自灯明・法灯明 m o
お釈迦様は35歳で悟りを開かれ、それから45年の永い間、説法の旅をつづけられました。80歳になられた時、自分の生まれ故郷の町を目指して最後の説法の旅を続けておられました。もう少しで生まれ故郷の町にたどりつくという時、病気にたおれられ、いよいよ最後の時が近いことをさとられたお釈迦様は、お弟子さん方を集め、最後のお説法をされました。その最後の説法は、「この世の中のすべてのものは、うつろいやすいものであり、なにひとつ変わらないものはない。私亡き後は、努力・精進することを怠りなく、自らを灯火(ともしび)とし、仏法を灯火とし、生きてほしい。」というものでありました。ここでお釈迦様が、自らを灯火として、といわれた意味は、自分一人の力で生きていってくれ、といわれたのでなく、ただ一度、人間として命を恵まれた、そのことの尊さに目覚めてほしいといわれたことであります。私達の日ごろの生活は、お金や地位や学歴などに価値を認め、それを追求することが大事なことと思って生きています。その私達に向かって、そうではなくて、本当のあなたを早く確立してほしい、といわれたのが、自灯明の意味でないかと思います。周りの環境に影響されやすいのが、私達人間であります。地位や身分・学歴、お金や財産、それをもとめることが、人間の大切な生き方であるという考えに、いつのまにか染まって生きている私達に向かって、本当に大事なことは、人間として生まれたことに価値を認め、生まれてきて良かったといえる人生を送ってほしいとの釈尊からのメッセージが、自灯明であり、言葉をかえて言えば、それはとりもなおさず法灯明(仏法を依り所とせよ)ということでありましょう。