手負いの獣に手を出すな〜Beast at Bay〜
 
 今日はヒストリカルモジュールKampfgruppe Peiper最大のシナリオ、KGP11追い詰められた獣。AFVがオフィシャルシナリオ最大の両軍合わせて69両も登場し、アーカイヴの見積もり時間は66時間です。燃料が尽きかけてもはや攻勢不可能になったパイパーの戦闘グループは、ラ・グルエーズの町で最後の時を迎えようとしていました。
 ドイツはアメリカより65VP以上多くの損害ポイントを稼いだら即勝利。そうでなければアメリカは14.5ターンの終了時に、ドイツ配置地域内で5つ以上の石造建物か瓦礫を支配していたら勝利です。

 ドイツはSS中心の24個分隊と、76L対戦車砲1門、120ミリ迫撃砲4門、20L対空砲4門に、ティーガーII4両、パンター12両を始めとする戦力評価基準での戦車29両。
 そしてアメリカは初期配置が16個分隊と80ミリ盤外砲、90L対空砲1門、シャーマン15両(内長砲身3両)。さらに第1ターン以降毎ターン10カウンターずつが反対側から侵入し、内容は27個分隊と80ミリ盤外砲、シャーマンを中心とした戦車15両(内長砲身5両)です。さらに盤外観測員による1へクスしか効果地域の無い150ミリ盤外砲が、途中から使えるようになります。
 ドイツは完全装軌式とそれ以外の車両が、各DR個づつ燃料切れで動けず、動けるものも移動や車体方向変更前にDRして、10以上を出すと燃料切れになります。その上ドイツは弾薬も少なめです。また地面はぬかるんでいて、ヘクスサイドを越えるごとに追加1MPがかかり、ボグにもなりやすいです。
 それからKgPにはあちこちに斜面という地形があって、斜面の上は3/4レベル高い所にいる扱いになって、斜面の下へのLOSは生垣や隣接しない稜線を越えて通るのです。しかし奇妙なことに斜面の上にいると扱うのあくまで斜面ヘクスサイド方向に対してだけで、同じ位置にいても見る向きによっては他のヘクスと同じ高さに扱うという、非常に理解し難い地形となっています。(たぶん)

 戦力評価をするとドイツが21%の優勢で予想勝率は10割になります。しかしThe Last Bidの時のように、非常に大きなシナリオでは予想が狂うこともありえます。このシナリオではドイツ戦車が動きにくい中、アメリカは広い町の中で建物をほんの5個取ればいいので、そのあたりにチャンスがあるかもしれません。子供がドイツ、私がアメリカです。


 アメリカは厳しそうな条件の中、どうチャンスを掴むか。大半が75ミリ中砲身のシャーマンでは、パンターもティーガーも正面から装甲を撃ち抜くことはできません。かと言ってぬかるんでいる坂を正面から攻め登っても、側面にたどり着く前に壊滅するでしょう。
 そこでアメリカは、まず見えるドイツ主力戦車にできるだけ煙幕を落とし、残ったものに対して榴弾の地域目標で砲撃していくことにしました。私にはこれが何を意味しているのか分かりませんが、ASLでは徹甲弾が効かない戦車に対しても、榴弾を乱射すると多少効くのです。
 軽迫撃砲を含めてこれを繰り返し、90Lは遠くて効きにくいものの普通に撃って、盤外砲でも攻撃していけば、ドイツ軍は弾切れを起こしやすいこともあり、だんだんすり減っていくのでは。そして歩兵は森の中を進んで山の上に登り、山側からドイツ軍の裏手を攻撃します。こうしてドイツ軍をできるだけ減らしたら、終わり近くにハーフトラックや戦車に乗った歩兵が町に駆けこんで、空いている建物を奪おうというのが、アメリカの作戦です。

 さてドイツも配置は結構難しい。強さを求めて戦力を集中配置すると、端の建物を守れず、盤外砲にも弱くなります。すると分散配置をした上に、全ての建物を死角なく守り、かつ撃ち合いにも負けないようにしなければなりません。ドイツはじっくり考えて防衛陣地を築き上げました。アメリカもかなり考え、いくつかの車両が低地に配置を強制されていることから、下手に分散せず全戦車と砲を同じ方向に配置しました。

 そして第1ターン、アメリカは予定通りあちこちに煙幕や白燐弾を置いていきます。続いて大事な無線接続はいきなり失敗。そして煙幕も白燐弾も無かった戦車は、射撃を開始しました。
 初期配置場所から見える所にはパンターとティーガーIIしかおらず、これに地域目標でバンバン撃って行きます。しかしなかなか効かない。迫撃砲以外で撃つ時は、ドイツ戦車に生垣か高度優位性による+1がつくので、当たっても1/12でしか効果が無く、それも走行不能か衝撃にすぎません。
 結局戦果は1両を走行不能にしたのみで、むしろアメリカの方が戦車2両と軽迫撃砲1門が故障、狙撃兵で戦車が2両スタンと、撃った側なのに負けています。
 あとはアメリカ歩兵が山の奥へ踏み込んでいき、正面の針葉樹林では一歩建物に近づきました。

 そしてドイツの防御射撃。当たります。どんどん当たります。LL砲で目標のシャーマンは大型なので、離れていても命中率が高く、当たれば確実に破壊します。しかも−2修正の戦車指揮官がいたり、たまにROFでもう一度撃てたりします。
 防御射撃が終わっても、さらにドイツの準備射撃でもう1回づつ撃てます。アメリカ戦車どんどん消えて行きます。10両消えました、たった1ターンで。もう撃てる戦車4両しか残ってません。しかもドイツ戦車に弾切れになったものは無く、弾切れ寸前になったのが1両だけ。
 これでドイツは60点になり、あと1両倒せば勝ちです。次のターンには確実です。ドイツ勝利。

(白ダイヤはアメリカの配置範囲とティーガーIIの位置、ピンクダイヤはドイツの配置範囲とパンターの位置)


 うーん、なんだこれ。ドイツが丘のあちこちの斜面に主力戦車を置いたら、どこにいてもアメリカ戦車は撃たれ放題で、煙幕で覆ったくらいでは追いつきません。ドイツが斜面や林の位置を考えて配置すれば、初期配置位置からドイツ戦車の側面が撃たれることもありません。もちろんアメリカが小川の中等に戦車を全部埋めれば撃たれないようにはできますが、それでは最後まで何もできずただ負けるだけです。
 また歩兵が平地を突っ込めば自殺行為なのはもちろん、山の中を近づいても、森の端に出た途端、重迫撃砲、20火力対空砲、150ミリ榴弾砲、歩兵火力などに撃たれ、良い場所には地雷があって、まず生き残れません。こういったドイツの部隊は、外から撃たれない位置に置いてあるので、その前に無力化することもできません。そしてハーフトラックに乗ったとしても、舗装道路にはロードブロックがあり、ドイツ戦車が健在な状況ではまず抜けられません。
 アメリカはもう少し何とかなるかと思っていましたが、ドイツが見晴らしのいい山をうまく利用して配置すると、動けなくてもあらゆる場所を完璧に守れて、どこかを掠め取るなど到底無理でした。

 
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