ASL戦術の大原則
 
 子供とASLをやり始めて五年以上が経ち、百以上のシナリオをやりました。これだけやるとさすがにどのようにやるのがいいか基本的な原則が見えてきます。しかしネットで世界中の対戦を見ても、なぜかこの当然と思われる原則に沿ったプレイをしている人を見かけません。
 私が間違っているのか?世界中の人々が間違っているのか?今までのリプレイを見ていれば何度も出てきた内容ですが、今回その大原則を簡単にまとめてみたので、その当否を考えてみてください。もしこれが正しいならば、ほとんど誰もやっていない方法なので、初心者でも大ベテランに勝てるかもしれません。


戦力の集中と地形の利用
 何を当たり前のことを言っているんだと思う人もいるかもしれません。ウォーゲームを始めた人は、たいてい最初のころに学ぶ基本中の基本です。
 しかしなぜかどのASLのプレイ記録を見ても、特に防御側でこれを守っている人はまずいません。無駄に前衛を出して各個撃破されてみたり、無駄に予備部隊を下げてしばらく戦闘に参加できなかったり、無駄に広がって一部を集中攻撃されたり。あるいは良い地形が後ろに下がればあるのに、わざわざ防御効果の薄い前方で戦ってみたり、逆に固い地形が前にあるのにそこには一部しか置かず、多くの部隊を後ろに下げてみたり。あるいは多くある勝利条件ヘクスの内何個かを守り切るだけで勝てるのに、無駄に全ての勝利条件ヘクスに部隊をばらして置くなど。
 当然のことながらASLはウォーゲームですから、まずウォーゲームの基本から入るべきです。SFゲームなどで例外もありますが、ウォーゲームの戦闘は普通戦力が多い方が勝ちます。戦力を集中した側と分散した側が戦えば、どうやっても戦力を集中した側が勝つに決まっているのです。ASLもやはり戦力のゲームであり、戦力の差があったら移動や射線を見る巧拙などでそれを覆すことはできません。
 これに基づいた具体的な戦術を以下に書いていきます。なおこれらの戦術の大半は子供の発案で、私が考えたのはウミガメ戦術くらいです。


防御側
 私たちは以下の戦術によって、防御側が3分の2くらいの割合で勝っています。

集中決戦戦術
 防御側の根本戦術です。大抵これが正しいですが、シナリオの条件によって違う場合もあり得ます。例えば退却シナリオや、状況的に包囲されやすいシナリオなどです。
 この戦術は決戦に最も有利と思われる場所を選び、そこへ互いにユニットを隣接させるよう集中的に配置し、敵が来たらほぼ全軍が同時にそれと戦えるようにするというものです。基本1区域にはMMC1つずつで、SWを持っていない分隊はできるだけ展開します。建物と建物の間が離れていて射撃グループをつなげられない時は、可能なら間に壕を掘ってつなぐと良いでしょう。
 特別ルールや突破シナリオなどの状況によって、最初は全て集中できない・しない方が良い場合もあります。そのような場合でも離れた部隊はできる限り損害を受けないように移動し、決戦場に合流するようにします。
 ただし相手にOBAがあるなら、まとめてやられないよう配慮は必要です。また位置によっては包囲されないよう注意してください。

 写真は典型的な集中決戦戦術の例です。シナリオはJ35で、勝利条件は攻撃側のヴィシーフランスが損害と建物の支配で防御側のVPを上回ることです。
 右側にも多くの建物がありますが、左上の村を取らないと勝利条件には足りないので、防御側のシャムは他を捨てて左上の村にほぼ全ての戦力を集中しています。太平洋地形で麦畑はクナイになり、そこでは複数へクスの射撃グループを組めないので、攻撃側は防御側の火力に対抗できず戦いようがない状況です。(フランスの戦車のように見えるものはガラクタです。)


鬼スタック
 これは自軍の中で最強の指揮官、最強の分隊、最強の機関銃をフルスタックさせた、攻防最強の部隊のことです。
 攻撃側でこれを使う人は割といますが、防御側になるとあまり使う人がいないようです。それは全く理由の無いことではなく、鬼スタックはその強さから集中攻撃で狙われやすいという弱点があるからです。
 しかし答えは簡単で、集中攻撃を受けないような所に置けばいいのです。正面からは撃たれないが、側面に回り込んだ敵を撃てる場所。正面の重要な場所だけを撃てるが、他からは撃たれない場所。そういった場所に置けば、先撃ちできる高火力は、攻撃をかなり難しくさせることがあります。
 ただし当然状況が変わることもあるので、集中攻撃されそうになったら逃げたり、他の場所が危険になったら助けに行ったりと、機敏な動きは必要です。
 もちろんいい配置場所が無かったり、弱い指揮官しかいないなどの場合は、無理してスタックせず分けた方が良いこともあります。

 写真は典型的な防御側の鬼スタックの例です。シナリオはTAC42で、ドイツ中央の建物の一番手前Z2にいるのが鬼スタックです。
 これを攻撃しようにも要塞化石造建物であり、石壁からでは見える所が2へクスしか無く、アメリカ側の3階建て石造建物も瓦礫にされて無く、林はドイツの迫撃砲に撃たれます。しかもドイツには当てればほぼ戦車を破壊できる対戦車砲とパンツァーシュレックがあるので、戦車で支援することもできません。そのくせ鬼スタックからはドイツに接敵する直前の平地がほぼ見渡せるので、アメリカは鬼スタックを攻撃することも進むこともできず、どうしようもありません。


おうち戦車
 名前の通り建物内に戦車を初期配置することです。ルール上完全装軌型でCTのAFVだけが建物に置けます。
 歩兵を建物に入れて守る人は多いですが、戦車を石壁の後ろに置く人はいても、建物に入れて守る人はほとんど見たことがありません。なぜ戦車に限って地形の利用を放棄するのでしょうか。
 戦車を建物の中に置けば当然敵の砲撃は当たりにくくなり、最初の前進射撃で運悪く倒されてしまうという事はほとんどなくなります。砲を回すとそれによる命中修正は2倍になりますが、このゲームでは建物内でも全ての方向を撃つことができます。また強い戦車に迫られた時も、煙幕等によって助けられる可能性が高いです。そして歩兵と一緒に入ると、白兵戦や敵戦車の突入(VBMフリーズ)阻止等、お互いの防御になります。
 これが移動で建物に入った場合であれば、地下室に落ちたり建物が崩れたりするリスクがありますが、初期配置ならその心配もありません。そして出る時もボグチェックは軽いので、大抵大丈夫です。
 特に建物の周りに石壁のある「塀付きおうち戦車」なら、撃たれた時にTEMとハルダウンの有利な方を選べるので、より防御力が上がります。また丘にある「丘の上の戦車の館」なら、やはりハルダウンになれる可能性がある上、より広く見渡せるので先撃ちの利点を生かしやすくなります。

 写真は丘の上の戦車の館の例です。シナリオはAP9で、ドイツは4号戦車しかなく、T−34やT−44に対して劣勢です。
 しかしドイツは丘の上の館に戦車を籠らせることで、頑強に耐えながらソ連戦車を倒して行きます。ハルダウンになれなかったので隠蔽を付けたまま生き延びていた4号が、その後ソ連に戦車を集中されてどうしようもなくなると、離れた所にいた4号から間に煙幕を撃ってもらって難を逃れます。ほとんど当たらない相手に無駄な時間を使っていられないソ連戦車は、撃破を諦めて脇を通り抜けようとしますが、館の4号がそれを撃って2両を破壊し、ドイツの勝利を決定づけました。



攻撃側
 元々集中することが多い攻撃側の戦術はそう多くありません。

ウミガメ戦術
 戦力の集中と地形の利用が基本と言っても、決戦場を選べない攻撃側は、地形を利用できず戦力の集中が危険な場合もあります。そのような時に火力を集中できるようにするのが、ウミガメ戦術です。これは卵から孵ったウミガメが海に帰る時のように、1ユニットずつびっしりとあたりを埋め尽くして前進する戦術です。
 前進射撃ではそれらを全て合計して射撃できるので、高い火力で攻撃できます。しかも1ユニットずつばらけているので損害は抑えられ、敷き詰められているので射撃グループを分断されにくくなっています。半個分隊は前に、機関銃を持った分隊は後ろやTEMの高い地形に置くと、より良いでしょう。
 ただしOBAでまとめて狙われるところでの使用は避けてください。

 写真はウミガメ戦術の特殊な例です。シナリオは65で、隠れる地形が無いので、ソ連軍は移動弾幕に続いてウミガメ戦術で前進しています。
 手前の盤に一定VP以上入ることがソ連の勝利条件で、このままだとソ連のウミガメは中央の機関銃からのファイアレインをじりじり抜け、前面の日本守備隊を倒して勝ちそうでした。そこで防御側にも関わらず、日本軍もまたウミガメ戦術で反撃に向かいます。日本軍は少しづつソ連軍を削り、最後にバンザイ突撃で勝利を決めました。


煙幕白兵戦
 煙幕を撃てる時限定ですが、防御側の火力に対抗する最も効果的な方法なので挙げておきます。名前の通り防御側に煙幕を落とし、そこに白兵戦を仕掛けることです。
 防御側が戦力の集中と地形の利用を使って戦うと、攻撃側が撃ち勝てないことは珍しくありません。攻撃側にOBAがあることもありますが、防御側の地形によってあまり効かないことも多いです。そのような時は防御側の火力拠点に煙幕を落として火力を無効化し、白兵戦で攻撃するのが有効です。
 モラルが低くて撃たれ弱いけれども、火力が高くて白兵戦に強いアメリカ軍にとっては、特に効果的な戦術です。防御側は、この攻撃を受ける可能性がある所に、鬼スタックを置いてはいけません。


必勝法
 実はこのゲームには必勝法があります。今までやったシナリオを独自の方法で分析してみましたが、半分くらいのシナリオは元々戦力が偏っているのです。そのようなシナリオで上記のように戦力を生かす戦術を使えば、戦力の優勢な側がほぼ確実に勝ちます。シナリオにはバランスルールも付いていますが、ほとんどの場合焼け石に水で、戦力不均衡が埋まることはありません。
 
戦力分析法はこちらに書いてあります。式の入った計算表も付けてあるので、表計算ソフトを使える方なら面倒な手計算をする必要もありません。
 私たちの対戦成績からして、この計算で10%以上の優勢になると8割以上、15%以上ならほぼ10割勝てると思います。もし初心者でベテラン相手に勝てずに悩んでいるならば、これで必勝のシナリオを見つけて優勢側でやってみるといいでしょう。その時集中決戦戦術だけでも知っておけば相当強いです。

 
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