見通せないくねり道
今回の浜甲子園さんとのVASSAL対戦は、A74 Valhalla Bound ヴァルハラ行き。ハンガリーでSSは優勢な兵力のソ連軍に撃ち負かされ、ブダペストを失って退却した。そしてウィーンへ向かう幹線道路の途中で、生き残った部隊を集めて陣地を築き、ソ連軍の進撃を食い止めようとしていた。
ソ連は配置前秘密裏にどちらかの勝利条件を選び、8ターン終了時にそれを達成していたら勝利です。
(1) 西端の11P8と10R5の間から42VP以上脱出していること
(2) 13以上のAFVを失うことなく、ボード10で5個以上の石造建物を支配していること
降雪中で、北から風が吹いており、積雪がありますが、車両の移動ペナルティは無視します。全ての建物は1階建てです。フェイズプレイヤーは格闘戦が選べます。
守るドイツ軍は冬季迷彩があり、SS6個分隊とヒーロー、機関銃中1軽3シュレック2爆薬1、ハーフトラック2台、隠匿できる75L装甲車1両を中ほどに初期配置。そして第2ターンには10−2指揮官付きパンター5両が入って来ます。
これを攻める親衛ソ連軍は、エリート7個分隊(内3個は6−2−8)と機関銃中1軽2爆薬1、IS-2 4両、T-34/85 3両、トラック1台が、第1ターンに東から侵入。そして第2ターンにも、一線級7個分隊(内3個が5−2−7)と軽機関銃2、ISU-122 4両、SU-85 3両が東から来ます。
浜甲子園さんがドイツ、私がソ連です。
まず重要なのはソ連の勝利条件の選択です。突破では戦車だけなら6両、歩兵を乗せていれば5両の脱出で勝てます。しかし私の戦力評価では、防御側の戦車1両は攻撃側2両を相殺すると想定していて、この通りなら6両のドイツ戦車が12両のソ連戦車を止めることになり、ソ連は勝てないと予想されます。もちろんドイツは勝利条件が分からないので、戦車の分散を余儀なくされるというのはあります。しかしほとんどがパンターで残る1両も隠匿と強い上、パンツァーシュレック・ファウストもあるので、やはりこの条件は厳しいだろうと考えました。
一方で建物支配では、低火力で市街地攻撃をすることになり、戦力評価ではソ連歩兵が0.75倍で計算されます。しかしそれでもなおソ連は67%の勝率が予想されるので、こちらを選ぶことにしました。
ドイツの配置は青点線の内側に制限されるので、もしドイツが広がって守っていてくれれば、ソ連は無理矢理通り抜けて町に歩兵を先着させ、楽勝できるかもしれません。しかし浜甲子園さんがそんな甘い手を取る筈はなく、町の前面の森に集まってしっかり固めています。
ソ連がこれを正面から力押ししても、射程で大きく劣るソ連歩兵では、早々には打ち破れないでしょう。するとじきにパンターがやって来て前進は困難となり、無理に戦車戦を挑めば13両損失によって早々に負けてしまいかねません。
そこでソ連は正面攻撃を諦め、南側を迂回することにしました。これを読まれてこちらに隠匿が伏せられていることを心配しましたが、ドイツも町側の森で戦闘になったり北側の道を抜けられる可能性に備える必要があるので、そのような危険な賭けはしていませんでした。ターン後半、ドイツは森から歩兵の乗ったハーフトラックを下げ、突破に備えます。
第2ターン、このターンにパンターが来るので、ソ連第1陣は前に進んで横に並び、来襲に備えます。その際戦車戦の巻き添えを避けるため、移動力に余裕のあるものは歩兵を降ろしました。そして第2陣も安全と思われる同ルートで続きます。
ソ連軍が両方南に来た以上、残った森のドイツ軍も隠匿共々下がって突破に備えます。そしてやって来たパンターは、全てのルートを塞ぎ、かつ側面攻撃も受けないように、ソ連軍を囲む形で配置に就きました。うーむ、全く隙の無いこの布陣。これを破るのは簡単ではないぞ。
だが第3ターン、今こそが臥竜戦術の神髄を見せる時。まずは5−2−7を積んだSU-85 3両が、北上してドイツ半個分隊の近くに歩兵を降ろす。そしてその脇にはISU-122が来て、丘の上のパンターを4両がかりで狙った。
そうしたら今度は道路沿いの生垣の南西端でT-34/85が、蓋を開けた北側のパンターに榴弾を撃っては駆け抜けを繰り返す。この車懸りの陣でパンターをスタンさせられれば倒したようなものだったが、残念ながら全て外れた。最後はIS-2が生垣に並んで次に総掛りで倒すつもりだったが、これは最後で緊急起動し躱されてしまった。さすが戦車運用の魔術師。ソ連は降ろせる歩兵を降ろし、既に降りた歩兵は北上してターン前半終了。
後半には丘の上のパンターにより、ISU-122 1両が載っていた歩兵ごと炎上。狙われていた北のパンターは、途中の射撃をくぐり抜け石壁の向こうに退避。ISU-122から丘への反撃も、炎上した煙に邪魔された全て当たらず。魔術師の魔力は底知れない。

(下が南)
第4ターン、何があろうとソ連は突き進むしかない。ISU-122は再び丘のパンターへ射撃。2つ目で致命的命中、パンター炎上。ようやく来た。
残りは移動。まず正面のパンターに向かってT-34が近づくが、10-2指揮官の追加射撃でT-34は撃破された。そうか、こいつか。なら全力で掛かるしかない。ソ連はIS-2 4両を含む7両でこれに当たる。魔術師を破るにはこのくらいいなければ足りない。実際前進射撃は全て外れた。後は歩兵が森沿いに北上を続ける。
ターン後半、10−2パンターの射撃。IS-2 1両が走行不能。操作班は逃げてしまったが、これくらいで済んだのは幸いだろう。北側のパンターも石壁から覗いて撃ってきたが、お互い外れた。これでソ連も一息ついたか。
と思ったら魔術師は驚愕の大魔法を発動。丘の上のパンター2両が討って出て来たのだ。ソ連は近い側の4両で迎撃したが全部外れて1両故障。防御魔法が強過ぎる。ソ連は残りの戦車で何とか10−2パンターは倒したものの、攻めて来たパンターは前進射撃を当ててIS-2を1両撃破してしまった。攻撃魔法もまた強力。ソ連はこれを跳ね返せるのか?

第5ターン、起死回生を図った修理の目は6で、IS-2はリコール。破壊、リコール、走行不能、ロウアモと、まともなIS-2は既に1両も無く、こいつらはもう当てにならん。そこでソ連はSU-85 2両で北に煙幕を置くと、ロウアモIS-2で丘の上のパンターを撃ったが、走行不能止まりで操作班も残留。それならともう1両にSU-85がAPCRを撃つと、これも衝撃止まり。あと一歩足りない。
これを放置すればまた反撃を食らうので、ここで倒しておかなければ。近くで建物に隠れていたT-34は後退して向きを変え、走行不能パンターの後ろに張り付いて頭を出し、ガンデュエル!修正は同じでサイの目低い者勝ち。T-34はAPCR後面命中の6で、パンターは7、パンター炎上。ついにソ連、防御魔法を打ち破ったぞ!
さらにソ連は、衝撃パンターにもISU-122 3両とT-34 1両を当てて燃やし、残るパンターはあと1両。爆薬もあるソ連歩兵たちは、それに向かって森の中を進みました。
こうして5ターン後半、ドイツが今までの経過から勝利条件を突破と予想しているなら、パンターは全力で丘の方に向かわせるところでしょう。しかし部隊は後退させたものの、放棄したハーフトラックを逆用されないようにと、パンターは途中で止まってこれを破壊しています。これはまだ完全には突破と信じていないな。

第6ターン、時間も無いので北部ではソ連歩兵がドイツ歩兵を強襲します。数が優勢なので多少の損害は何とかなるでしょう。しかし問題は戦車です。戦車を南で進ませて突破だと思わせ、ドイツ軍を南に引きつける手もありますが、ドイツの動かし方からして引っかかる保証はありません。そこで多くの戦車を中央に進め、どちらもあり得るような形にしてみました。ドイツはこれにどう対応するか?
ターン後半、パンターは臨機射撃を躱しながら、出口付近の交差点まで後退。歩兵も全体に後退しながらも、町を完全には放棄しませんでした。そして未だに出て来ない隠匿装甲車の在処も気になるところ。
第7ターン、大量のソ連歩兵が町の外縁部にびっしりと並びます。ソ連戦車もパンツァーファウストを避けながら町に迫り、混乱したドイツ分隊も挟んで除去しながら、突破があり得る形は維持しました。そしてSU-85 1両が、もう次ターンしかない隠匿装甲車の来襲に備えて、後方を見張ります。
ターン後半、ついに北側後方から出て来たドイツ装甲車は、迎撃を躱したものの自身の射撃もはずれ。また町の北で囲まれたドイツ分隊が、ダッシュで逃げようとしましたが混乱。他のドイツ歩兵は出口方向に移動し、やはり突破に備えた形です。よーし、これなら。
最終ターン、ソ連はSU-85でドイツ装甲車に煙幕を置き、歩兵でパンツァーシュレックを混乱させると移動開始。まず如何にもこの後戦車の突破があり得るかのように、歩兵が進んで行きます。そして中央の建物を守る唯一のドイツ分隊に、ソ連8−0指揮官が爆弾を仕掛けましたが、やはり突破に備えてドイツ分隊は撃ちません。最後にソ連戦車は移動してドイツの反撃を防ぐように並び、建物支配条件ということが明らかになりました。
続く前進射撃では爆薬がドイツ分隊の隠蔽を剥がし、そこにソ連5−2−7と指揮官が入って格闘戦。見事ソ連はこれに勝って7つの勝利条件建物を占領し、ドイツはここから3つ奪還することも、残るソ連戦車を全滅させることも不可能なので、ソ連の勝ちとなりました。

ドイツの守りは堅固で難しい戦いでしたが、勝利条件と進撃ルートの選択から、勝利条件を悟らせない布陣、その結果分散したドイツ戦車を集中各個撃破し、歩兵も遮蔽物を伝って安全に進ませたこと全てがうまく噛み合ってソ連は勝てました。中でも戦車の損害数はソ連2対ドイツ4、リコールと走行不能を入れても4対4と、戦車の質で劣る攻撃側としてはかなり良い結果を出して、初めて魔術師を戦車戦術で破ることができました。
とは言っても結局ソ連は予想勝率67%の戦力優位で順当に勝ったに過ぎず、見せることができたのは戦力評価による勝率予想の正しさだけなのですが。
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