お盆を迎えて
 今年もお盆の季節を迎えました。お盆は正しくは盂蘭盆(うらぼん)といいます。盂蘭盆とはインドの言葉でウルランバナの音写で倒懸(とうけん)と訳します。逆さに吊るされる非常な苦しみという意味です。
 お釈迦様(おしゃかさま)のお弟子さんの目蓮(もくれん)さんが、百味のごちそうを、多くの僧に供養することで、その功徳をもって、餓鬼道におちて倒懸の苦しみを受けていた母を救ったという説話が、お盆の行事のもとになったようです。 
 今はなき肉親や祖先を偲び、これらのお方々に孝養を尽くすというのが、この行事の趣旨ですが、それでは亡くなった方々に孝養を尽くすには、どうすればよいでしょうか。
 もちろんお墓参りなどをして、お花や灯明を供えることも供養かもしれませんが、一番の供養は、私たちが、一日一日大切に生きるということでないでしょうか。私たちは、忙しさのあまりつい一日一日うかうかと過ごしがちです。仕事や家事など、目先のことにのみ追われ、あっという間に月日が経ってしまう、そんな生活をしています。
 そういう私たちにとって、必要なのは命の尊さに思いを致し、一日一日を大切にすることではないでしょうか。そして本当の意味で、しあわせの道を聴かせていただくことでないでしょうか。
 浄土真宗の家の、ほとんどのお墓には、南無阿弥陀仏(なむあみだぶつ)という文字が正面に刻まれています。南無阿弥陀仏という言葉は、亡き人の成仏を祈る言葉でなく、今生きている私たちひとりひとりが、いただいた命を大切にし、一日一日を大切に生きてくれとの仏様からの呼びかけの言葉です。そのことに気付かせていただくのがお盆の意義であると思います。

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