基本戦術を実戦で解説
 
 今日のASLはアニュアル89のA8、The Agony of Doom断末魔。末期ドイツのソ連に対する一時的な抵抗です。ソ連は9ターン以内に、5つの複数へクス建物の内4つを支配したら即勝利です。
 ソ連はエリートが8、一線級が5個分隊と、ISU152が1両、ISU122が2両、T-34/85が2両。そしてドイツは初期配置が二線級4、徴募兵7と、76ミリ対戦車砲1門、ティーガーIが1両。第1ターンに9−2指揮官付き一線級が3個分隊。そしてヤークトパンターが2両、本来は第2ターンに出てくるのですが、バランスで第4ターンとします。
 ドイツの背後の丘は森と平地になり、ドイツのAFVは事前照準できません。子供がドイツ、私がソ連です。


 今回は戦術の大原則を書いた後という事もあり、考え方を詳しく書いてみます。
 まず戦力評価ですが、ソ連が19%の劣勢で予想勝率1割です。しかしアーカイヴだとソ連の勝率は3割もあります。何がこんなに違うのでしょうか。
 このシナリオについてはネットでも写真付きのプレイ記録が複数見つかります。私の見つけた2つの例ではどちらも似たような配置をしていたので、そこから考えてみましょう。
分散配置
 2つの例ではどちらも、ドイツが半数以上を町の外部に分散配置しています。町の外部は林や孤立した木造建物などしかなくて弱い上、分散しているので各個撃破されます。そのためドイツ軍はソ連の攻撃によってどんどん損害を出していき、いざ町で戦う段になっても、戦力不足で止められくなっています。
 ここは大半の部隊を防御に適した町の内部と町はずれの大型石造建物内に置いて、集中決戦戦術を取るべきでしょう。
ただの丘の上の戦車
 ドイツには初期配置でティーガーIが1両ありますが、これをどちらもソ連侵入側の丘の上に置いています。丘はハルダウンになれる可能性がありますが、2面以上がなれる可能性は1/3しかなく、そうでなければ1命中修正しかありません。しかもどこからでも見られる丘は、5両のソ連戦車から集中攻撃を受け、前過ぎるのでT-34から側面に回り込まれる可能性があります。実際どちらの例でも、ティーガーは早々に破壊されてしまっています。
 戦車はやはりおうち戦車です。そしてこのシナリオには、ソ連の正面入り口をふさぐ絶好の位置に塀付きの家があり、置き場所はここしかありません。
 ソ連が無理にここへ集中攻撃をかけたとしても、前進射撃はそうそう当たらず、その間にティーガーは追加射撃含めて4回程度撃つことができます。しかも隣接すれば街路戦闘を受け、側面に回れば対戦車砲に撃たれる可能性があります。はっきり言って自殺行為です。

 さてドイツが原則通りの配置をしたら、ソ連はどう攻めればいいでしょうか。攻撃正面が狭くティーガーが待ち構えている正面攻撃では、確実に敗北します。
 今回ドイツは一見前面に多少分散しているように見えますが、これは正面攻撃を誘うおとりで、やられても痛くない程度の弱小戦力でしょうし、隠ぺいがあるので効きにくく、生き延びたらすぐ逃げる算段でしょう。これに引っかかってはだめです。
 ソ連はトラックとタンクデサントで歩兵を積めるだけ積み、林道を使って側面に回り込みます。側面は広く全てを完全には守れないので、そこからドイツの動きを見て弱い場所を攻めるのです。積みきれないのが4個分隊出ますが、3個は指揮官が率いて斜め前に進み、1個は手前の小さな丘に登らせて隠蔽監視に当たらせます。
 これで結果を比べてみれば、防御側の一般的な戦術と戦力の集中と地形の利用大原則のどちらが正しいのかはっきりします。


 第1ターン、ソ連はT-34が先攻して森を抜け、他の戦車は機動中のまま森の中で待ち、場合によっては森の中にも入れるようにしておきます。機関銃を持ったトラックの歩兵は、森の中で車を降りて森の外縁に並び、徒歩組は予定通り進みます。

 ターン後半ドイツは対応して、ティーガーを町はずれの大きな建物の石壁の内側に動かし、増援の歩兵も道路を駆けて同じ所に移動します。この建物は守りの要で、ソ連は可能ならこれを先に攻め取って攻撃の足掛かりにしようと思っていましたが、ドイツは当然分かっていて、そのようなことは簡単にさせません。

 第2ターン、ティーガーが離れたので、ISU122とISU152が1両づつ正面へ、他の戦車は側面へ。歩兵はその間を進み、大型建物前面のドイツ徴募半個分隊をディスラプトさせます。
 すると町の中から隠れていた対戦車砲が側面を撃ってきました。この対戦車砲のあったR3は前面の丘の上も撃てる位置で、もしソ連が移動力ぴったりで登れるT-34を丘に登らせて正面攻撃していたら、いいようにやられていたところでした。
 ターン後半、対戦車砲はT-34に衝撃を与えますが、対戦車砲を撃ったソ連中機関銃グループの射撃は効果なし。9−2指揮官率いるドイツ鬼スタックは、大型石造建物の最上階に登ります。

 第3ターン、この状態でヤークトパンターまでいたらソ連はどうにもならない所ですが、バランスルールによりもう少し余裕があります。まずソ連中機関銃は再びドイツ対戦車砲を撃ちますが、ピンになったのみ。そこでT-34はISU122を守るためスモークディスチャージャーを使い、その後町に接近します。
 また鬼スタックに見られてしまった中機関銃スタックは、もう平地を通って進むのは無理になり、森を通って町の方へと方向転換します。ただすでに近くで戦車から降りていた6-2-8の3個分隊は、死角に隠れて大型建物に向かい、庭にいた徴募半個分隊をディスラプトさせて捕虜にします。
 そして町の前面でも小さなウミガメ戦術でばらばらと分隊が突っ込み、防御射撃をくぐり抜けて徴募兵分隊を捕虜にしました。しかし前面のドイツ軍が撃ち終わってパンツァーファウストの心配がなくなった後、石壁まで前進したISU122は、2へクス先からの壁を越えたパンツァーシュレックにやられてしまいます。
 ターン後半には、衝撃中のT-34もお亡くなりになり、鬼スタックを何とかしなければ勝ち目は無いと踏ん張っていたISU122も、煙幕とT-34の残骸をくぐり抜けた対戦車砲弾に貫かれて破壊されます。町の前面に入ったソ連分隊も混乱し、対戦車砲への射撃もまた効果なし。ただ大型建物に進んだエリートたちだけが頑強に耐えています。


 第4ターン、ソ連はようやく対戦車砲を混乱させ、T-34も伴って町の前面へ再攻撃します。T-34を狙ったパンツァーファウスト攻撃はことごとく失敗し、それでピンになったドイツ軍への白兵戦にも勝って、ソ連は町の4へクスを占領しました。また大型建物でもエリートは階段の下を押さえます。
 という所でヤークトパンター様登場。町の要所に入り込んでソ連のこれ以上の進撃を困難にし、パンツァーファウストもついにT-34を捉えて破壊します。

 ヤークトパンターで固められると、やはりソ連はどうにも攻めようがなくなります。対戦車砲を奪い、上の階の混乱したドイツ半個分隊を捕虜にしたものの、戦車と共に反撃に出たドイツ軍により、多くのソ連歩兵が混乱し、一部は退却不能で除去されてしまいます。
 最後ソ連は、討って出ていたドイツ戦車3両全てに白兵戦を仕掛ける賭けに出ましたが、結局どれも破壊できず、逆に近接防御兵器で大混乱させられます。固い鬼スタックに対しても、152ミリ砲が運良く当たることは無く、エリート分隊の攻撃も効かず、ソ連敗北です。



 弱い側面を突き、降伏しやすい徴募兵を多く捕虜にしたりして、ソ連も結構頑張りましたが、やはり数と地形の差には全く歯が立ちません。町を簡単に攻め取られて敗北しているネットの例でのドイツ軍と比べれば、防御側は戦力の集中と地形の利用をするのが勝っているのは明らかだと思います。

 
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