虚幻の巨大要塞〜The Last Bid 1〜
 
 今日のASLは、Red BarricadesよりRB5 The Last Bid、最後の詰め。単一のオフィシャルシナリオの中では最大で、両軍合わせて約200個分隊、AFV28両、砲16門もあり、アーカイヴの見積もり時間も128時間という巨大なもの。一度はやってみたいと思っていた人も多いのではないでしょうか。
 ドイツはスターリングラード市街地の組織的抵抗を打ち砕こうと、最後の猛攻を開始します。21ターンの終了時に、ドイツが失ったより12以上多くの複数へクス建物を獲得していたら勝利です。ただし最初にソ連が持っている2つの工場は必ず支配していなければなりません。
 守るソ連は78個分隊と砲9門、120ミリ盤外砲の他、要塞化、地雷、塹壕、トーチカを初期配置し、31個分隊と戦車3両が増援です。これを攻めるドイツは、80個分隊と砲7門、100ミリ盤外砲が初期配置で、第1ターンに戦車4両、その後9個分隊と80ミリ盤外砲、戦車12両の増援が来ます。両陣営とも3個分隊を隠匿配置できます。
 過去にやったどれよりも遥かに大きいシナリオなので、今までの(これに比べれば)小さいシナリオでの統計が参考になるかは分かりませんが、戦力評価はソ連が14.8%の優勢で予想勝率8割となります。子供がドイツ、私がソ連です。



 まず勝利条件からして、ソ連が勝つには2つの方法があります。
1.工場を守り切る
 工場は外から撃たれると+3修正なのに、中に入って来た敵を撃つ時は+1修正だけで良いという、防御に有利な地形です。そしてこのシナリオでは工場が要塞化されており、さらに工場内のソ連軍はファナティックになってさらに強いです。
 しかし小さい方の工場はドイツ軍に隣接していて、いきなり火炎放射器に撃たれるので、さすがにここは守り切れないでしょう。そこで守るなら大きい方ですが、これもいくつかある内部の間仕切りが反撃の邪魔になることと、建物が既に焼け落ちていて天井が無いので、間接射撃には弱めという欠点があります。
2.複数へクス建物を7個守り切る
 ドイツの勝利条件は18個中12個の複数へクス建物を獲得することで、ソ連がどこかに反撃して奪うのはまず無理でしょうから、ソ連は最終ターンまで7個保持できれば勝てます。
 ドイツが取りうる複数へクス建物は、ドイツ軍に隣接する所に3つ、ドイツ軍に半包囲された大きな工場が1つ、南に4つ、中央に8つ、北に2つあります。したがってこの条件で勝つためには中央を守ることになります。

 ソ連がこの2つ以外の場所を守るのは全く無意味なので、どちらかあるいは両方を守ることになりますが、どれも問題点を抱えていて決めにくいです。
1.工場のみ
 工場に兵をぎゅうぎゅう詰めにし、入らない分を後ろに置いて適宜損害を補充すれば、直接攻撃に対しては非常に強いです。しかし天上からもろに盤外砲と迫撃砲に撃たれることになり、+2修正程度で兵が一杯の所に落とされると、被害はどんどん嵩んでしまいます。
 しかもドイツが最初から使える弾薬豊富で電話にもできる100ミリ盤外砲は、事前登録があって最適の場所に落としやすくなっています。さらに10ターンから80ミリが加わるので、ドイツはかなりの量の砲弾を降らせることができるでしょう。
 そしてドイツには5つの火炎放射器と、8つの爆薬もあります。接近戦で火炎放射器が強力なのはもちろん、爆薬を使えば間仕切りの向こうから先に攻撃できるのも強力です。
 ソ連はここだけで守り切るのは難しいと思われます。
2.中央のみ
 一方中央で戦う場合、確かにソ連は総戦力で優勢だと思われます。しかしソ連の部隊は多すぎて、ここだけに集中しても前面には部隊が入り切りません。またソ連は12区画を要塞化でき、要塞であるレッドバリケード地下室も使えますが、前面建物の全ての区画を要塞化するには足りません。
 さらに初期配置のエリート分隊数はソ連25個ですが、ドイツは47個もいて、しかもその内14個が高火力の8−3−8です。しかもドイツには3修正指揮官が1人と2修正が3人いますが、ソ連は2修正が2人いるだけです。そのためドイツは高い戦闘力と修正のスタックを多く作れます。そしてドイツは攻撃側でありながら、この正面では要塞化されている工場4へクスから先撃ちできるのです。
 そうなるとソ連は正面戦闘力でかなり不利となるでしょう。かと言って1列下がると、ドイツに必要な建物を取られてしまうため、それもできません。ソ連は毎ターン分の悪い戦闘を繰り返すことになり、21ターンもの間守り切るのはやはり難しいでしょう。
3.両方
 では両方守るのはどうかと言えば、普通に考えて戦力を二分されるので、それだけであまり良い方法には見えません。ただドイツの方もこれだけ多いと、やはり片方に全て集めても生かしきれず、二つに分けざるを得ないでしょう。そうなればソ連は完全集中よりも数の多さを生かせる可能性があります。
 またせっかく防御に有利な工場を捨てるのはもったいなく、入れるのが適度な兵力であれば盤外砲による損害も軽減できます。そういう訳で今回ソ連は両方を守ることにしました。


 ソ連は大きな工場内に1、2個ずつカウンターを敷き詰め、盤外砲から狙われにくい手前側には、フルスタックを2個置きました。そして残りは中央建物群各区画とその周りの塹壕に、1個分隊ずつ分けて置きます。これでドイツの先制攻撃の威力を軽減しながら、射撃戦に備えるのです。
 一方ドイツは36火力を持つ鬼神スタック4つを作って中央に置き、ソ連軍に相対する所に部隊をずらりと並べて攻撃開始。まず中央で全ての鬼神スタックと砲が撃ちまくり、ソ連軍はガシガシ削られていきます。しかし盤外砲はいきなり赤を引いて攻撃延期。
 そして次は移動です。南方(ソ連左手)では、大部隊が大工場に両側から接近。また中央北側では隠蔽をつけたままじりじり進みました。そして南北端の建物は少数の部隊で占領していきます。
 ソ連は防御射撃をしようにも、先制射撃で削られて要塞に効きそうな火力は残っておらず、隠蔽を外してまでは撃てません。ドイツは突撃でさらに近づいて、次の攻撃の形を整えます。

 ソ連ターン、大工場外周では射撃戦を始めますが、両者痛み分け程度。そしてドイツの盤外砲は、事前登録地点を狙ったにもかかわらず外れて、味方を誤爆してしまいました。
 中央ではやはり撃ち合っても勝てないので、ソ連は2階の部隊を下に降ろし、1階の部隊を一歩後退。ドイツは隠蔽が付いて要塞であろうと、強大な火力で撃ちまくり、またソ連兵を除去、クラス低下にします。ソ連の攻撃が効いたのは、屋上のドイツ半個分隊を撃った迫撃砲だけ。


 第2ターン、ドイツは中央でまた強力射撃&じわり側面前進。そしてドイツ戦車はこの方面に近づいてきます。
 大きな工場ではドイツ軍が工場内に突入。ソ連も反撃しますが、ドイツ軍の数は多く、隠蔽のついた部隊が矢面に立っているので、撃退しきれません。内壁に突破口も空けられ、火炎放射器の威力は大きく、ソ連軍の損害も増すばかりです。
 さらにドイツの盤外砲はまたずれてしまったものの、今度はソ連の端の部隊に当たって混乱させました。

 第2ソ連ターン、工場内に逃げ場は無く、ソ連は撃ち合うしかありませんが、火力が違い過ぎてソ連方はもう半分ほどが壊滅。しかし再び呼ぼうとしたドイツ盤外砲は、2枚目の赤を引いてしまって、早くも支援終了です。
 中央でも同じくやられては補充を繰り返すだけですが、損害のペースが速すぎてソ連はどうにもなりそうもありません。また側面へ回り込んできたドイツ迫撃砲に、重機関銃が撃ちましたが効果無し。

 第3ターン、中央エリア真ん中の3へクス建物では、ソ連軍壊滅。ドイツ戦車の先陣も前線に到着します。ソ連は側面の迫撃砲と撃ち合いますが、無線機は混乱し、残ったソ連重機関銃が迫撃砲を1つ混乱させます。
 大工場では爆薬で壁を破ったドイツ8−3−8フルスタックが、ソ連フルスタックを白兵戦で殲滅。ここに残るソ連軍も、あと少しとなってしまいました。
 第3ソ連ターンとなりましたが、大工場のソ連軍もほぼ壊滅して陥落確定。中央でも安定的に損害は増え続け、もう長くは持たないでしょう。ソ連投了です。




 残念ながら、ソ連が両方を守るのは全くダメでした。久々に優勢率10%以上での敗北です。
 大工場では盤外砲がろくに利かなかったにもかかわらず、ドイツ8−3−8、火炎放射器、爆薬の威力が強く、内壁も結構防御に不利で、簡単に壊滅してしまいました。この条件での工場は、普通の工場のようには固くなく、2つに分けてまで守ってもあまり防御に貢献しなさそうです。
 また中央もやはりドイツ鬼神スタックたちの威力が凄まじく、ソ連部隊は想像を超えるスピードで溶けていきました。ドイツ軍は、4−6−8が3個に機関銃重2中2(1つは指揮官2人で持つ)で36火力のスタック2つと、8−3−8が3個と機関銃中1軽3(1つは指揮官1人で持つ)で36.5火力のスタック2つを作れるのです。
 実はソ連は事前にドイツの最大火力をきちんと計算しておらず、戦力評価で優勢なら撃ち合いでそんなに不利になることはないんじゃないかと、大雑把に考えていました。しかしいくら数が多くても、ドイツの強力な36火力4回を、普通のシナリオの2、3倍の時間撃たれ続けたら、ちょっと耐え切れなさそうです。
 一体ソ連はどうやって守ればいいんだろう?

 
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