震える巨獣
 
 今日のASLはASLアニュアル’90より、A25のCold Crocodiles。変温動物のワニが寒さに凍えるのでしょう。前回のシナリオから私もクロコダイルを使ってみたくて、このシナリオになりました。なので私がイギリス、子供がドイツです。1945年1月のオランダでドイツ軍の守る村にイギリス軍が攻撃を掛けます。石造建築の支配が1つ4点で、それと損害ポイントでドイツを上回ればイギリスの勝利です。
 運河の西の北側で守るドイツは、エリート9個分隊と強力な超長砲身88ミリ砲2門と、第4ターンに75ミリ長砲身の4号駆逐戦車2両の増援が運河の東から出てきます。またドイツ軍1個分隊相当を隠匿配置できます。
 運河の西を南から攻めるイギリス軍は、エリート4、一線級4の分隊と76ミリ超長砲身のチャレンジャーが2両、75ミリのクロムウェル7が2両で、戦車には9−2指揮官が1人います。さらに第4ターンには西から一線級4個分隊とクロコダイル2両が出てきて、盤外観測員による80ミリ砲支援もあります。
 建物は全て平屋建てで、低地はありません。また東西を分ける運河には中央の橋一本しかありませんが、凍結しているので歩兵は運河を歩いて渡れます。しかし戦車が渡ろうとすると落ちる危険があります。

 1月のオランダ。凍てついた大地。凍る運河。イギリスの兵たちはドイツへの関門を踏み出した。ここの門番は八八。しかも長い奴だ。どんな戦車のどんな甲羅も軽く貫くと言う。普通なら食う側の戦車が、ここでは逆に食われる側。恐れるなという方が無理だ。
 凶悪な獣にまとめて食われないよう、イギリスの戦車は慎重に進む。歩兵がドイツ兵を見つけ、止まって撃ち掛けたが、ただの囮だった。
 イギリスはピアット持ちの2個分隊を東側に送り、凍った運河を渡らせる。2つの建物を確保し、そちらから近づくドイツ戦車を食い止めるためだ。氷は冷たい。足が張り付きそうだ。
 ドイツも運河を渡り、東側の建物を取りに来る。だが数はイギリスより少ないようだ。イギリスはこちらで勝てそうだ。だがしばらくするとドイツ戦車も来る。油断は禁物だ。

 イギリス軍が進み始めて1時間近くたった頃だった。2つ目の大きな建物。その周りを囲む塀の中を、安全と思ってクロムウェルは走り、ドイツ兵を向いて止まった。その時突如立ち上った火柱。何が?すぐ脇に立つドイツ兵。小屋に隠れていたか!パンツァーファウストの確率は3割しかないのに。

 ドイツ兵はそこから大きな建物に移ってくる。反対側にいたチャレンジャーは榴弾が無く止められない。やむを得ない。イギリスは2個分隊を引き抜いて、包囲白兵戦に入る。ところがドイツ兵はこれに不意討ち。そのまま脱け出してしまう。
 さらに先まで進んだドイツ兵。半個分隊にここまで手間を取らされるとは。と、ここに敵情不明のため安全を取って手前側から侵入してきたクロコダイル2両が到達。これでドイツ兵はようやく仕留められた。ドイツ兵もこれだけやったら殊勲章ものだが、炎に焼かれた後で勲章を貰ってもねえ。

 一方運河を越え右手を進んでいたイギリス兵。2つの建物を確保し、中ほどの小さな建物に向かおうとしたところで、ドイツ兵を見つけた。慌てて応射するが、一時釘付けにしただけで、先に小さな建物に入られてしまう。
 ここで後ろに現れたドイツ兵狩りに兵を引き抜かれ、残った兵だけでは固い石造建物の奪取は無理だ。そしてこちらを放置すれば、ドイツ戦車が入ってきて好き放題始められるだろう。不安だが行く。チャレンジャー2両で橋を渡る。右手には砲が隠れられる森は無いので大丈夫だろう。八八はでかすぎて家には入らないのだ。
 走るチャレンジャーの巨体。付近は歩兵が確保している。もうパンツァーファウストも無いだろう。安心して半ばまで進んだ時。突然の轟音!どこだ?敵などいないぞ!なんと中央奥の森から、ずっと建物の隙間を通して、この道路を狙っていたらしい。半ば諦めかけたが、すぐ脇で聞こえる着弾音。助かった!
 危機をくぐり抜けたチャレンジャーは橋を渡る。一両は東側中央につき、ドイツ兵のいる建物と脇の道路入り口を狙う。もう一両は奥に進み、奥の入り口から橋に向かう道路で待ち構える。そして手前の入り口はピアットを持った歩兵が待ち伏せる。これでドイツ戦車は奥の入り口付近から進めなくなるだろう。良い調子だ。

 さて左手を進んだ中軽機関銃と10−2指揮官を集めたイギリス最強スタック。半ばにある村を守る相当数のドイツ兵と遭遇する。これを叩き出すには、いくら最強とは言え歩兵だけでは足りないだろう。クロムウェル1両が攻撃位置に就く。
 さらにドイツ兵の位置は確定できないが、砲兵支援を要請し、無事許可が出て観測弾も正確に落ちた。これで次に攻撃許可が出れば、ドイツ兵も終わりだろう。ただドイツ軍もみすみすやられはしない。着弾を見るとすぐ、観測員から見えない位置に後退する。ただしきちんと足止め部隊を前に出した上で。
 イギリス軍は足止め部隊の射撃をかわしながら、村に入る。足止め部隊を撃退し、まず最初の建物を占領だ。同時に増援の歩兵をドイツ軍後方から侵入させる。これでドイツ軍を包囲するも、後方の空き建物を占領するも自由だ。
 するとその時いきなりの爆音。奥の森に入ろうとしたイギリス分隊が吹っ飛ぶ。もう一つの八八はここだった!どうする?もう進むしかない。次の分隊は射界外を通り抜けようとするが、釘付け。しかし八八はもう撃てない。最後の分隊が指揮官と共に突入する。白兵戦だ。しかし砲は巧妙に偽装されており、攻撃は効かなかった。まあいい。次には倒せるだろう。
 しかしイギリスはすぐに考えの甘さを思い知る。イギリス主力と対峙を続けると思っていたドイツ軍スタック。これが一気に後退し、八八の救援に来た。ああそうか、こうされたらダメだ。イギリス軍はなんとか操作班だけは倒すものの、指揮官ごと分隊を失い、砲を捕獲するどころか倍の損害を受けてしまった。

 その頃、イギリス中央の部隊が建物沿いに前進していた。近くに見えるドイツ兵はいない。このまま奥のドイツ兵に対峙しよう。と思ったその時、突然うなる銃声。スコールのようだ。どこにこんな?
 なんとか覗き目を凝らすと、道の向こう遠くにドイツの機関銃が。300m以上も離れている。ドイツはそこに最強の機関銃を集めていたのだ。木造の建物がどんどん穴だらけになる。分隊は混乱損耗する。撤退だ。
 しかし機関銃から隠れようにも、反対側に逃げると今度は八八の的になる。どうしようもない。銃撃を繰り返し受けて、兵士恐れおののくばかり。だが何だこいつは?なぜか一緒にいた指揮官だけは、この惨事に熱狂し喜んでいる。尋常じゃない。これが戦争の狂気というものか。
 そんな時突如遠くに響く爆音。何だ?恐る恐る顔を上げると、ドイツ機関銃の周りに爆煙が。射撃することに気を取られていた所へ、盤外砲が撃ち込まれたのだ。指揮官ごと混乱するドイツ機関銃部隊。ひとまずイギリス中央の危機は去った。

 増援歩兵の壊滅と引き換えに前進できた西側のイギリス10−2指揮官。これで中央の八八を射程に収める。八八操作班は隠蔽されていたが、強力な指揮でこれを討ち倒す。ドイツ軍は臨時操作班を送り込むが、砲を見つけるのに手間取っている。
 チャンス!今しかない!八八を恐れて隠れていたクロコダイルが唸り声を上げて突き進む。狙うは中央正面を塞ぐ石造建物。ドイツ軍に火を噴くクロコダイル。ドイツ軍は消えた。そこに熱狂指揮官が、機関銃の恐怖から回復した兵と共に突入する。そして部屋に入ってみると、そこには何もない。クロコダイルが燃やしたのはただの藁人形だったのか。とは言え、これでイギリスはまた一つ建物を確保した。

 たった半個ドイツ分隊相手に、なかなか進めなかった東側のイギリス軍。ここで狩りから戻った分隊を加え、戦車から煙幕を撃ってもらって、突入。ようやくドイツ兵を倒し、建物を占領する。これから東側最後の建物を取り、さらに川向こうのアパートへ向かうつもりでいる。
 するとずっと隠れていたドイツ戦車が、イギリス戦車の死角から顔を出してきた。この前を通らないと進めないぞ。どうする?イギリスはまた戦車から煙幕迫撃砲を撃ち、それに隠れて前進を始める。ドイツ戦車はそれでも撃とうとするが、何と榴弾は無かった。イギリス兵は無事北西へ向かう。さあこれで未来が見えてきた。
 しかし忍び寄る黒い影。アパートには離散していたドイツ機関銃部隊が迫っていた。重機関銃分隊は遠くからクロムウェルが食い止めたが、後方で回復した2個分隊と指揮官は止められない。しかし大丈夫。東の建物への道は、石壁に遮られて撃たれない。アパートへは橋を渡って裏から回り込んでみよう。行ける。
 しかしその時、アパートから閃光が。アパートのドイツ兵が、待機射撃からパンツァーファウストを撃ったのだ。その前にはチャレンジャーが。そうか。機関銃にばかり気を取られていたが、当然パンツァーファウストだって持ってるんだ。河向こうから撃たれるという考えが抜けていた。とは言えチャレンジャーは石壁の影、そう簡単に砲塔になんか。当たったよ。チャレンジャー炎上。

 ああ、また点差が開いてしまった。しかしまだ可能性はある。まず死角にいるドイツ機関銃部隊に対して、砲兵支援を要請してみる。見えない敵なので要請を蹴られる可能性も高かったが、うまく通った。後はうまく一発で当たれば。ああ、反対側にずれた。効果なしだ。
 ならば次の手だ。アパートへの道を見張るドイツ兵。危険だがここへクロコダイルを向かわせる。当然パンツァーファウストを撃とうとするドイツ兵。しかし失敗。今だ!火を吐くクロコダイル。ドイツ分隊を焼き尽くす。それ進め!イギリス軍はアパートの2区画を占領。これで足りる?どう?後はドイツ最後の反撃の時間。

 ドイツにはまだ登場していない半個分隊がいる。どこかに潜んで建物の奪回を狙っているはず。イギリスも分かっているので、ドイツ軍がいる可能性のある範囲の建物には、皆守備隊を置いた。奪還は無理ではないか?
 現れたドイツ兵。場所は西側手前の森。ここは。左端手前のドイツ配置区域外の建物にぎりぎり届く。しかしそこへ行くにはイギリス守備隊の防御射撃をくぐり抜けなければならない。射撃。モラルチェック。成功。ドイツ兵はたどり着いた。
 これで勝敗は決したが、ドイツはさらにアパートでも白兵戦を始める。3倍の兵力、優秀な指揮官。ドイツ軍に敵うはずもなく、イギリス軍は倒された。ドイツの完勝だ。と言っても建物1つの支配で点数が8点も動く勝負なので、最後の2つを守り切れていれば、一気に互角になる意外と際どい勝負でもあったのだが。

 予想プレイ時間は(23+8×3)×8÷60+1≒7時間15分。実際にはもう少し長かったと思います。でもこのシナリオは攻守両者が良く動く、考えどころのある良いシナリオで、それで長引くというのは良いことだと思います。
 後で気づいた事。林、建物、瓦礫の中の砲は、撃つとそのフェイズは射界が固定される(ROFを維持しても)。クラス上昇で9−1指揮官は、熱狂ではなく9−2指揮官になる。
 また読者の方に教えていただきましたが、このシナリオの水障害はひどく冷たい(frigid)だけで凍って(frozen)いないので本当は渡れないそうです。水障害のルールにはfrigidが書いてないので分かりませんでした。書いてあるのは小川のルールで、しかもその効果はE章(選択・特別ルール)の水泳に書いてあるのに、それについて説明が無いというひどい不親切さです。ただ結果的には逆にバランスが取れて良かったです。
 
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