。ただ走行不能になったハーフトラックは、出て来たアメリカ分隊1つを混乱させて一矢報いました。
 そしてターン後半、向こうの高台の建物に隠れていた76Lが先頭の4号を射撃。4号は走行不能となり、乗員も逃げ出してしまいました。せめて乗員が残ってくれれば、次に煙幕を撃って他の部隊が進めたのに。しかもドイツ歩兵の射撃は対戦車砲に効かず、アメリカは鬼スタックが同じ建物に到着します。こうなると射程が長く石造建物にいるアメリカ軍を打ち破るのは容易ではなく、何かドイツ難しくなってきたぞ。ただアメリカはここで無線接触に失敗し、通り道に盤外砲を落とされなかったのがドイツには救い。

 第6ターン、もうドイツがこれ以上待っても状況が良くなることは無いので、リスクを取って進みます。まず先頭の歩兵スタックが煙幕を76L側に撒き、アメリカ鬼スタックはファイアレインを置きながらそれを撃ちましたが、煙幕と9−2の力でドイツ歩兵は無傷。彼らは近くに来ていたアメリカハーフトラックに隣接し、その臨機射撃にも耐えました。
 続いて一つ後ろのフルスタック歩兵が、高台を下りてファイアレインをくぐるように進み、出口直前での臨機射撃も持ちこたえて脱出確定。後は戦車2両が抜けられればドイツの勝ちだが。
 意を決した4号戦車が歩兵煙幕の中に進み、76Lはこれを撃ちます。しかし追加射撃も含めて外れ、4号は無事脱出に成功しました。残るパンターは途中で丘の57Lに横を向ける必要がありますが、ボカージュに守られているので、砲塔をそちらに向ければ致命的命中しか効きません。当然パンターは脱出に成功して、ドイツの勝利です。



 狂ったシナリオに見えたのが、まさか最終的に良い勝負になるとは。もしアメリカが無難に最初から出口付近に下がって守っていたとしても、戦力バランスが互角なことからやはり良い勝負になりそうで、もしかしてこのシナリオデザイナー天才なのでは。

 
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