妹の挙式


 都内在住の叔母は、車椅子での出席を強く望んでおりました。無論、妹も家族一同もそうですが、式そのものと披露宴を足しても5時間くらいは耐えてもらわなくてはならぬというのは…祖母にとって最早「拷問」では?と思いました。
 式場で車椅子を借りられますし、個人的にボランティアで知り合った車椅子の女性とは式場一階のレストランをよく利用してまして、式場の方々のご親切な応対には日頃感謝していたのです。が、祖母の場合やはり排泄の問題が大きいのと、家族が常についてあげられるか、というところに大きな不安がありました。
 宴席のお食事も、祖母には最早楽しめるものでは無くなっていましたし。それを思い、家族に相談する前に…本来は母が書くのが筋ですが…介護者である私の目で見てどうなのか、というのを叔母に説明し詫びる手紙を書きました。納得いただけたようで、問題の一つはクリアとなりました。
 が、その間、祖母を看て下さる場所を確保するのが大変でした。と言うのも、結婚式シーズン…主に6月と10〜11月は予約がぎっしり。それが式場のお話だけではなくて!です。式場も日取りを決めるにかなり苦労をしましたが、これは結婚された方、また身内の結婚でスタッフの立場となった方ならきっと、お分かりかと。
 (高島易断などの暦で『吉日』探しをするのは何方も同じなのか!そして新郎側のお家が禅宗《臨済宗》で『三りんぼう』という日を嫌うため、第一希望〜第三希望までを捜すのが大変でした…それも、第二希望日の朝一番!となってしまったのです)
 招待する・されるで、それが決まった時にすぐベッドを確保しておかないと大変らしい時期だったのです。

 腹の探り合いにて 

 その時になって捜しても、「ショートステイ」で受け入れて下さる場所は…皆無に等しかったのです。余程、介護者である私が家に残ろうか、とも考えましたが、そうなると『世間体の問題』がある…と(関係ないと思いましたが)。
 ケア・マネージャーの方が懸命に捜して下さり、ようやくベッドを一つ確保したのですが、施設の指導員・看護婦の方が家庭訪問の際に仰った事がちょっと。
 施設に預けたからといって、安全と思わないで欲しい
 「入所者が100人からいて、ショートの人なんかに構っていられない…

 本音なのでしょうが、一瞬、「何ぃ?」と思いました。
 若いケア・マネージャーの方は、多分5年以上は先輩であろうその方々の横で済まなそうな顔をして肩をすくめていました。一瞥して、深く同情しましたが、言うべきことは言わねばならぬ。
 ごめん、ケアマネ君!
 声が怒っていたとは思いますが、自分としては穏便に運ぶ限界だったと思います。
 「施設に預けても、事故が有り得る事は重々承知しております。ただ、こちらも義理を欠く事が出来ないですし、後へ退けません。そういう責任問題の事でご心配なら、預けた私たちの責任という事で父が一筆書く、と申しておりますが?(←大嘘・でも何ならそこで一筆私が入れても良かったのですが)
 
 内心、こんな事を仰る方々に祖母を預けるなんて、と思わないでも無かったのですが。主治医に顛末をお話したら、
 「何で俺の患者って、あそこに嫌われるかなあ?何やら怪我をした何だと、看るのが面倒になると難癖つけて…デイケアとかショートを断るんだよなあ。そういう被害っていうかに遭ってる人は他に居るんだよ〜」
 祖母の背中の怪我を診て下さっていた整形外科医の先生も、
 「そういう時のために施設ってあるんじゃないか、一体何言ってんだ?」とアキレ、その医院の事務の方々もこれから祖母をどうして行くかについては在宅中とても心配を下さいました。
ともかく、何とか挙式当日、祖母に待っていてもらう場所は確保したわけです。

Graphics by Tickie's Web Page Themes