戦力差を覆すレアな要因
今日のASLは、シナリオD「Piepskのハリネズミ」。1941年の11月、ソ連軍は大量の兵を持ってドイツ軍に対して反撃しますが、半分は徴兵したばかり烏合の衆でした。ソ連は10ターンの終わりに、真ん中のボードの石造建物を全て支配していたら勝利です。
守るドイツは、全て隠匿配置の一線級7個分隊と、弾薬の少ない80ミリ盤外砲です。そして攻めるソ連はなんと32個分隊と4.5倍もいますが、半数が徴募兵です。
戦力の優劣を計算すると、ソ連が27%の優勢で普通なら絶対勝利するレベルです。しかし半数が徴募兵で、展開もできず、ELRも2しかないとは、これで攻撃するのが信じられないような前代未聞の部隊。また防御側が全て隠匿配置というのは一度ありましたが、その時は圧倒的な戦力差を覆せなかったので、これも特に補正していません。
最近は戦力差を覆せる可能性のあるシナリオを色々試してきましたが、今回はこれらの要因でどうなるか?子供がドイツ、私がソ連です。
ドイツ軍が全て隠匿配置というのは、彼らが巧妙に隠れているというよりも、ソ連軍の練度が低すぎてまともに偵察もできないということでしょう。どこにいるのか分からない敵と戦うのは難しいですが、少なくとも非隠蔽地形にはいないので、丘の上から撃たれることはありません。すると最も危険なのは、町の奥にある唯一の三階建て建物で、ソ連はまずそこから見えないところを進むことにしました。
そして徴募兵と一線級が混在すると、移動力、萎縮、不意打ち、射撃グループ分断等、徴募兵に足を引っ張られます。そこで林に隠れて奥の三階建て建物近くまで進める右側は全て一線級、抵抗の少なそうな左側は徴募兵としました。
第1ターン、第2ターンと、ソ連軍は丘や林に隠れながら進みますが、ドイツからの攻撃はありません。
第3ターン、左側の林の切れ目をソ連の徴募兵が駆け抜けると、やはり奥の建物に隠れていたドイツ機関銃に撃たれ、1個が混乱。さらに同じ建物内の観測員も、盤外砲の観測弾を落とします。

第4ターン、ソ連軍は町中に隠れていたドイツ部隊に撃たれ、ぽつぽつ損害を出しながらも前進し、一部が町に入り始めます。ソ連は町の正面に機関銃部隊を持って行きましたが、そこから撃てる所にドイツ軍はいませんでした。そしてドイツは攪乱砲撃を開始したものの、ひとまず損害は無し。ただ中央に砲弾が降っていると、かなりソ連軍の前進が邪魔されます。
第5ターン、ソ連軍はさらに前進し、町中のドイツ軍に白兵戦をかけようとしましたが、撃たれて止められます。また右手の森では、うかつに前進すると三階建て建物から撃たれまくるので、隠蔽を付けたまま慎重に進みました。
一方左手の徴募兵部隊は、奥に回り込む部隊と脇から町中に突入する部隊に分かれます。しかし突っ込んだ部隊は、攪乱砲撃を持ってこられて混乱。
ターン後半、町中のドイツ軍は後退し、ソ連はそれを撃ちましたが効きません。奥の木造建物に登場したドイツ中機関銃も、正面の鬼スタックには勝てないので、三階建て建物に退避します。
第6ターン、逃げようとしている町中のドイツ軍を仕留めようと、ソ連は左手から徴募兵を大々的に町中に突入させ、右手でも多くの部隊を撃ち合える所に進めます。しかし射撃は全然効かず、ドイツ軍は自己潰走と移動で全て三階建て建物に脱出してしまいます。しかもソ連鬼スタックは、1個だけのドイツ重機関銃分隊に撃たれて全て混乱。弱すぎです。
第7ターン、ソ連はドイツの三階建て建物を囲むように前進し、並んで射撃を繰り返しますが、徴募兵の射程が足りないこともあって、全然撃ち勝てません。それでもドイツの無線が接触に失敗し続けているのが救い。

第8ターン、ソ連軍はついに三階建て建物外側の石壁にたどり着き、総攻撃に入ります。しかしそれでも石造建物のドイツ軍は固く、決定的な損害を与えることができません。
第9ターン、もう時間がありません。ソ連軍は前面にいる者は撃ち、後ろの者は突っ込んで行きます。ドイツ軍は少しずつ混乱していくものの、ソ連は建物内全てのドイツ軍を除去しなければ勝てず、もう3階までたどり着くのは間に合いません。
第10ソ連ターンをやるだけやってみましたが、残ったドイツ兵を全滅させるのは不可能で、ドイツの勝利です。

徴募兵は射程が短く、至近距離に近づかないとまともに撃てません。それでも防御側なら隠蔽して待ち、攻撃側でも展開すればパラパラ突っ込ませるのに使えます。しかし攻撃側で展開できないと、足が遅く、やっと近づいても先撃ちされ、低いモラルですぐ混乱し、回復もしにく、非常に使いにくくなります。さらに今回はELRまで低いので、簡単にディスラプトして、そのまま何もできなくなることもしばしばです。
その上防御側の配置が全く分からないとなると、どこに一線級を送ってどこに徴募兵を送るか、的確に決められません。下手な動きをすれば、射撃戦に入る前にドイツの盤外砲や機関銃でボロボロという事もありえます。
これだけ強力な悪条件が出てくると、今までの戦力評価を修正しないと適切な評価にならないでしょう。
まず攻撃側に展開できない徴募兵(ソ連、中国)がいる場合、80%以上いるなら−0.5(今までに−0.3上乗せ)、40%以上なら−0.3(−0.2上乗せ)、20%以上なら−0.1(新設)の質補正とします。なおイタリア軍も展開できませんが、一般兵でも十分なマイナス補正がしてあって、徴募兵になってもそれほど弱くならないので、この上乗せはしません。
それから攻撃側のELRが、防御側より2以上低い時は−0.1、逆に3以上高い時は+0.1の質補正をします。ELRは以前から補正に入れるか迷っていましたが、今回のケースを機に、過去全ての対戦例を集計して補正値を決めました。
そして完全隠匿配置される防御側には、+0.1の質補正をします。
これらの修正を入れると今回のシナリオの戦力評価は、ソ連が3%の優勢で予想勝率5割となります。そしてこれによって今までの戦力評価を再計算すると、10%以上の優勢では予想の一致率が高まり、個々の適用例を確認しても修正後の予想勝率とプレイ実感が合いました。
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