葉加瀬太郎
ACOUSTIC CONCERT TOUR 2001 Endress Violin 2001.12.01 新潟市民芸術文化会館
俺が小学校高学年から中学だった頃にかけて、我が家ではNHKの『音楽・夢コレクション』という番組がけっこうブームだった。準レギュラーの、森公美子(で良かったっけ、字)とか島田歌穂とかって顔ぶれがまず凄かったし(てかNHKじゃなきゃできなかったよなーあれ)、その他にこの人たちがいたのだ。
G-CLEF。過去から現在に至る俺様の音楽遍歴の中で、最も上手くて最も可笑しいインストバンドである。
今日の葉加瀬氏のステージには、そのG-CLEFの元メンバーが二人参加するとあって、俺の目的は正直なところサポート二名の方だった。だがしかし。
全員が全員、非常に楽しかった(爆笑)。構成はバイオリンの葉加瀬太郎をメイン(当たり前)に据えて、ギター・天野清継、チェロ・柏木広樹(ex.G-CLEF)、コントラバス・西嶋徹、ピアノ・榊原大(ex.G-CLEF)という五人。
ちなみに天野さんと西嶋さんは、今年四月の榊原さんのコンサートでサポートを務めていた。ので、俺が初めてナマで見たのは実は、柏木さんと葉加瀬氏だけだったりする。今回、チケットの発売日を一日勘違いしていたため、狙っていたA席を含めすべての席が発売当日のうちに売り切れ(爆笑)。だったんだが、好評につきバックステージ席も販売ということで、運良く取れたんだな。
従って、人生初のバックステージ席で見てたんだが、ほんっとに後ろね(笑)。ホールの構造上、ステージの後方にパイプオルガンがどどーんと組んであって、その周辺にも座席を作ってあって、俺がいたのはパイプオルガンの下手側の隣、四列目。
もう一列後ろだったら、完全にピアノの榊原さんが見えなくなるラインでした(笑)。なればこそ嬉しかったんだけどね。
スピーカーは当然S及びA席の客に一番良い音が届くように設置されてるわけで、スピーカーの背面を見てるこっちにとって音が良いわけがない。それでも綺麗だったけどね。音がこもらないホールだから、いい具合に反響して聴こえてて。
難点と言えば低音が足元から来ないこと。ステージの上に少し張り出した状態の席だから、低音は残念ながら直結しない。でリズム楽器ないからいいんだけど。曲タイや曲順は、あくまでもおぼろげに残る記憶から引っ張り出したものなので、違っても責任は取らん。まあいつものことだがな(笑)。
アタマ二曲からして最新作『Endless Violin』からの選曲。当然か。
一曲目が、俺が密かに一番好きな「ルーマニア民俗舞曲集」だったもんだからもう嬉しくてしょうがない。ルーマニア舞曲だけあってテンポが速い。従って、一曲目からして榊原さんの足、大活躍(笑)。
そう、この人はピアニストだから手の動きが見事なのは当然なんだが、その他に足の動きも凄まじくてね(笑)。ちょうど、ピアニスト用のアンプの奥で踊る榊原さんの左足がばっちり見えてしまって、俺様早くも興奮(爆笑)。
しかもこの人、ピアノを「打楽器」として扱うことがたまにある。
鍵盤の下ってーか裏側ってーか、膝の上にあるピアノの底面を手の平でバンバン叩くのだ。榊原さんのコンサートでも見たことのある光景ではあったが、上から見るってのは初めてなので非常に楽しい。
その上、「弦楽器」扱いまで登場。鍵盤を通さずにピアノ線を直接手で弾くという荒業。堅めのハープみたいな音するけど、するけどさ。それってどうなのよ(笑)。続いて「Angel In The House」。そしてMC。
「今日は背中に視線を感じます(笑)」そりゃそうだろ、俺らいるし(爆笑)。
このホールではもう幾度もコンサートやってるけど、バックステージまで完全に埋まったのは初めてだと喜ぶ葉加瀬氏が、実はけっこう細身だということが発覚。顔の輪郭があんなだから間違いやすいけど、タキシードとか着たらけっこうスマートに見えるタイプなんじゃないかと。足長いしウェスト細いし。myおかん曰く「石原裕次郎タイプの体型なんじゃない?」。さいですか。そこから、「Etupirka」「Another Star(スティーヴィー・ワンダーのカバー)」「うたたね」と続く。
「Another Star」から「うたたね」への流れはギターの天野さんが半ば即興で繋いでて、後のMCでタイトルをつけろと葉加瀬氏に言われてついたのが「新潟の夕暮れ」。まんまやん(笑)。
「うたたね」というのが葉加瀬氏と天野さんだけの、のんびーりまったーりゆったーりした曲で、思わず気持ちよーく眠れそうな感触なんだが、演奏終わった後のMCが。「(囁き声で)おはよおございまーす!」
楽しいよ、この人は(笑)。
その後、この九月にソロアルバムを発表したばかりのチェロ・柏木さんの、そのアルバムから「Party!」と「Trio No.1」を。アルバムにはバイオリン入ってないのでアレンジを変えて。
これが終わったところで第一部終了。十五分の休憩を挟んで第二部スタート。ちなみに俺の定義では、休憩のないのがライヴで休憩のあるのはコンサート。例外は今のところあんまりない。第二部は「Travel Talk」「Laurent」というこれまた俺の好きな曲が並んだ。二曲ともギター・天野さんの作曲だそうだが、天野さんの見せ場がないのがポイント(笑)。リズム楽器のない編成であるが故に、ギターのカッティングがリズムキープ役なんだそうだ。そりゃねぇ、カッティングし続けなきゃいけない人に見せ場はないわな。
MCは途中で、小説と映画『冷静と情熱のあいだ』の話へと移って、ここでチェロ・柏木さんが映画に出演していることが発覚。その話を出されただけで本人は照れまくり(笑)。位置的に上手側の柏木さんの顔だけは常に(横顔だけど)見えてたので、非常に可愛くて楽しかった。
MCからの流れで「冷静と情熱のあいだ」。続けて「アルゼンチン・タンゴ」。これは俺が音源持ってないのでようわからんが、ピアソラですか? MCもほら、スピーカーが向こう向きだから、聞き漏らしが多いのよ。
更に、セリーヌ・ディオンとの共演で話題になった「TO LOVE YOU MORE」。セリーヌの歌だとサビなんかかなり力強く聴こえるもんだが、葉加瀬氏の音の柔らかさをフィーチャーして、とても綺麗な仕上がり。CDより綺麗だったなぁ。
間を置かず「情熱大陸」。それが終わった時点でサポートメンバーは袖に引っ込んでしまい、ステージに一人残った葉加瀬氏もバイオリンに繋いでいたマイクを引き抜いてしまう。
本編ラストに来たのが「Once Upon a Time」。CDでも綺麗で柔らかくて印象的な曲だったが、この日唯一のナマ音、鳥肌のケタが違った。そんでもって、感動のうちに終わった本編とは打って変わってのアンコールが大騒ぎだったんだよ(爆笑)。残念ながら音源がなくて一曲目のタイトルが分からんのだが、各メンバーをフィーチャーしたコーナーを織り交ぜた曲でした。凄かったんだ、これが。
最初はチェロ・柏木さん。それまではちゃんと座って弾いてたのに、突如立ち上がってステージ前方に出るや、くるりとバックステージに向き直った。
そして、チェロ、抱え上げ(爆笑)。
正確には身体をエビ反りにして胸でチェロを支えてる状態だが、それでちゃんと弾くってのが離れ業。しかもタイムがけっこう長い(笑)。
G-CLEF時代もやってたんじゃなかろうか。G-CLEFはなんせ、ピアノの榊原さんにも「ピアノ抱えて走って!」という要望が出るほど、メンバーが動くバンドだったからな(笑)。
次がギターの天野さんだったかなぁ。ちょっとうろ覚え。彼はやはりそれまで座っていた椅子に左足を上げた状態でクールにキメた(笑)。途中でピックを客席にプレゼント。バックステージに投げ上げようとしてやめてしまったのは惜しかった。が、あれは届かなければステージ後方に落ちるだけで、虚しくなる一方だからなぁ(苦笑)。
次がたしかコントラバスの西嶋さんだったと思う。彼もまた離れ業を披露。なんと、コントラバスを横向きに抱えて(エレキベースみたいな感じね。でも巨大)、やはりそのまま弾く(爆笑)。途中、天野さんの余ったピックを葉加瀬氏と天野さんの二人から投げつけられるというアクシデントも(笑)。
締めにピアノ・榊原さん。この人が一番、ナニをやらかすのか想像がつかない。当たり前。ピアノは動けないからねぇ。
興味津々で見てたら、おもむろに立ち上がって座ってた椅子の後ろに回り、膝でその上に乗り上げて、ピアノに謝るように手を合わせて拝むや否や、椅子の上に正座して弾き始めた(爆笑)。まったくもう……おかげで葉加瀬さんが霞んだくらい、サポートメンバーがイっちゃってました(笑)。二度目のアンコールの二曲は、クラシックのある種の定番ナンバーから。なんと。
運動会の定番「クシコス・ポスト」と「トリッチ・トラッチ・ポルカ」(爆笑)。わからない人はどっかのMIDIサイト辺りで聴いてみると、絶対すぐ分かると思う。俺も後者はタイトルでは分からんかったが、聴いたら分かった(笑)。
で、その演奏の最中にまた……特に「クシコス・ポスト」。テンポがむっちゃくちゃ速くしてあった時点で既に笑ってたのに、中盤。
一人ずつソロコーナーを作ってあったんだが、一人進む毎にどんどんおかしくなっていく(苦笑)。テンポが速いせいにして、細かいフレーズの後半を誤魔化すのだ。そうすると、「ちゃんと弾いてください!」と葉加瀬氏のツッコミが入る(ノーマイク)。あれ、最後列とかじゃ聞こえなかったかもなぁ、ツッコミ(笑)。その直後、全員合わせた時には客席が手拍子しちゃっててよく聴き取れなかったが、たぶん、不協和音のままでワンフレーズやったんだと思う……どこまで遊ぶんだかなぁ。
ちなみに葉加瀬氏も、終盤に入るとリズムに合わせてその場駆け足とかやるしな(爆笑)。
更に「トリッチ・トラッチ・ポルカ」では、ケツ振って踊る姿も(笑)。あれって正面から見たらあんまり目立たないよなぁ。後ろにいたからこそ見えたものかもしれない。そんなこんなで終わったアンコールの最後にも問題が一つ。最後のメンバー紹介で、なんと榊原さんが忘れ去られた(爆笑)。「え!? お、俺は? 俺は!?」と焦る榊原さんを可愛いと思ったのも束の間。
最後の最後にね。BGMが入ったんだよ。PAで流してるのが。それがまたしても「トリッチ・トラッチ・ポルカ」でね(笑)。
なにしてんだかなーと思って笑ってたら、揃って深々とお辞儀をしたメンバー五人、一斉に右向け右(笑)。そして、駆け足の時のあの、脇を締めて両手は肘で曲げてグー作って、という体勢を取り、端からこれまた一斉に駆け足退場(大爆笑)。そんな、最後の最後まで徹底的に遊び尽くした感のあるコンサートでございました。俺様ご満悦。