見えにくい攻防の焦点
 
 今日のASLは、Wacht am Rhein(ライン川ほとりの歩哨)よりWaR3 スカイライン街道頂上の丸っこいすずめ。ライン川ほとりの歩哨計画の初期、スカイライン街道沿いの街を守るアメリカ軍を、ヘッツァーの支援を受けたドイツ国民擲弾兵が攻撃します。丸っこいすずめって何の例えでしょうね?
 ドイツは8ターンの終了時に、30VP以上の損害を受けることなく、ボード49の複数へクス建物10個の内7個以上を支配していたら勝利です。靄がかかっており、地面は軟弱で車両は道路以外のヘクスごとに追加0.5MPがかかります。
 ドイツ軍は市街の東側中央に二線級4個分隊を先に配置します。そして第1ターンに先攻で、8−3−8突撃工兵3個、専用ユニットの5−4−7国民擲弾兵4個、4−6−7一線級4個分隊と火炎放射器2、爆薬2、榴弾が7以下でしか無くモラルが7のヘッツァー3両が、東側から侵入して来ます。ドイツはELRが3で、8−3−8はELRを超えると徴募兵になって突撃工兵の能力を失います。
 一方ELR4のアメリカは、エリート6個に二線級5個分隊と、爆薬5、バズーカ2を市街の西側に初期配置。そしてサイの目により3〜5ターンの間に75ミリ砲のシャーマン4両が西側から入ってきます。アメリカのエリートはモラルに下線がある扱いでELRが5になり、アメリカの歩兵とSWは弾不足です。
 戦力評価では、シャーマンがヘッツァーを正面から倒せないので4分の1で数え、ドイツが1%有利なだけの良い勝負と予想されます。子供がアメリカ、私がドイツです。


 今回のシナリオは、攻撃側防御側とも場所の選択の幅が広いので、どこで守ってどこで攻めるかの見極めが難しくなっています。まずドイツは勝利条件建物が4つある東側2ブロックに先に配置しますが、戦力の集中が最優先なので、北側のブロックだけを守ります。
 そしてアメリカも戦力を集中するしかないので、全軍で北側のドイツ軍を攻めるか、空いている南側の建物群を占領するかの選択になります。これはドイツの増援到着前に、一撃で市街のドイツ軍を殲滅し切るのが難しいと考え、今回は南に配置しました。

 そして第1ターン、ここでまたドイツは増援をどこから進ませるか悩ましい所。南側の建物群へ一気に迫り、アメリカ軍とここを争う手も考えられますが、平地から石造建物を攻める形になるのはやはり難しそう。
 そこで8個分隊は市街の東側中央にある集落に進め、ヘッツァーもその付近に進めて支援できるようにしました。そして火炎放射器を持った突撃工兵2個分隊と爆薬を持った2−4−7半個分隊2個の火爆隊は、南側から市街内部の初期配置部隊の所に向かいます。また初期配置の部隊は、主力がアメリカ軍との境界を固め、半個分隊は勝利条件建物の支配に向かいました。こうしてドイツ軍は、全員共同で市街中央部を集中攻撃する予定です。
 さてターン後半、アメリカは東に進んで建物を占領するつもりですが、ドイツ領域との境界にあるP9の建物は、ドイツ軍に半包囲されている上に小さくて、ここへ入るのは怖そうな感じ。そこでアメリカ軍は一つ後ろの大きめの建物2つ(P6,L9)を防衛拠点に決め、それぞれの建物に隠蔽を付けた厚いスタックを積み上げます。

 これで決戦場所が確定し、両軍のぶつかり合いによってその選択の成否が明らかになっていきます。第2ターン、まずドイツは初期配置の中機関銃スタックで、東側最前線の建物N9を撃ってみましたがLOSが無く失敗。これにより平地を安全に進めなくなったので、東側の部隊は森の陰に隠れて左に回り込んだり、戦車沿いに右に回り込んだりします。その後に戦車は少しだけ前に出て、歩兵の突撃場所を作りました。また火爆隊も初期配置部隊と合流して前線へ。
 ターン後半、キャリバー50を2丁持つ南東側拠点のアメリカ鬼スタックが、隙間を通して戦車の所に来たドイツ分隊を射撃。これは除去されてもおかしくない所でしたが、なんとか混乱で済みました。しかしこれではドイツ軍がこちら側から進むなんて無理だぞ。

 そこで第3ターン、ドイツは攻勢の主軸を右手に移して、まず北西側の拠点建物に準備射撃をしますが、全く効きません。うーむ。それなら次の手として、ヘッツァーをまた少し進めて横断歩道とし、そこに火爆隊を送り込みます。
 するとアメリカも煙幕を撒きながら、南東の部隊の一部を西に回してきました。火爆隊では射程が足りず、これを止められません。そして最後にアメリカ鬼スタックは、南東側拠点建物の西寄り2階に昇ります。

(下が東)

 ドイツ、これはまずいぞ。火爆隊が進もうとしていた前の建物が、キャリバー50に狙われて入れない。そこで第4ターンは、ひとまず火力のある部隊が撃ち、北側で混乱から回復した部隊は、煙幕に隠れながら離れた場所で道路を渡ります。そしてキャリバー50が東側からいなくなったので、東側の集落にいた国民擲弾兵は、まっすぐ進んでP9の建物に入りました。
 そしてここでシャーマン4両が登場。強力なヘッツァーが待ち構えている中、置き場所が難しいのですが、一旦2つの拠点の後ろに隠れて、ドイツ歩兵の回り込みを阻止しながら様子を見ることにします。

 第5ターン、早く進まないと時間が足りなくなるので、まず国民擲弾兵は射撃せずに煙幕を焚いてみましたが、全て失敗。ならば突撃工兵が自ら煙幕を撒いて前進だ。当然撃ってくるキャリバー50。しかしなんとか混乱とピンだけで済みました。さらにヘッツァー1両が、隠れているシャーマンの側面に回り込み、撃ってみましたが外れ。そしてもう2両は拠点建物に隣接します。
 さてこれでアメリカ鬼スタックは撃ち終わり、これまでの地道なすり潰しにより、アメリカ拠点の守りも薄めになってきています。これはもう今行くしかない。
 ドイツは爆弾持ちも含めた半個分隊を先頭にして、既に西側に渡っていた部隊を、次々と拠点建物に向けて突っ込ませます。前面のアメリカ軍は皆半個分隊で火力が足らず、一部は止めたもののいくつかに突入にされてしまいました。さあこの攻防はどうなる?
 ターン後半、アメリカ軍はまず爆薬持ち2つが待ち伏せ設置。しかしこれは周りからドイツ軍に撃たれ、止められてしまいます。そして次はシャーマン全車が、ヘッツァーの側面に回り込んで射撃を繰り返しますが外れ。ヘッツァーは最後に涸れ谷を出てすぐ脇に来たシャーマンを撃ち、その撃破に成功しました。
 最後にアメリカは、拠点内部に入って来たドイツ歩兵とヘッツァーに対して白兵戦を仕掛けましたが、どちらも戦果無し。

 第6ターン、こうなるともう次々やって来るドイツ軍の拠点侵入を止められません。隣の建物に突っ込んでボグになったシャーマンと残りのアメリカ兵が、ドイツ兵を一部は撃退したものの、ついに拠点は陥落してしまいます。回り込んだヘッツァーはバズーカで仕留めましたが、ここからアメリカが建物を奪還するのは無理そうなので、ドイツの勝ちとしました。



 ドイツが角のP9建物を取ってしまうと、アメリカは二つの拠点建物の相互支援が難しくなり、ドイツは北西側建物を効果的に集中攻撃できるようになりました。これは最初にドイツがP9の建物に集中して、アメリカに占領させなかったのが、功を奏した形です。
 ではアメリカはどうすれば良かったのでしょう。初期配置から準備し何としても第1ターンにP9建物を占拠して守るべきだったか、あるいはキャリバー50スタックをP6の北西側拠点に置いて最初から撃ち合うべきだったのか。答えは難しいですが、どちらにしろ決戦場の選択と配置の重要性が良く分かる戦いでした。

 
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