蟻の穴から堤が崩れる
 
 今日のASLは、BdF#7のBaraque de Fraiture。ドイツのアルデンヌ反攻で、持ちこたえていた交通の要所バラック・ド・フレチュールに対し、間に合わせの補給を受けたSS装甲部隊が支援して、SS装甲擲弾兵の総攻撃が開始されました。11.5ターンの終了時に、ドイツはアメリカより多くの損害ポイントを稼いだ上で、全ての建物を支配していたら勝利です。
 天候は深雪で突風性で、全ての道路は除雪されており、全ての建物に要塞化地下室があり、果樹園は繁っています。薄い色の伐採された森は、歩兵が隠ぺいを維持できること以外平地と同じです。Xの並んだ有刺鉄線を越える時、歩兵は追加1MFが掛かり、車両は深雪修正でボグチェックを受けます。車両は建物に初期配置できず、後から建物に入った場合も、ボグチェックの色付き4以上で地下室に落ちて破壊されます。
 それからドイツは、全てのユニットがSS(エリート)で冬季迷彩されており、自発的車両放棄はできません。また燃料不足のため起動時にDRして、ハーフトラックは11以上、その他の車両は12で走行不能になります。

 ドイツの初期配置は西の森に10個分隊と105ミリ盤外砲の無線機。第1ターン以降に、南か東からは16.5個分隊と81*迫撃砲4門が、西からは9個分隊とハーフトラック14台(内81*迫撃砲が2台、75*榴弾が2台)が侵入。また第1ターン以降に南から75Lの4号戦車8両、第2ターン以降に北西から75Lの3号突撃砲3両、第8ターンには南東からパンター2両が侵入します。さらに第4ターン以降には、非装甲の4火力対空車輌6台と、非装甲ハーフトラックに曳かれた歩兵砲75*4門、150*2門が北西か南から入ってきます。
 アメリカは村の周りに、21個分隊と105ミリ榴弾野砲3門、地雷24火力、狐穴11、ロードブロック2、要塞化3を配置します。そして車両はシャーマンが5両(内長砲身は2両)、105ミリM7自走榴弾砲2両、散弾を持つM8装甲車2台、さらに塹壕に埋まった24火力のミートチョッパーが3台、20火力のが1台です。あとは機関銃刈り場が6つ。
 戦力評価は深雪により攻撃側の戦車と歩兵が0.75倍され、アメリカ4.5%の優勢で予想勝率は5割。子供がドイツ、私がアメリカです。


 さてアメリカの守りですが、序盤に出てくるドイツの主力戦車11両に対し、アメリカのM4は5両で半数に足りない上、互角に戦える長砲身型が2両しかいないので、全部を食い止めるのは難しいでしょう。そこで南から来る8両の4号戦車に対しては、道路を外れると有刺鉄線や深雪でかなり足を取られることを利用して、道路上に置いたAT地雷と、その隣の生垣内の壕に籠るバズーカで足止めします。
 その上でシャーマンは全て北側に置き、3号突撃砲を食い止めます。いくら中砲身型が劣ると言っても、防御側なら同数あれば勝てるはずなので、ドイツ車両が侵入する北西側に3両、丘の上を東に回り込んで来るのに備えて真北に2両を置きます。
 こうしてドイツ車両の侵攻を食い止める手筈が整ったら、特別ルールで別々の3方向を向くことを強制された105ミリ砲を配置。2門は東西の要塞化した建物に入れ、1門は東側建物の南の果樹園に置きます。そして105ミリ自走榴弾砲は石垣の裏や建物の陰に置き、砲も自走砲も皆HEAT弾を持つ可能性があるので、状況によって対戦車対歩兵に使い分けます。
 そして東西のドイツ歩兵に対する守りの要は、強大な火力を持つ塹壕内装甲対空車輌(AAA)で、これらを広く撃てるよう配置。またバズーカのいる生垣内に置いた軽迫撃砲も、森の前面に出てきたドイツ歩兵には嫌な相手となるでしょう。さらに散弾装甲車を外縁に置いて、ウミガメ戦術に対しても万全です。
 その上で最後に石造要塞を固める切り札が、ジープやトラックから引っぺがした機関銃6丁を要塞地下室に詰め込んだ、10−2指揮官率いる鬼機関銃スタック。50.cal3丁とMMG3丁で36火力を持ち、ROFが続く限り36火力又は24火力−2修正で撃ち続ける恐ろしい奴らです。彼らは地下にいるので、ドイツが車両で建物を迂回しても射撃は止まりません。これでアメリカの防備は完璧なのでは。

 ドイツは第1ターンを開始しますが、さすがにこの火力の前に歩兵を出しても死ぬだけなので、撃たれない所を移動するだけにします。アメリカは機関銃引っぺがし作業開始。

(下が東、矢印は想定射撃方向)

 第2ターン、南からのドイツ戦車は前進継続。深雪で威力が弱まるとはいえ、地雷に突っ込むのは危険なので、3両が有刺鉄線を越えて脇に入りますが、1両が砲に撃たれて破壊され、2両がボグになりました。しかも後半には高台にいた戦車までHEAT弾に貫かれます。アメリカは引き続き引っぺがし作業継続。

 第3ターン、ドイツ盤外砲が絶好の位置に落ちて、自走榴弾砲をスタンさせました。南からさらに東へ迂回したドイツ戦車はうまくボグを回避し、ボグだったものも皆抜け出します。そして北西からは3号突撃砲が侵入し、1両が破壊されたものの、前進射撃で長砲身のシャーマンを1両炎上させました。移動射撃の苦手な無砲塔なのに。
 ターン後半、シャーマンは3号突撃砲をもう1両破壊します。しかし南から建物の隙間を通して遠く狙っていた4号戦車が、みごと命中させてシャーマンは炎上。こんな所からやられるんだ。そして継続する盤外砲で自走榴弾砲が炎上、装甲車も衝撃となります。さらに悪いことに、もう1両の装甲車が狙撃兵に撃たれてリコール。おかしい、完璧だったはずの防御陣地が、隙間隙間を突かれて崩れて行く。

(水色の線はドイツ車両移動経路、稲妻は破壊されたAFV、細い線はその射線)

 第4ターン、盤外砲は再び西の建物群を焼きます。そして中砲身シャーマンと3号突撃砲の一騎打ちは、ひとまず互いに効果無し。しかしすでにアメリカの対装甲戦闘力は大きく低下しているので、ドイツはここで砲やハーフトラック部隊を投入します。南からの戦車4両も東の道路手前まで回り込んで、次には討って出る構え。
 ターン後半、ドイツ装甲擲弾兵が来る前に、アメリカは何とか3号突撃砲を倒してここで食い止めたい所ですが、やはりお互い倒せず。効果があったのは盤外砲のみ。

 第5ターン、ついに3号突撃砲はシャーマンを撃破。アメリカはもう南下して来る自動車化歩兵の大部隊を止めらません。さらに砲を積んだり牽引したりしているハーフトラックも、次々と丘の上や森の端に出て来ます。非装甲のものが10−2指揮の機関銃スタックで2つ破壊されたものの、4つのハーフトラックは射撃位置に到達しました。
 また南でも高台の道で走行不能になっていた4号により、石造建物脇の自走榴弾砲が炎上。そして4号4両が東に進出して、残りのシャーマンと撃ち合いに入ります。さらにドイツの全歩兵も、隠蔽を付けたまま森の端に突撃して総懸かり。
 ターン後半、アメリカもやれるだけのことはやる。まず東では軽迫撃砲で撃ってドイツ歩兵の隠蔽を剥がし、ミートチョッパーらが高火力射撃。これが良く当たってドイツ機関銃部隊は大損害。そして止めに10−2指揮の36火力射撃。これも良く効いて、東側のドイツ機関銃部隊は壊滅的損害となります。
 一方で西への攻撃は、石造要塞内の105ミリ砲が75ミリ榴弾車を1台撃破したのみ。もう盤外砲でやられて、西側にはほとんど火力が残っていないのです。
 ドイツの防御射撃では、石造要塞に迫撃砲が致命的命中し、50calを1つ破壊。さらに北東から広がって近づいていた歩兵部隊が、実は36火力もあって残った鬼機関銃らを混乱させます。また脇のシャーマンも4号に撃たれて1両が炎上しました。アメリカ西側の方は撃たれまくって、もうどうにもならない状況。

(水色矢印はドイツ歩兵の前進、黄色閃光は歩兵・非装甲の損害)

 第6ターン、10−2指揮官の力で鬼機関銃たちは全員回復し、土壇場の底力を見せます。しかし最後のシャーマンも炎に沈み、対空車輌も残るは2台のみとなって、アメリカは外堀も内堀も埋まった状態。もはや止めるもののないドイツハーフトラックは、10−2鬼機関銃の籠る石造要塞に悠然と突き進み、これに隣接して取り囲んでしまいました。そして彼らは突撃で全員頭を出し、歩兵も全体に接近して、最終攻撃の準備完了。
 ターン後半、10−2鬼機関銃は目の前の敵に大量の銃弾をばらまき吹き飛ばします。また105ミリ砲は車両ごとぶっ壊し、中機関銃隊も隣の敵を混乱させ、隣接するドイツ兵を全て討ち倒しました。
 しかしアメリカの抵抗もここまで。大量に残るドイツ軍の包囲攻撃を受けては、いかな10−2指揮官といえども持ちこたえる術はありません。配下は次々と倒れ、自身も混乱。これ以上戦い続ける術を失ったアメリカは降伏しました。



 アメリカは南側の地雷とバズーカによる対戦車陣地に始まって、全体に良い配置ができたと思っていましたが、北西側に隙がありました。ドイツはこれを的確に突き、固いと思っていた北東の要塞も、迅速に攻略してしまいました。
 アメリカの失敗は建物の隙間から戦車が撃たれるのを見逃していた事です。しかしこれを避けようとすると、意外にどの配置も一長一短で悩ましい所です。また西側建物の庭にオープントップを入れたのも、これが確認された目標になって周りごと盤外砲に撃たれるので、避けるべきでした。
 アメリカがこれらを上手にやって、もっと戦車を長らえることができたならば、その間ドイツ歩兵の前進は困難になり、際どい勝負になるでしょう。この辺りの攻防は複雑で、攻撃側も防御側もASLの経験と能力をフルに要求される、非常に良くできたシナリオだと思います。

 
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